尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

衝撃の安倍晋三元首相暗殺事件ー日本でも起こった銃によるテロ

2022年07月08日 22時57分29秒 | 政治
 奈良市で選挙応援演説を行っていた安倍晋三元首相が銃撃され死亡した。日本ではあり得ないと思われていた驚くべき出来事だ。今の段階で書けることは限られているが、簡単に思うことを書いておきたい。政治家としての安倍晋三氏の業績を総合的に評価するのは早すぎるだろう。それはまだ「安倍時代」が「歴史」になっていないからだ。客観的に評価出来るには、もう少し時間の経過を必要とするだろう。今の段階では「毀誉褒貶」(きよほうへん)にあまり付き合わない方が良い。
(ヘリで搬送される安倍氏)
①「政治的なテロは絶対にあってはならない
②「犯行の具体的な状況が判明するまで、安易な予測や思い込みで発言しない方が良い

 今言えるのは、まずこの二つであり、これしか書けることはないのだから、書かない方が良いのかもしれない。だけど、これほどの大事件を書かずに済ませるわけにもいかない。僕は今日は何だか疲れてしまって家で休んでいた。ちょっとウトウトしていたら、12時半頃に買い物から帰ってきた妻から、安倍さんが撃たれたらしい、母親が騒いでいると聞かされた。90代半ばの老母は最近はテレビもあまり見なくなっていたが、こういうワイドショーが大騒ぎするようなときには元気が復活するのである。
(倒れている安倍氏)
 その時点で「心肺停止」と報道されていたから、回復は難しいんだろうなと思った。午後5時3分に死亡が確認されたが、その直前に安倍昭恵夫人が病院に着いたという。家族が来るまで何とか「治療を続けるフリ」をしたわけだろう。こう言うと何か悪く言うような感じだが、そうではない。最近久坂部羊氏の『人はどう死ぬのか』(講談社現代新書)を読んだから、そう思ったのである。この本は多くの人に勧めたい本で、医者の立場から書かれた実態には共感を持つところが多い。そこで思うのは、銃撃され失血している患者に対し、心臓マッサージをしては逆効果ではないだろうか。

 その時すぐに思ったのは、駅前だし多くの聴衆がいたから、すごくたくさんの現場の映像があるだろうということだ。少し後にテレビを見たら、案の定各局で違う映像を流していた。そもそもNHKなど現場で撮影をしていたメディアも多かった。そこで銃撃シーンが流される。これは事前に注意を呼びかけるテロップが必要だと思う。何度も流されてショックを受ける人も出て来るのではないか。やがて犯人が特定され、犯人が現場で映っている画像もニュースで流された。こうなると、スマホや新聞じゃダメで、テレビで各局を見比べるのが一番だ。(Eテレとテレビ東京以外は全部ニュース特番だった。さすがテレ東。)

 その映像には容疑者も映っていた。それを見て、自分には出来ないなと思った。もちろんやる意思もないし、銃も持っていない。だけど、「動機」「凶器」に加えて「技能」がこの事件には必要だ。映像で見る限り、数メートルの距離があって、自分なら胸や首に当てることは難しいと思う。偶然当たることはあるだろうが、2発とも当てている。これは犯人に「技能」があったことを物語る。その後「元自衛官」と聞いて納得しかけたが、大分昔に3年間海上自衛隊にいただけだから、それだけで「技能」があるのかどうか。海上自衛隊でどれだけ射撃訓練をするのか知らないけど、15年以上前だからその後訓練していたわけではないか。
(容疑者を確保)
 どう考えても「明確な殺意」が感じられる。それは応援弁士が岸田首相だったとしても起こったことなのか。野党指導者だったら、どうなのか。安倍晋三氏に特に殺意を持っていたらしき警察情報の報道もあるが、「特定の宗教指導者」を敵視していたとも言われる。報道によれば、安倍氏の応援演説は昨日決まったという。本来は長野選挙区に行く予定が、長野の自民候補者のスキャンダルが週刊文春に出たので変更になったという。そうすると、犯人にとっても、警備当局にとっても、「偶然」が事件を起こしたという言い方も出来るのか。

 「一人一殺」的な犯行は、「左翼」ではなく「右翼」的な感じを与える。しかし、背後から自作の銃で狙撃するというのは「右翼」にはそぐわない感じもする。そこで考えられるのは、いわゆる政治的な団体に所属するような人物ではなく、むしろ「独自の思い込みで行動する」タイプ、もっと言えばネット用語でよく使われる「無敵の人」という概念である。そして読んだばかりの本、今回の直木賞候補になっている呉勝浩爆弾』という小説を思い出した。設定は全然違うけど、何だか現代日本の気分を考える時に共通点があるような気がする。ミステリー小説だと、捜索に向かった警察官が部屋に仕掛けられたトラップにハマる。そこまではなかったが、実際容疑者の部屋には爆弾のようなものもあって、近隣住民が避難しているという。

 警備の問題だが、安倍氏の警備に関しては、「前面でヤジを発する」、そして安倍氏と挑発合戦になるということを阻止するのが第一だったのではないだろうか。まさか背後から銃撃されることは想定していなかったのだろう。だけど、2発目まで撃たれてしまったのは、やはり警備当局の「失態」ではないかと思う。急きょ決まった演説で、準備不足はあっただろう。組織性のないテロはなかなか防ぐのが難しいと思うが、それでも背後にも十分警戒を怠らないようにするべきだったと思われる。

 今後の政界への影響などいろいろと考えるべきこともあるだろう。方向性としては、田中角栄病気後の中曽根政権ではないか。つまり岸田政権の独自性発揮、長期政権化が考えられる。実質上「最大のライバル」が突然消えたわけだから。それにしても、野党が分立して自民優位が動かない奈良県になんか行く必要があったのか。僕は本当は安倍氏はロシアに行って、「ウラジーミル」とサハリン2の問題を折衝するべきではないかと思っていた。これこそ「余人をもって代えがたい」ではないか。

 なお、参院選に関しては、自民党がどうせ勝つからいいやと思っていた一人区で、自民支持者が「追悼投票」に行くことが予測される。思った以上に圧勝になる可能性が高いのではないか。それにしても、今まで「民主主義」など一言も語らなかったような政治家が、みんな「民主主義の危機」だなどと語り出すんだなあと思う。プーチンやトランプにあまり持ち上げられてもなあとも。
*(頸部に2つの銃創があったと報道されたため、僕は「2発当たった」と判断してしまったが、1発目は当たらず2発目が当たったのではないかと思われる。散弾銃のようなもので、複数の銃弾が発射されるような自作の銃だったと思われる。左上腕部から体内に入った銃弾が、左右の鎖骨下にある動脈を損傷したことが致命傷になったと司法解剖結果が公表された。2022.7.9追記)
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