伏線の張り方と丹念な回収、ヒロインが肉体的ハンデと共に精神的なトラウマの克服というドラマをきっちり組み立てているのも最近珍しいウェルメイドな作り。
主演の吉岡里帆が眼が見えない人を演じるのに目をつぶったり視線を固定したりいった具合にことさら記号的に強調せず、まったく見えないわけではなく物の輪郭くらいはわかる設定もあって、それほど見えている人と違わない演じ方をしていて、それだけ感情表現も枠がはめられないでいる。
それが犯人に追われるところで階段を駆け下りるのに足元を見ないのに感心した。何でもないようにやっているけれど、相当に危険だし難しいだろう。
ここぞもいうところで目が見えない設定を生かすメリハリがついた。
盲導犬が実におとなしくいるのかいないのかわからないくらいで、エンドタイトルに「実際の盲導犬はしないこともしています」云々と出ているが、本当だと吠えもしないということか。
犯人に追われるところでスマートフォンを使って遠くにいる通話中の健常者に周囲の様子を見せながら逃げ道を教えてもらうというのは今風のガジェットを生かすいい工夫。これまたエンドタイトルで「列車の中でスマートフォンを持って歩くのは禁止されています」云々の字幕がご丁寧にも出るのに苦笑する。