prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ベルンの奇蹟」

2005年05月31日 | 映画
ドイツらしく、イケメン抜きでごつごつしたおじさん顔が並び、あまり女っ気がない。
アルプスの風景が一瞬絵の合成かと思うほど。
全体にあまりケレン味のない作りで、ドイツ人ほど感動はしないが、さほど退屈もしない。

写真はアディダスのユニフォームやシューズ類。
(☆☆☆)



ベルンの奇蹟 - Amazon

「歓楽通り」

2005年05月30日 | 映画
「シラノ・ド・ベルジュラック」ばりに惚れた女をつまらない美男子に周旋する男の話。なんともいえずマゾヒスティックな感じは同じ監督の「仕立て屋の恋」を思わせる。ただ、一種のコスチューム・プレイ仕立てなので、意匠は華やかであれほど冷え冷えした感触ではない。

娼館の雑用係という女だらけな環境の割に全然縁がなく、かといって嫌われているわけでもない。こういうのを煉獄というのかと思う。
(☆☆☆★)



歓楽通り - Amazon

社会派?

2005年05月30日 | Weblog
オリバー・ストーンが酔っぱらい運転と麻薬所持で逮捕。なんだか、すごく納得。
NHKで「ハリウッドを代表する社会派監督」と形容していた。社会派がこんなことをして、というのと、アレ社会派ですか?、というのと二重の意味でイヤミに聞こえる。

しきりと道端でメガホンで演説しているのがいるので見てみると、共産党から今度の都議選に出るつもりの人らしい。それはいいのだが、誰一人として聞いていない。だけではなくて、人通りそのものがほとんどない場所。ナニやってるんでしょ。選挙の事前活動とすると、マズいんじゃないの?

警察病院に親戚の見舞いに行く。病室が移っていたので二ケ所のナースステーションでどこか聞くと、二度とも患者とはどういう関係ですかと誰何を受ける。また別の病棟のことは看護婦に聞いても全然わからない。受け付けも警察関係者かどうかで分けられているし、なんかお上感覚。



写真は、近くでオープンしたコンビニ内部。鶏の空揚を100円セール中でニワトリの着ぐるみを着て宣伝しているというわけ。しかし、トリが自分を食べてって言うの、気持ち悪いと思うんだが。



「パンチドランク・ラブ」

2005年05月29日 | 映画
やたら姉妹が多くて女の間で小さくなっているのが習い性になっているもので、変なところで爆発するアダム・サンドラーの主人公のキャラクターは、アメリカ映画ではちょっと珍しいタイプ。突然、車が停まって道路にピアノを置いていくといった細かいところで素頓狂な展開はあるのだが、本筋のロマンス(?)は淡白すぎる展開で、これで終わり?と思わせる。
女と話せるダイヤルにかけてクレジットカードの番号を教えるあたり、いかにも不用心で、アメリカには出会い系サイトはないのか、と思った。
(☆☆☆)



パンチドランク・ラブ - Amazon

土日の郵便局

2005年05月28日 | Weblog
招待状用に50円切手を郵便局の本局にまとめて買いに行く。
非常用窓口しか開いておらず、どうゆうわけかやたらと時間がかかる。待っている間、4人が追い抜いてとっかえひっかえ現金書留ほかを出しに来る。
郵政民営化が審議中だが、こういう調子では郵便局も呑気に土日を休みになんてしてられないなあ、と思う。

記念切手を頼んだら、6種類も取り揃えて持ってきた。
それにしても民営化したとしたら、切手の発行権を独占する理由はなくなるだろう。今でもずいぶんカラフルな記念切手を出すようにしているが、他の業者もが参入して競って華やかな前払い証明書を発行して対抗するようになったりして。

それにしても、民社党も社民党も審議拒否してどうするのかな。自民党の反対勢力と一時的に手を組んで潰しにかかるくらいの権謀術数をふるってもよさそうなものだが、能のない話。



「Shall We Dance?」

2005年05月27日 | 映画
オリジナルは2時間15分、これは1時間50分。
ほとんど同じストーリーで主だったシーンは外してなくて25分も違うのだから不思議。特に出だしの昔の日本映画のテンポが刈り込まれてスピードアップされて、その分面白くなるわけではないのも不思議。
原タイトルには、「?」はついていない。意識しているわけでもないだろうが、ためらい・シャイネスがあまりなくなっている現われみたい。
日本版の方がキャラクターが濃いというのも不思議な感じ。

ラストのぬけぬけとしたハッピーぶりの方は、さすがに堂にいっている。
コメディ・センスはだいぶ及ばない。
音楽がかなりゴージャスになってる。
(☆☆☆)

本ホームページ

Shall we Dance ? - Amazon

「海を飛ぶ夢」

2005年05月26日 | 映画
主人公が尊厳死を選んでいるところから始まるので、命を盾にされては法律や宗教といった制度があれこれいっても意味がなく、あまり一緒になって悩んだり考え込んだりしないですむ、すっきりした印象。
後は、周囲の人をどう悲しませないか、が問題になってくるがこちらもかなり周到に対応している。
クリスチャンではないせいか、あまりこちらに尊厳死に対する抵抗感というのがないので、良くも悪くも改めて深刻に考え直すようなところはなく、後は芝居のうまさを楽しむくらい。

尊厳死にあくまで反対する神父とのメッセンジャーをわざわざ往復させてのやりとりが笑わせる。神父が車椅子の身というのも、周到。
(☆☆☆★★)



海を飛ぶ夢 - Amazon

「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」

2005年05月25日 | 映画
製作総指揮が「アダムス・ファミリー」のバリー・ソンネンフェルドのせいか、ダークなのと妙なユーモアとが混ざった作り。美術・撮影・衣装・メイクなどのレベルの高さが大きな魅力。ジム・キャリーの七変化を見せながら一貫性を持たせた芝居は見もの。
「マスク2」の赤ちゃんの使い方には辟易させられたが、ここではかなり無気味な役な割に可愛らしさは外さない。
クライマックスで伯爵が14歳の少女とむりやり結婚しようとするあたりは、「カリオストロの城」ばりだが、いささか演出の切れ味が鈍い。

メリル・ストリープもだが、ダスティン・ホフマンが出てきてしかもノークレジットなのは驚いた。何のために出たのかわからない出方。
エンド・タイトルが大変に凝っていて、あれだったらメイン・タイトルにまわした方が良くなかったか。
(☆☆☆★)



レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語 - Amazon

振り込め詐欺

2005年05月24日 | Weblog
従兄弟のところに振り込め詐欺の電話があったとのこと。それも二度も。一度目は息子が交通事故を起こしたといい、ニ度目は痴漢で捕まったといって脅かす手口。
普段と言葉遣いが違う(「ぼく」というか「おれ」というか、といった)のに気付いた、あるいはそういう大事なことは主人と相談してのことで、という対応でそれぞれ事なきを得たが、これだけ身近にあったのは初めて。なんでも、知人で200万取られた人がいたという。

それにしても、個人情報が漏れていないとできない手口だ。

裏道にずらっと人が並んでいるから何かと思ったらパチンコの新規開店に並んでいた、のではなく、新規開店に際しての会員募集の申込みに並んでいたのだ。
何やら、宝くじの行列を見るような変な列。

どこもかしこも、簡単に手に入る金が好きみたい。



「甘い人生」

2005年05月23日 | 映画
場内の数十人の客で、男は私ひとり。「モーリス」以来のこと。
映画の中は、これが逆にヒロイン以外ほとんど全部男。激しいヴァイオレンス描写や、主人公が徹底してヒロインにストイックに接するところなど、内容的には(昔の)男性映画的。女だけに占領させておくのは、もったいない。
イ・ビョンホンの二枚目ぶりもだが、脇の連中のマスクもみんな見応えがある。

英語題はbitter sweet life。主人公がオープニングでチョコレートケーキを食べていて、一仕事の後はエスプレッソに角砂糖を落として飲むといったあたり、ストイックな中の甘さを見せる。
主人公が珍しくビール(苦味の強いギネス、というあたり細かいところにこだわった演出)を飲んで、部屋でひとり明かりを点滅させているところで心の動揺を見せつつ、一転してアクションに入る呼吸の鮮やかさ。
クライマックスのラウンジの名前がla dolce vitaで、フェリーニの「甘い生活」の原題。もっともこの表現自体、イタリア語でのニュアンスはむしろ“苦い生活”らしい。

火のついた角材でぶん殴り、突き出た釘が脚に刺さるなど、痛みをありありと感じさせるアクション・シーン。その一方で、イ・ビョンホンがさんざん痛めつけられても反撃に転じるとやたら颯爽としているのは映画の嘘とはいえ、ちょっと苦笑したくなる。

ロシア人二人組が出てくるシーンだけ、漫才のやりとりみたい。
(☆☆☆★★)



甘い人生 - Amazon

「エレニの旅」

2005年05月22日 | 映画
若い男女二人の恋の逃避行を父親が追いかける前半の旅は、音楽メロドラマかと思うほどとっつきやすい設定といい、いつもながらのアンゲロプロス式驚異的に長いブレスのショット構成といい、旅芸人たちを初めとした音楽の使い方といい、素晴らしい出来。

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」同様にアメリカへの憧れの曲「アマポーラ」から、映画全体のテーマ曲になっているアコーディオン・ソロにつなぎ、追いついてきた父親が死ぬまでのホールのシーンは、「旅芸人の記録」の歌合戦以来と思わせる傑作演出。
そこから黒い旗をたてた船の群れから、木に吊るされた羊たち、さらに村全体が水没した光景あたりまでは圧倒的な映像の連続で、正直ここまでは大傑作ではないかと思っていた。

だが正直、ここらあたりで“旅”は終わっている感じで、後どうも前半のような一貫性や情感のある場面は影をひそめる。代わりに内戦が始まるは、家族はばらばらになるわ、陰々滅々とした場面が続き、いささかしんどくなる。実際、何人かの客が出ていっていた。

それからわざとなのか、妙に意図のわかりにくい場面が続く。
クリストの作品かと思うほど白い布をずらっと並べ立てた中を、撃たれた楽団長が布に血をつけてよろめいてくる場面は、アンゲロプロスが嫌いなアンジェイ・ワイダの「灰とダイヤモンド」のラストの中途半端なパロディみたい。
アメリカに渡る船がCG丸出し、というのはアメリカ映画への皮肉なのか知らないが、違和感強すぎ。
なんで途中からああ調子が変わったのだろう。
(☆☆☆★★)



エレニの旅 - Amazon

諸行無常

2005年05月21日 | Weblog
いきなりACアダプタが壊れたので、久しぶりに秋葉原に行く。20世紀ぎりぎり製造のMac用周辺装置など、あれだけものすごい数の電器店があっても、藁の山の中から針を探すような感じ。
いつのまにか、石丸電器のパソコン館が三階建ての小さな建物に移り、商品全般の主力をソフトに移していた。

写真は、閉鎖された古い印刷会社のドアに貼られた政治ポスター。




「明治天皇と日露大戦争」

2005年05月21日 | 映画
東京MXテレビで「明治天皇と日露大戦争」をやっているのをちらちらと見る。
1957年、「女優を妾にしたのではない、妾を女優にしたのだ」の名言(?)で知られる大蔵貢製作の新東宝映画。当時で7億のヒットになったというからすごい。

映画とすると、感心するくらい紙芝居に徹している。
嵐寛寿郎の明治天皇が戦争によって国民が苦しまないか心配なされ、水師営の会見だの「天気晴朗なれども波高し」だのいった有名な場面が何の説明もなしにご存知という感じ(事実そうだっただろうが)で並べられる。
鞍馬天狗のアラカンに実名で明治天皇をやらせたのは、当時右からも左からも大ヒンシュクだったらしいが、今みると照れぬ臆せぬ大時代ぶりがいっそ楽しい。

折りしも東京都の石原知事が鳥島に上陸して日本の領有権を主張。映画では国民が国土侵犯の危機に際し立ちあがって、ひたすら勇ましく戦う。
今じゃ各方面がうるさくて、とても無理な描き方。

人物の掘り下げだの、言い訳がましい反戦的なセリフや場面などのインテリ向けサービス一切なし。
ほとんど歌舞伎の公演。
まじめに見るもの(見てられるもの)ではない。

特撮技術まで今見ると紙芝居だが、リアルにしたら別のものになってしまう。




明治天皇と日露大戦争 - Amazon

「アンダー・サスピション」

2005年05月20日 | 映画
ジーン・ハックマン、モーガン・フリーマンの競演が最大の売りで、少ない登場人物でみっちり噛み合うから演劇的なのかと思うと、フリーマンの尋問を受けるハックマンの回想の画面にフリーマンがまた現れたりする凝った技法。
画面がストレートに示す警察の無礼とも違法ともいえる突っ込みの一方で、ハックマンが妻役のモニカ・ベルッチとは回想でもまるで顔を合わさず、取調室でもマジックミラー越しだったりして徹底して断絶が強調されている。
どんでん返しものはがくっとくるのが多いのだが、ミステリとすると、え? と思うようなひねりの後、ラストやっと一緒の画面に収まった夫婦の微妙な距離感に、これ話のひねりで見せるのが目的じゃないな、男女関係のややこしさを描くのが狙いだなと思う。

男女がずうっと顔を合わさないという作りから、「死刑台のエレベーター」がスリラーである一方で、まるで劇中顔を合わさない男女がラスト写真の中だけで仲睦まじい姿を見せていて、しかもそれが犯行の決め手になっているという非常に凝った作りの恋愛劇でもあったのとちょっと通じる作り、と思ったら果たせるかなオリジナルはクロード・ミレーユ監督、リノ・ヴァンチュラ、ミシェル・セロー、ロミー・シュナイダー主演のフランス映画。お国柄というのは、リメークでも出るものですかね。「レイプ殺人事件」というヒドい邦題でビデオ化されているらしいが、キャストからして機会があったら見てみたい。
(☆☆☆)



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「コーラス」

2005年05月19日 | 映画
子供たちの悪さが予告編などで予想していたよりずっとすごい一方、校長の頑なさも憎たらしい。その間で、マチュー先生が必ずしも初めから子供たちを善意しようというのではなく、とにかく行き場がないので忍耐しているうち(大した忍耐力!)突破口を音楽に見出すという感じで、甘すぎず辛すぎず、微妙にぶれ続ける。
ありきたりなようで、緊張感が途切れないバランス感覚。
見ようによっては、「新学期・操行ゼロ」以来のフランスの悪ガキ映画の流れの上にあるともいえる。

徹底して男の子ばかりで固めたのもいい。
女の子を混ぜたら、“男の子”の集団の話になって「天使の顔をした悪魔」(あるいはその逆)
の話にまではならなかったろう。
猥歌を歌ったりして、唯一セクシャルな要素を持ち込んだワルが最後まで救われないというのも、何か暗示的。

しかし毎度のことながら音楽の力は大したもので、悪ガキたちがなついていくのが不自然に見えない。
背景になる校舎の古めかしくて荒廃した感じを出した美術も見事。
(☆☆☆★★★)



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