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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

名前のない人

2006-10-13 17:27:49 | ひらきよみ(読み聞かせ)

 今日は、6年生のクラスで、読み聞かせがありました。

 日頃からと思っている「読み・聞かせ」という言葉。6年生だと、さらに違和感が増していくような気がしますが、現状ではその言葉を使うしかないので、しかたありません。
 自分の気持ちの中では(いつもそうですが)、おはなしを一緒に楽しむ・共有するといった感じがしていて‥。で、たまたま読み手に私がなっているだけ、みたいな感覚に近いでしょうか。
 


 前置きはこれぐらいにして、今日読んだ本を紹介します。

   
名前のない人(河出書房新社)
    『名前のない人』
   C・V・オールズバーグ 作
     村上春樹 訳 

 原題は「The Stranger」
 オールズバーグの作品は、作者がその人だと知っただけで、とっても気になります。

 どこかのクラスで読もうとか、娘に読んであげようとか思うよりも前に、このタイトルにとっても惹かれ、自分自身の楽しみのために、図書館で借りてきました。(絵本カレンダーの9月のところに載っていたのです)

 
 
 とても不思議なお話でした。

 オールズバーグ的世界に、たっぷりと浸ることができました。

 自分ひとりで楽しんだ後で、11歳か12歳の子たちは、どんなことを思うかな。「名前のない人」とベイリーさん一家に呼ばれていた、表紙の男の人の存在を、何と位置付けるだろうと思い、ちょうど予定に入っていた6年生で読んでみることにしたのです。


 夏が秋へと変わっていく頃ーお百姓のベイリー
さんは一年の中でもそういう季節が好きだった。
彼は車のハンドルを握りながら口笛を吹いていた。涼し
いそよ風がさっと頬をなでて、窓の外に吹きすぎていっ
た。ちょうどそのとき「どすん」という大きな音がした。
ベイリーさんはあわててブレーキを踏んだ。「こりゃ大
変だ、鹿をはねちまったぞ!」と彼は思った。


こんなふうにベイリー家にやってきた男は、一体なにものなのでしょう。

 ざらっとした不思議な皮の服を着ていて。
 ベイリーさんが何か尋ねても、何を言われているのか全然わからず。
 お医者のはかった体温計の水銀は上がらない。
 温かいスープから立ちのぼる湯気を見て、びっくり。
 兎は逃げずに、ぴょんぴょん跳んで男のほうへやってくる。
 そして、
 干し草集めを手伝っても疲れを感じず、汗さえかかない。

 
 彼は、ほんとに人間なのかなあ。
 人間の姿をしている、森からやってきた動物なのかも。
 それとも‥。



 
 この本は、見開きの左半分が文章で、右半分が絵という構成になっています。
 本の大きさからいっても、テキストと絵のバランスから見ても、「絵本」にちがいないのだけれど、いつ頃、どの年齢で?と考えていくと、出会う機会に恵まれにくい本(絵本)なのでは、と思ってしまいました。(クラスで読む前に聞いた時、知っている子は誰もいなかったのです)

 内容を理解し、不思議さを分かちあえる年になる頃には、あまり絵本を手にしなくなっているし。親が選んで、読んであげる年頃の時にはすこし難しい。自分から手に取り、読んでと言う子どもも中には居ると思いますが、少数派かな。そうなると、これは、大人のための(私が自分の楽しみのために選んできたように)絵本だということになってしまう。でも、それではやっぱり、もったいない。

 ん~、じゃあ、いつ頃読んだらいいのでしょうね‥。

 私の中の結論は、クリスマスシーズンに『急行「北極号」』を読んであげて、(あるいはさりげなく部屋に置いておき) 「同じ人が書いた、不思議なお話だよ、この本も」と声をかける、という作戦です。どうかしら。





   

コメント (12)
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