prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

5月30日(水)のつぶやき

2018年05月31日 | Weblog

「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」

2018年05月30日 | 映画
紫に塗られたモーテルをはじめ素晴らしくカラフルな画面とは裏腹のとんでもなく貧しいシングルマザーと子供たちの劣悪な生活が描かれる。

ブルックリン・キンバリー・プリンスの可愛らしさと自然さは大袈裟でなしに映画史に残ると思う。
母親役のブリア・ビネイトが役者としては素人というのに驚くとともにさもあらんと思った。

母親の影響だろう、子供たちが可愛い一方で言葉遣いがひどい。他人の車に唾をとばして遊んだり、とんでもなくしつけが悪い。
見ていてむかっとくることも再三なのだが、ぎりぎりのところで反発を覚えるのを避けきる。

ウィレム・デフォーが管理人という仕事上の役割のみならず、作品全体の住人たちとの距離感の取り方が見事で、映画全体の良識の軸になっていると思える。
役者の知性がほとんど映画の軸にまで至っている見事な例。
(☆☆☆☆)

「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」 公式ホームページ

「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」 - 映画.com

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5月29日(火)のつぶやき

2018年05月30日 | Weblog

「沖縄やくざ戦争」

2018年05月29日 | 映画
千葉真一が内地人が大嫌いな沖縄ヤクザ役で、内地からやってきたヤクザ幹部の前で空手の演武をやってみせて追い払うのが、ほとんど虫か動物の威嚇みたいで生き物そのものの生態といった迫力あり。

「ドーベルマン刑事」の映画版でも千葉が沖縄出身という設定にしていたのとつながるところもあるのだろう。
ヤクザ映画がマイノリティをキャラクター設定に生かすのは当然として、沖縄人がこれ見てどう思うかはよくわからない微妙なところはある。

エンドタイトルに「琉歌指導 竹中労」と出る。
沖縄海洋博の利権争いという設定も説得力あり。

「沖縄やくざ戦争」 - 映画.com

千葉真一「沖縄やくざ戦争」撮影秘話を吐露「全て内地で撮った」

「極悪非道の千葉真一」2本立て

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5月28日(月)のつぶやき

2018年05月29日 | Weblog

「孤狼の血」

2018年05月28日 | 映画
東映実録路線、特にヤクザと見分けがつかない刑事が主役の「県警対組織暴力」の再生みたいなのかと思ったら、確かにそういう面もあるけれど意外といい意味でアップデートされていた。

まず当時の東映のしばしば大部屋出身の俳優たちの殺伐とした、しかし飼われている立場には違いないハングリーさと屈折は今の役者(というか日本人)にはちょっと出しようがないので、ピエール瀧に代表される半笑いと愛嬌で替えている。

役所広司はこれまでヤクザ役として「大阪極道戦争」「シャブ極道」に主演しているけれど、一種の軽さや可笑しさといったものを上手に持ち込んでいて、今回も正統的な役者としての感じとストーリー展開が噛み合った。

このところ好調の松坂桃李が初めの内広島大学出の学士さまとバカにされていたのが、まずボコられて顔中傷だらけになるところから途中から目が殺気立ってくる。
続編の製作が決まったそうだけれど、当然次の主役ということになる。
場内は男ばっかだったけれども、この人だったら女性客も呼べるはずで、そのあたり工夫のしどころになる。

暴力描写が技術の発達の分リアルになっていて、生々しいだけでなく視点移動でもさりげなく凝ったところを見せる。

「孤狼の血」 公式ホームページ

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5月27日(日)のつぶやき

2018年05月28日 | Weblog

「ランペイジ 巨獣大乱闘」

2018年05月27日 | 映画
東京都庁とか横浜ランドマークタワーのような巨大な建物の傍らに立つとゴジラの大きさが目立たないのが問題になったことがあったが、ここでは数十メートルの単位の大きさのゴリラ、オオカミ、ワニを人間との比較で巨大感を出すのと、彼らがビルと絡んで動き回る映像自体の巨大感で見るものを圧倒するのとを使い分けている。

アメリカ映画はおしなべて巨大感出すのが上手いが、水の中で影しか見せずに移動しているでかい奴にぶつけられて傾く船で表現して(ちょっと「ジョーズ」っぽい)気を持たせておいて、どーんとそいつが空中に跳ね上がって全身の姿をなめるようにして見せるあたりのスペクタクル感覚が秀逸。

もとからいる生物が巨大化するに従って新しい形態や能力(武器)を獲得するのが怪獣っぽい。というか、ほとんどバルゴン→アンギラスとバランではないか。

ロック様ことドゥエイン・ジョンソン(しかし出演作が本当にひきもきらなず漏れなく面白い)自身が怪獣みたいなもので、なぜか拘束ベルトをあまり意味なくされていたのをいざとなると引きちぎって暴れだすのには笑った。

笑ったといえば、エンドタイトルにBarber for Dwayne Johnsonと出たのも笑った。調べてみるとこのRachel Solowという人、ずっとロック様のへアスタイリストを務めているのだね。あのスキンヘッドに専用の人がついているというのが失礼ながら何とも可笑しい。
(☆☆☆★★★)

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5月26日(土)のつぶやき

2018年05月27日 | Weblog

「タクシー運転手 約束は海を越えて」

2018年05月26日 | 映画
武器を持たない市民に実弾を発射するのが衝撃。軍というのはそういうこともするのだという、実はあたりまえのことも画面で見せられると印象がまったく違う。
私服の軍人が警棒や、場合によっては銃を持って追ってくるのも凄く怖い。マックス・ウェーバーは「国家」を「正当な物理的暴力行使の独占を要求する共同体」いわゆる暴力装置と呼んだが、「正当な」という条件がたとえば北朝鮮のスパイとかアカとかいったレッテル貼りでいとも簡単に外れるのもわかる。

ちょっと裏道を通って隣町に行くとまったく違う国に出たかのように平和で、光州で行われている弾圧などまっさかさまな形で報道されているあたりの悪夢のようなリアリティ。
すぐそばのことでも、メディアを通してしか見ていないというあたりまえだが重要なことを改めて教える。

1980年の出来事というからそれほど昔ではないので、抵抗も弾圧もすごく激しい韓国と、異常なくらいおとなしい(というか飼い慣らされている)日本という彼我の差を感じざるを得ない。

意外とソン・ガンホは顔が庶民的なわりに背が高くて脚が長く、西洋人と並んでもバランスがとれる。
庶民そのものの感覚からイデオロギー的に目覚めるというよりはこういうひどいことを見逃してはいけないという自然な人間的感情の推移として見事に演じている。

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5月25日(金)のつぶやき

2018年05月26日 | Weblog

「モリーズ・ゲーム」

2018年05月25日 | 映画
脚本監督アーロン・ソーキン。「ソーシャル・ネットワーク」にせよ「スティーブ・ジョブス」にせよシーン=シークェンスが塊のようにごつごつつながってその中でセリフがみっちり粘っこくやりとりされるスタイルなわけだけれど、初監督作でも基本的には一緒。

オープニングのスキーシーンなど本筋とは関係ないところをすごく本格的に撮っていて、象徴とかドラマ上の設定以上の存在感を示しているところなど典型。

作中でモリー・ブルームという名前はジェームス・ジョイスの「ユリシーズ」の主人公レオポルド・ブルームの妻のそれであり、おおもとのオデッセウスの妻が夫の帰りを待ち続けるのに対して浮気者、という具合に性格は正反対なのだが、これが実在の人物の名前なのだから、何かすごい偶然というか現実が小説を模倣した格好。

現実が小説を模倣したみたいなのはもうひとつ、アーサー・ミラーの「るつぼ」が狭い世界で人間たちが煮詰まっているイメージとして重ねられている。
このあたりはライター出身の文学嗜好みたいなものだろうか。

ジェシカ・チャスティンのハードボイルドタッチはいつもながら好調。
ケビン・コスナーが歳食ってまたよくなってきた。

「モリーズ・ゲーム」 公式ホームページ

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5月24日(木)のつぶやき

2018年05月25日 | Weblog

「MIFUNE: THE LAST SAMURAI」

2018年05月24日 | 映画
それにしても三船のポートレートの多くがタバコ吸っている姿だったり、酒と車が好きとあって、ぶつけた車の写真が出てくるのが時代。今だったらえらいことになるだろう。

三船敏郎の掃除好き綺麗好きは有名だけれど、掃除している写真は初めて見た。率先して出社して掃除していたという。

三船プロの社員が250人もいたというのには驚いた。一種、東宝としてみればアウトソーシングだったわけで、かけもちを許さない黒澤組では一年くらい拘束されて他の仕事ができないとなると社員が干上がってしまうから組みたくても組めないといった事情があったらしい。

いつ頃から撮っていたのか、加藤武、土屋義男、中島春男、夏木陽介の四人の故人が写っている。

土屋嘉男がとにかく三船さんは我慢の人だったと繰り返す。徴兵されて軍隊にいた間に中国の大連にいた両親が亡くなっている、それもどんな状況だったかもわからないとさらっとナレーションで言われるのにどきりとする。

最初と最後にサイレント映画時代のチャンバラを置いているという構成はもともと様式的なチャンバラを壊したのが黒澤=三船だったということだろうが、ちょっとつながりがわかりにくい。

「用心棒」の撮影現場をプロデューサーで東宝の重役の田中友幸が撮った8ミリのカラーフィルムというのが出てきて、すごいごつい送風機を見られる。

タイトルの人名が全部ローマ字表記なので、ぱっと見誰だかわかりにくい。海外向けということだろうか。

司葉子が東宝は男性向けの映画が主で、女性向けの映画が松竹に行って初めて撮れたと語る。東宝がチャンバラとアクションとサラリーマンもので、東映が時代劇と任侠ものだった時期だものね。今では女性客抜きの興行は考えられないが。

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5月23日(水)のつぶやき

2018年05月24日 | Weblog