技能実習生という名目で日本で働いている外国人労働者の搾取を描く映画だが、社会問題として大上段から描くのではなく、重心を低くしてセミドキュメンタリータッチの周到なリアリズムが先行している。
三人のベトナム人女性がまともに賃金を払わない会社から逃げ出し次の働き場に移るが、パスポートや許可証が前のところに預けっぱなしになっているので医者にかかりたくてもかかれないなど、制度上の欠陥がリアルな描写から自然に見えてくる。
制度から外れた目から見た外国としての日本の姿を見るというあまり例のない体験になった。北国の雪景色の寒々とした映像がそのまま心象風景になっているよう。
出てくる日本人が、ほぼ働きが悪いと怒鳴ってばかりの非人間的なのばかりなのが滅入る。
上映後のトークショーの藤元明緒監督の言によると、シナリオは全体の流れを決めただけで、各シーンのセリフはベトナム人出演者と相談して決めていったとのこと。役名と役者名とが同じになっている。
ラストシーンも初め書いたのとはまるで違ったものになったらしい。
音楽を使わないのは、初めから決めていたとのこと。
今のカメラの性能だと、住み込みの寝所の暗さでもかなり鮮明に写る。
ラストのスープみたいなものを啜り飲み干すまでの長いカットで、湯気がはっきり写っているのが生命感の表現になっていた。
三人の主役のベトナム女性たちがみんな綺麗だと思ったら、全員素人ではなく女優さんだとのこと。でしょうね。
当然ではあるけれど、肉体労働の場面では女性の腕力でやるような仕事でないのも実際にやっていて、キツさがかなり伝わる。
トークショーでベトナムからzoom参加していたが、そういえばベトナムはコロナにかなりよく対応していたのだったなと思った。
ポレポレ東中野は雨の中だったにも関わらず一つおきの席ながらかなり埋まっていた。
終了後のフォトセッションにて。左下のシルエットが監督。右上が
ホアン・フォン Phuong Hoang さん(たぶん)。