玉山鉄二扮する「赤いハゲタカ」のバックにいる中国の国家マネーが日本企業を買収した上でそのおいしいところ(技術力)を中国本土の発展のためにしゃぶりつくそうとする、という何かと中韓寄りだと批判されるNHK発のドラマにも関わらず、あるいはだからこそなのか、テレビではちょっとできないストーリー。
冒頭リゾート地でだらっとしていた大森南朋が、スーツに着替えて独特のメタルフレームのメガネをかけるあたりは戦闘服に装備を改めている感じで、同じスーツでも旧式のサラリーマンの制服としてのスーツとは見え方がまるで違う。
資本主義原理だけではなぜいけないか、という問いに対する答えが「ものつくり」自体が持つ夢や希望の大切さというだけでは物足りない。それとこれとは話が別だろう。儲け至上主義が暴走して破綻した現在、もっと合理的な反論、原理そのものが持つ本質的な矛盾を指摘する批判が欲しいと思う。ないものねだりとは思えない。
遠藤憲一扮する自動車会社社長の、結局自分でそれと気づかないで保身に走る視野の狭さ、判断を人任せにしてしまうだらしなさ、つまりは「自分」を持たないままのエゴイズムというのは、ある種今の日本の「支配」層の甘さの典型と見える。
赤いハゲタカの正体は、とりあえず孩黒子(ヘイハイツ、一人っ子政策下の中国の貧しい農村地帯などでは、後継ぎとなりうる長男以外は罰金を取られるので、たとえ生まれても戸籍に登録していない人間)、なのだろうが、それ以上の、彼が何を夢み、何をエネルギーにしてしてのし上がってきたのかは暗示にとどめた作り。
「日本は生ぬるい地獄だ」というセリフは、利用される派遣工の扱いなどを見ると
日本では貧しい者も生ぬるいと聞こえる。
もとのテレビドラマを見たとき、モヤがかかったような光の使い方や不安定なフレーム、濁りの入った色彩など篠田昇ばりのカメラワークだなと思った。
影響があったのかどうかわからないが、テレビフレームらしからぬ、スクリーン的な画作りをしていた印象だったが、この劇場版ではスコープサイズになったにも関わらず、そういったいかにもな画作りは抑えられ、ストーリーテリングの方が先行している感じ。その方が見ていて疲れないだろうが。
(☆☆☆★★)
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