二時間半という長尺だが、省略法とツイストに優れて飽かせない。
松岡茉優が新人の映画監督の役なのだが、プロデューサーと助監督にいいようにあしらわれ、監督としての経験も人生経験も浅いと助監督に監督の座を乗っ取られて、プロデューサーも上の言うことには逆らえないとおよそ責任をとろうとしない。
いざとなったら都合の悪いところはカットすればいいとふたりが手をチョキにしているのがいかにも小馬鹿にした感じでむかつくし、コロナがなかったみたいに空っとぼけているのがまたむかつく。
こういう目に石井裕也監督もあってきたのか、それとも若い女の監督だから誇張してある(というかリアル寄りにしている)のか妄想したくなる。
シナリオの内容というのが松岡の家族をモデルにしたもので、助監督がこんなキャラクターありえないと最初から決めつけて接してくるのに、いやありえるんですと言い返すところから佐藤浩市が父親で池松壮亮が長兄、若葉竜也が次兄の家族の話に入っていく、この語りが上手い。
平行して窪田正孝の食肉処理を生業にしている家族のいない男がなんとなくくっついて松岡の家族にカメラを向けながら入っていく。
松岡がずうっと誰に対してもカメラを向けていて、中でも家族にカメラを向けた時ウソ臭いとムチャクチャに怒って窪田が驚くくらいの口の悪さを見せるところなど笑ってしまう。
カメラを回しているときこそ正体が現れる感じで、職業にした分、発想が型にはまる業界人っぽさをいちいち避けて描けている。
家族同士でハグや、一家の母親の出番、佐藤浩市がいなくなってからのオフのシーンの暗示機能の使い方がいちいち上手い。