戦争が「外」から迫ってくるより、身近なところがいつのまにかじわじわと変質していく感じが強い。
スウェーデンは永世中立国だから直接交戦することはない建前だが、旧ソ連がすぐそばにあるわけで戦争と無関係ではいられず、かといって直接関与はできない隔靴掻痒感が反映しているのだろうが、それ以上に戦闘員同士でだけ戦われるという近代戦の建前を裏切って非戦闘員・一般人を容赦なく巻き込んでいく現代の戦争の普遍的な性格がよく出た。
ベルイマン作品で女ががらっと変わるところはたびたび見せられてきたが、ここではマックス・フォン・シドーの卑怯で臆病な夫がくるっと裏返しになるように暴力的になるあたりが凄味がある。
リブ・ウルマンはいまさら誉めそやすこともない名女優だが、これはとびきりの、これ以上考えられないような名演を示す。
(☆☆☆★★★)
もともとの「アリス」の内容って、成長とか葛藤とかいったドラマ的な要素を排した、およそナンセンスなものではないのかなあ。
今回はアリスの年齢を19歳に上げて、かつて行ったことのある不思議の国を忘れているという設定にしているわけだが、もとのアリスは子供といっても相当に強情でイノセントなわけではないし、不思議の国が何かの象徴というわけでもない。
モチーフがないものをアレンジしようとしてもムリがある。
結局、元の話を教訓寄りにしてなぞった以上になっていない。
いろいろおなじみ(だと思うけど)のクリーチャーが出てくるのだけれど、オールCGでやられるとなんかみんなプラスチック製みたいで気持ち悪いね。不思議の国も人工的すぎてかなり息苦しい。
(☆☆☆)
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今回はアリスの年齢を19歳に上げて、かつて行ったことのある不思議の国を忘れているという設定にしているわけだが、もとのアリスは子供といっても相当に強情でイノセントなわけではないし、不思議の国が何かの象徴というわけでもない。
モチーフがないものをアレンジしようとしてもムリがある。
結局、元の話を教訓寄りにしてなぞった以上になっていない。
いろいろおなじみ(だと思うけど)のクリーチャーが出てくるのだけれど、オールCGでやられるとなんかみんなプラスチック製みたいで気持ち悪いね。不思議の国も人工的すぎてかなり息苦しい。
(☆☆☆)
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かなりエロい内容のはずなのだけれど、なんだか映画の体温が低い感じ。そのくせ部分的に妙にエキセントリックだったりする。
矢崎仁司監督らしく全体に空気感(というのも曖昧な言い方だが)を大事にした作りなのだが、そういう作りだといったん乗り損ねるとまったく乗れないで終わってしまう。
(☆☆☆)
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私がシナリオを書いたビデオが4月16日にリリースされました。よろしく。
なお、シナリオそのものはこちらに載っています。映像版とは結構違います(シナリオ題名「鏡のある部屋」)。
なお、同シリーズで「19歳女子大生 聡子の場合」も来月発売予定ですが、こちらの最初のシナリオ(「病院」)はこちら。内容は完全に別物です。
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これ、タイトルを隠して見たらまずベルイマン作品だと思わないだろう。ストーリーも撮り方もフツー、というより凡庸。主演のデヴィッド・キャラディーン(妙な死に方しましたな)は顔が長いから出たのかな、という感じ。マックス・フォン・シドーもエルランド・ヨセフソンも顔長いものね。
第二次大戦前のベルリンを舞台にしていて、製作はディノ・デ・ラウレンティスなもので、風俗の再現をずいぶん贅沢にやっている。「ファニーとアレクサンデル」(製作費約10億円)より金かかっているのではないか。実はそれ以外あまり見所はない。
タイトルになっている蛇の卵の設定がさほど刺激的でないのが困ったところ。普通の娯楽映画でもいくらももっとどぎつい設定できるだろう。
(☆☆★★★)
一組のカップルを拉致した男が、それぞれに徹底的な肉体的苦痛を強いて、それでも相手のために耐えられるかというという「自己犠牲」による「感動」をマジで求める。
肉体の責めとともに観念性を突き詰めたところがユニーク。ロンドンで上映したら本気で怒る人が出たらしいけれど、グロな描写以上に拠って立つ考え方を揺さぶるところがあるからではないか。
とことん肉体を痛めつけてしかも死なせない責め役が医者という設定なのが説得力がある。医者というのは、必ず人体を何人もバラバラにしているのですからね、どこか感覚が常人と違っているに違いないというのがアタクシの偏見。
文字通り肉体を一寸刻み五分試しにしていく描写は、実は体が損壊するところは案外見えない。特殊メイクに手間と費用がかかりすぎるからではないか。
(☆☆☆★)
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肉体の責めとともに観念性を突き詰めたところがユニーク。ロンドンで上映したら本気で怒る人が出たらしいけれど、グロな描写以上に拠って立つ考え方を揺さぶるところがあるからではないか。
とことん肉体を痛めつけてしかも死なせない責め役が医者という設定なのが説得力がある。医者というのは、必ず人体を何人もバラバラにしているのですからね、どこか感覚が常人と違っているに違いないというのがアタクシの偏見。
文字通り肉体を一寸刻み五分試しにしていく描写は、実は体が損壊するところは案外見えない。特殊メイクに手間と費用がかかりすぎるからではないか。
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語り口、展開の斬新にして鮮やかなこと、目を見張るばかり。
難民としてのエイリアン、という像を作り上げた創意。舞台がヨハネスブルグ、というところから現実の人種差別ともつながっているのは当然だが、まずストーリーテリングありきで、簡単に寓意が透けて見えないところもいい。
人間だけでなくエイリアンも武器をやたら揃えていて、それが人間との交渉の「通貨」になっているのが痛烈。もうひとつの「通貨」がキャットフードというのもまた痛烈。
CGを全編にわたって使いながらドキュメンタリー・タッチを通す技術のすごいこと。
小役人みたいな感じで出てきた男が思いがけない形で役割がどんどん膨らんでいき、しかもありがちな「いい話」に落とし込む地雷をことごとく避けてまわる見事さ。
エイリアンの子供が点景みたいに出てきて次第に出番が膨らんでいくあたりもうまい。
銃撃戦の生々しさや、ヘリコプターが絶えず上空から見張っている、あるいはありとあらゆる局面が監視カメラほかで撮られているのを巧みに「リアリティ」に取り込んだ作り。
パワード・スーツみたいなのに乗って戦うシーンがあるけれど、戦っているうちにボロボロになって、よたよたしてくるあたりの動きのつけ方がすごい。
(☆☆☆★★★)
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難民としてのエイリアン、という像を作り上げた創意。舞台がヨハネスブルグ、というところから現実の人種差別ともつながっているのは当然だが、まずストーリーテリングありきで、簡単に寓意が透けて見えないところもいい。
人間だけでなくエイリアンも武器をやたら揃えていて、それが人間との交渉の「通貨」になっているのが痛烈。もうひとつの「通貨」がキャットフードというのもまた痛烈。
CGを全編にわたって使いながらドキュメンタリー・タッチを通す技術のすごいこと。
小役人みたいな感じで出てきた男が思いがけない形で役割がどんどん膨らんでいき、しかもありがちな「いい話」に落とし込む地雷をことごとく避けてまわる見事さ。
エイリアンの子供が点景みたいに出てきて次第に出番が膨らんでいくあたりもうまい。
銃撃戦の生々しさや、ヘリコプターが絶えず上空から見張っている、あるいはありとあらゆる局面が監視カメラほかで撮られているのを巧みに「リアリティ」に取り込んだ作り。
パワード・スーツみたいなのに乗って戦うシーンがあるけれど、戦っているうちにボロボロになって、よたよたしてくるあたりの動きのつけ方がすごい。
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ワーナー・ホーム・ビデオ |
これまで見た最も怖い映画、といったら、これを挙げる。
といっても、最初にテレビでカット版を見た時、怖い映画だと知らないで見たせいが大きいので、巨匠ベルイマンの普通の芸術映画(というのも変だが)だと思って見たら、、奇妙な子供が吸血鬼みたいに噛みつくわ、人食い一族は出るわ、不気味な鳥が群れをなして羽ばたくわ、ばあさんが目玉をくりぬいてワイングラスに入れるわ、男が突然壁を登って天井にぶら下がるわ、明らかなホラー調の演出も含めて、悪夢感覚をこれほど出した映画も稀。
改めてノーカット版を見ると、オープニングの撮影現場のセットを組み立てているらしき音や、リブ・ウルマンのカメラに向かっての長台詞などが初見で、「仮面ペルソナ」の冒頭同様の異化効果でリアリズムから離れる下地になる。
特典についていたウルマンのインタビューによると、妊婦の役だったのだが、撮影時実際にベルイマンの子供を妊娠していて、出産してから撮影を続行したのだという。
撮影現場のスナップを見ると、スタッフの数が少ないのに驚く。たいていのシーンは五人くらいで、多くても十人といないようなのだ。確かにその程度で撮れる規模の映画だが、ほとんど自主映画か小劇団の公演みたいなスケール。
マックス・フォン・シドーの何かに憑りつかれたような演技は、「エクソシスト」のベテラン悪魔祓い師で裏返しの形で生かされることになる。
画家の役なのだが、どんな絵を描いているのかわからない。映画自体が心象風景になっている体。
妻のウルマンをスケッチするシーンが短いが適切な愛情表現になっていて、一緒に暮らしている夫婦が考え方が似てくるというセリフとともに、愛しているからこそ夫の妄想が伝染するのがはっきりわかる。
シドーが釣りをしているところで妙な子供が後ろに立つシーン、ただ立っているだけなのに、シドーが釣り糸の処理で振り向けないのがなんともいえず怖い。背景に海の波がずうっと写り続けているのが、見ているこちらの心までざわつかせる。
MGMの吼えるライオンのロゴが、しかもカラーでついているのが妙な感じ。当時のベルイマン作品はMGMが配給していて、日本支社が公開の努力をさぼったものだから劇場公開されなかったらしい。
(☆☆☆☆)
フェイク・ドキュメンタリーなのだが、劇中ビデオの作り手以外の、つまりこの映画そのもののスタッフ・キャストの名前は一切出てこない。
全編を通じて、画面にはアンガールズや江口ともみやダンカンや荒俣宏といった人たちがテレビで見る姿そのまんまとして出てくる以外、まったく知らない人しか出てこない。今見ると、飯島愛が出ているのが怖い。ひどく不健康なやせ方をしているのがまた怖い。
実際はきちんと世界観を構築した上でストーリーテリングもがっちり計算された劇映画なのだが、ふつうの映画がとぼけている「カメラの介在」をはっきり打ち出すことで、写っていないものの存在をかえってありありと感じさせる。
「普通の」人の顔がそれぞれ一種異様な歪み方をしているのがすごい。そういう人を選びましたという感じではなく、テレビや映画に出てくるつるんとした美男美女ではない人間の顔というのは、こういうなまなましさや怖さをもともと持っているのではないかと気づかされる。
ホームビデオを撮っているうちに、それまでにこにこ料理を作って運んでいた女の子が一瞬ののちに異様に硬直し、窓の外に鳥がぶつかってくるのが無作為(のよう)に写ってしまうシーンは戦慄的。
クライマックスの「家」の中の造作など、実際はすごい手間と金をかけていると思わせる。
(☆☆☆★★★)
もともとの話のヒロインの娘の話にする、というのが工夫。
しかし、タイムリープなんて本来荒唐無稽な話を聞かされてあまり気にしないで受け入れてしまうわ、見通しのいい道路で横断歩道の中にいる母親のもとにブレーキもかける様子もなく自動車が突っ込むわ(人身事故起こしたドライバーは後始末どうした)、入院している母親をおっぽり出して時間旅行に行くわで、コレ大丈夫かと思わせるが、過去に入ると仲里依紗が良いのでガタピシしながらなんとか持つ。
今回は、まだ「スター・ウォーズ」('77)が現れる前の74年という設定で、映画監督志望の八ミリ青年の趣味も作品傾向もアナログ丸出し。
その他、銭湯やら一間のアパートなど「神田川」的な世界が今回の背景。微妙に、というか、かなり違う気がしますけれどもね。いきなり見も知らない女の子を自分の部屋に連れ込んでおいて、まるでセックスが出てこないし。
それにしても、ヒロインの父親が誰なのか、ちゃんと顔出さないままというのはどういうつもりなのだろう。誰なのかわかることはわかるけれど、もったいぶる意味がわからない。
(☆☆☆)
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時をかける少女 - goo 映画
しかし、タイムリープなんて本来荒唐無稽な話を聞かされてあまり気にしないで受け入れてしまうわ、見通しのいい道路で横断歩道の中にいる母親のもとにブレーキもかける様子もなく自動車が突っ込むわ(人身事故起こしたドライバーは後始末どうした)、入院している母親をおっぽり出して時間旅行に行くわで、コレ大丈夫かと思わせるが、過去に入ると仲里依紗が良いのでガタピシしながらなんとか持つ。
今回は、まだ「スター・ウォーズ」('77)が現れる前の74年という設定で、映画監督志望の八ミリ青年の趣味も作品傾向もアナログ丸出し。
その他、銭湯やら一間のアパートなど「神田川」的な世界が今回の背景。微妙に、というか、かなり違う気がしますけれどもね。いきなり見も知らない女の子を自分の部屋に連れ込んでおいて、まるでセックスが出てこないし。
それにしても、ヒロインの父親が誰なのか、ちゃんと顔出さないままというのはどういうつもりなのだろう。誰なのかわかることはわかるけれど、もったいぶる意味がわからない。
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歌舞伎町は、以前は四方どちらを見渡しても映画館があったのですが、今ではミラノビルの四館だけ。
新宿ジョイシネマ1,2の正面です。
同。
新宿ジョイシネマ3の跡。
新宿ジョイシネマ1,2の裏。
新宿オデオン、アカデミー、グランドオデオン、オスカーの跡。
同。
新宿プラザの跡。
うんと昔は歌舞伎町日活だったような気が。何度も何度も名前が変わりました。
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うんと昔は歌舞伎町日活だったような気が。何度も何度も名前が変わりました。
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こういうとなんですけど、あれだけ早いうちからイメージやら回想やらが入り乱れて「頭の中を覗いてみましょう」をやっているのに、オチがどうって言ってもはじまらないのとちゃいまっか。宣伝に脳学者は起用するわ、本編前にいりもしない錯視画像みたいなもの見せるわで、日本側宣伝が出さなくていい馬脚出してるんだし。
で、手の内をさらした上で、リアリズムとは離陸した脳内世界を作ろうとしたのかと思いながら見たら、これがまるまる買いかぶり。
出だしが音楽といいカメラワークといい、やたらものものしい(背景の空まで作っているのがはっきりわかる)けれど、たかが女囚の脱獄あるいは失踪ですよ。そんな不可能性の高い脱獄やらかしているのかどうかもわからないし、島だから逃げられないとかいってまじめに捜索している様子もないしで、つかみとしたらずいぶん弱い。
で、展開は輪をかけて弱い。ナチスの収容所のシーンなど、何が本筋に関わるのかちゃんと売ってないし、後の方でもちゃんと買ってない。女の子ってところだけでなんとなくつなげるって、「シンドラーのリスト」のモノクロ画面に女の子の服だけ赤い色をつけて何事かを表現したようで何もしていないのと同じ轍を踏んでいる。
ナチスからスターリンから北朝鮮から赤狩りから洗脳について言葉としては大動員してるけど、そりゃあなた脳がどうこういうより理屈でつなげてるだけですよ。
ロボトミーの恐怖って、口で言われたってわかりません。脳をいじられてどう人間が変わるのか、「外からの」具体で見せないと。脳をいじられている人間の側から脳の働きが見えるわけないし。
何やらデヴィッド・リンチみたいな色調で描かれる奥さん絡みのイメージシーンとか、短時間で一気に銃殺する人数の記録を作ろうとしているみたいなアメリカ兵によるナチス虐殺とか、映像スタイルはバカみたいに凝っているのですけどね。
ディカプリオが強い光を見ると錯乱するという描写が前の方にあって、クライマックスの舞台が灯台とわかってからは、当然灯台の光がものを言うのだろうと思ったら、なんと点灯すらしない(だったら、なんで島に灯台があるんだ)。なんのために、嵐の中の車のヘッドライトをあんなにびかびか光らしてたの。暗闇の中のマッチの炎を強調したの。尻抜け。
C棟のセットが、平面だけでなく高さも生かした迷宮調で、「薔薇の名前」みたいと思ったら、果たせるかな同じプロダクション・デザイナーのダンテ・フェレッティ製。
音楽がリゲティやペンデレッキってねえ。音楽自体の値打ちは別として、「2001年宇宙の旅」や「エクソシスト」から何年経ってるのですか。
戸田奈津子が字幕と吹き替え両方の翻訳やるって、政治力の発動に思えてならない。
(☆☆☆)
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で、手の内をさらした上で、リアリズムとは離陸した脳内世界を作ろうとしたのかと思いながら見たら、これがまるまる買いかぶり。
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で、展開は輪をかけて弱い。ナチスの収容所のシーンなど、何が本筋に関わるのかちゃんと売ってないし、後の方でもちゃんと買ってない。女の子ってところだけでなんとなくつなげるって、「シンドラーのリスト」のモノクロ画面に女の子の服だけ赤い色をつけて何事かを表現したようで何もしていないのと同じ轍を踏んでいる。
ナチスからスターリンから北朝鮮から赤狩りから洗脳について言葉としては大動員してるけど、そりゃあなた脳がどうこういうより理屈でつなげてるだけですよ。
ロボトミーの恐怖って、口で言われたってわかりません。脳をいじられてどう人間が変わるのか、「外からの」具体で見せないと。脳をいじられている人間の側から脳の働きが見えるわけないし。
何やらデヴィッド・リンチみたいな色調で描かれる奥さん絡みのイメージシーンとか、短時間で一気に銃殺する人数の記録を作ろうとしているみたいなアメリカ兵によるナチス虐殺とか、映像スタイルはバカみたいに凝っているのですけどね。
ディカプリオが強い光を見ると錯乱するという描写が前の方にあって、クライマックスの舞台が灯台とわかってからは、当然灯台の光がものを言うのだろうと思ったら、なんと点灯すらしない(だったら、なんで島に灯台があるんだ)。なんのために、嵐の中の車のヘッドライトをあんなにびかびか光らしてたの。暗闇の中のマッチの炎を強調したの。尻抜け。
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ゲイ役っていうのは役者にとってかなりリスキーだろうけれど、製作にフランスが絡んでいるのね。
「これは実話である」と冒頭にタイトルが出たあと「実話なんだってば」と念を押すのが笑わせるけれど、本当にちょっと信じられないような話。ふつうの作り話として作ったら、こんなバカなことあるかと言われそう(それを逆手にとって、実はホラだったりして)。
笠原和夫が「(東映の)実録ものというのは、堂々とウソが言えるということなんです」という言もあるしね。
ジム・キャリーと並ぶとイアン・マクレガーがかなり小さいのがわかる。いかにもムショででかい凶暴なホモに可愛がられれそう。
(☆☆☆★)
デュエリスト-決闘者- [DVD]パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパンこのアイテムの詳細を見る |
リドリー・スコットの長編デビュー作。
久しぶりに再見したら、今と違ってずいぶんとスタティックな芸術映画風の作り方をしている。「バリー・リンドン」ばりの泰西名画風の画面の連続。
もっとも、俳優の演技を当人たちの力量に頼って、それ以上のアンサンブルを作ることがない欠点もここですでに露呈している。主人公二人が何十年にもわたって決闘また決闘しているのだけれど、くされ縁が続く中たまにぶつかると決闘しているだけで、葛藤が沸騰した結果戦っているわけではないので、かなり単調。変化するのは背景と決闘の道具立てだけで、周囲のキャラクターとの絡みもエピソードどまり。
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デュエリスト(1977) - goo 映画