prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「椿三十郎」の考証

2005年04月12日 | 重箱の隅
江戸時代、花がぽとりと落ちるのが首を打ち落とされるようで不吉と、武家屋敷には決して椿を植えなかった。侍の多い江戸では魚をさばく時に切腹を連想させるからと腹から切らず背開きにしたり、葵の御紋に切り口が似ているからときゅうりを食べなかったというのと似たしきたり。
ところで「椿三十郎」の椿屋敷には庭いっぱいに何百ともつかない数の椿が咲いている。つまりまるっきりの作り物、ホラ話として作っているということ。ラストの血の噴射だってまるっきり噴水みたいですからね。ところがこれが“リアル”と間違えられて、下手な水芸みたいな血の噴射が流行った(今でもやってる)のだから困ったもの。



長谷川伸と寅さん

2005年03月25日 | 重箱の隅
「男はつらいよ 寅次郎物語」で、寅が物陰に隠れてマドンナをやりすごす大詰めの場面って、長谷川伸の「関の弥太っぺ」のクライマックスがもとじゃないんですか。「続・男はつらいよ」は長谷川伸の「瞼の母」のパロディだったのだし。



マークス=マルクス?

2005年03月23日 | 重箱の隅
「マークスの山」で凶器になるのはアイスハーケンだが、ロシア革命の時権力闘争に破れてキューバに亡命したトロツキーがスターリンの指令で暗殺された時の凶器がアイスピッケル。形はまるで違うが、冬山登山に使うものには違いない。同作は昔の左翼の内ゲバが事件の発端になっているわけで、とすると、マークスはマルクスにかけているのか?

マークスの山

アミューズソフトエンタテインメント

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ナンバ

2005年03月22日 | 重箱の隅
「切腹」で侍たちが歩く時、手を振らないでぐっと拳を握って歩いているのに感心。相撲と一緒で右手と右足を同時に出すか、動かさないかが武芸をやっている人間の習慣。右手と右足、左手と左足を同時に出す。いわゆるナンバ走りというのは日本以外ではアイヌくらいしか見られないらしい。
。伊福部昭・東京音楽大学学長のお話によると、エイゼンシュタインが「イワン雷帝」を撮った時、日本の歌舞伎を演技術にとりいれて、こんな動きがあるかとヨーロッパの批評家に言われたとか。
大河内伝次郎など昔の時代劇スターはなんば走りをしていることが多い。頭がぶれないので、顔がよく見えるという利点もある。

黒澤作品のネタいろいろ

2005年03月17日 | 重箱の隅
江戸時代、花がぽとりと落ちるのが首を打ち落とされるようで不吉と、武家屋敷には決して椿を植えなかった。
ところで「椿三十郎」の椿屋敷には庭いっぱいに何百ともつかない数の椿が咲いている。つまりまるっきりの作り物、ホラ話として作っているということ。ラストの血の噴射だってまるっきり噴水みたいですからね。

「七人の侍」で、勘兵衛(志村喬)が人質をとった泥棒に握り飯を投げて油断したところを斬ったのは、上泉伊勢守(新陰流の始祖)がやったとされること。他にも戸袋に隠れた敵を見破るとかずいぶんと剣豪伝のエピソードの類を使っている。

「酔いどれ天使」のラストのペンキまみれの格闘は近松門左衛門の「女殺油地獄」のクライマックスの油まみれの殺し場がもとだろう。


椿三十郎

東宝

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七人の侍

東宝

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酔いどれ天使

東宝

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黒澤明と金へんの漢字

2005年03月14日 | 重箱の隅
黒澤明の「天国と地獄」の三船敏郎の役名は権藤金吾、山崎努のは竹内銀次郎。つまり“金”と“銀”の対照になっている。「八月の狂詩曲」のおばあちゃんの兄弟は釘之助とか鉈吉とか全部、金へんがつく名前という設定(これは原作にはない)。

で、NHKの「影武者」のメイキング番組で黒澤が話していたことだが、黒澤の父親の名前はふつう“勇”とされているが、なんでも改名前は“キンゴ”といったそうだ(なぜ改名したか、どういう字を書いたかは不明)。無関係とはちょっと思えない。

「白痴」の原作でナスターシャにあたる名前が那須妙子(なすたえこ)。アグラーヤにあたるのが綾子。ちょっと恥ずかしいネーミング。なお、ムイシュキンにあたるのは亀田欽吉と、また金へんがついている。



天国と地獄

東宝

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影武者

東宝

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八月の狂詩曲(ラプソディー)

松竹

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白痴

松竹

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部分的映画化

2005年03月12日 | 重箱の隅
ドストエフスキーの「悪霊」の(正確に言うと完成作品からカットされた)「スタヴローギンの告白」の章を読んで、スタヴローギンが少女を犯して自殺に追い込むという内容が、まるっきりルキノ・ヴィスコンティの「地獄に落ちた勇者ども」のマルチン(ヘルムート・バーガー)がユダヤ人の少女にするのと同じなので驚いたことがある。

あと「家族の肖像」のラスト近く、2階にいる住人の足音がよく聞こえてくるようになってくると“死”が近付いてくる、というエピソードはヴィスコンティが終生映画化を望んだマルセル・プルーストの「失われた時を求めて」の一節だといいます。読んだんですけどね(ホント)よく覚えてない。

黒澤の「赤ひげ」の後半は、完全にやはりドストエフスキーの「虐げられた人々」そのまんま。虐待されていた少女が優しく扱われるのを信じられず乞食をしてまで稼いで借りを返そうとする場面もそっくりある。もっともこのドストエフスキー作品も、もとはディケンズ。少女の名前を元のネリに対してネリーとしているくらいで。



地獄に堕ちた勇者ども

ワーナー・ホーム・ビデオ

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ルキーノ・ヴィスコンティ DVD-BOX 3枚組 ( 揺れる大地 / 夏の嵐 / 家族の肖像 )

紀伊國屋書店

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赤ひげ

東宝

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悪霊 (下巻)

新潮社

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失われた時を求めて 全10巻セット

筑摩書房

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虐げられた人びと

新潮社

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字幕の規則

2005年03月10日 | 重箱の隅
CMで映画の字幕風の字体を使うことがあるけれど、どういうわけかほとんど必ず違うところがある。句読点(、や。)を使うことです。
実際の映画の字幕では句読点は使わない。文字を打ち抜いて穴をあける(そうでないやり方もある)ので、丸く囲ってしまうと中が全部抜け落ちてしまうからだ。

しかし、CMでは平気で使っている。知らないのか、使わなくてはいけない規則でもあるのか。
CMって妙な規則があるからわからない。たとえばオロナインCみたいな“医薬用外品”だと口をつけて飲んでいるところを見せてもいいけど、同じドリンク剤でも“医薬品”扱いだと飲んでいるところを見せてはいけない、とか。
そのくせ酒やサラ金の広告は山程やってるんですけどね。



シンクロニシティ?

2005年03月09日 | 重箱の隅
アイルランド映画「白馬の伝説」の題名のもとになっている伝説というのは、妖精の国に行った男がどうしても故郷に帰りたくて頼み込んで帰るのを許され、その時白馬を送られてそれから降りてはいけないと言われるが、いざ帰るとどうしても地面を踏みしめたくなって白馬から降りるとあっという間に年とってしまうというもの。
どこかで聞いたことのある話ですね。

ユングはこういう同じような話のパターンがまったく違う文化圏に渡って見られるところから、“集合的無意識”という概念を考えたそう。
ちなみに相対性理論でいうところのウラシマ効果を、西洋ではリップ・ヴァン・ウィンクル効果っていうそうだけど、こちらは寝ている間に長い時間が過ぎてしまうというお話。



白馬の伝説(ワイドスクリーン・バージョン)

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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「シャドー・メーカーズ」 題名の影

2005年03月08日 | 重箱の隅
シャドー・メーカーズ(字幕スーパー版)

CICビクター・ビデオ

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ビデオ題名は「シャドー・メーカーズ」だが、原題は「ファットマン・アンド・リトルボーイ」。ポール・ニューマン主演の日本劇場未公開作。ファットマンとリトルボーイとは、それぞれ長崎と広島に落とされた原爆のコードネームのこと。

デブとチビとはふざけた名前だと思ってたが、その由来というと、かなり物騒。
同じ原爆とはいっても使っているのはそれぞれプルトニウムとウラン235と別物で、ウランの方はすでに実験も成功していたが、当時の技術では一発分の分量を集めるのがやっと、プルトニウムは量は集めやすいが実験する暇もなくしかも爆弾の図体が大きくて爆撃機に積めるぎりぎりの大きさだった。
あまりに大きかったため通常の方法では搭載する事が出来ず、穴を掘って爆弾を埋め、その上をB-29にまたがらせた上で原爆を吊り上げたくらい。だから後者をファットマンといい、それとの対照で前者はリトルボーイといった。

長崎の方は落とす場所もちゃんと決まっておらず、小倉にする予定もあったのが、出たとこ勝負で主に天候で決めたわけだし、つまり一発で済むのをやたらと急いで二種類の爆弾が使われた。なぜかって? そりゃあ、戦後処理用に核兵器のデータをとるためですよ。
それぞれの被害の様相を、占領軍は当時貴重だったカラーフィルムを使って記録しているのもその現れ。露骨に言えば、日本人で人体実験したってわけ。

ちなみにその記録班に「姿三四郎」「人情紙風船」「ハワイ・マレー沖海戦」のカメラマン、三村明がいた。カメラマンとしての腕とともに、アメリカで「市民ケーン」のグレッグ・トーランドの助手をつとめたりして英語が話せたから。




「スティング」とポール・ニューマンのH好き

2005年03月06日 | 重箱の隅
スティング

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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1930年代の大不況時代のアメリカのコン=マンにチャールズ・ゴンドルフという人がいた。コン=マンというのは「スティング」のポール・ニューマンやロバート・レッドフォードのようなスマートな詐欺師のこと。
で、「スティング」のニューマンの役名はヘンリー・ゴンドルフ。「ハスラー」とか「ハッド」の成功にあやかってか、ニューマンはHのイニシャルを好む性癖がある。「動く標的」では原作の主人公の名前リュー・アーチャーをルー・ハーパーに変えたくらいで、これもその伝のうちだろう。

なお、詳しくはこちら↓ 
この写真ではわからないが、帯に「スティング」のネタ本とあった。実際、あそこで使われた手口の大半は実際に使われたものであることがわかる。

詐欺師入門―騙しの天才たち その華麗なる手口

光文社

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ポチョムキン

2005年03月05日 | 重箱の隅
ロシア革命時の戦艦の船員の叛乱と勝利を扱った旧ソ連映画「戦艦ポチョムキン」は長いこと映画史上の最高傑作の地位をほしいままにしていたのだが、ソ連崩壊後のロシアではてんで不人気だという。ポチョムキン、というのはエカテリーナ女王が領地に視察にまわってきた時、食糧や衣服などごく貴重な贅沢なものを集めて、映画のセットまがいに村人が豊かな暮らしをしているかのように見せかけ(北朝鮮かよ ! )御機嫌を取結んだ公爵の名前。
別に映画がハリボテとは言いませんけど(と、いうか勧善懲悪のアクションものとして無類に面白い)、なんだかなあ。




戦艦ポチョムキン

アイ・ヴィー・シー

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「カサブランカ」とヴィシー

2005年03月05日 | 重箱の隅
「カサブランカ」のラストで、クロード・レインズの警察署長が手にしていたガラス瓶をクズ籠に放り込み、その瓶をわざわざアップで撮っているシーンがあって、なんであんな風に強調していたのだろうと不思議だったのだが、あの瓶はヴィシー産のミネラルウォーターで、当時のドイツ占領下フランスで親ナチスだったヴィシー政権にひっかけて揶揄していたというわけ。
なお、ミネラルウォーターの方のヴィシーは肝臓にいいと言われ、飲み過ぎ食べ過ぎの時によく飲むらしい。あの署長、美食家なのかな。



カサブランカ 特別版

ワーナー・ホーム・ビデオ

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「いまを生きる」の複数の結末

2005年03月04日 | 重箱の隅
ネットで「いまを生きる」(原題“Dead Poets' Society”)の英語シナリオを検索してみると、クライマックスが生徒の一人が学園祭で自作の詩を朗読する場面になっているのにびっくりした。そういえばまた聞きだが、先生が白血病で死ぬという案もあったという。いま実際ある映画のラストが一番いいな。



いまを生きる

ブエナビスタ・ホームエンターテイメント

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CMに見る映画字幕風の字体

2005年03月03日 | 重箱の隅
CMで映画の字幕文字風の書き文字の字体を使うことがあるけれど、どういうわけかほとんど必ず間違うところがある。句読点「、」や「。」を使うことです。

実際の映画の字幕では句読点は使わないが、CMでは平気で使っている。知らないのか、使わなくてはいけない規則でもあるのか。

CMって妙な規則があるからわからない。たとえばオロナインCみたいな“医薬用外品”だと口をつけて飲んでいるところを見せてもいいけど、同じドリンク剤でも“医薬品”扱いだと飲んでいるところを見せてはいけない、とか。
そのくせ酒やサラ金の広告は山程やってるんですけどね。
そろそろ煙草のCMは、全面禁止になります。