今日は、6年生のクラスで、読み聞かせがありました。
日頃から?と思っている「読み・聞かせ」という言葉。6年生だと、さらに違和感が増していくような気がしますが、現状ではその言葉を使うしかないので、しかたありません。
自分の気持ちの中では(いつもそうですが)、おはなしを一緒に楽しむ・共有するといった感じがしていて‥。で、たまたま読み手に私がなっているだけ、みたいな感覚に近いでしょうか。
前置きはこれぐらいにして、今日読んだ本を紹介します。
『名前のない人』
C・V・オールズバーグ 作
村上春樹 訳
原題は「The Stranger」
オールズバーグの作品は、作者がその人だと知っただけで、とっても気になります。
どこかのクラスで読もうとか、娘に読んであげようとか思うよりも前に、このタイトルにとっても惹かれ、自分自身の楽しみのために、図書館で借りてきました。(絵本カレンダーの9月のところに載っていたのです)
とても不思議なお話でした。
オールズバーグ的世界に、たっぷりと浸ることができました。
自分ひとりで楽しんだ後で、11歳か12歳の子たちは、どんなことを思うかな。「名前のない人」とベイリーさん一家に呼ばれていた、表紙の男の人の存在を、何と位置付けるだろうと思い、ちょうど予定に入っていた6年生で読んでみることにしたのです。
夏が秋へと変わっていく頃ーお百姓のベイリー
さんは一年の中でもそういう季節が好きだった。
彼は車のハンドルを握りながら口笛を吹いていた。涼し
いそよ風がさっと頬をなでて、窓の外に吹きすぎていっ
た。ちょうどそのとき「どすん」という大きな音がした。
ベイリーさんはあわててブレーキを踏んだ。「こりゃ大
変だ、鹿をはねちまったぞ!」と彼は思った。
こんなふうにベイリー家にやってきた男は、一体なにものなのでしょう。
ざらっとした不思議な皮の服を着ていて。
ベイリーさんが何か尋ねても、何を言われているのか全然わからず。
お医者のはかった体温計の水銀は上がらない。
温かいスープから立ちのぼる湯気を見て、びっくり。
兎は逃げずに、ぴょんぴょん跳んで男のほうへやってくる。
そして、
干し草集めを手伝っても疲れを感じず、汗さえかかない。
彼は、ほんとに人間なのかなあ。
人間の姿をしている、森からやってきた動物なのかも。
それとも‥。
この本は、見開きの左半分が文章で、右半分が絵という構成になっています。
本の大きさからいっても、テキストと絵のバランスから見ても、「絵本」にちがいないのだけれど、いつ頃、どの年齢で?と考えていくと、出会う機会に恵まれにくい本(絵本)なのでは、と思ってしまいました。(クラスで読む前に聞いた時、知っている子は誰もいなかったのです)
内容を理解し、不思議さを分かちあえる年になる頃には、あまり絵本を手にしなくなっているし。親が選んで、読んであげる年頃の時にはすこし難しい。自分から手に取り、読んでと言う子どもも中には居ると思いますが、少数派かな。そうなると、これは、大人のための(私が自分の楽しみのために選んできたように)絵本だということになってしまう。でも、それではやっぱり、もったいない。
ん~、じゃあ、いつ頃読んだらいいのでしょうね‥。
私の中の結論は、クリスマスシーズンに『急行「北極号」』を読んであげて、(あるいはさりげなく部屋に置いておき) 「同じ人が書いた、不思議なお話だよ、この本も」と声をかける、という作戦です。どうかしら。