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韓国鉄道 9001型ディーゼル動車(RDC)~近郊型から格上げ改造されたムグンファ号用気動車

2009-11-14 | 鉄道[大韓民国・KORAIL列車]

    
先月MAKIKYUが韓国を訪れた際には、昨年から走り始めたRDC(Refublishied Diesel Car)と呼ばれるディーゼル動車(気動車)に乗車する機会がありましたので、今日はこの車両に関して取り上げたいと思います。

RDCは近年まで首都圏をはじめ、慶尚道や全羅道方面などでも多数が運行されていた「通勤列車」(旧統一号)用に運用されていたCDC(Commuter Diesel Car)と呼ばれる近郊型のディーゼル動車を、ムグンファ号用に格上げ改造した車両です。

韓国鉄道(KORAIL)では京義(Gyong-ui)線の電鉄化による車両取替えや、慶尚道や全羅道方面における通勤列車の相次ぐ廃止などで、CDCの活躍舞台も今や京義線と京元(Gyongweon)線の末端区間に限られています。

そのためCDCの余剰が相次ぐ状況となったものの、製造から10年少々を経過した程度でまだまだ使用できる上に、通勤列車として運転されていた列車のムグンファ号への種別格上げが相次いだ事も、CDC→RDCへの改造が行われる大きな要因となっています。

RDCへの改造車は車両番号が従前の先頭車9500番台・中間車9600番台から、先頭車9000番台・中間車9100番台に改められると共に、RDCへの改造後は専らムグンファ号として運用されるため、車体色を赤系統に改めています。

その上ただでさえ幅が狭く、両開き扉とはいえ乗り降りに時間を要する片側2箇所の客扉の一つを埋めてしまい、1扉車に改造した事も大きな特徴と言え、この様はローカル線で月に1回程度代行輸送なしの列車運休を行う、JR某社の近郊型気動車を改造した観光向け車両を連想させるものがあります。


ドアを埋めた箇所はステップの張り出しが残存している上に、車両によっては窓配置がいびつになるなど、見るからに改造車という雰囲気を強く匂わせており、この姿は趣味的には面白みもあるのですが、2扉のままでは駄目だったのか?とも感じてしまったものです。

車内もムグンファ号用に格上げしただけあって、従来のセミクロスシート(クロスシート部分は転換式)から、日本の特急普通車並みの回転式リクライニングシートに改められています。


内装もRDC化の際にようやく難燃性に改められる(韓国では地下鉄車両の難燃化はほぼ完了していますが、CDCの内装は未だに難燃化されていない状況です)と共に、客扉と客室の間に仕切りが設ける改造も施しています。

JRで両開き2扉の近郊型気動車を優等列車向けに格上げ改造した車両が、改造後もデッキなし(ワンマン運転を行うには、この方が都合が良い事も影響していると思いますが…)で優等列車として運用されている状況と比較すると、この点はRDCが一歩リードしていると言えます。

またCDCは客扉が車端ではなく、中央寄りに設けられている事から、RDC改造後も残された客扉と車端にある貫通路との間は、両先頭車はトイレなどの設置があるとはいえ、やや中途半端な空間になってしまうのですが、現在1編成4両で運行されているRDC(CDC時代は3~5両で1編成を構成:以前は5×2の10両編成もラッシュ時間帯などに存在していました)では、編成内各車両で全て様相が異なっているのも大きな特徴です。


その内先頭車の一方は車端以外の客室と同じリクライニングシートが装備されているのですが、もう一方の先頭車は何故か高速列車(KTX)とほぼ同じタイプの座席(座席モケットの色は異なるのですが…)を向かい合わせに設置し、その間にはテーブルも設置(ムグンファ号の座席は背面や肘掛にテーブルの装備はありません)するなど、グループでの利用などに適した空間となっています。


中間車の1両は「Mini Mini Cafe」と称し、飲料水の自動販売機やコイン式のゲーム機が設置されており、最近KORAILの列車で食堂車に代わって連結されるようになったカフェ車の簡易版といった雰囲気ですが、僅か4両編成の気動車でこれだけの空間を設けているのは、一部の観光列車などを除く日本の鉄道と比較すると、贅沢な印象を受けるものです。

中間車のもう1両は、客扉との間にデッキが設けられたとはいえ、CDC時代と同様にロングシートが配置されており、つり革が並ぶ姿も見られるなど、RDCの中では設備的に最も見劣りする区画となっており、ロングシート自体も近年KORAILの広域電鉄で幅広く用いられている難燃化座席そのものの非常に薄くて硬い代物で、CDC時代に比べて改悪されていると言っても過言ではない状況です。


そのためこんな区画を敢えて選ぶ人物も…と思ったのですが、MAKIKYUが乗車した列車では2名程の利用客が居り、うち1人は多少日本語が話せる人物だった事もあって事情を伺った所、「足を伸ばせてこちらの方が楽」と話しており、専らフリースペース的な使い方をされている様でしたが、この区画も一応座席番号は振られており、乗車券購入時にこの区画を指定されたら…と感じたものでした。

このRDCは現在大邱(Daegu)~馬山(Masan)・東大邱(Dong-Daegu)~浦項(Pohang)間のムグンファ号を中心に活躍しており、この2系統はどちらも韓国の地方都市間を結ぶ列車にしては比較的至便ですので、大邱へ出向く機会があれば比較的容易に試乗も可能です。
(前者は一部に退役が近いと言われるNDCも運用されています)

また今後RDCへの改造を済ませた車両が続々と登場し、更に運行区間が増えたり、変動する事も予想されますが、現段階では長項(Janghang)線の金・土・日祝日のみ運転される牙山(Asan)駅発着の列車にも充当されている様で、新型電車「ヌリロ」(こちらも近日中に取り上げたいと思います)と合わせての乗車も面白いかもしれません。

通勤列車が次々と列車設定廃止となり、CDCの余剰車が多数発生した際には、まだまだ使える車両にも関わらず…と思ったものでしたが、ムグンファ号用に改造を受けて再び活用される事になったのは喜ばしいものです。

韓国の列車線では機関車牽引の客車列車や、それに順ずる動力集中方式の車両が主流を占めており、これは日本の鉄道と異なった雰囲気が楽しめて悪くないのですが、動力分散方式に慣れ親しんだ身としては、やはり床下から走行音が聞こえてくる動車は魅力的です。

電化も進む今日ではディーゼル動車の大増備は余り期待できず、少数派のまま推移していく公算が高いと思いますが、今後の活躍にも期待したいと感じたもので、この記事を見て興味を持たれた方は、是非RDCへの乗車も検討してみては如何でしょうか?