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中国鉄路(国鉄)では4月18日に大ダイヤ改正が行われ、その目玉としてCRH(和諧号)と呼ばれる新型の動車組(中国では客車列車ではなく、電車や気動車の様に自走する旅客車両の事をこの様に呼称しています)を用いた高速列車(列車番号の頭にDという記号が付きます)が本格運行を開始しています。
(それ以前にも今年に入ってから上海近郊の一部列車などで充当され、中国で新幹線…と話題になりましたので、ご存知の方も多いかと思います)
この高速列車・和諧号で使用される車両は現在3種類が存在(他2種はボンバルディアとアルストームの車両で、今後更にバリエーションが増える見込みです)し、現在その大半を占めているのが日本のJR東日本で用いられている新幹線E2系をベースにしたCRH2と呼ばれる車両で、この車両は今までの中国鉄路で運行されている列車と異なり、出入口扉部分にステップが設けられていないのも特徴です。
(一般の中国客車は大抵の車両が低床・高床双方のホームに対応しており、高床ホームに発着する場合はステップを鉄板(跳ね上げ可能)で塞げる構造になっていますが、CRH(和諧号)の場合は発着ホームを高床ホームに限定する事で対応しています)
この車両は最初の数本が日本で製造されていますが、大半の編成は中国内の車両工場で製造されているのが特徴で、塗装は日本の東海道・山陽新幹線を意識しているかの如く白に紺色のラインが入っていますが、E2系ベースのこの車両にこの塗装もなかなか似合っており、同じく今年に入ってから中国で営業運行を開始し、離島某省で走り始めた新幹線車両よりもスマートな印象を受ける気がします。
また前面のライト数などがベース車両と異なっている他、CRHの表記とロゴの他に本格運行に先立って「和諧号」というネーミングが付けられ、この漢字表記が車両前面や側面窓上に大きく書かれている辺りは如何にも中国の列車という印象を受け、この車両のオリジナリティとも言え、細かい所では開閉時で異なるドアチャイム(MAKIKYUはE2系に乗車した事がないのですが、同系とは別物の様です)や、側面のLED式行先表示をスクロールさせている事(2枚目の写真は上段が列車番号・下段は「北京站-四方站 beijing station ‐ sifang station」をスクロール表示)なども挙げられます。
(前面や側面窓上に大きく書かれた「和諧号」の漢字表記は賛否両論がある様ですが…)
編成は4M4T(モーター付き・なし車両が各4両)の8両1編成で構成されており、現在は一般列車も走る在来路線を走る事もあって最高速度は200km/hに抑えられていますが、将来的には電動車(モーター付き車両)を増やす事で速度向上を図る事も可能な設計となっている模様で、CRH2は8両編成単独での運行をはじめ、一部の列車では2編成を併結した16両編成で運行される事もあります。
客室は8両編成中の1両(7号車)のみ1等座と呼ばれる2+2配置で横4列のゆったりとした座席が並ぶ車両で、その他の7両は2等座と呼ばれる2+3配置の座席が並ぶ車両となっていますが、2等座は座席モケットが紫・青系と緑・茶色系2種類存在(1等座の座席モケットはグレー系です)し、これは1両ずつ交互になっています。
この車両の座席は2等座でも座席の向きを回転できますし、その上リクライニング機能に加えてJR東日本の特急車両では御馴染みの座面が前にせり出す機能(これはリクライニング機能とはボタンの色で識別しており、背面テーブルにも説明書きがありますが、中国の列車では前例がない事もあり、戸惑っている乗客が多数見受けられました)まで付いています。
これは従来の中国鉄路座席車(軟座でも日本の普通列車レベルのボックス席や、一方向きに固定されて僅かにリクライニングする程度の座席です)とは比べ物にならない位のグレード(高い運賃を設定していながら、広州~香港間列車で使用されている2階建てステンレス製車両のお粗末な座席などは比較になりません)ですし、車内の設計もベースが日本製という事もあって、なかなか気が利いている部分(窓上のエアコン吹出口など)が幾つも見受けられますので、余程長時間の乗車(北京~上海9時間59分など)でなければ2等座でも充分快適に過ごせる車両かと思いますし、設備的には他の中国鉄路車両とは別格に感じますので、速さだけでなく設備的にも割高な運賃を設定するだけの価値がある車両であると感じます。
また日本の新幹線E2系にはない車内設備の特徴として、5号車に半室程度の併食スペースが設けられており、ここには飲食物などを販売するカウンターとテーブル4脚(1つのテーブルに座席4脚)が設置されているのも特徴ですが、CRHは専ら運行時間が短い列車に充当される事や、併食スペースが限られる事もあってか、本格的な調理設備などは設けられていない様で、他にも車内に給湯器が設置されている事(中国の列車では一般的で、お茶や方便面(=カップラーメン)などに使用します)なども特徴となっています。
なおこのCRH2は現在北京~天津間や上海~南京間(列車によっては途中の蘇州・無錫・常州・鎮江などにも停車し、区間列車の設定もあり)で多数が運行されており、その他にも北京発着(北京西站を含む)では石家庄・鄭州・武漢(漢口)・済南・青島(四方)などへ、上海発着(上海南站を含む)では杭州・南昌・長沙などへ向かう列車が設定されており、これらは他の列車に比べて運賃が割高な事もあってか乗車券購入も中国鉄路の他列車に比べると割合容易ですが、列車によっては乗車間際に購入しようと思っても売り切れ(それに直前になると機械的にロックがかかり、乗車券購入そのものが不可能になります)になっていたり、座席が満席で無座になる事もありますので、乗車列車が確定したら早めに乗車券を購入した方が無難です。
この他にも地方都市間を結ぶ列車や、一日1往復だけですが北京~上海間をロングランする列車も設定(所要9時間59分・市販の時刻表やネット上のダイヤ検索ではノンストップ扱いですが、南京などにも停車する様です)されており、一気にこれだけの高速列車を設定できる標準軌(軌道幅1435mm)で平坦な地形が続く線路や大柄な車体限界といったインフラは島国の人間として羨ましく感じますが、4月18日に運行開始した列車以外にも7月と10月に段階的増発が行われ、広州~深セン間と東北方面(北京~瀋陽・長春・ハルピン)以外の動力組充当列車(列車番号の頭にDが付く)は殆どがこのCRH2が運用される様ですので、広大な大陸を駆ける新幹線の今後の活躍に期待したいもので、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様も中国へ行かれる機会がありましたら、是非乗車されてみては如何でしょうか?
またこのCRH2を用いた青島(四方)→北京間のD56次列車(4月19日乗車・こちらをクリック)と、青島近郊を走る四方→青島西間のローカル列車・7060次列車(4月18日乗車・こちらをクリック)の乗車記も公開致しましたので、興味のある方はこちらもご覧頂けると幸いです。
あとこの記事を見て和諧号の運行時刻等が気になった方は、こちらへアクセスすると調べる事が出来ますので、興味のある方は是非どうぞ。(中国語ですが漢字ですので、大半の方には恐らく没問題かと思います。ただ時々リンク切れなどが発生しますので、その際は少々時間を置いてから再度アクセスしてみて下さい)
写真は四方站(青島)に停車中のCRH2とLEDによる行先表示、側面のCRHと和諧号のロゴです。
先月の中国訪問ではデジカメ故障に見舞われた事もあり、急遽手配した1回用カメラで撮影していますので画像の質が低下し、また車内の画像はありませんが、この点は悪しからずご了承下さい。