「トゥモロー・ワールド」で採用された複数のカットをつなぎ目なしにつなげて見せるソフトウェアや、「エルミタージュ幻想」で正真正銘90分ワンカットを実現したデジタルカメラの登場などのデジタル技術の発達により、今では映画の長まわしといってもあまり騒がれなくなった気がする。映像に写っているものが現実に存在するものをまるで保障しなくなったということでもある。
しかしアンゲロプロスや相米慎二が人気を博した(というべきか)20年くらい前は、日本未公開だったにも関わらずその長まわしゆえにときどき言及されたのが、全部で35カットで構成されたという、このイエジー・スコリモフスキ監督の「不戦勝」ということになる。
今回WOWOWで放映されたのを見たわけだけれど、それほどどうですこの長まわしを御覧なさいという感じではなく、意識しなければすんでしまうような使い方だが、クライマックスのバイクが追いかけてくるのを列車の側からえんえんと捉え、最後に列車から主人公が飛び降りるまでを追ったカットはすごい。
(☆☆☆)
出演
アンジェイ・レシュチツ イエジー・スコリモフスキ
テレサ・カルチェフスカ アレクサンドラ・ザヴィエルシャンカ
コンビナート長 クシシュトフ・ハミェツ
駅の娘 エルジェビェタ・チジェフスカ
マリアン・パヴラク アンジェイ・ヘルデル
スタッフ
監督 イエジー・スコリモフスキ
脚本 イエジー・スコリモフスキ
撮影 アントニ・ヌジンスキ
音楽 アンジェイ・トゥシャスコフスキ