堀辰雄の原作は最初からほとんど恋人たち二人だけの話だし、発表されたのが昭和13年だから戦争の前。織田作之助の「夫婦善哉」と同じ頃で、とにかく男と女二人きりの話という点で奇しくも一致している。ちなみに阿部定事件は昭和11年。
原作はほとんど二人だけの描写に終始している上、戦争が絡むわけではないから映画化するには話や創作人物を付け加える必要が出てくる。
1954年版だと山村聡扮するヒロインの父親とのホームドラマ的な側面が強くなった。同じ堀辰雄の「菜緒子」(未読)あたりからもってきたものだろうか。
ヒロインが亡くなるあたりで火山が爆発して、林の中を担いでまわるといった思いのほかずいぶん派手な趣向。撮影は「姿三四郎」「人情紙風船」などの三村明。
サナトリウム周辺の高原の自然描写が美しい。
東通工 テープレコーダー使用
日本野鳥の会が協力というのが目をひく。
島耕二、脚色監督, 島耕二. 脚本, 桂一郎、村山俊郎. 原作, 堀辰雄. 製作, 伊藤基彦、三輪 礼二、瀬良庄
太郎. 出演者, 久我美子、石浜朗. 音楽, 芥川也寸志. 撮影, 三村明. 製作 会社, 東京映画、大雅社. 配給,
東宝. 公開, 1954年5月19日. 上映時間, 101分.
1976年の山口百恵、三浦友和のコンビ版は前田米造の森を捉えた撮影が美しく、意外なくらい文芸映画的な格調が高い。
これが一番日本の軍国主義化を具体的に描きこんでいて、悲劇的なムードを高めている。それにしても、三浦友和は後年かなりだらしのなかったり卑怯だったりする役もこなすようになるが、この頃はすごい古典的な二枚目で、今のイケメンとはずいぶん感じが違う。
山口百恵はあまり細かい芝居をしないで本来どっしりとした肉体を感じさせる分、結核で死んでいくというお話とは逆に生命力を感じさせる。
監督, 若杉光夫. 脚本, 宮内婦貴子. 原作, 堀辰雄. 製作, 堀威夫 · 笹井英男. 出演者, 山口百恵 · 三浦友和 · 芦田伸介 · 森次晃嗣 · 夏夕介. 音楽, 小野崎孝輔. 撮影, 前田米造. 編集, 井上治. 配給, 東宝. 公開 1976年7月31日
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