prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ハウスメイド」

2011年09月30日 | 映画
韓国らしいどろどろしたドラマと優雅な調度品、音楽(ベートーベンほか)との混交。オリジナルの「下女」というタイトルの方がぴったりくる。

女ばかりの登場人物の中で男は一人だけだが、負けず劣らずしぶとく傲岸で性欲むんむんで十分対抗している。
小さな女の子も微妙に怖い。

今の韓国の階級社会というのがどれくらいのものか知らないが、相当に激しい断絶があるように思う。金持ち一家は韓国料理はまるで食べないで西洋料理とワイン。ステレオは真空管というのが金持ちっぽい。
上流階級も下層階級もそれぞれ腐敗していて、階級制度自体が腐敗の温床という感じ。

だけど、オープニングの自殺騒ぎ、結局本筋と関係ないのね。
ラストもショッキングなわりに意味がよくわからない。
(☆☆☆★)

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「どぶ」

2011年09月29日 | 映画
白塗りの乙羽信子は道化のメイクというべきだろう。「道」のジュリエッタ・マシーナをいやでも思わせるわけだが、作られたのは1954年で「道」と同じ。シンクロニシティというか。

新藤兼人の、リアリズムだけにとどまらない一種のデフォルメ志向がこの頃からはっきり現れている。
推測だけれど、監督になる前、シナリオライターとしてやっていた以前は水谷浩のもとで美術部に所属していて、画も描けるというのが関係している気がする。「鬼婆」の頃など綿密な絵コンテを用意していた。もちろん例外はあるが、画を描ける監督はデフォルメに寄ることが多い。

工場の組合活動と資本家の対立が割とがっちり描かれ(組合がまだそれほど御用組合化していない)、そこからはみ出た連中という点で、ルンペン・プロレタリアというほぼ死語になった言葉がふさわしい。
宇野重吉がヒロインをだますのに学生だから金が必要だとわざわざ向上心をうたうのも、学生運動前という印象が強い。

信欽三扮する元役者は、明らかにゴーリキーの「どん底」から来ている。
居酒屋のシーンでワンカット大滝秀治らしき顔が写る。
(☆☆☆★★)



「シャンハイ」

2011年09月28日 | 映画
真珠湾攻撃二ヶ月前の話なので、日本の扱いは愉快なものではない。渡辺謙の発言力のせいか、型通りの悪役ではないのが救い。
登場人物同士の人間関係の綾みたいなものは希薄。

回想形式が中途半端。長くなりすぎたのを縮める方便かと憶測する。
当時の上海を今の上海で撮れるわけがないので、どこで撮ったのかと思ったらタイ。

ストーリーの語り手になるアメリカ人のジョン・キューザックが、濃ゆい東洋人キャストに囲まれると一番ひょろっとして植物的というバランスがおもしろい。

チョウ・ユンファが拳銃を構えると、二挺拳銃にならないかなと期待してしまう。
(☆☆☆)

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「未来を生きる君たちへ」

2011年09月27日 | 映画
デンマーク映画にはカンヌでパルム・ドールを二度受賞しているビレ・アウグストという先輩格の監督がいるが、その人の初期作品の「子供たちの城」とも共通する独特の泥臭さと残酷さがある。わずかな鑑賞本数でいうことはできないが、サイレント映画時代のカール・テオドア・ドライエルあたりから共通している体質を感じる。

ラース・フォン・トリアーの「ホスピタル」に、スウェーデン人嫌いの医者というキャラクターが出てきたが、ここでも何かと言うとスウェーデンの悪口を言う人間が現れる。日本と隣国とでも、ここまであからさまに悪口を言うのは少ないのではないかと思うくらい。
身近で仲がこじれている、というモチーフが家庭内の不和や学校のいじめから国の間にまで、ミクロからマクロにまで変奏されているのがユニークなところ。

なんでもないようないじめでも報復を恐れだすと歯車がかたりかたりと動いていくように否応なく暴力がエスカレートしていく展開がこわい。被害者になるのも加害者になるのも子供、というのが厳しい。
暴力に対して決してやり返さない父親の態度は立派ではあっても、燻り続ける感情を消すことはできないのがリアル。
(☆☆☆★★★)

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「チョコレート・ファイター」

2011年09月26日 | 映画
女の子が大の男をばたばた倒していくというのが見せ場なのだけれど、スピードやしなやかさに感心する一方でどうしてもパワー不足な印象が強く、これで一撃必殺というわけにいくのかなと疑問を感じる。実際にできるできないの問題ではなく、見た目の説得力の問題。
関節を極めたり急所を狙ったり敵同士を同士討ちさせたりといった工夫がないと、かなり嘘っぽい。

ヒロインの母親が貸した金を返さないヤクザ連中をとっちめて取り返すのが主で、金を借りたのではなく貸したというのが妙な感じ。

クライマックス、阿部寛が出てきて日本刀をぶんまわして暴れるが、わりとすぐ引っ込んでしまう。
(☆☆☆★)

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「ツリー・オブ・ライフ」(二回目)

2011年09月24日 | 映画
最初見たときには正直いささか当惑して、しかしわからないなりに何かひっかかるものがあったので、最近では珍しく劇場に二度見に行った。

一回目に見た時の文章とだぶるところも矛盾するところもあるが、二回目に見たのは「別のもの」だから調整をはかることはしなかった。

当惑した理由を考えてみると、要するにどんな視点でみればいいのかわからなかったからで、「2001年宇宙の旅」で省略されている人間たちの部分をメインにしたようなもの、と考えると、一般的な評価の低さ・わけがわからないといった不満も共通のものと思える。
「これを一回で理解されたら、われわれの目的は失敗したことになる」というのはキューブリックの言葉。

マリックの作品のひとつの共通点に水の描写がある。
「天国の日々」で夜にリチャード・ギアとブルック・アダムスの主人公二人が逢引するシーン、川の中に入ってワインを飲みながら歩き回るのだが、その投げ捨てたワイングラスがすでに水底にあって登場人物たちには見えなくなっているのに、一匹の魚がそばを泳ぎすぎる。
そしてギアが射殺された刹那、川に倒れこんだ顔を水底からのアングルで見上げて捉え、水底にある普遍的命=アニマの視点、を示す。

そして「シン・レッド・ライン」の水棲生物たちの描写。
「ニューワールド」も水の中のアメリカ先住民たちの描写から始まり、新しく大陸にやってきたキリスト教徒のイギリス人たちを迎える。

「ツリー・オブ・ライフ」では自然の大瀑布が、ショーン・ペンが手に当てる水の先に、まぎれもなくつながっている。

「天国の日々」のイナゴの襲来や、「ツリー…」の聖書のヨブ記のエピグラフなど、明らかにキリスト教的モチーフが強い一方、自然描写において人間が自然を見ているのではなく、自然の中のあるものがこちらを見ている、というニュアンスがある。
たとえば最近の自然ドキュメンタリーの大方は、あくまで人間が見た、人間の生存に必要だから保護すべき自然として、ニューワールドのイギリス人の子孫によって作られたものと言える。

そうするとここでの水から上がってきた恐竜たちのCGや、ナショナル・ジオグラフィック的に壮大な、「神」の視点的映像はやはり違和感を残す。「2001年」ではモノリスという抽象化された形で「神」を対象化したが、そういう操作はこれといってなされているとは思えなかった。

あとマリックの作品で特徴的なのは誰に向かって投げかけられているのかわからないナレーションで、聖書のヨハネによる福音書の冒頭「はじめに言葉ありき。言葉は神とともにあり、言葉は神なりき」というくだりと並べたくなる。

冒頭にやはり聖書の「ヨブ記」からのエピグラフが掲げられるが、これはもっとも信仰厚く勤勉篤実な男ヨブを、本当に神に忠実なのかわかったものではないと主張する悪魔と論争になった神が、ヨブを試すために彼のすべての財産と家族を奪い皮膚病で全身を覆うという理不尽で残酷な物語で、カーク・ダグラスは自伝で子供のとき怖くて仕方がなかったと語っている。
その神はおそらくこの映画の父の似姿なのだろう。

わからないから何度も見る、ということを長らくしなかったが、これもそうなるかもしれない。

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邦画を彩った女優たち「岸恵子 わたしのままに」

2011年09月23日 | 映画
岸恵子・久我美子・有馬稲子の三人で立ち上げたプロダクション「にんじんくらぶ」の名前をつかまえて小津安二郎が松竹はいつから八百屋になったんだ、ダイコンとかにんじんとか、と揶揄していたとのこと。もっとも後に「大根と人参」というタイトルのシナリオを書いている(小津の死後、渋谷実監督によって映画化)のだが。

チャンネル:BSプレミアム
放送日: 2011年4月20日(水)
放送時間:午後8:00~午後9:00(60分)
ジャンル:ドキュメンタリー/教養 > ドキュメンタリー全般
映画 > 邦画
情報/ワイドショー > 芸能・ワイドショー

番組HP: -

番組内容
戦後日本映画、空前の大ヒット作「君の名は」の主演女優・岸恵子。しかし彼女は素顔の自分と対極にある役に悩み続ける。そのジレンマと闘い続けた岸恵子の女優人生に迫る。

詳細
日本映画黄金期に空前の大ヒットとなった「君の名は」。ヒロイン・真知子役を演じた女優・岸恵子は、一躍時代のトップスターとなるが、素顔の自分と対極にある役を演じることに悩み続けた。ジレンマのなか、木下恵介監督の「女の園」に主演し、ようやく自分らしい演技に手ごたえをつかむ。以後、「早春」「雪国」「おとうと」と、日本映画史に残る作品に次々と主演する。番組では、岸自らが女優人生を語る。

出演者ほか
岸恵子, 【語り】濱中博久

瀬川昌治 三本立て in したまちコメディ映画祭

2011年09月22日 | 映画
『乾杯!ごきげん野郎』

ワンシーンごとにツイスト(ひねり)があってきちっと90分前後で終わる話術に感心する。脚本は井出雅人。
音楽界の描き方や曲調はさすがに古さを感じるが、音楽処理自体は流麗なもの。

『喜劇 競馬必勝法』

会場の浅草中映は、馬券売り場のちょうど向かい側なのだから妙なリアリティがある。
浅草はずいぶん久しぶりだが、人出が増えたね。花やしきも入り口部分を改装していた。

『喜劇 逆転旅行』

「寅さん」第一作と同じ年、どころか掛け持ちで撮ったという倍賞千恵子がアメリカのコメディ映画に出てきそうな男を振り回す女性の役でサマになっているのにびっくり。しかもごていねいにも役名が同じさくら。
渥美清が車寅次郎だけでないように、倍賞千恵子も諏訪(旧姓車)さくらだけではないのだね。

瀬川監督が来場。身なりのいいダンディでトークショーでの受け答えも頭の回転の早いところを見せる。
今でも若い人たちを教えて、脚本も書いているらしい。

9月19日鑑賞。

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「ハンナ」

2011年09月12日 | 映画
シアーシャ・ローハンが成長したぶん顔の長さが目立ってきて、「つぐない」で年取ってからの姿を演じたバネッサ・レッドグレーブ系の容姿になるのかなと思わせる。

女の子が大の男を相手取るアクション・シーンでの関節技や急所を狙う格闘術が、素人目には説得力あり。

オープニングの氷原から一転してモロッコ、そこからスペインと辿るルートのロケーションのリアリズムから、クライマックスの「グリムの家」で急にファンタジー色が強くなるタッチの変転がおもしろい。
ベッドの下に隠れてケイト・ブランシェットの歩きまわる足だけアップで見せるあたりは完全に「魔女」の図になる。
(☆☆☆★)

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「ライフ ―いのちをつなぐ物語」

2011年09月11日 | 映画
製作費35億。これだけかけられるのは回収できる目処がつく、つまりエコが商売になる、ということ。

小学生の時は自然ドキュメンタリーが単純に好きでよく見ていたが、こう作りが大がかりで撮影技術のレベルの高さを競うようになると、かえって人工性が入ってきていったん資本主義と消費生活を達成した先進国の贅沢品って気がしてくる。いささかひねくれた見方かもしれないが。
技術が向上してスペクタキュラーになったわりに、まったく見たことのない光景は意外と少ない。

イルカや鯨が出てくるとどうしても身構えるが、イルカは小魚を巻網漁法みたいに囲い込んで逃げるところをほいほい口でキャッチするシーンだし、鯨はメスが大勢のオスたちを引き連れてその中から一頭を選ぶ光景で、別に日本を攻撃していると思しきところはなし。

松本幸四郎・松たか子の親子がナレーションを担当しているのは、命の連鎖を強調した作りに合わせてのことだろうが、若干説教くさい。
(☆☆☆)

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「その壁を砕け」

2011年09月10日 | 映画
車でえんえんと熊谷から新潟まで走っていくあたりの1959年の日本の風景が、製作当時では想像できなかったような面白さを持つ。
貧しい青年が何年もかけて金をためて新車を買って長いこと遠距離恋愛を続けてきた恋人を迎えにいって結婚する予定というあたり、時代色ありあり。

冤罪ものなのだが、モデルになる事件があったのかどうか、あまりに杜撰な状況で無実の罪がかぶされるのでどうも乗れない。ばあさんの記憶がそんなにあてになるものかどうか、いくら昔のこととはいえ少しは疑わないのだろうか。
わざわざ現場で事件当時の状況を四つまでさまざまな条件で再現してみせるのだが、もとの状況が作ったものだからどうにもまわりくどく見えて困る。

冤罪をかけられた青年と冤罪のもとになったといっていい長門裕之の警官とが握手して終わりっていうのも妙な感じ。

姫田真佐久の撮影・伊福部昭の音楽が重厚。
監督 中平康 脚本 新藤兼人。
(☆☆☆)

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「ゴーストライター」

2011年09月09日 | 映画
満席で前から二番目という結構すごい席で見る羽目になる。

冒頭ざあざあ降っている雨がその場の暗鬱な効果を出しているだけでなく、その後も雨が降り出すと不吉な予感をもたらしたり、前任者のゴーストライターの携帯やカーナビといったアイテムをたどっていくうちにその運命もなぞっていくように思えてくるあたりの暗示機能を生かした、ポランスキーのお手の物といった演出。

クライマックスの紙の上のばらばらに見えた文字がどんどん連なっていって意味を作っていき、さらに人の手から手へ紙が送られていくあたりの、一見映画的に見えない文字や紙がどんどん映画として立ち上がっていくあたりのスリル。

ユアン・マクレガーが冒頭からしきりと強い酒をひんぱんに飲んでしかも酔ったようすを見せないが、マクレガーが実生活でアルコール依存に悩まされた時期があり今やめていることを知っていて見ると何やら意味深。
いくら飲んでも酔えない焦燥感も出ている。
対する元首相役のピアース・ブロスナンが自家用ジェットの中でべろべろになっているのが対照的。

事件の真相そのものよりそこに至るプロセスの文体・タッチを楽しむ感じ。
(☆☆☆★★)

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「チャイナタウン」

2011年09月08日 | 映画
私立探偵が主人公のハードボイルド物のものすごく手のかかった祖述。本物より本物らしいくらい。
ポランスキーという人は故郷をなくしている分、環境に自分を合わせることも環境の方を合わせるのにも長けているみたい。

1974年の映画というと、「スター・ウォーズ」のわずか3年前なのだね。当時はこういう懐古趣味の映画がしきりと作られていたものだが(ルーカスの「アメリカン・グラフィティ」が73年)、というか、SWも初めは昔ながらの勧善懲悪ものだと思われていたのだった。ああいうややこしい話になるとは思わずに。

フェイ・ダナウェイ当時33歳。この2年後にオスカーを獲得する(「ネットワーク」)が、あとどうも妙な顔になってきた。ここでは思い切って眉を細く描いて昔のニュアンスを出している。なんでも、ポランスキー自身の母親がああいうメイクをしていたとか。

ゴールドスミスの音楽はタイトルミュージックはいかにもけだるい雰囲気を出して、シーンの変わり目でメリハリを出すのには現代音楽の書法を使っているように思う。作曲から録音までわずか10日というのは信じられない出来。

かなりマジック・アワー狙いの撮影(DPはジョン・A・アロンゾ)が多いのに気づく。
余談だが、ときどきマジック・アワーは「天国の日々」が最初って間違えて記述されていることがあるけれど、あれだけ大々的に使われたのが最初なので、白黒時代からやってることだし、カラーでも「暗殺のオペラ」(1970 DPはヴィットリオ・ストラーロ)で使われている。インド映画「黄昏」(1981 監督アラヴィンダン 撮影シャージ)ではタイトル通り最初から最後まで黄昏時に撮っていた。

ポランスキーが手下の大男に押さえつけさせておいてジャック・ニコルソンの鼻を切るシーン、ポーランド時代の短編「タンスと二人の男」に良く似たシーン(ナイフは使わず殴るだけだが)がある。なんか体が小さいところにコンプレックスでも持っているのかと思わせる。

庭師や召使が東洋人だらけ(庭師役はジェリー・フジカワという日系人)、というのは1930年代の考証なのだろうが、それがどうタイトルのチャイナタウンに結びつくのかどうもよくわからない。オリジナル・シナリオではチャイナタウンが出てくるシーンすらないという。
というか、もともと話がよくわからないというか、一番の悪(わざわざハードボイルドの代表作「マルタの鷹」の監督であるジョン・ヒューストンを起用しているあたりもひねっている)が一向に滅びないばかりか逆に栄えるというニュアンスもなしに終わってしまうあたり、意識的にだろうけれどおよそすっきりしない。謎解きそのものより文体を味わう作り。

続編「黄昏のチャイナタウン」が作られているが、ロバート・タウンの元の構想だと三部作だったそうな。

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「新宿アウトロー ぶっ飛ばせ」

2011年09月07日 | 映画
渡哲也と原田芳雄という、映画会社がスターを育てるシステムが辛うじて残っていた時期と崩壊したころの僅かな境目を挟んだ立ち位置の違いを感じる。年齢は原田芳雄の方がひとつ年上なのだが。

内容もプログラム・ピクチャーとニューシネマを水と油のままよく混ぜないで出してきたみたい。

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「黄色い星の子供たち」

2011年09月06日 | 映画
フランスにもホロコーストに協力した者が大勢いた、というのはフランス人にはショッキングかしれないが、正直当たり前ではないかと思う。
ユダヤ人排斥の現れとしてはナチスに先行してドレフュス事件があったのだし、シオニズムの祖であるヘルツェルはあれでユダヤ人が同化して生きる道に見切りをつけたという。

とはいえ、子供たちが親と引き離され、結局収容所行きの列車に乗せられる光景は痛ましく、隣の初老の女性客は中盤から泣きっばなし。

社会主義よりナチス(ナチスとは国家社会主義ドイツ労働者党の略ではあるけれど)の方がまし、と考えるといったフランスの為政者の政治的な判断が大勢の人々を翻弄しているのに、まったくそういう実感を互いに持たない。

ヒットラーが自分をかたどったチョコレートの人形の首をもぎとって自分で食べてしまう象徴的な表現が印象的。
(☆☆☆★★)

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