エンドタイトルに音楽担当のクレジットがない。 全編にわたってヒロインの弟が弾く ギターぐらいしか音楽が全く流れず、 BGM はゼロ。
ヒロインが 聴覚障害者と言う 設定が合わせたともいえるだろう。 全く口をきけないわけではなくわずかにはいと言ったりとか 叫んだりはするのだが意味のあるセリフは全くと言っていいぐらいない。
ほとんどサイレント映画と思えるような映画的に純粋な表現に迫ってるところすらある 。
人の言うことが聞こえないのだから はたからみると 文字通り聞く耳を持たない意固地な態度のように見えることがある。
見えるだけでなく、そういうところも確実にあるのだろう。
岸井よしのがボクサーになりきる肉体的訓練のみならず、さまざまな感情を、それも表に出さない感情を言葉に頼らず肉体化しきっている好演。
三浦友和がすこぶる いい感じに 煤けていて、こういうとなんだが、山口百恵と結婚した当時はこれだけ味のあるいい役者になるとはおよそ思わなかった。
16mmフィルムで撮ったというが、明るすぎないどこか沈んだようなトーンが出ている。映像の情報量勝負とは別の表現を向いているよう。