先月MAKIKYUが韓国を訪問した際には、既存の韓国鉄道(KORAIL)京義(Gyong-ui)線を電鉄化したSeoul駅~DMC(Digital Media City)~汶山(Munsan)間にも乗車する機会がありました。
同区間はSoeul駅寄りの一部区間こそ、列車線を運行する一般列車の水色(Susek)にある車両基地への回送や、高陽(Goyang)市の幸信(Haengjin)にあるKTX(高速列車)の基地への回送などが多数運行しており、この関係で以前から複線電化となっていましたが、幸信以北の区間はSeoul近郊とはいえ単線非電化で、気動車による通勤列車が毎時1本程度走るだけのローカル線でした。
そのため地下鉄3号線(大谷(Daegok)駅で接続)や、広域急行バスをはじめとする多数の路線バスに比べると、京義線の利便性は格段に劣るものでしたが、7月に晴れて汶山までの複線電鉄化が完成し、通勤型電車による高頻度運転が開始されています。
運賃面も電鉄化と共に地下鉄・広域電鉄のネットワークに組み込まれる様になり、3号線などと乗り継いだ場合にも運賃が一体で計算されると共に、T-moneyなどの交通カードを利用した場合は、接続する路線バスとの乗継運賃が適用になるなど、運行本数の増大だけに留まらない劇的な進化を遂げています。
この京義線の電鉄化に合わせ、車両も331000系と呼ばれる新形式が導入されており、最近KORAILで続々と登場している6桁番号の形式は、MAKIKYUも未だに馴染めないものですが、デザイン的には1号線系統の各路線で活躍する5000系電車の最新型などと同種の円いデザインが特徴的です。
また331000系は専ら交流区間のみを走行する事もあって、5000系の様な交直両用車ではなく交流区間線用車となっており、両数も8両編成であるなどの違いがあり、スペック的には中央電鉄線[龍山(Yongsan)~回基(Hoegi)~徳沼(Deokso)~菊秀(Kuksu)]間を走る電車(以前は6000系と称していましたが、今日では321000系に改番されています)と非常に類似しています。
ただ331000系では321000系に見られる特徴に加え、車体が最近のKORAIL通勤型電車では一般的なステンレス製ではなく、アルミ合金製に改められている事が挙げられます。
これに加えて車内もLCDモニターによる案内装置をドア上に装備し、車両間の貫通路もガラス面積の大きい自動式になるなど、最新型車両らしく進化した部分が幾つも見受けられ、電鉄化で格段に利便性が向上した京義線に相応しい車両と言えます。
しかしながら京義電鉄線は、地下鉄6号線と接続するDMC駅以北では昼間毎時4本程度の電車が運行され、汶山・一山(Irsan)方面から都心へ抜けるには、途中で3号線や6号線に乗り換える事で利便性はある程度確保出来るものの、Seoul駅~DMC間は列車線の回送列車が多数運行している関係もあって、連結両数こそ5両→8両に増えたとはいえ、以前の気動車時代と同様に昼間毎時1本の超閑散ダイヤとなっています。
この区間の各駅では列車の本数が限られている旨を告知しているものの、これでは都市交通機関としての使い勝手は極めて悪いのが現状です。
その上Seoul駅は乗り場も駅裏手の分かり難い場所にあり、仮設駅の様な雰囲気ですが、1回用カード利用ではSeoul駅での1・4号線との乗り継ぎの際に運賃が通算されないなど、使い勝手はまだまだと感じるものです。
これに加え京義電鉄線は駅構内の配線が2面4線など、緩急結合運転を行うのに適した構造となっている駅も多く見受けられるのですが、運行される列車は殆どが各駅停車で、急行運転を行う列車は朝のSeoul駅方面行きで僅かに存在している程度です。
現状では過剰とも感じてしまう設備は、将来南北統一が実現して都羅山(Dorasan)より先へ向かう列車が多数運行する事も想定しているのかもしれませんが、現在の汶山までの電鉄区間だけでも片道約1時間程度を要するだけに、高頻度の急行運転にも期待したいと感じたものです。
この様にまだ走り始めてまもない京義電鉄線は、以前の非電化単線時代と比較すると大きな進歩を遂げたものの、最新型車両や立派な設備は持て余している印象があり、都市交通としてはまだまだ改善の余地があると感じたものです。
しかしながら今後龍山~DMC間にある貨物線を複線電鉄化(実態はほぼ新線建設の様なものですが…)し、この路線を介して京義電鉄線~中央電鉄線間の直通運転を行う計画もありますので、この路線が開通すれば都心部へのアクセスは大幅に改善されますが、その暁にはDMC以北での昼間時間帯における急行運転開始なども期待したいと感じたものです。
写真は331000系電車の外観とその車内、分かり難いSeoul駅の京義電鉄線乗り場と、現状では設備を持て余している水色駅の様子です。