prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「単騎、千里を走る。」

2006年02月28日 | 映画
たまたま日本語の台詞や効果音にもいちいち字幕が出る聴覚障害者用のプリントで見たのだが、ずいぶん字幕の量が多い感じ。
もともと寡黙な印象の強い高倉健だから、まるで言葉が通じない国に置かれてもサマになるとともに、逆に言葉の大切さをを学ぶ格好。やはりコミュニケーションの基本はコトバということか。
素人の通訳を使わざるをえなくくなり、しょっちゅう本職の通訳の女性を呼び出さざるをえないあたりのたくらみの巧さ。ドキュメンタリー風に淡々と撮っているように見せて、父親と息子の関係が二重になるあたりもストーリー的な仕掛けはよく考えている。
デジカメや携帯、ビデオカメラなどを使いこなしているのは、ちょっとイメージからすると意外のようでうまくはまっている。

子供がいきなり逃げ出してしまうあたりの中国の国土のデカさを使った怖さ。考えてみると、子供からすればいきなり外国人が来て多分今まで出たことのない村から連れ出そうとするのだから、怯えるのも無理はない。
やたら威張る警官や村長なども、いかにもいそうでコミカル。

日本の場面の画調がまったく違うので違うカメラマンだなと思ったら、監督まで「鉄道員」コンビ。
(☆☆☆★★★)

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中国「イーストウッド監督で南京事件映画」 代理人「全くのウソ」

2006年02月27日 | Weblog
中国「イーストウッド監督で南京事件映画」 代理人「全くのウソ」
 【ワシントン=古森義久】日本軍の南京攻略を題材とする映画が米国のハリウッドで著名な俳優のクリント・イーストウッド氏の監督で制作されるという情報が中国の新聞などで流されていたが、イーストウッド氏のエージェント(代理人)は二十四日、「全く事実に反する」と述べ、同監督の関与を完全に否定した。
 一九三七年の「南京事件を主題とするハリウッド映画」という話は一月十八日付の上海の新聞「文匯報」などによって伝えられた。同紙は、この映画が江蘇省文化産業グループなどの制作協力を受けてイーストウッド氏が監督、同氏と映画「マディソン郡の橋」で共演した人気女優メリル・ストリープさんが出演し、ハリウッド映画として作られ、二〇〇七年十二月の南京事件七十周年を記念して全世界で同時公開される予定となったとの記事を掲載していた。
 「南京・クリスマス・1937」と題され、南京に当時いた米国人宣教師の目を通して日本軍の中国人大量殺害を描く内容になる見通しだったという。
 しかし、イーストウッド氏の代理人を務めるウィリアム・モリス・エージェンシー社(カリフォルニア州ビバリーヒルズ)のレオナード・ハーシャン氏は二十四日、産経新聞の電話インタビューに応じ、「南京事件に関する映画にイーストウッドが出演するとか監督をするという話はまったく事実に反する」と述べた。さらに同氏は「イーストウッドがこの話にはまったくかかわっていないことを日本や中国の人たちに幅広く伝えてほしい」と強調するとともに、「私自身は数カ月前にこの話を中国の新聞で読んだという中国人から聞いたが、だれかが広め始めたデマだといえる」と説明した。
 さらに関係者によると、イーストウッド氏は現在、太平洋戦争の硫黄島の戦闘を題材とした映画を日米両国の視点から制作しようとしているため、ここ一、二年のスケジュールは詰まっており、女優のストリープさんも多くの企画を抱えて南京事件の映画に出演する余裕はないはずだという。
 ハーシャン氏ら当事者のこうした否定表明から判断すると、「クリント・イーストウッド氏が南京虐殺の映画を監督する」という話はそもそも根拠がなく、中国側の政治プロパガンダ、あるいは政治謀略的なディスインフォメーション(故意の虚報)として広められた可能性も高くなってきた。

--引用ここまで
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060226-00000011-san-int

なんだか、デマっぽい話だなあとは思ってたのです。ただ、ハリウッドが将来的に中国市場に食い込みたがっていることは確かでしょう。

まあ、中国のディスインフォメーション工作に比べると、日本の対応はプロレスラーと子供みたいなものですからね。
大体、そういう工作の存在すら知らないのではないか。だから自分が工作に知らないうちに加担していても気づかず、「善意」のつもりでバイアスのかかった情報が流れる。本多勝一の「中国の旅」など、典型です。
嘘のうまい相手は90パーセントの本当に10パーセントの嘘を混ぜたり、あるいは嘘を繰り返し何度も何度も流すことで効果をあげたりと、いろいろな手を使うから、対応が難しい。

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「力道山」

2006年02月22日 | 映画
「日本に来てから笑ったことがない」というのが一つの決め台詞になっていて、実際力道山役のソル・ギョングはほとんど笑顔を見せないが、力道山というと男っぽい愛嬌のある笑顔の印象が強いので、そうかなあ、と思ってしまう。
華やかさや愛嬌がなくてあれだけのスターになれたとは思えないので、やや違和感あり。

全編日本のシーンで、力道山の中の「韓国」とはどんなものだったのか、という突っ込みはあまりない。シルムの名選手だった兄の存在とか、朝鮮戦争で故郷が北朝鮮に編入されてしまったとか、豪邸に韓国の物で埋め尽くした一室があって、張本勲が出自から特別に入れてもらえたとか、帰国記事を新聞が書いたら出入り差し止めになったとか、いくらもドラマ的なネタはあるのだが。
ほとんど日本語の台詞をこなしたギョングの努力は認めるが、韓国語で喋るシーンの自然さと比べるとずいぶん硬くなっている。

橋本信也が東富士(日本人の実在の人物は全部仮名になっている)役で出てくるのが、今見ると異様な感じ。あと、船木誠勝が伊村(木村政彦)役で出たり、秋山準がちらっと写ったり。プロレスのシーンは、かなり今風にアレンジしてある。力道山がブランチャー使ったこと、あったっけ。昔の試合は、ビデオで見るともっと単調だった。

藤竜也が貫禄。
中谷美紀は綺麗だが、力道山夫人って、ああいう人だったとはとても思えず。息子も出てこない。
(☆☆☆)



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「ミュンヘン」

2006年02月20日 | 映画
爆発シーンで人間の身体がふわっとすっとんだりするなど、人間がまったく一個のモノとして描かれていて、スピルバーグ得意の即物的なタッチが横溢。リアルな分、脱色した画調とあいまって逆に悪夢のような感触が出ている。
主人公がよく悪夢を見るし、現実はその悪夢以上なのだ。

パレスチナ側とイスラエル側の面々がカットバックされるシーンがあるが、ここは両者を対置しているのではなく、どこが違うのかわからないのを見せている感じ。悪夢の中でもごっちゃになっていたみたい。

殺し合いの一方で「食」と「性」と、生きることそのものが端的に対置されているが、それ以上に救いらしい救いはない。簡単にそんなの言えるわけもないが、見終えてやりきれなくなるのも確か。

地味めの顔ぶれを揃えたキャスティングに加えて、ジェフリー・ラッシュやミシェル・ロンスデールなど最初誰だかわからないくらい役にはまって出てくる。

「スティング」とか「ベルモンドの交換結婚」など、当時の映画の広告がちらちらと目に入る。
(☆☆☆★★)

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「ヨシワラ」

2006年02月19日 | 映画
双葉十三郎の「ぼくの採点表」で最低の★★(10点)がついた映画(1936年製作・46年2月フランス映画としては戦後第一作として日本公開)。
「『マダム・バタフライ』の焼き直しみたいなお話。が、くりひろげられる場面は昔ながらの外国人によるフジヤマ・ゲイシャ・ウキヨエ趣味で、デタラメの極み。しかも、下品でいやらしく西欧人が日本の遊郭を眺めるときの最も卑しい視線が感じられる。失笑するより立腹したくなる非常識さ。見るに耐えない大ゲテモノである」というから、逆に期待して見た。

まあ、これと同じくらいデタラメなのは最近では「パール・ハーバー」をはじめとしていろいろあるし、下品な映画はこの時代とは比較にならないくらいエスカレートしているから、あんまりびっくりはしなかった。
日本を舞台にした日本人の女とロシア人の将校とのロマンスで、台詞はフランス語、ドイツ語と日本語の字幕がつく。どこの国の話じゃ。

お約束の風呂のシーンはなぜか大きな樽を風呂として使っていて、しかもそれが何十も一つ部屋に置いてあってそれぞれに女が入っていて顔を突き出す「黒ひげ危機一髪」みたいな光景には笑わせてもらった。日本語の手紙が全部漢字とか、中国とごっちゃにしているのもお約束。
ヒロインを取り調べる牢屋みたいなシーン、「忠君愛国」と大書してあるのだが取り調べ官が全然日本人に見えない(「スター・トレック」のスポックみたい)のも異様。

しかし、日本人の女と外国人の男の組み合わせは掃いて捨てるほどあるが、その逆は少ないね。映画でも現実でも。
早川雪洲が背が低いのがありありとわかる。

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「THE 有頂天ホテル」

2006年02月18日 | 映画
カウントダウンパーティがヤマに置かれているのだけれど、各エピソードにカウントダウンしていく切羽詰り感ってあまりないのだね。ここでしくじったら一生に響くといった話が少ないし、生きるか死ぬかのはずだった若手政治家のエピソードも、政治家に改心は求めないけれどケツをまくらせちゃマズいでしょ。ただでさえ勝手な真似してるのだから、それ以上勝手させてどうするのですか。

携帯の待ち受け画面(「くねくね踊り」に政治家の現金授受の現場)が重要な小道具になっているのだけれど、そのアップがないのはなんか物足りない。あざとくなるだろうが、おかしな写真を見せれば笑いをとれるところのはず。
歌を歌う場面がひとつのヤマになるはずが、歌そのものが良いとは思えないのでシマらなかったりする。ガチョウを使った腹話術ってどんなのだろうと思って待っているとちゃんと描かれなかったり、なんかメリハリが弱い。
(☆☆☆)

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おにぎり

2006年02月18日 | Weblog
このところ、昼に兄がおにぎりを作ってもってきてくれることが多い。夫婦それぞれの実家(片方が、つまりうちね)からお米をもらっているからせっせと新しいうちに食べようというわけ。
一度にたくさん炊いた方がおいしいということもある。あと、集まって食べた方がおいしいし、おにぎりにすると味が変わるのですね。まじめな話、圧力を加えると米のたんぱく質が変化してアミノ酸ができるかららしい。

で、広告です。
2006年3月11日公開の映画『かもめ食堂』公式HPのメニューはおにぎりだけ。原作は書店で見かけていたけれど、映画用書下ろしとは知らなかった。

【ストーリー】
ぷっくり太ったカモメたちがゆるりと青空を飛ぶ、北欧の港町ヘルシンキ。
その町の片隅に小さな食堂がひっそりたたずんでいました。そこは日本人女性サチエ(小林聡美)が店主をつとめる『かもめ食堂』。看板メニューはおにぎり。 しかし、来る日も来る日もお客さんは来ない。唯一来るお客さんといえば日本おたくのフィンランド青年“トンミ・ヒルトネン”くらい。
ある日、中年男性(マルック・ペルトラ)がやってきて、サチエにおいしいコーヒーの淹れ方の呪文「コピ・ルアック」をこっそり教えて去っていきます。 彼は一体何者?そんな毎日にもめげずに毎日食堂を開店するサチエのところに日本人女性・ミドリ(片桐はいり)とマサコ(もたいまさこ)もやってきて 何となく訳アリそうな人々が集まる『かもめ食堂』。
これから一体どうなるの?

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「オリバー・ツイスト」

2006年02月16日 | 映画
ポランスキーだからと思って見るせいもあるだろうが、結構コワい(近くの席のねえちゃんも終わった時そう言っていた)。考えてみると、子供が犯罪に加担させられる話だものねえ。
撲殺された女が発見される場面の血の流れ方とショックで取り落とされて飛び散る牛乳が、抑え気味だがポランスキー・タッチ。
判事の異様な威張りっぷりとか、警察の面子第一主義など、官憲の描き方が批判的。

セットが壮大かつ繊細に作りこんである割に銅版画のようなちょっと作り物っぽい感じを出していてリアリズムから少し浮いているので、やたらナマナマしくないので助かる。
風土感を出すのも、ポランスキーの得意技。まあ、全体にちょっとヌルい作りなのだが。

テレビ「シャーロック・ホームズの冒険」のワトスン役のエドワード・ハードウィックが親切な老紳士役。善人役者ですね。

ベン・キングスレーがすごいメイクで登場、最初誰だかわからないくらいだが、次第に地の顔がわかるようになるとともに、フェイギンというキャラクターの魂まで見えてくるような気がしてくる。名優が凝った作りすぎの芝居をしがちな役だが、一味違う。
(☆☆☆★)

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「キャリー2」

2006年02月13日 | 映画
「キャリー」のブロードウェイ・ミュージカル版というのがあって、史上最大の大赤字を出したそうだが、この23年ぶりの続編もなんだか呪いがかかっているみたいな出来。まあ、こういうのはヒドいのを承知の上で見てしまうものですが。

筋はほとんど前作の焼き直し。なんでヒロインのレーチェルが念力を持っているかというと父親が同じだからという強引な設定。その父親も全然出てこないし。
「鳥」の続編の「新・鳥」(!)なみに、中途半端なリメークを続編と称しているだけ。

前作で唯一生き残ったエイミー・アーヴィングがハイスクールの先生になって登場、しきりとレーチェルを救いたがるが、騒ぐだけ騒いで何の役にもたたず銛で頭を刺されて惨死するのだからヒドい。スピルバーグと離婚したのだからずいぶん慰謝料ももらったろうに、なんでこんな役やるかな。
シシー・スペイセクは出演を依頼されて断ったそうだが、そりゃそうでしょ。

カット(キャサリン)・シーアという女性監督だが、だからどうということもない。
(☆☆)

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「アラバマ物語」

2006年02月12日 | 映画
この映画の製作(1962)後もアメリカの保守層の嫌らしさを描く映画はずいぶん出たが、それらと比べても描写のタッチはおとなしい割に、内容の突っ込みは厳しい。
グレゴリー・ペックの堂々たる正義派の弁護士はAFIの投票によるアメリカ映画史上No.1のヒーローに選ばれたそうだが、今見ても不思議と白けない。

前半、子供の目を通して隣の謎の家を何やら怪奇映画のように描いているのは、ユニバーサル映画の伝統が妙な感じで出たか。ハムの仮装(!)をした語り手の女の子ががわずかな覗き窓から乱闘を見ているクライマックスも、子供の目という視点を通している。
この映画の悪役である無知による恐怖から差別と暴力に走る連中は、無知という点では子供のまま腐敗したのかもしれない。
ああいう父親を持てば、そういう腐敗には無縁だろうが。

出番はわずかだが、若き日のロバート・デュバルが重要な役で登場、台詞は一つもないのに全編を締めるのは、栴檀は双葉より芳しと思わせる。

偶然だが、先日見た「レジェンド・オブ・ゾロ」で悪役がアラバマ出身という設定になっていた。保守的という紋切り型のイメージがあるらしい。

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「群盗荒野を裂く」

2006年02月11日 | 映画
主演の故ジャン・マリア・ヴォロンテは有名なコミュニスト、監督のダミアーノ・ダミアーニは社会派ドラマ「警視の告白」の原案・脚本、脚本のサルバトーレ・ラウリーニはやはり「警視―」の脚本、となると、メキシコ革命を扱っている本作はマカロニ・ウェスタンとはいってもどこか革命論がかった感じがある。
ラストシーンの「その金でパンを買うな、ダイナマイトを買え」という決め台詞は、「目先のことにとらわれるな、戦い続けろ」というメッセージということか。

ヴォロンテがところどころ自分でもよくわからないで行動する、いきなり人を撃ったりするところが面白い。ゲリラ隊の隊長とはいってももっぱら金目当てで動いているのは、十分「目覚めていない」状態ということになるか。
実は革命指導者を暗殺するためにヴォロンテの部隊に潜入したアメリカ人と「友情」で結ばれているかのよう、というか結ばれてはいるのだが、騙されていたとわかると、結局許すことはない、というのも闘いに本来妥協はない姿勢を見せているよう。

もちろん映画自体はそんな理屈っぽい調子ではなく、あくまで野卑で荒っぽい調子を崩さないのだが、どこかスジが通っている。

ルー・カステル扮するアメリカ人が軸になって話が展開するのに、配役序列ではヴォロンテはおろか、ヴォロンテの弟役のクラウス・キンスキーより下。
(☆☆☆★★)

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