長谷川監督は広島の原爆の胎内被爆者なのだが、直接母親が原爆の爆発に立ち会ったのではなくて爆発から数日後に街を歩き回ったくらいで、結局60年経っても監督に別に健康にこれといった異常は出ていないし、その子供にも異常は出ていない。
被爆したからって短期的にはともかく、長期的には健康に影響が出るとは限らない、というより出ない方が普通なのは事実だろう。
「太陽を盗んだ男」公開時に原爆をこういう描き方をするのはけしからんと抗議してきたのがいたが、監督が胎内被曝者と知ってすっこんだという。それまた変な話ですねえ。
話はそれるが、新藤兼人監督が「原爆の子」を作った時、日教組からこちらが作るから作るなと横槍を入れられ、製作を続行すると「あの原爆の子はニセモノです」と妨害されたという。反原爆(今だったら原発も)も政治運動化したら腐敗するみたいです。
とはいえ、原爆症の恐怖から生き急いで30歳で監督デビュー(当時とするとまったく異例)、さらに原爆を作った男という大胆きわまるモチーフの映画まで作ってしまったのだから、必ずしも悪いことではなかったか。
40過ぎて「俺、まだ生きてるじゃん」と思って妙に気が抜けてしまったと語る。仇名が「ゴジ」というのはもちろん「ゴジラ」の略で、酔って暴れた時の破壊っぷりからそう呼ばれたなどと言うが、放射能が作った怪物の名前を戴いたのだからずいぶん皮肉な話。わざとそう名乗ったのかも。
「青春の殺人者」で主人公の6歳の頃を演じているのは監督の実の息子。これは息子の側から見た話ではあるけれど、父親としての立場も入っているかもしれないという。
原田美枝子が当時17歳っていうのにびっくり。定時制に通いながら出演したという。今だったら17歳でオールヌードになったら周囲が大騒ぎだろう。ちなみに聞き役の20過ぎくらいの女優さんたち二人とも別に脱ぐこと自体には抵抗はないと言う。外野がうるさいんだよ。
あさま山荘を安く買えるかもしれないという話があって、まとまりかけた段で相米慎二が「光る女」で大赤字を出したのでぽしゃたという。
それにしても言いだしっぺになった会社で自分だけ映画撮らなかったというのもなんだかなぁと思う。そしてこれだけ長いこと撮らないでいて忘れ去られないというのも、ほとんど不思議。
※ 映画監督・岩井俊二と女優の黒木華、刈谷友衣子が毎月映画人をゲストに招き岩井監督の選んだ映画=「マイリトル映画」についてのフリートークを繰り広げるチャンネル オリジナル番組の第4回。
6月のマイリトル映画は「太陽を盗んだ男」、ゲストは長谷川和彦監督。
今回は特別に6-7月の2ヶ月にわたり「長谷川和彦映画祭」を前後篇でお贈りします!
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