日本の温泉を毎月一回書いているが、ウクライナの事態に気が取られて2月が短いのを忘れていた。関東・伊豆を書いたから、次は甲信越である。山梨県では南アルプスの麓に奈良田温泉白根館がある。素晴らしいアルカリ泉だが、近年宿泊を止めてしまった。立ち寄りは継続しているようだが、この秘湯に泊まれなくなってしまったのは残念だ。新潟にも素晴らしい温泉が多いが、行ってないところも多い。前に書いた糸魚川の姫川温泉や赤倉温泉の赤倉観光ホテルも新潟県。他では松之山温泉が素晴らしい。
しかし、何といっても素晴らしい温泉に恵まれているのは長野県だろう。渋・湯田中温泉郷、野沢温泉、別所温泉、白骨温泉、高峰温泉など全国レベルの素晴らしい温泉がいっぱいある。その中でも一番素晴らしいのは、安曇野の奥の奥、北アルプスの「表銀座」燕岳(つばくろだけ)の登山口でもある中房温泉だ。ここは日本中の温泉の中でもベスト・オブ・ベスト級で、なかなか二度と行けないお湯が多い中、あまりにも素晴らしいのでまた行ったところである。お湯も料理も立地条件も全部いいけど、ここで見た星空の素晴らしかった事も忘れられない。もっとも冬季休業だから、今書いてもすぐは行けない温泉。
中房温泉は山の中にあって、標高1462mという。これより高所の温泉は他にいくらもあるが、それでもずいぶん高い。下界が猛暑の夏も、ここまで来れば涼しいことこの上ない。僕は夏しか大旅行が出来ないから、ここへ行った2回も夏である。東京を逃れて中房温泉まで行き着けば、本当にホッとしたもんだ。僕が行った頃は旅館に大きな犬がいた。おとなしくて可愛い犬だったな。
温泉が数ある日本の中でも中房温泉は特に素晴らしい。湧出量も泉質も素晴らしくて、立ち寄り専用や足湯、地熱浴場などを含めて14ものお風呂がある。大浴場などは混浴だが、女性専用タイムがあるから、男女とも全部のお風呂を満喫できる。とはいえ、正直言えばそんなに入っても仕方ないから、全部は入ってない。数もそうだが、単純硫黄泉(アルカリ性低張性高温泉)の泉質が素晴らしい。一浴、おっ、これはいいなと思う。アルカリ泉の肌に優しい素晴らしい湯だ。30もの源泉があるが、ほぼ同じ泉質だと思う。90℃もあるが、加水せずに冷却して掛け流している。あっちにもお風呂、こっちにもお風呂で大満足である。
お風呂をハシゴして、一日の旅の疲れを取れば、ちょっとグッタリした感じになる。そんな時は入浴で失われた水分や塩分を補いたくなるが、中房温泉の配慮は完璧だ。あちこちに冷水があって、水も飲めたと思うけど、トマトやキュウリも冷えている。自由に食べてよくて、キュウリに付ける味噌まである。座れて休めるようになっていて、浴衣姿でノンビリ。そういう宿は他にもあったけれど、山の秘湯でこういうサービスは本当にうれしい。
ここは古い歴史がある温泉で、「本館菊」など7棟が登録有形文化財になっている。坂上田村麻呂時代から温泉が知られていたという話。湯宿を始めたのは文政4年(1821年)のことで、松本藩の命でミョウバン採取を主目的に温泉小屋も始めたと出ている。今も残る「御座の湯」は藩主も浸かった湯だという。ホームページには今までに訪れた著名人が掲載されていて、現天皇も燕岳登山の前に泊まったという。秩父宮も泊まったとか、大町桂月、永田鉄山、阿部次郎、賀川豊彦、務台理作、中河与一など、今では誰それ?と宣伝になりそうもない名前がいっぱい載っている。それでも以上の名前は僕も知っているが、浅井冽、若山登志子は僕も誰それ? 後者は若山牧水の未亡人だとか。しかし、最近の著名人は誰も行ってないのか?そんなことはないと思うけど。
(登録有形文化財の本館菊)
もう一つ、他のどこにもないのが「焼山」である。これは裏にあるちょっとした山だが、上の方が地熱で熱い。歩いている分には別に問題もないが、頂上は確かにいるだけでも熱くなってくる。そこをちょっと掘って、食材を入れておくと蒸し焼きが出来あがる。売店でジャガイモ、卵、ソーセージなどを売っていて、買って蒸し焼きにして楽しむわけである。箱根大涌谷の黒卵のように温泉に浸けるのとは違うけど、自分で出来ちゃうのが面白い。他では見たことがない。
(焼山)
その他に、国指定の天然記念物もある。「中房温泉の膠状珪酸(こうじょうけいさん)および珪華(けいか)」である。前者は好熱性原核生物に珪酸が吸着したもので世界的にも珍しいという。と言っても、僕はそれらを見たことがない。温泉に入っただけで、もう充分という気持ちになってしまい、蒸し焼きも天然記念物も今回はいいやという気持ちになる。歴史も自然も見るところが多い温泉だけど、それよりもお湯の素晴らしさこそ第一の魅力だ。料理も美味しくて、料金が少し高くなっている感じだが、登山者用の安いプランもある。車がないと行きにくいところだが、また何度でも行きたい温泉。
しかし、何といっても素晴らしい温泉に恵まれているのは長野県だろう。渋・湯田中温泉郷、野沢温泉、別所温泉、白骨温泉、高峰温泉など全国レベルの素晴らしい温泉がいっぱいある。その中でも一番素晴らしいのは、安曇野の奥の奥、北アルプスの「表銀座」燕岳(つばくろだけ)の登山口でもある中房温泉だ。ここは日本中の温泉の中でもベスト・オブ・ベスト級で、なかなか二度と行けないお湯が多い中、あまりにも素晴らしいのでまた行ったところである。お湯も料理も立地条件も全部いいけど、ここで見た星空の素晴らしかった事も忘れられない。もっとも冬季休業だから、今書いてもすぐは行けない温泉。
中房温泉は山の中にあって、標高1462mという。これより高所の温泉は他にいくらもあるが、それでもずいぶん高い。下界が猛暑の夏も、ここまで来れば涼しいことこの上ない。僕は夏しか大旅行が出来ないから、ここへ行った2回も夏である。東京を逃れて中房温泉まで行き着けば、本当にホッとしたもんだ。僕が行った頃は旅館に大きな犬がいた。おとなしくて可愛い犬だったな。
温泉が数ある日本の中でも中房温泉は特に素晴らしい。湧出量も泉質も素晴らしくて、立ち寄り専用や足湯、地熱浴場などを含めて14ものお風呂がある。大浴場などは混浴だが、女性専用タイムがあるから、男女とも全部のお風呂を満喫できる。とはいえ、正直言えばそんなに入っても仕方ないから、全部は入ってない。数もそうだが、単純硫黄泉(アルカリ性低張性高温泉)の泉質が素晴らしい。一浴、おっ、これはいいなと思う。アルカリ泉の肌に優しい素晴らしい湯だ。30もの源泉があるが、ほぼ同じ泉質だと思う。90℃もあるが、加水せずに冷却して掛け流している。あっちにもお風呂、こっちにもお風呂で大満足である。
お風呂をハシゴして、一日の旅の疲れを取れば、ちょっとグッタリした感じになる。そんな時は入浴で失われた水分や塩分を補いたくなるが、中房温泉の配慮は完璧だ。あちこちに冷水があって、水も飲めたと思うけど、トマトやキュウリも冷えている。自由に食べてよくて、キュウリに付ける味噌まである。座れて休めるようになっていて、浴衣姿でノンビリ。そういう宿は他にもあったけれど、山の秘湯でこういうサービスは本当にうれしい。
ここは古い歴史がある温泉で、「本館菊」など7棟が登録有形文化財になっている。坂上田村麻呂時代から温泉が知られていたという話。湯宿を始めたのは文政4年(1821年)のことで、松本藩の命でミョウバン採取を主目的に温泉小屋も始めたと出ている。今も残る「御座の湯」は藩主も浸かった湯だという。ホームページには今までに訪れた著名人が掲載されていて、現天皇も燕岳登山の前に泊まったという。秩父宮も泊まったとか、大町桂月、永田鉄山、阿部次郎、賀川豊彦、務台理作、中河与一など、今では誰それ?と宣伝になりそうもない名前がいっぱい載っている。それでも以上の名前は僕も知っているが、浅井冽、若山登志子は僕も誰それ? 後者は若山牧水の未亡人だとか。しかし、最近の著名人は誰も行ってないのか?そんなことはないと思うけど。
(登録有形文化財の本館菊)
もう一つ、他のどこにもないのが「焼山」である。これは裏にあるちょっとした山だが、上の方が地熱で熱い。歩いている分には別に問題もないが、頂上は確かにいるだけでも熱くなってくる。そこをちょっと掘って、食材を入れておくと蒸し焼きが出来あがる。売店でジャガイモ、卵、ソーセージなどを売っていて、買って蒸し焼きにして楽しむわけである。箱根大涌谷の黒卵のように温泉に浸けるのとは違うけど、自分で出来ちゃうのが面白い。他では見たことがない。
(焼山)
その他に、国指定の天然記念物もある。「中房温泉の膠状珪酸(こうじょうけいさん)および珪華(けいか)」である。前者は好熱性原核生物に珪酸が吸着したもので世界的にも珍しいという。と言っても、僕はそれらを見たことがない。温泉に入っただけで、もう充分という気持ちになってしまい、蒸し焼きも天然記念物も今回はいいやという気持ちになる。歴史も自然も見るところが多い温泉だけど、それよりもお湯の素晴らしさこそ第一の魅力だ。料理も美味しくて、料金が少し高くなっている感じだが、登山者用の安いプランもある。車がないと行きにくいところだが、また何度でも行きたい温泉。