握り寿司を初めてアメリカに持ち込んで以来、和食を広める活動をし続けている91歳の金井紀年をはじめ、和食に関わる60人あまりの人たちのインタビューを中心にしたドキュメンタリー。
どれほど苦労したか、という話には意外とならず、つまるところ顧客のニーズをつかむこと、日本の伝統は伝統としてひとりよがりな押しつけに陥らないこと、人を使うのはきちんと筋道立てて説明すること、いった当たり前のことを積み重ねてきたことがわかる。
金井氏が和食を伝えることに使命感を持つ根底に、戦時中在学していた一橋大学経済学部から徴用されて兵站に配属され、日本軍の兵站軽視のため多くの人命が失われたのを目の当たりにした体験があるというのにどきりとする。すずきじゅんいち監督の旧作「442」と期せずしてつながった。
和食というのはまことに美しいけれど、見ていて腹が鳴るというのとは少し違うな。食べるのがもったいない。スクリーンで見るとほとんど美術品。
味の基本的な要素に塩・甘・辛・酸の他にうまみというのが加わって、そのうまみというのが日本食由来、うまみを使っていたら和食という話になるのだが、うまみ成分、というのは必ずしも和食には限らないわけで、発酵によってグルタミン酸を生成した調味料は、タイのナンプラーやベトナムのニョクマム、古代ローマのガルムなど古今東西にわたって存在している。ただ、それがなぜ日本で突出して重用されるのかというのはよくわからない。
今の美味しいものの美味しさの多くは油の旨味だ、という話が出てくる。実は聞いたところによると、油の味というのも第六の味として登録したらどうかという案があるとのこと。油を増やせば一応おいしくはなるものね。前にテレビでティッシュペーパーを天ぷらにして食べさせたら、それと知らない出演者が食べておいしいと言っていた。およそヘルシーではないが。だから和食を売りだしたいわけでもある。
大豆というのはアメリカでは家畜の餌で、それを人間が食べるのかという違和感を突破するのに苦心したというのに驚く。
基本的に外国で見せるつもりなのか、全部英語字幕が入っている。フランス語の発言には字幕でなく英語ナレーションがかぶされている。どういうわけでか。
ラストにだけ出る政治家の言にあるクールジャパンという言葉が字幕には出ず、ただのJapanになっていた。どんな政治家かと思ったらゴリゴリの保守。ふーむ。
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