展覧会の最初の挨拶の言葉が、紙でもパネルでもなく、しわしわの布に印刷されて並んでいるというのにまずびっくり。
こういうことやっていいのかと思うようなことをする、というのは祖父江慎の代表的な仕事である吉田戦車の「伝染るんです」にも通じるが、そういうのばかりではもちろんない。
ずらっと祖父江慎が装丁した本が何百冊も並んでいるのを見ていくと、あ、これもそうか、あれもそうと特に意識していなかった装丁家の存在が一気に浮上してくる。思わず手にとりたくなるが(実際手にとって複数の造本の違う本のページのめくり具合を比較できるようにしている展示もある)、それができないというのは妙な感じ。
漫画が多いのだが、漫画家の画を生かしながら色の使い方、空白の使い方でどこかひとつの素材として解体しているようなところがある。
「ブックデザイ 」というのは落丁ではなく、意図的にンが抜けているのだ。
壁いっぱいに装丁にあたっての指示書が拡大されて展示されているのが壮観。用語が専門用語ばかりで意味がわからない分、何やら呪文の文字がかって見えたりする。
あとデザインが本一冊だけで完結するのではなく、シリーズや全集でまとまって置かれて見られるのを想定しているのもわかる。
漱石の猫を拡大して印刷された媒体によってどのように文字組みが変わったか、会話で段落で一字分下げるか、半文字分下げるか、句読点の「。」や「、」はいつどの時点でどのように使うようになったかを比較しながら見せていくのもおもしろい。
祖父江慎+コズフィッシュ展:ブックデザイ 日比谷図書文化館
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