prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

2008年11月に読んだ本

2008年11月30日 | 
prisoner's books2008年11月アイテム数:30
漫画ノートいしかわじゅん11月03日{book['rank']
野中広務 差別と権力魚住 昭11月05日{book['rank']
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「ブルース・リーの生と死」

2008年11月30日 | 映画

映画によるブルース・リー記念館といった作り。
リーの数々の映画の断片や遺品や思い出の場所や品を豊富に揃えてみたけれど、ひたすら賛美に終始して、あまり映画に写ってているイメージ以外の部分の追求はしていない。
リーが座等市に扮してみせている写真などというのもある。ジャッキー・チェンも初期の作品の演武でやってみせていた。どれくらい東南アジアであれが受けていたか、一端がわかる感じ。
この映画の製作時では、まだ「死亡の塔」が完成していなかったり、後に事故死した息子のブランドンが小さな時の姿でちょこちょこ歩いているのが異様。



「ハッピーフライト」

2008年11月26日 | 映画
ラスト、鳥の羽が風に乗って空中に飛び去るカットが「フォレスト・ガンプ」みたいだな、と思うと、全体の構成も同じロン・ハワード監督の「アポロ13」同様の特殊なヒーローがいないで、プロのチーム全体が力を合わせて危機を乗り切る敗戦処理の話であることに気づく。もっともスケール感とかプロフェッショナリズムの徹底は日本(映画)の桁に合わせて縮めていて、バットを短く持って振り切った二塁打という感じ。
先輩後輩の関係が各部門でいちいち見られて、上下関係は徹底している。そうでないとシステムがきちっと動くわけないだろうなと思わせる一方、ああドジな後輩で大丈夫かとも思わせる。

航空関係各部門ディテールはさすがに見事なもの。銀紙で包んだ飛行機方のチョコレートを模型代わりに使ったり、ラスト近くモニターが壊れて飛行場のミニチュアを担ぎこんで代用するあたり、アナログ的手作り感が随所に入っている。
一度見ただけだと、台風が動いていって風向きが変わっていくあたりがすんなり頭に入りにくい。風は映画に写らないものねえ。
(☆☆☆★)


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「N.Y.式ハッピー・セラピー」

2008年11月25日 | 映画

気が小さくて怒れない男アダム・サンドラーとそれをやたら挑発する当人がセラピーを受けた方がいいセラピストジャック・ニコルソンのやりとりが中心なのだけれど、見ていてどうにもイライラする。
サンドラーが正当な怒りを発散しようとするとすぐ押さえつけられてしまって、ますます悪い方に向かう展開に、笑う先に頬が引きつってくる。
ニコルソンのクレイジー演技もホラーではないのだから、やりすぎ。
ウディ・ハレルソンのカメオ出演が面白かった程度。
(☆☆★★★)


「クローバーフィールド 」

2008年11月23日 | 映画
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アイデア倒れの典型。
「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」ばりのフェイク・ホームムービーで怪獣映画を作るって着想は吸引力あるけど、実物見るとストーリーはなんだかわからんし、スペクタクルとしても中途半端だし、映画の体をなしてません。
ぐらぐら揺れるフレーミングで合成や特殊効果をうまくやりましたというのをメイキングで確認させるためにあるみたい。

ラストでそそりたっているモンスターはゴジラというより先日見た不快作「ミスト」みたい。
(☆☆★)


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「北京ヴァイオリン」

2008年11月22日 | 映画

ラスト、これでいいのかなあ、と思う。

最初の教師が髪型といい、不精さ加減といい、ベートーベンのイメージ。
中国の地方と中央との格差がもろに描かれている分、ラストが甘すぎる気がかなりする。張凱歌が役者としてエリート的な教師をやっているのが説得力がある一方、なんで父子の関係の真相を知っている(のかどうか)のか、不思議。

音楽の高揚感をあまり生かしていないのが困る。
(☆☆☆★)


「幸福」

2008年11月19日 | 映画

オープニングで遠くに家族がぼやけて写っているひまわりのアップに虫がとまっているのが、幸福という言葉についた一点のシミとも見える。さらに、妻が最初にするのが、消えかけた焚き火に水をかけて消す、というのも何か意味深。セリフではなくカメラが物を言っている。

それにしても、あれだけ悪びれずに自分が幸せなら妻の幸せと思い込める夫というキャラクターは、男の作者だとなかなか描けない気がする。妻と浮気相手が、ほぼ同じタイプというのも辛辣。


「ゴルゴ13 九竜の首」

2008年11月17日 | 映画

同じテレビ東京系の深夜でアニメ版の「ゴルゴ13」を放映中なのに合わせたのだろうけれど、正直なところ珍品を期待して見て、やはりなかなかの珍品でした。

パンチパーマの千葉真一のゴルゴというのが相当な珍景。そのくせもみ上げはしっかり伸ばしていて、メイクも服装も濃ゆいこと。
外国人が西洋人も香港人も全員吹き替えの日本語というのも、まことに変な感じ。原作のデイブ・マッカートニーあたりに相当する協力者をやっているのが、なんと黒パッチ姿の鶴田浩二。大東亜戦争で南方に出征したまま日本に帰りそびれた元兵士、という設定は鶴田当人に重ねているのだろうけれど、あまりにアナクロ。

ゴルゴというより、銃より空手に頼るところが多いこともあって、昔の東映や香港映画らしいチープなアクションものに近い。それでところどころに原作の断片がパッチワークよろしく入っているのだから、ほとんどパロディみたいに見えてくる。
監督は、「不良番町」「0課の女・赤い手錠」の野田幸男。

ドラマがどうこうという映画ではないけれど、一般論としてゴルゴはもともと出自も何を考えているのかもまったくわからないキャラクターだから、一本の長いドラマの軸に据えるのはムリだと思う。原作ではドラマがあるのは依頼人たちの方で、基本的にゴルゴは「脇役」なのだから(なんと、一度も出てこない回まである)。連続ものでないと軸にはならないのだろう。
(☆☆★★)


「レッドクリフ PartI」

2008年11月16日 | 映画
二時間半という長尺の割りに、くたびれずにすらすら見られる。キャラクターがみんな「ご存知」という感じで、それをまたきちんとゲームのキャラクターばりに図式的に絵解きしてくれるから、製作スケールはものすごく大きいにも関わらず、時間感覚からするとテレビの長時間ドラマに近く、もたれない。

八卦の陣の場面など、どういう形で陣形がどう動くと威力を発揮するものなのか、というのをはっきり見てわかる形で映像化してくれたのはありがたい。古い例だけれど「天と地と」では、「あれが鶴翼の陣か」などというセリフがあって、絵でその形が示されても、それに何の意味があるのかわからず「それがどうしたの?」と欲求不満になったもの。

戦闘場面で、将軍クラスがやたらと実戦に飛び込んでばったばったと敵をやっつけるのは、近代戦ではないなあと思わせる。
アクション・シーンはもちろん迫力あるのだけれど、「男たちの挽歌」以来の二丁拳銃の乱射みたいな、思わずマネしたくなるような魅力的な新手はこれといってない。

ジョン・ウーは相変わらず女優の演出となると棒を呑んだみたいになりますね。美女を起用したところで満足してしまったみたい。
(☆☆☆★)


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「僕らのミライへ逆回転」

2008年11月15日 | 映画
ハリウッド大作をアナログ的ハンドメイドでリメイクする、という基本アイデアが気に入って見たのだけれど、実際の出来の方は期待ほどにはいかず。

映画ごっこ遊びの楽しさ、というのはわかるのだけれど、リメイクの製作現場は見られても実際の映像としては出てこなくて、そんなものを見て作り手でもない人間が喜べるのかどうか、という部分をオミットしたのは一種の「逃げ」に思える。

クライマックスに用意された「みんなで一緒に見る」映画の楽しさ、というのは今では失われてきているし、実は昔もあったかどうかよく考えてみると結構怪しい。ありもしなかった過去を美化する作り、というのにはなんか警戒心が働く。

「みんなで作る」映画というのが、伝説のミュージシャンのフェイク・ドキュメンタリーというのは釈然としない。なぜ今現在の自分たちを撮らないのだろう。つまらないはずがないのに。

エンドタイトルにリメイクした映画のタイトルが並ぶのだが、「キング・コング」があくまで1933年製作のオリジナルがもとで、ジャック・ブラック主演なのにもかかわらわずリメイク版のそれではないのが、こだわっている感じ。
(☆☆☆)


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「母たちの村」

2008年11月14日 | 映画

色彩の鮮明なのにびっくり。
割礼要員の揃いの真っ赤な衣装や、フランス帰りの村長の息子の足元に並べる色とりどりの布の色とデザインの見事なこと。
あと、村の建物もよくある泥を固めただけの掘っ立て小屋ではなく、モダンアートと思わせるばかり。
欧米から見たアフリカの陰惨なイメージを、まず美的感覚から転倒させている。

割礼の習慣や、モーラーデ(保護)している女がそれを解く「言葉」を発しない限り、保護されている少女たちには手を出せないというあたりは、いかにも前近代的だが、村の小権力者たちが下らない掟を作って村人たちに守らせるあたり、下らなければ下らないほどそれを強制する権威づけになるあたりの構造は、今の日本と大して変わらないと思わせる。
さらに、割礼そのものを女たちにやらせたり,ヒロインに「罰」を与えるのも夫にやらせるあたりの狡猾にして薄っぺらなあたりもよその国の感じがしないくらい。
ラジオを取り上げることで、「外」の世界を知らさないようにして支配の網を破られないにしているあたりも、普遍的。

封建制に対する勝利が小リクツでなく、女たちの歌と踊りによる生命感の高揚で表現されるのが、清清しい。

監督はアフリカ映画の父と言われたセンベーヌ・ウスマン()。えてしてアジア・アフリカの旧植民地の先駆的文化人は上流階級の出で、旧宗主国などに留学して映画を学ぶ、という人も多いが、彼は肉体労働をしながら労働運動に従事し、フランス語を学び、小説を書き、四十を過ぎてからモスクワで映画を学び、初めてアフリカ発の映画を作ったという。
(☆☆☆★★★)


「その木戸を通って」

2008年11月13日 | 映画
1993年に製作されていながら、ハイビジョンによる製作という特殊な事情から見る機会がほとんどなかった市川崑作品。
人物だけ色がついていて背景がモノクロになっていたり、といった処理は随所に見られるけれど、やたらと技術に溺れることのない、全体に見慣れた市川調のモダンな日本美。
それと聞いていなかったら、通常のフィルム上映とどこが違うのかほとんど意識もしないだろう。

浅野ゆう子扮する素性のわからない記憶もなくしている女・ふさ(海外の題名は〝Fusa〟)が、縁談中で微妙な時期にある中井貴一の家にふらっとやってきて、あれこれのいきさつの後、結婚して娘を産むが、また唯一の記憶の手がかりだった「木戸」を通ってどこかに行ってしまう、という話を十七年後のその娘の輿入れの日に中井が回想し、ふさらしき女をまた見つけても「ふさではない」となぜか認めない。

とにかくふさの素性が本当にわからないままなので、ちょっと当惑する。
わからないままで魅力があるというには、想像を刺激する余白の部分が演出にも演技にも不足している観。

フランキー堺や岸田今日子といった故人が「新作」に出てくるのが、異様な感じ。
(☆☆☆★)


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「太平洋ひとりぼっち」

2008年11月11日 | 映画
太平洋横断の後、久しぶりに入った風呂がものすごく汚れたり、家族からかかってきた電話も無視して欲も得もなく眠りこけているあたりの市川崑らしいひねった締めくくりは面白い。

冒険家って、どうやって費用を都合するんだろうとニュースを聞くたびに不思議に思うのだが(スポンサーを探すんでしょうねえ、やはり)、ここでは自分で爪に火をともすように働いて貯めたわけで、'62年という時代にふさわしいつつましさ。

ヨットの航行の実感は十分に出ているとは言いにくい。海の上の撮影自体、この当時の技術と資本力ではムリがあったみたい。市川崑自身、ヨットにエンジンつけておけばもっと自由に動かせたなんて言っていたと思う。
たった一人で単調な長丁場をもたせる技術は、「翼よ! あれが巴里の灯だ」に及ばず。親との関わりが大きくウェイトを占めるのが日本的。
(☆☆☆)


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「奥さまは魔女」

2008年11月10日 | 映画
奥さまは魔女

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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悪く凝り過ぎとしか思えない作り。
テレビ版「奥さまは魔女」のリメークではなく、リメークを作ろうとしているところに本物の魔女の二コール・キッドマンがやってくる、という話だけれど、魔法の便利さに頼るか頼らないかといった葛藤があるわけでもないし、ロマンスを魔法に例えるにしても、世にも自分勝手なテレビスターが相手ではストーリーの都合上むりやりくっつけましたという印象が強い。他にまともな男がいないわけでもあるまいに。

父親役のマイケル・ケインの、缶詰のグリーン・ジャイアントのイラストに化けたり、セットの奥行きがないはずの洞窟の張りぼてから現れたり、といった登場の仕方は面白い。
クララおばさんや、お隣のグラディスさんなどの本来面白い脇役キャラクターの扱いは無残。もともと同じ失敗を繰り返すところが面白いキャラなのだから、一回だけの登場ではテレビ版を知らない人には、なんで出てくるのかもわからないのではないか。エンドラも劇中劇だけの存在なのだから、これまた何しに出てくるのかわからない。ひどいもんです。

テレビ版「奥さまは魔女」を今見直すと結構皮肉なのは、仲のいい夫婦がサマンサとダーリンだけで、他のカップルは全部何らかの問題を抱えていること。子供に見せてもいい健全な番組代表だったらしいけれど、そうとばかりも言えないと思う。
なぜかオリジナルの映像が白黒。本物もうんと初期のは実際白黒だったらしいけれど、見たことないし、これもわざわざ発掘してきたわけでもなさそう。
(☆☆★★★)


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