英語タイトル通り、今回の映画化では昭和天皇が姿を現して聖断を下すところがはっきり描かれているのが前との一番の違いということになる。
監督の原田眞人はイギリス、アメリカの生活が長くて、これまでの作品でも日本を外から見る視点が混ざっていたのだが、日本人がプロデュースに加わったアメリカ映画「終戦のエンペラー」あたりで終戦にあたっての天皇の役割が描かれたように、天皇タブーがかなり緩くなって歴史的な視点から描かれる余地が出てきたということだろう。
とはいっても、なんでもっと早く聖断を下さなかったのか、という疑問はついてまわる。君臨すれども統治せずの原則はあるにせよ、やはり一般国民とはかなり離れた所で生きているのだなとは思う。
国体護持にこだわって被害が拡大したしたが結果として近代天皇制は守られ、責任は曖昧なままになったが、その下で日本に一応の平和が保たれているのは確かで、実際に天皇制を廃止して新しい体制を作ったとして、どの程度正当性を持てたか、平和を保てたか、かなり疑問でもある。その曖昧さに映画自体がそれほど手をつけていない。
そのあたり、すべての主要登場人物が天皇について何らかのコメントを出している一見右翼映画「大日本帝国」の方が切り込みは鋭い。作り手の恨みつらみの多寡の違いだろうか。
聖断が下ったというのに、それに従わず自分の脳内の天皇を押し立てて叛乱を起こす青年将校というのは、セリフにもあったが226のそれの再現だろう。天皇が決められたからおとなしくそれに従うわけではないのが難しいところ。
多くの会議シーンがあるのだが、日本映画にありがちな物々しくて退屈なそれとは大きくタッチが違い、特に編集の切れ味が鋭くてテンポよく見せる。
↓の写真は、劇場で配っていた「終戦の詔書」。
(☆☆☆★)
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