吉永小百合がふられ役をやるとは思わなかった。寅さんみたい。
大泉洋が人事部長として社員の首を切らなくてはいけない苦しさから始まって、娘は家に寄りつかない、妻は別居中で姿を現さないのが足先だけの芝居で男がいると暗示するのが優れている。
スカイツリーが遠くにだが随所に現れて、名所というわけではないが、絶えず目に入る。
フラッシュバックで大泉洋の父親(写真でしか出てこない)が作る足袋や、妻のハイヒールが出てくるが、それ以上の姿は出てこない。
吉永小百合と寺尾聰とがおそらく屋形船に乗って隅田川を見て回るのも、二人の姿は見てまわったあとロングショットでしか出てこない。あとは隅田川しか映らない。
短いフラッシュバックは本来長い期間にわたる記憶や体験の代替として使われていて、その延長上に田中泯の語る東京大空襲がある。
こういう演出はあまり山田洋次はしてこなかったから興味深かった。