父親殺しの犯人として逮捕された女子大学生と接見を許された心理療法士のヒロインが、深入りするにつれて自分自身の内部にある被告と共鳴する部分が表に出てくる。
オープニングの厚手のガラスを潜り抜け死体を見つけるカメラワーク(デジタル処理だろうけど)や、面会室のガラスに隔てられた二人の顔がだぶるのを正面から捉えたカットなどさりげなく凝った画が続く導入部は期待させたけれど、困るのは展開が途中から被告のそれからヒロインに移ってしまう、つまり話が脱線する格好になり、その分散漫になってしまうこと。
これに義弟でもあり昔関係があった弁護士と一緒に仕事するうちに焼け木杭に火状態に近くなるが、あくまで今の夫がいい人なものでこれまた話が止まってしまう。
回想で被告とヒロインの過去の体験を画にしていくのは、下手すると後知恵の絵解きになってしまうのだが、現にそうなっている。
核心部分になるのはずいぶんデリケートかつグロテスクな問題で、体験した人になってはそう簡単に克服したり解決したりできることではないのをどうもお手軽に済ませてしまっている印象は拭えない。
音楽が甘くて感動させようとしているのが先立っているのも鼻白む。
北川景子が全カットファッショングラビアから抜け出てきたみたいに綺麗すぎるくらい綺麗なのはいいけれど、映画自体の綺麗事化にも影響している。