尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

ワリエワ問題とロシアのドーピングー北京冬季五輪②

2022年02月24日 23時15分29秒 | 社会(世の中の出来事)
 いよいよロシアによる全面的なウクライナ侵攻が始まった。何を最終目標にしているのか現時点では不明だが、注視していかなくてはならない。第二次世界大戦後、最大級の危機が起きているのは間違いない。この問題はまた別に考えたいが、まずは書き残している北京冬季五輪での「ワリエワ問題」。正確な事情は僕には判らないが、カミラ・ワリエワに「ドーピング」(禁止薬物の摂取)が明らかになったと報道された。しかし、スポーツ仲裁裁判所(CAS)がIOCやWADA(世界アンチ・ドーピング機関)、ISU(国際スケート連盟)の控訴を却下したため、北京五輪には出場出来ることになったわけである。
(ワリエワ)
 そんな騒動の中で登場したワリエワのショート・プログラムの演技は、確かに素晴らしかった。ワリエワは首位に立って、事前に金メダル最有力と言われただけのことはあるなと思った。カミラ・ワリエワは2006年4月26日生まれで、現在15歳。昨シーズンまではジュニアで、今シーズンからシニアに昇格した。調べてみると、一昨年の世界ジュニア選手権で優勝、昨年はコロナで大会が中止になったが、今シーズンのグランプリシリーズ・カナダ大会では世界最高得点で優勝し、ロシア大会ではさらに得点を更新して優勝した。だから間違いなく金メダルに一番近かったのである。

 日本ではここ20年ぐらい、とてもフィギュアスケートの男女シングルが盛んになっている。だから、ほとんどの人は何人ものスケーターの名前を挙げられるだろう。男子に3連覇が掛かる羽生結弦がいたこともあって、冬季五輪の各種目の中でも非常に注目度が高い競技だった。男子に関しては羽生は4位だったが、2位に鍵山優真、3位に宇野昌磨が入った。しかし、女子はロシアが圧倒的に強く、メダルを独占するのではないかと見られていた。ショートで4位だったトルソワがフリーで高得点を挙げたため、まさにそれが実現するかに見えた。ところが最後の演者ワリエワがあり得ないような転倒を繰り返し、フリーの得点が伸びず4位となった。

 という展開はナマで見ていた人も多いと思うから、これ以上詳しくは書かない。可哀想だとも思うが、競技とは違う問題で注目を集めてしまい、15歳では支えきれなかったのか。フィギュアで転倒するのは誰にも起こりうることだが、世界トップ級の選手がこれほど何度も転倒するのは珍しいと思う。事前にワリエワがメダルを獲得した場合は表彰式を実施しないと言っていた。「ワリエワが転べば、すべて丸く収まる」というムードがあったのは否定できないだろう。結果的に金メダルはアンナ・シェルバコワ銀メダルはアレクサンドラ・トルソワ銅メダルは坂本花織となった。
(シェルバコワ)(トルソワ)
 坂本花織は五輪という場所で自己最高得点を出した。確かに高度なジャンプはなかったが、非常に素晴らしい会心の演技だった。ワリエワの失敗で銅メダルが転がり込んできたと言えば、まあその通りなんだけど、やりきったことで獲得したメダルだろう。仮にメダルが取れなかったとしても、笑顔で五輪を終えていたに違いない。ロシアの選手はシェルバコワとトルソワがいずれも17歳、ワリエワは15歳で、体格的にはまだ大人になっていない感じがした。だからこそ高度なジャンプを針金のような体で見事に演じた。坂本花織は21歳で、演技の質が違っていた。より芸術的で優美な演技をしていた。女子体操の「コマネチ」か「チャスラフスカ」か問題に似ている。坂本選手はコロナで試合もなくなってしまった時に、そういう時こそ基礎を鍛えるべきと考え、ランニングや体幹トレーニングを行ったと述べていた。他にも同じような選手がいたが、やはりそういう努力あっての活躍だったのである。
(坂本花織)
 今までは今回の北京五輪の話だが、ちょっと今までの女子フィギュアの結果を振り返ってみたい。2006年トリノ五輪の金メダルは荒川静香(24歳)、2010年バンクーバー五輪の金メダルはキム・ヨナ(19歳)だった。2002年ソルトレークシティー五輪の銀、トリノ五輪の銅はロシアのイリーナ・スルツカヤだったが、最初のメダルは23歳である。ソチ五輪金アデリナ・ソトニコワは17歳。ピョンチャン五輪金アリーナ・ザギトワは15歳、銀のエフゲニア・メドベージェワは17歳である。そして、ソチのスルツカヤを除き、ピョンチャン、北京の五輪に出た全選手は、下記画像のエテリ・トゥトベリーゼというコーチが指導した選手だ。
(エテリ・トゥトベリーゼ)
 結局問題はこのコーチになりそうである。そして北京五輪後にはワリエワを激しく叱責したとか、トルソワがコーチを非難したとか言われる。そこら辺はなんとも言えないが、他の多くの競技では成功しても失敗しても選手はコーチとハグしたりしている。前回の金銀選手は今回は出ていない。まだ10代だったのに一回メダルを取って終わりというのも、何だかおかしい。今回ワリエワ側は「祖父の心臓病薬が間違って混入した」などと主張しているようだが、その当否は現時点では誰にも証明できないが、そんなことを言ってる時点でスポーツ選手として失格だと思う。ドーピングに厳しい世界の動向を判っていれば、仮に15歳だったとしてもそんな混入には気をつけるし、ドーピングに気をつけろという指導をするものだ。

 ロシアでは恐らくこれも「陰謀」と思っている人が多いと思う。12月の検査が五輪中に明らかになったことで、「西側の陰謀」を疑う。そもそもロシアのドーピングは根が深い。単に選手の誰かがドーピングしたという問題ではない。組織的に検体ごと取り替えてしまうなど、非常に悪質極まりない。そんな大きな不正は恐らく政権が関わらないと出来ない。そのような事態はロシア国内では報道されていないと言われる。この間プーチン政権のもとで、自国に都合の悪いことは報道できなくなり、すべては外国が悪いというフェイクニュースを信じるように慣らされてきた。そのような積み重ねがあって、ウクライナ戦争があるのだろう。スポーツにおける不正を許さないということも、「平和」につながっている。
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