今年に入ってから中国湖北省を中心に新型コロナウイルスによる肺炎が蔓延、その後世界各地に拡がり、現在外国人の入国制限や入国後の一定期間隔離措置(これは国によっては内国人の場合も)を行う国が多数発生しています。
今年開催予定だった東京オリンピックの延期も決まり、外務省も渡航中止勧告発令国・地域を除く海外全てを対象に渡航自粛勧告を出すなど、非常事態と言っても過言ではない状況になっています。
現在の世相では不要不急の海外旅行はとても…という状況で、日本発着の定期旅客航路(フェリー・高速船)も政府要請により全て運休もしくは貨物のみの輸送になるなど、戦時中を除くと前代未聞の状況になっています。
四方を海に囲まれ、異国との間を結ぶ橋やトンネルもない島国の日本におり、空を飛ぶのも嫌となると、海外へ足を運ぶ際に利用する交通手段は船一択となりますので、現状では海外旅行は不可能に等しい状況とも感じています。
ちなみに日本発着の国際航路は、MAKIKYUは日韓航路と日中航路は共に何度も利用していますが、平時なら韓国・中国と共に定期航路で直接行けるロシアは「近くて遠い国」という印象が否めず、昨夏ようやく初めて足を運んだものでした。
その際には日韓露3ヵ国を結ぶ国際航路「DBSクルーズフェリー」を利用したものでしたが、この船は韓国の船会社が日本の国内航路で使用していたフェリーを中古購入、改装して運航しています。
日本は境港(鳥取県)、韓国は東海(江原道)、ロシアはウラジオストク(沿海州)という、どれも国の中では核心となる大都市やその近郊ではない地方都市同士を結んでおり、日韓両国在住者でも近隣住民以外だと境港や東海から異国へ向かう国際航路が出航している事を知らない人物も少なくないのでは…と感じます。
日韓、日露、韓露どの組み合わせでも乗船可能で、日露間を乗船する場合は東海(韓国)で一時下船する事も可能ですが、日本在住の日本国籍保有者がDBSクルーズフェリーに乗船する場合、日韓間か日露間での利用が大半を占める事になると思います。
ちなみにMAKIKYUが昨夏DBSクルーズフェリーに乗船した際は、日韓間を別航路で移動した後に韓国内を陸路移動、東海→ウラジオストク(韓露間)で乗船したものでした。
韓露間の利用でも境港の事務所に日本語を用いて電話予約する事ができ、この点は日本語が通じない事もある韓中航路の船会社への予約に比べると、かなりラクと感じたものでした。
そして乗船当日東海港に出向き、ターミナル内にて韓国ウォン払いで乗船券(写真)を購入して乗船しましたが、日本人のロシア入国にはビザ(ウラジオストクと近隣の短期滞在なら電子ビザでも可:現在ロシアは外国人旅行者の入国停止中)が必要なため、乗船券売場の係員にビザ提示も求められたものでした。
(平時なら韓国国籍保有者のロシア入国は、観光目的での短期滞在ならビザ不要となっていますが、逆に中国は日本国籍保有者と異なりビザが必要です)
MAKIKYUが韓国の出航地となる東海へアクセスする際には、市外バスを利用したものでしたが、バスターミナルは港から結構離れており、市内バスで30分程度を要しますので、日本の地方路線バスの様にどこまで運賃が上がるのか…という心配はないものの、バス利用時の移動は余裕を持った方が良いと思います。
一方韓国では脇役的存在となる事が多い鉄道は、東海駅から徒歩で港まで10分程度、市内バスもそこそこ走っていますので、韓国に不慣れな旅行者(特にハングルが読めない場合)が東海から乗船する場合は、東海まで鉄道利用でアクセスした方が無難なのでは…と感じたものでした。
東海港周辺は閑散とした印象で、韓中航路が多数発着し、港周辺に多数の店舗も存在する仁川港周辺などとは随分雰囲気が異なりますが、港の入口近くにコンビニ(GS25)が一店あり、飲料や弁当、菓子類程度の調達は可能ですので、飲食物を調達せずに港まで行った場合や、日露間移動で途中下船する際などには、このコンビニはかなり重宝すると感じたものでした。
またDBSクルーズフェリーは船内Wifiがなく、それどころかコンセントすら封印されている有様ですので、スマホやタブレットなどを用いてのネット環境に関しては最悪と言っても過言ではない状況でした。
しかしながら東海港のターミナル内はフリーWifiもあり、日露間利用者でも一旦東海で途中下船し、ターミナル内でネットにアクセスする乗客の姿も多数見受けられたものでした。
韓国出国手続きを済ませて船内に入ると、日本の中古船だけあり、余り綺麗な船と言う印象ではないものの、船内に免税店があるのは国際航路らしい所で、日本の鳥取県特産品展示コーナーがあったのも特徴的と感じたものでした。
船内での飲食は、MAKIKYUは乗船前に予め購入していた弁当や菓子パンなどを食したため、レストランなどは利用していませんが、値段は割高(日本円で一食4桁)ながら船内でも食事提供がありますので、食料調達なしで乗船しても飢える事がない辺りは、近年日本で増えているカジュアルフェリー(自販機による軽食提供あり)や長距離列車(予め食料を調達する様に案内)などに比べるとマシと言えます。
船室は上等級の個室から、カーペット敷大部屋(写真)での雑魚寝まで色々。
MAKIKYUはその中でも大部屋の中に2段ベッドが多数設置された船室(運賃はカーペット式大部屋より少し高い程度)を利用したものでしたが、設備内容を考慮すると、運賃設定は決して安くないという印象を持ったものでした。
東海出航後しばらくすると、Wifiも使えない環境で陸地から離れた海域を航行する事もあり、デッキに出て海風に当たりながら、菓子などをつまむか、居合わせた他の乗客と会話を交わす程度しかやる事がない状況でしたが、日本から乗船した乗客の中には、ロシアに自分の車両(自家用車・バイク)を持ち込み、ロシアで運転できるという理由でフェリーに乗船している乗客もおり、この点は国際免許で自分の車を持ち込んで運転する事が叶わない中国とは大違いと感じたものでした。
デッキの注意書きを見ると、韓露日英4か国語による案内が見受けられる辺りは、日韓露3国を結ぶ船らしいと感じたもので、船内係員の中には日本語を解する人物もいたものの、日本発着の他航路に比べると日本語通用率は低く、海外旅行初心者が単独で乗船するとなると、多少難儀するかも…とも感じたものでした。
そして翌日、昼前には船内から初めて足を運ぶウラジオストクの街並みが見えたものの、それからはかなりゆっくりとした速度でタグボートに案内されながら入港。
洋風の建物が立ち並ぶ街並みは、「日本から一番近いヨーロッパ」と言われるだけあると感じたものですが、港内を航行する時間が結構長い事に加え、入港後も入国手続きを済ませロシア入国となるまで結構な時間を要しましたので、この点は今後改善余地ありなのでは…とも感じたものでした。
ちなみにウラジオストク港はウラジオストク駅のすぐ裏手、市内中心部にも徒歩で移動可能な距離にあり、駅前や駅周辺からは市内各地へ向かう路線バスが頻発する他、駅周辺には銀行も複数ありますので、ロシア通貨(ルーブル)を持たずにロシア入りしても、両替にはさほど難儀しないなど、港の立地は非常に良いと感じたものでした。
運賃設定や設備面では難ありの印象が否めず、今後の改善に期待したい部分も多々あるものの、航空機を使わずにロシアへ行ける貴重な旅客航路だけあり、今後の運航再開を願うばかりで、再びロシアへ足を運ぶ機会があれば、また利用しても…とも感じたものでした。
また昨夏ウラジオストク入国後にロシア国内で乗車した交通機関などに関しても、その内追って取り上げる事ができれば…と思います。