prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

2007年9月に読んだ本

2007年09月30日 | 
prisoner's books
2007年09月
アイテム数:12
首相官邸 (文春新書)
江田 憲司,龍崎 孝
09月06日{book[' rank' ]
音楽を「考える」 (ちくまプリマー新書)
茂木 健一郎,江村 哲二,江村 哲二
09月09日{book[' rank' ]
らも―中島らもとの三十五年
中島 美代子
09月09日{book[' rank' ]
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「うつくしい人生」

2007年09月30日 | 映画
パリの場面から始まるので、ゴールドで統一された独特の色調(撮影は日本人の永田鉄夫)からもフランス製オシャレ映画かと思ったら、田舎のあまりぱっとしたところのない青年が苦しい人生に向き合ういい意味でのまじめ映画でした。

フランスでも酪農の経営は楽ではないらしく、BSE問題から来た経営苦から父親は自殺し、祖父はその死を受け入れられず認知症みたいな言動に陥る。三十がらみのいい女と車に同乗してくたびれているものだから眠ってしまう、なんててんで格好いいところのない展開が逆に新鮮。

その一方で、子牛の出産の後で朝日が昇るのを祖父と見る場面のような汎生命的な感触があるのが、なんだか親しみやすく感動的。
(☆☆☆★★)


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「ミス・ポター」

2007年09月29日 | 映画
調度品・衣装など丹念にリアルに手がかかっていながら、おとぎ話風のちょっと美化された調子を保っている。だから劇中の絵がアニメ化されて心象風景風に動くのもそれほど不自然な感じがしない。
実際に残っている風景を見せることが、自然の保存がうまくいった何よりの証。

レニー・ゼルヴィガーと並ぶとエミリー・ワトソンの身体が大きいのが目立つ。「奇跡の海」以来なんか目に不吉な感じのする女優さんだけれど、実際その通りになるのだね。

レニーはテキサス出身なのにも関わらず「ブリジット・ジョーンズの日記」でイギリスのロウアー・ミドル・クラスの発音を見事にこなしてみせたらしいが、ここではどうなのだろう。裕福ではあっても「成り上がり」の家柄だから、微妙なところ。
娘が自立しているのを認めるのが一番遅いのが母親、というのもありそうな話。
(☆☆☆★★)



「めがね」

2007年09月28日 | 映画
スタティックな映画というとすぐ小津を出すというのはどうかと思うけれど、人物を相似形・対称に配置する構図や食事がおいしそうなこと、ビール瓶がぽんと置かれた構図、なんともいえないユーモアなど、自然に似たのかな、と何度か思った。
見たとこ自然だけれど、スタイル意識は十分。
説明を排して成功しているところと、この人どうやって生活しているのだろうと疑問に思わせてしまうところと、両方ある。

沖縄であることは見ればわかるのだけれど、最初の空港の場面で「空港」の文字でトリミングしていて何空港なのかわからないようにして、適度に抽象化している。(後註・実は鹿児島でした)
あんまり「癒し」系と決めつけられるのを、中途の薬師丸ひろ子の登場でやんわりと釘を差しているみたい。

上映前にめがね屋のCMが出たのでタイアップかと思ったら、同じシネコンの別の館でも同じのやってたから、関係ないみたい。

犬が自然にだけれどいいタイミングで出入りしている。
市川実日子は学校の生徒の方かと思った。30近いんだから、ンなわけないのだけれど。
(☆☆☆★)


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「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」

2007年09月27日 | 映画
ベースはマカロニ・ウェスタンの元祖「荒野の用心棒」と、さらにオリジナル「用心棒」なのだけれど、対立する二つのグループ以外の普通だったら善良な市民であるところのキャラクターがやたらと戦いに参加するので、肝腎のヒーローのしどころがあまりないのだね。

美術・衣装がごった煮的でありながらちゃんと一つの世界を作っているのが一番の魅力。
ただ全体とするといちいち数え上げられないくらいストーリーにも各場面にもあちこちからの引用(シェークスピアまで出てくる)や小アイデアが注ぎ込まれ、オタク的に凝りに凝っているけれど、料理でいうなら、新鮮な食材からではなくて一度調理した料理の数々を濃すぎる味付けの闇鍋にぶっこんでいるようなもので、食べておいしいってものではないと思う。
ゲテモノ的な楽しみ方をするには構えが妙に立派だし。

日本人キャストでも全編英語というのは慣れるとどういうことはなくなってくるが、どうも聞き取りにくかった。ネイティヴにはどう聞こえるのだろう。マカロニ・ウェスタンの吹き替え英語っていうのはやたら聞き取りやすかったのだけれど。
(☆☆☆)


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「ラッシュアワー3」

2007年09月26日 | 映画
このシリーズ、初めはジャッキー・チェンの香港映画的な体技の魅力をスポイルしているみたいであまり好きではなかったが、ここでは日本もフランスも入り乱れているので、もういちいち気にならない。東だ西だ、という段階ではないみたい。

真田広之が久しぶりにアクション・スターとしての腕を見せる。
スティーブン・セガールやジャン=クロード・ヴァン・ダムも悪役の候補にあがったというが、大幅にシナリオを書き換えたああなったそう。冗談みたい。
役としても付け焼刃で作られたとは思えないジャッキーとも絡む突っ込んだもの。

ロマン・ポランスキーが予告編から顔を出しているのに、本編ではメイン・タイトルでもエンド・タイトルでも名前が見当たらない。見逃したかな。IMDbにはちゃんと載っている。カメオ・ロール(有名な役者をわざとちょい役でお遊び的に使うこと)かなと思ったが、例の少女姦淫事件で有罪になりフランスに逃げたままでアメリカに戻ると逮捕される、というところから、名前を出しにくいのかとも思った。
役柄がまたアメリカ人嫌いで主人公たちに嫌がらせするというのも、あれとひっかけているのかもしれない。
ただし、ポランスキーのスタンド・インはちゃんとエンドタイトルに名前が出ている。

最近目立つアメリカとフランスの対立をいかにも通俗的にうまく取り入れている。
(☆☆☆★)



「妖怪百物語」

2007年09月17日 | 映画
悪徳役人と悪徳商人が手を組んで今で言う地上げで長屋の連中を追い出そうとする画策と、妖怪たちの跳梁とがストーリーの上であまりうまく絡んでいないので、妖怪が出てこないシーンはかなりダレる。
ラストの妖怪たちの百鬼夜行は楽しいが。

百物語という形式にこだわったのか、妖怪は劇中劇に出てくるところが多くて、しかも置いてけ堀とろくろっ首とがなぜかくっついて、取り殺された男たちはこれまたなぜか雷に打たれて死んでいる、という具合に脈絡がついていないのが困る。
妖怪が出てくるシーンで思わず笑ってしまうところが多いのはお楽しみだけれど、笑わせるつもりで作ってるのかいな。

若い頃の藤巻潤が誰だかわからないような二枚目ぶりで、今で言うなら「仮面ライダー」の主役にイケメンを起用して子供づれの母親も取り込もうとするのと通じているみたい。
(☆☆★★★)



「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」

2007年09月16日 | 映画
魔法庁が闇の帝王の復活を認めようとしないとか、官僚的な女教師の跋扈といった、妙にファンタジーとは違う感触の要素が目につく。もともとこのシリーズ、上級生のいじめとかも含めてイギリスのパブリック・スクールの生活をけっこう忠実に再現しているのだね。原作が全七作で終わらせるという当初の構想は、寄宿舎の七年間に合わせてのことらしい。又聞きだけど。

アンブリッジ先生役がいやぁな感じで、この人誰だろうと思って後で調べたら、「ヴェラ・ドレイク」のイメルダ・スタウントンなのでびっくり。
(☆☆☆)



「長江哀歌」

2007年09月15日 | 映画
ダムに沈む町が爆撃でもあったようにえんえん続く瓦礫の山になっている光景にびっくりする。ドキュメンタリーでも撮れないところまで突っ込んで描いているみたい。

取り壊し作業をしている上半身裸の作業員(日本でも高度成長前は、平気で人前で裸を見せていたと思う)のすぐ横で、防護服に身を固めた作業員が消毒薬を撒いているのがなんともいえず怖い。

ジョン・ブアマン監督「脱出」でアメリカの田舎町がダムができて水に沈んでいく情景もシュールだったが、さすがに長江となるとスケールがまた桁外れにでかい。日本でダムに沈む村を描いたらきっともっとセンチメンタルになるだろうが、ここでは情緒など弾き飛ばしそうな荒々しい雰囲気が裏に張り付いている。
ラストカットの綱を渡っていく男など、リアルなままで象徴的な喚起力があるカットが随所にあるので、変な建築がいきなりロケットになるいかにもなイメージ・シーンはちょっと違和感を持った。

ヒロインがたえずペットボトルの水を飲んでいる、というのは日本映画「金融腐敗列島」の若村真由美もやっていたけれど、こちらの方が「乾き」の実感がある。
役人と民衆が言い争うバックの壁に毛沢東やマルクス、レーニンはともかく、スターリンの肖像も堂々と飾られているのにちょっとびっくり。
(☆☆☆★)



「デス・プルーフ in グラインドハウス」

2007年09月14日 | 映画
B級映画の再生の体裁をとっているけど、1時間55分もあったらB級じゃないよ。
本物のB級だったら、だらだらしたお喋りといった作り手の「ゴ趣味」の部分は真っ先に切られていただろう。

詩の朗読するのがキーになって後催眠術が働いてどうこう、っていうのはドン・シーゲルの「テレフォン」の引用かいな。
唐突に「ミッドナイトクロス」のテーマ曲が流れる。オタクが主人公の先駆みたいな映画だからか。

出てくる女の子がおよそ趣味でないのばかりで(しきりとお尻を強調して撮っているが)、興味持てず。
後半、いまどきあまりやらないがんがん車体をぶつけ合うカーチェイスになってやっと興が乗ってくる。
(☆☆★★★)


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「レミーのおいしいレストラン」

2007年09月13日 | 映画
ネズミが一流料理を作る、とはずいぶん高いハードルを置いたものだと思うけれど、残念ながらあまりクリアできているとは思えない。
料理っていうのはかなりの程度力仕事だから、小さなネズミの身体でどう重い鍋などを操るのだろう、と思ったが、クライマックスでも画としては逃げていて、なんとなく最後の仕上げの段階にぽんととんでしまう。
ぞろっとネズミが群れをなしている図というのは、やはり気持ち悪いし。

レストランの評判が一批評家の言で左右などされるのかな、と我が日本にいてはピンと来ない。
テレビでどーでもいいタレントが食べて騒いでみせる方がよほど影響力があって、批評する方を勉強させる方がよっぽど先決な状態だもの。
批評家を揶揄しているようで、ああいう厳しくてかつ率直な批評家がいたらな、という願望の現われのような気もする。

エンド・タイトルに撮影中に食事を用意したシェフの名前が出ていた。
(☆☆☆)


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劇場のインテリアもいろいろ凝っていました。



「劇場版AIR」

2007年09月12日 | 映画
出崎統って人は、「来た仕事はスケジュールが合う限り断らない」ポリシーの持ち主のせいか、まぁ色んな題材を手がけます。
今回の原作は「泣き」のゲーム、だそう。ゲームのことはまったく疎いので内容はまったく知らないが、完全に出崎ワールドに作り直している。

伝説と現代の話の重ね合わせ(「ブラックジャック・雪の夜ばなし」)、「どこから来てどこに行くのか」わからない、終わりのない旅(「宝島」「家なき子」「あしたのジョー」、「コブラ」にすら出てきましたね)、といったモチーフ、もちろん光と影の強調、マルチスクリーン、黒味の挿入、止め絵、などなど。

で、その世界を一応構築したところで止まっちゃって、その後がないのだね。「萌え」系のキャラとも合っているとは思えない。もともとあまり接点がないのではないか。
元のゲームのファンが見ると、およそ不満みたい。
(☆☆★★)


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「くたばれ!ハリウッド」

2007年09月11日 | 映画
「ゴッドファーザー」のプロデューサー、ロバート・エヴァンスによる自伝本の朗読と数々のスチル写真にストック・フィルムといったワン・クッション置いた素材ばかりを使った、「再構成された」自伝ドキュメント。
現在の当人が直接カメラの前に現れてインタビューを受けるといったよくある方法はなぜか排除されている。

写真をアニメみたいに人物と背景とを切り離して動かして擬似的に遠近感を作っているのが技術的にはずいぶん凝っている。「記録性」という点では明らかにマイナスなのだが、大口叩きなところのあるキャラクターに調子を合わせているようでもある。
「ゴッドファーザー」の手柄はコッポラではなくて俺だと主張。

「ある愛の詩」の企画を会社のお偉方に売り込むのに、マイク・ニコルズに演出を頼んで自ら出演して喋るフィルムが残っているのが見られるのが興味深い。
(☆☆☆)


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