7月10日に行われた参議院選挙の結果については、データを検討して明日以後に書きたいと思う。安倍元首相狙撃事件に関しても、新しい情報がかなり出て来ているので、いずれまとめて考えたい。その前に見た映画のまとめ。見たのは土曜日だから、書かないと忘れてしまう。ポール・トーマス・アンダーソン(PTA)監督の『リコリス・ピザ』(Licorice Pizza)である。僕はこの監督の映画がいつも好きで、今回もとても面白かった。70年代カリフォルニア再現映画で、まるで監督自身の青春を映画化したみたいだが、実は監督は1970年生まれ。題名の「リコリス・ピザ」は、当時カリフォルニア南部にあったレコード店チェーンだそうである。

この映画は典型的な「ボーイ・ミーツ・ガール」の設定なんだけど、かなり変。何しろ15歳の少年が、10歳年上の女性を見初める。場所は高校で、ある日写真撮影がある。アメリカでも写真屋を呼んで各学年の写真を撮るなんてしていたのか。写真屋の助手として高校に来たアラナ・ケイン(アラナ・ハイム)は、生徒に手鏡やクシはいるかと聞いている。ゲイリー・ヴァレンタイン(クーパー・ホフマン)は鏡を借りるが、その後で今夜食事に行こうと誘う。アラナは相手にせず、そもそも食事代は持ってるのと聞く。そうすると、ゲイリーは映画を見るかと反問し、あの映画やテレビに出ていた子役が自分だと答える。
(走るゲイリーとモアナ)
15歳にしてショーマンだったゲイリーは、君と出会ったのは運命だと熱く語る。君は何になりたいのと無邪気に迫ってくるけど、アラナは気持ちが乗らない。そんな時、母親がラスヴェガスで仕事のため、ニューヨークの仕事に付いて来られなくなる。そこでゲイリーはアラナを「付き添い」にしてニューヨークのテレビショーに出演する。ホントに芸能人だったんだ。ゲイリーに感化されてアラナも女優のオーディションを受けるようになる。そこでジャック・ホールデン(ショーン・ペン)というベテラン俳優と知り合い、映画監督のレックス・ブラウ(トム・ウェイツ)とも出会う。劇中で「トコサンの橋」は朝鮮戦争を舞台にした映画「トコリの橋」だろう。ウィリアム・ホールデンとグレース・ケリーが出演していた。ペンとウェイツが最高。
一方、ゲイリーは単なる子役ではなく、なかなか商魂たくましい。ある日「ウォーターベッド」を町で見かけて試してみる。これは売れると思って、大々的な代理店を開業してアラナも雇う。アラナのお色気電話戦術もあって、大いに売れるけど…。相変わらずアラナはゲイリーを子ども扱いするが、ゲイリーは君は僕に会わなかったら今も写真屋の助手だと嫌みを言う。ある日、ジョン・ピーターズ(ブラッドリー・クーパー)の家にベッドを運びに行く。この人は実在人物で、当時バーブラ・ストライサンドの夫だったプロデューサーである。その傲岸不遜な感じが面白い。着くのが遅れて夜になってしまったのは、1973年のオイルショックでガソリンスタンドが大混雑だったのである。アメリカでもそうだったのか。アラナの運転シーンが抜群。
(夜中にトラックを走らせる)
なかなか自分にふさわしい仕事に出会えないアラナは、昔の知り合いをたどってカリフォルニア市長選に出馬しているジョエル・ワックス(ベニー・サフディ)の選挙活動のボランティアを始める。アラナはキャンペーン用の映像撮影を任され、ボランティアの中でも存在感を見せる。ゲイリーもボランティア事務所に顔を出すが、そこで聞いたのがカリフォルニアでピンボールが解禁されるという話。それまで何で禁止だったのか不思議だが、ゲイリーはまるでインサイダー情報を聞いたかのように、突如ピンボールを買い集めて、大きなピンボール場を開いてしまう。まさに「1973年のピンボール」である。
(ピンボール屋を開く)
開場の日は大賑わいだけど、肝心のアラナがいない。アラナは選挙事務所でジョエル・ワックスに財布を忘れたから持ってきてと呼ばれている。果たしてアラナとゲイリーは如何に…。展開は快調で、全く退屈しない。70年代の「自分探し」が懐かしい。PTAの映画としては、判りやすくて通じゃなくても楽しめる青春映画。なんだけど、やっぱり15歳の芸能人少年が25歳を追いかけるって、基本設定は変である。ゲイリー役のクーパー・ホフマンはPTA映画に一番多く出た故フィリップ・シーモア・ホフマンの長男。撮影時17歳。アラナ役のアラナ・ハイムは姉二人とバンド「ハイム」をやってるミュージシャンで、グラミー賞にノミネートされたこともあるという。1991年生まれで、ホントはもっと年上。二人とも映画初出演でよくやっている。
(ポール・トーマス・アンダーソン監督)
この映画は今年度のアカデミー賞で、作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされたが、受賞はしなかった。ニューヨーク映画批評家協会や英国アカデミー賞の脚本賞を受賞した他は、ノミネートに止まったことが多い。この監督の映画では、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』と前作『ファントム・スレッド』が一番完成度が高いと思う。『ブギーナイツ』や『インヒアレント・ヴァイス』なんかが僕は好き。今度の『リコリス・ピザ』もとても良いんだけど、正直言うと、主演の二人が僕の好みじゃないかも。(なお、劇中の日本食レストランの描写には疑問がある。)

この映画は典型的な「ボーイ・ミーツ・ガール」の設定なんだけど、かなり変。何しろ15歳の少年が、10歳年上の女性を見初める。場所は高校で、ある日写真撮影がある。アメリカでも写真屋を呼んで各学年の写真を撮るなんてしていたのか。写真屋の助手として高校に来たアラナ・ケイン(アラナ・ハイム)は、生徒に手鏡やクシはいるかと聞いている。ゲイリー・ヴァレンタイン(クーパー・ホフマン)は鏡を借りるが、その後で今夜食事に行こうと誘う。アラナは相手にせず、そもそも食事代は持ってるのと聞く。そうすると、ゲイリーは映画を見るかと反問し、あの映画やテレビに出ていた子役が自分だと答える。

15歳にしてショーマンだったゲイリーは、君と出会ったのは運命だと熱く語る。君は何になりたいのと無邪気に迫ってくるけど、アラナは気持ちが乗らない。そんな時、母親がラスヴェガスで仕事のため、ニューヨークの仕事に付いて来られなくなる。そこでゲイリーはアラナを「付き添い」にしてニューヨークのテレビショーに出演する。ホントに芸能人だったんだ。ゲイリーに感化されてアラナも女優のオーディションを受けるようになる。そこでジャック・ホールデン(ショーン・ペン)というベテラン俳優と知り合い、映画監督のレックス・ブラウ(トム・ウェイツ)とも出会う。劇中で「トコサンの橋」は朝鮮戦争を舞台にした映画「トコリの橋」だろう。ウィリアム・ホールデンとグレース・ケリーが出演していた。ペンとウェイツが最高。
一方、ゲイリーは単なる子役ではなく、なかなか商魂たくましい。ある日「ウォーターベッド」を町で見かけて試してみる。これは売れると思って、大々的な代理店を開業してアラナも雇う。アラナのお色気電話戦術もあって、大いに売れるけど…。相変わらずアラナはゲイリーを子ども扱いするが、ゲイリーは君は僕に会わなかったら今も写真屋の助手だと嫌みを言う。ある日、ジョン・ピーターズ(ブラッドリー・クーパー)の家にベッドを運びに行く。この人は実在人物で、当時バーブラ・ストライサンドの夫だったプロデューサーである。その傲岸不遜な感じが面白い。着くのが遅れて夜になってしまったのは、1973年のオイルショックでガソリンスタンドが大混雑だったのである。アメリカでもそうだったのか。アラナの運転シーンが抜群。

なかなか自分にふさわしい仕事に出会えないアラナは、昔の知り合いをたどってカリフォルニア市長選に出馬しているジョエル・ワックス(ベニー・サフディ)の選挙活動のボランティアを始める。アラナはキャンペーン用の映像撮影を任され、ボランティアの中でも存在感を見せる。ゲイリーもボランティア事務所に顔を出すが、そこで聞いたのがカリフォルニアでピンボールが解禁されるという話。それまで何で禁止だったのか不思議だが、ゲイリーはまるでインサイダー情報を聞いたかのように、突如ピンボールを買い集めて、大きなピンボール場を開いてしまう。まさに「1973年のピンボール」である。

開場の日は大賑わいだけど、肝心のアラナがいない。アラナは選挙事務所でジョエル・ワックスに財布を忘れたから持ってきてと呼ばれている。果たしてアラナとゲイリーは如何に…。展開は快調で、全く退屈しない。70年代の「自分探し」が懐かしい。PTAの映画としては、判りやすくて通じゃなくても楽しめる青春映画。なんだけど、やっぱり15歳の芸能人少年が25歳を追いかけるって、基本設定は変である。ゲイリー役のクーパー・ホフマンはPTA映画に一番多く出た故フィリップ・シーモア・ホフマンの長男。撮影時17歳。アラナ役のアラナ・ハイムは姉二人とバンド「ハイム」をやってるミュージシャンで、グラミー賞にノミネートされたこともあるという。1991年生まれで、ホントはもっと年上。二人とも映画初出演でよくやっている。

この映画は今年度のアカデミー賞で、作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされたが、受賞はしなかった。ニューヨーク映画批評家協会や英国アカデミー賞の脚本賞を受賞した他は、ノミネートに止まったことが多い。この監督の映画では、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』と前作『ファントム・スレッド』が一番完成度が高いと思う。『ブギーナイツ』や『インヒアレント・ヴァイス』なんかが僕は好き。今度の『リコリス・ピザ』もとても良いんだけど、正直言うと、主演の二人が僕の好みじゃないかも。(なお、劇中の日本食レストランの描写には疑問がある。)