
残されている歴史とは男の戦争の歴史である、といった字幕が最初に出て、では残されていない歴史に想像を広げてみましたという作り。
ヘンリー八世の六人の妻のうちドラマで取り上げられるのは、ヘンリーに斬首刑に処されたのと、のちのエリザベス一世の母親になるので二番目の妻のアン・ブーリン(「1000日のアン」「ブーリン家の姉妹」)が多いと思うが、これは6番目、つまり最後の妻のキャサリン・パーを取り上げている。
困ったのは、脇役でアンという名前のキャラクターが出てきたことで、後で調べたらAnne Askewアン・アスキューというプロテスタントの説教者で作家で詩人だという。実在の、それもかなり重要人物だから仕方ないが、混乱した。
もともとヘンリーがアン・ブーリンと結婚するために離婚を禁じたカソリックから離脱して自ら英国教会の首長の座についたわけで、キャサリン・パーのプロテスタントというのはまた宗派が違っていて、このあたりなじみがないせいもあってどうもややこしい。
会話でプロテスタントの創始者マルティン・ルターの名前がちょっと出てきたりする。
冒頭のタイトルで示されたように、えっ?と思うような展開があるが、案外こんなものだったかもねと思わせる。
キャサリンのアリシア・ヴィキャンデルはジュード・ロウのヘンリーともどももっと臭くなってもよさそうだが、かなり抑え気味の演技。
撮影・美術・衣装もカネかかってますよという感じではない。