尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

警備問題の裏にあったものー「安倍事件」考②

2022年07月16日 22時35分55秒 | 政治
 「安倍元首相暗殺事件」に関しては、警備のあり方の検証が欠かせない。それは警察庁でも行うということだが、決して明かされないこともあるだろう。そこで以下に自分の考えを書くことにするが、そこにはどうしても「憶測」が入り込むことを最初に断っておきたい。なお、安倍氏の背後が開いていたのは偶然ではなく「何かの陰謀」だと主張する向きもあるらしいが、それは妄想し過ぎというものだろう。また現場で拘束された容疑者以外に真犯人が存在すると考えるのも常識的に無理だろう。
(現場模式図)
 安倍氏の他の応援演説会場では、車が置かれたり背後にビルなどがある場合が多かったようである。今回何故背後に警備車などを設置しなかったかは、要するに「抜かった」ということだと思う。日本では政治家を銃撃する事件などほぼ起こらない。日本の警察が「ほぼ起こらない」事件に十分対応出来ないことは、昨年読んだ「「黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件の真実」」でも指摘されていた。警察に限らず、コロナ対応で示されたように、同質性が強い日本社会では「全く新しい事態」には十分対応しにくい。むしろ、そういう柔軟な対応能力を摘むような教育を家でも学校でも行っている。

 SPが一発目の後に、もう少し機敏に動けていたら事態は変わっていたかもしれないが、その意味ではそれを求めるのはなかなか厳しいのかと思う。もっとも、それは今回の事件が「想定出来ない」ものと考えた場合である。そして、僕はもう少し「安倍氏襲撃」を想定していても然るべきだったのだったのではと思う。奈良県警の、まさに西大寺を管轄する奈良西警察では「銃弾をめぐる不祥事」が発生していた。銃弾が5発行方不明で、現場で紛失、窃盗が疑われたが、実はもともと配布されていなかったことが判明したというもので、8日に発表予定だったとされる。前日に決まった演説に十分対応出来なかった理由でもあるだろう。
(被疑者を取り押さえる瞬間)
 だが要するに、安倍氏は「右派の大物」だから、事件を起こすとするなら「左翼」の方だという思い込みがあったのではないか。「新左翼」はほぼ壊滅に近く、新しい事件を起こして組織を大弾圧にさらすエネルギーはないだろう。そうすると、聴衆の中に「左派リベラル系運動家」がいて、「安倍元首相にヤジを飛ばす」というのが「一番起こりうる不祥事」となる。だから、僕は聴衆側に多くの私服警官が配置されていたと思っている。背後への警戒がおろそかになった一因である。

 しかし、関西では「京都アニメーション事件」「北新地ビル放火事件」が起こっていた。特に政治的背景が無くても、「愉快犯」として模倣犯罪が起きる可能性を常に考える必要がある。確かに「銃を自作する」のは想定が難しいが、ボーガンだってパチンコだって卵の投げつけだって防がなければならないのだから、抜かりがあったと思うわけである。

 もう一つ、「右翼が襲撃する可能性」である。保守派、右派の総帥格の安倍氏を右翼が襲うわけがないと思うかもしれない。しかし、安倍氏は主張は右翼でも、政治家としての振る舞いは必ずしも右派的ではない部分がある。「桜を見る会」などの対応はまさに本来の右翼なら嫌悪する「自己顕示欲」に満ちている。しかし、それ以上に僕が思うのは「ロシア外交の失敗」である。日本政府が堅持していた「四島返還」を国会で議論すること無く、事実上「二島返還」にレベルを下げたことには、外務省などに禍根を残すとの懸念が強かった。そして経済協力だけ進めても結局「北方領土」は1ミリも動かなかった。

 プーチンの「オレオレ詐欺」に引っ掛かったようなものだ。その挙げ句にプーチンはウクライナに侵攻して、すべてはチャラになった。今まで日本が出資してきたロシアの資源開発も風前の灯火。これでは「暗愚の宰相」というか、本来の右翼なら「売国行為」だと怒るはずではないか。そこで安倍氏を狙撃して、「日本民族は決起した」から、心あるロシア民族もプーチンに対して決起せよと訴える。そういう右翼が出て来てもおかしくないと僕は思う。右派の安倍元首相を右翼が襲うわけがないと予断を持たなければ、ウクライナ戦争の下では日本でも何があっても不思議ではないと想像力を持てるだろう。
(襲撃事件現場の全景)
 恐らく安倍氏が来るとなったら、ヤジを飛ばす反対派と安倍氏、安倍支持の聴衆がやり合ってもみ合いになるという想定しかしていなかったのではないか。安倍氏の演説に居合わせたら、小心者の僕には言えないだろうけど、心の中では「ここまで来たら赤木さんにお詫びに行けや」とか「こんなところにいないで、ウラジーミルに戦争止めいと言って来いや」とか思って聞いてたに違いない。それに対して、安倍氏は「選挙妨害は法律違反ですよ」「こんな人たちを生んだ戦後教育を変えなければと私は頑張ってきた」とか言い出して、騒動になることも予想される。それを防ぐことを警備当局は優先していたんだと僕は想像する。

 なお、現場となった大和西大寺駅は昔何度か通ったなあと思いだした。この通信の由来でもある奈良市の「大倭紫陽花邑」(そこにある「交流(むすび)の家」)に東京から行くには、新幹線で京都へ行って近鉄に乗り換える。西大寺で大阪方面に乗り換えて、学園前駅で下りるから、何度も通っている。でも、西大寺で下りたのは多分一回だけだと思う。15年ぐらい前に奈良へ行ったときである。奈良中心部に泊まって、大好きな唐招提寺、薬師寺に行くため西大寺で乗り換えた。帰りに下車して西大寺を見た後で、「ガトー•ド•ボワ」というケーキ屋に寄った。ガイドブックで見て行きたくなったのだが、ホントに生涯最高レベルの美味しいケーキだった。ホームページを検索すれば納得だと思います。
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