「エルネスト」という映画が公開された。近くのシネコンでは、公開2週目でもうほとんど上映がなくなっちゃうので、珍しくすぐに見に行った。他のヒットしている映画は後回し。なんだか寂しいほどの人数しかいなかったし、僕も傑作だとは言わないけれど、題材が興味深いので簡単に紹介。
「エルネスト」と言えば、エルネスト・チェ・ゲバラだと思い浮かばない人には、この映画は関係ない。でも、正史ともいうべきソダーバーグの「チェ」2部作、あるいは若き日のゲバラを描いた「モーターサイクル・ダイアリーズ」などがあるのに、またゲバラの映画を何で日本で作ったのか。と思うと、この「エルネスト」という題には二重の意味があった。これはフレディ・マエムラ(前村)という日系ボリビア人の物語なのである。彼はキューバに医学の勉強に行き、ボリビアに革命戦士として帰った。
このフレディをオダギリジョーがやっていて、キャストの中でただ一人の日本人という難役にスペイン語で奮闘している。フレディはボリビアで反体制とみなされ大学へ進学できない。そこでキューバの奨学金を得てハバナ大学へ行く。そこで様々な出会いを経ながらも、祖国ボリビアで軍事クーデタが起こると帰国してゲリラを目指す。大学にはゲバラやフィデル・カストロ(どっちもそっくりさんが演じている)、学生の悩みを聞きながら気さくに応答している。
冒頭に「日本・キューバ合作映画」と出る。キューバとの合作なんて「キューバの恋人」(1969、黒木和雄監督)以来だろう。そこでキューバロケも可能になり、魅力的なキューバの様子を見ることができる。だけど、ゲバラやカストロは今や「伝説的偉人」であり、キューバでは革命体制の建設者である。そのゲバラに従ってボリビアに帰ったフレディも、偉人化されるのは仕方ないのだろうか。まるで映像で顕彰するかのように、画面がクローズアップされていく。ちょっと参った。
脚本・監督は阪本順治で、阪本監督は「どついたるねん」「顔」など傑作も作っているが、結構外すこともある。前作「団地」もオイオイという展開にあ然としたが、今回はあ然とする箇所もなくストレートに立派な人物なので、これも困った。ちょっと聞くと波瀾万丈な人生なんだけど、医学生としても優秀、ゲリラとしても強健でいうところなし。だがゲリラ活動を始めて間もなく捕まって殺される。案外淡々としているので、どうもこの映画も外したかな、否定的要素のどこにもない主人公ってどうなんだと思う。
冒頭、1959年にキューバ代表団として来日したゲバラが出てくる。外務省へ電話があり、日本政府は止めて欲しかったのに、ゲバラは勝手に大阪から広島へ向かったという。ゲバラが広島を訪問したことがあるという話は知っていたけど、細かい事情は知らなかった。ゲバラなんて誰も知らなかった時代である。そして彼は何を見て何を感じたのか。この冒頭シーンは必見だと思う。最近の様々なニュースを思い浮かべて、胸に刺さるものがある。そしてゲバラはキューバ危機に際して世界に訴える。「核戦争に誰も勝者はいない」と。これこそ日本映画が世界に発するメッセージである。
「エルネスト」と言えば、エルネスト・チェ・ゲバラだと思い浮かばない人には、この映画は関係ない。でも、正史ともいうべきソダーバーグの「チェ」2部作、あるいは若き日のゲバラを描いた「モーターサイクル・ダイアリーズ」などがあるのに、またゲバラの映画を何で日本で作ったのか。と思うと、この「エルネスト」という題には二重の意味があった。これはフレディ・マエムラ(前村)という日系ボリビア人の物語なのである。彼はキューバに医学の勉強に行き、ボリビアに革命戦士として帰った。
このフレディをオダギリジョーがやっていて、キャストの中でただ一人の日本人という難役にスペイン語で奮闘している。フレディはボリビアで反体制とみなされ大学へ進学できない。そこでキューバの奨学金を得てハバナ大学へ行く。そこで様々な出会いを経ながらも、祖国ボリビアで軍事クーデタが起こると帰国してゲリラを目指す。大学にはゲバラやフィデル・カストロ(どっちもそっくりさんが演じている)、学生の悩みを聞きながら気さくに応答している。
冒頭に「日本・キューバ合作映画」と出る。キューバとの合作なんて「キューバの恋人」(1969、黒木和雄監督)以来だろう。そこでキューバロケも可能になり、魅力的なキューバの様子を見ることができる。だけど、ゲバラやカストロは今や「伝説的偉人」であり、キューバでは革命体制の建設者である。そのゲバラに従ってボリビアに帰ったフレディも、偉人化されるのは仕方ないのだろうか。まるで映像で顕彰するかのように、画面がクローズアップされていく。ちょっと参った。
脚本・監督は阪本順治で、阪本監督は「どついたるねん」「顔」など傑作も作っているが、結構外すこともある。前作「団地」もオイオイという展開にあ然としたが、今回はあ然とする箇所もなくストレートに立派な人物なので、これも困った。ちょっと聞くと波瀾万丈な人生なんだけど、医学生としても優秀、ゲリラとしても強健でいうところなし。だがゲリラ活動を始めて間もなく捕まって殺される。案外淡々としているので、どうもこの映画も外したかな、否定的要素のどこにもない主人公ってどうなんだと思う。
冒頭、1959年にキューバ代表団として来日したゲバラが出てくる。外務省へ電話があり、日本政府は止めて欲しかったのに、ゲバラは勝手に大阪から広島へ向かったという。ゲバラが広島を訪問したことがあるという話は知っていたけど、細かい事情は知らなかった。ゲバラなんて誰も知らなかった時代である。そして彼は何を見て何を感じたのか。この冒頭シーンは必見だと思う。最近の様々なニュースを思い浮かべて、胸に刺さるものがある。そしてゲバラはキューバ危機に際して世界に訴える。「核戦争に誰も勝者はいない」と。これこそ日本映画が世界に発するメッセージである。