先週出かけたネッツの営業さんから電話があって、試乗車のナンバーが取れたので乗って見ませんかというので、きょうオーリスに試乗してきた。
グレーの1800ccで(オーリス180G)、初めて見たときほど大きさは気にならなくなったが、それでもやっぱり“コンパクト・カー”というには大きすぎる。コックピット、とくにサイドブレーキとシフトノブの形状が面白いのだが、乗ってしまえば降りるまでDレンジのままなので、意識から消えてしまう。ヴィッツやイストなどに共通の、フロントグラスから運転席に向かって傾斜してくるダッシュボードもぼくは苦手である。プントのフラットなダッシュボードのほうが室内を広く見せている。しかも黒くて暗くて、プラスチックくさい。
エンジンボタンは何で左側なのだろうか。ヴィッツは右側なのに。メーター類はランクスと違って黄橙色のうえになんかうるさい感じ。ポロからランクスに乗り換えたとき以上に戸惑う。三角窓は、少なくとも左側については視界を広げてくれている。しかし右側は、運転席からは、「ないよりまし」といった程度の視界しか確保していない。カーナビはランクスのほうが見やすい位置にある。
さて、出発。“5メートル・インプレッション”とかいって、オーリスのよさは5メートル走っただけで分かると謳っている。5メートルで何が分かっただろうか? まず重い。よくいえば重厚ということになる。そして硬い。走りもステアもペダルもすべてが重くて硬い。これがランクスと比べて最も際だった違いである。ランクスはもっと軽やかで、子馬がギャロップするような弾ける元気のよさがある。これを「1クラス上の印象」と褒めるか、「コンパクトの軽快さを失った」と貶すかは、乗った人がオーリスに何を求めているかによるだろう。
ゴルフやプジョー307など欧州Cセグメントのライバル車に対抗することが目標なら、目標に近づいたのかもしれないが、10代目カローラの派生車としての5ドアハッチバックを期待した者にとっては、「ちょっと違うんじゃないの」ということになる。全体として、「モーターファン別冊381号 TOYOTAオーリスのすべて」(三栄書房)6ページの5段目のドライビング・インプレッションに書いてあるとおりの印象であった。
ランクス1500より静かなことは間違いない(ランクスだって、別にうるさいわけではないが)。CVTも街中を20分程度走っただけなのでなんとも言えないが、走行中まったく気にならなかったところを見ると、スムースなんだと思う。パワーはやっぱり300cc違うだけあって、ランクスのつもりでアクセルを踏んだら何回か吹かしすぎになってしまった。都内の一般道を40~60kmで走っているかぎりは、アクセルはほんの3~4cm(?)踏み込んでいれば十分な感じだった。あまりに軽く踏んだままで巡航してしまうので、かえって右足が疲れるくらいである。
佐須町の十字路から中央高速の下をくぐって深大寺小学校前の信号への上り坂も、ランクスだと少しずつアクセルを踏み増しして行かないと次第に速度が落ちてくるが、オーリスでは平地走行時の踏み込みのままで速度が落ちることなく登りきることができた。航空宇宙研究所西側の東八道路に向かう桜並木の上り坂も同じである。ただし、これはランクスの1800でも同じなのかもしれない。
ぼくはそもそも運転が下手なうえに、5ナンバーを越える車に乗るのは生まれて初めてなので、1760mmという車幅には緊張した。しかも他人様のクルマだから、擦るわけにはいかない。車幅が6cm広いことに意識が行きすぎて、ほかの多くのことを観察し忘れてしまった。たとえば、“eco”走行表示というのがあったらしいが、どの程度の走行をすればこの表示が出るのかなど、まったく忘れてしまった。
肩が凝ったが、なんとか無事ディーラーに戻ることができた。「5ナンバーの呪縛から解放されたこと」によって「想像以上に進化した走り」になったと、前記「オーリスのすべて」に書かれているが(9ページ)、確かにそういう印象はある。しかし、それでは、5ナンバー枠を守った10代目カローラ・セダンは何だったんだと言いたくなる。やっぱり5ナンバーを守り、堂々と“ランクスの後継車”を名乗ることのできるクルマを作ってほしい。オーリスのように「重厚さ」なんか必要ない、ランクスの「元気のよさ」で十分である。そして車幅のことなんか忘れて気軽に乗りたいのである。
ぼくがクルマを使うのは、東京-横浜(といっても西のはずれ)間の25kmを朝の渋滞時間帯に1時間45分から2時間15分(その日の道の混み具合による)かけて通勤するのと、ときどき軽井沢まで往復3、400kmのドライブをするくらいである。街中の通勤にはランクスで何の不自由もない。むしろ、地球のためにはヴィッツ1000ccのアイドリング・ストップ車にしてもよいと思っているくらいである。ランクスでもアイドリング・ストップを試みたことがあるのだが、信号停車でエンジンを切るとウインカーも消えてしまう、雨の日はワイパーも停まってしまう。これでは、かえって事故を誘発しそうなので、結局やめてしまった。カローラ、オーリスでも、アイドリング・ストップ車を考えてほしい。
そして、ランクスの唯一の不満は、前にも書いたが、碓氷軽井沢IC手前の長い上り坂などで、60kmくらいの遅い速度で走るトラックが2、3台続いていて、登坂車線に寄ってくれず走行車線を塞いでいるので仕方なく追い越しをかけようと追越車線に出るのだが、1500のランクスではキックダウンしてもなかなか速度が上がらず、そのうち後方にセルシオなんかが迫ってきたときである。こんなときだけは1500ccであることにストレスを感じるのだが、オーリスの1800ccならこのストレスから解放されるのではないだろうか。高速での走行安定性もランクスの不満な点であるが、オーリスのあの重さなら高速での直進は安定しているだろう。そのうち一度レンタカーでオーリス180を借りて試してみようと思う。
――と営業マンに話したところ、「レンタカーはたいてい1500だけで、1800がレンタカーになることは多分ないので、ウィークデーなら碓氷軽井沢まで試乗してもらってもいいと上司が言っている」と提案された。よっぽど脈があると思われたのだろう(以前、シビックが出たときにも、同じことを言ったら、ホンダで同じ提案をされたことがある)。そう言われると、ちょっとオーリス180で軽井沢に行ってみたくなった。実は一目惚れのフィアット・プントの一番の心配も、1400ccという非力さのために碓氷軽井沢でのストレスが解消しないのではないかという点なのである。
いずれにしても、こんなデカいクルマは“コンパクト・カー”の資格なしといっていたオーリスに対するこれまでの評価がちょっとぐらついたのは確かである。ついでに言ってしまえば、試乗を終えて駐車場に置いてあるわがランクスのところに戻ったら、隣りに修理か点検のためのMR-Sがとめてあった。ダーク・グリーンでハードトップのついたMR-Sもなかなかよかった。どうも節操のない話だが・・。
徳大寺さんだったら、今度のプントやカローラ、オーリスについてなんて言うのだろうか。彼が褒めたら、きっとそっちになびくだろうと思う。ぼくは“徳大寺依存症”の気があるから。
(写真は、トヨタのオーリス。car@nifty から)
(2006年11月 4日)
グレーの1800ccで(オーリス180G)、初めて見たときほど大きさは気にならなくなったが、それでもやっぱり“コンパクト・カー”というには大きすぎる。コックピット、とくにサイドブレーキとシフトノブの形状が面白いのだが、乗ってしまえば降りるまでDレンジのままなので、意識から消えてしまう。ヴィッツやイストなどに共通の、フロントグラスから運転席に向かって傾斜してくるダッシュボードもぼくは苦手である。プントのフラットなダッシュボードのほうが室内を広く見せている。しかも黒くて暗くて、プラスチックくさい。
エンジンボタンは何で左側なのだろうか。ヴィッツは右側なのに。メーター類はランクスと違って黄橙色のうえになんかうるさい感じ。ポロからランクスに乗り換えたとき以上に戸惑う。三角窓は、少なくとも左側については視界を広げてくれている。しかし右側は、運転席からは、「ないよりまし」といった程度の視界しか確保していない。カーナビはランクスのほうが見やすい位置にある。
さて、出発。“5メートル・インプレッション”とかいって、オーリスのよさは5メートル走っただけで分かると謳っている。5メートルで何が分かっただろうか? まず重い。よくいえば重厚ということになる。そして硬い。走りもステアもペダルもすべてが重くて硬い。これがランクスと比べて最も際だった違いである。ランクスはもっと軽やかで、子馬がギャロップするような弾ける元気のよさがある。これを「1クラス上の印象」と褒めるか、「コンパクトの軽快さを失った」と貶すかは、乗った人がオーリスに何を求めているかによるだろう。
ゴルフやプジョー307など欧州Cセグメントのライバル車に対抗することが目標なら、目標に近づいたのかもしれないが、10代目カローラの派生車としての5ドアハッチバックを期待した者にとっては、「ちょっと違うんじゃないの」ということになる。全体として、「モーターファン別冊381号 TOYOTAオーリスのすべて」(三栄書房)6ページの5段目のドライビング・インプレッションに書いてあるとおりの印象であった。
ランクス1500より静かなことは間違いない(ランクスだって、別にうるさいわけではないが)。CVTも街中を20分程度走っただけなのでなんとも言えないが、走行中まったく気にならなかったところを見ると、スムースなんだと思う。パワーはやっぱり300cc違うだけあって、ランクスのつもりでアクセルを踏んだら何回か吹かしすぎになってしまった。都内の一般道を40~60kmで走っているかぎりは、アクセルはほんの3~4cm(?)踏み込んでいれば十分な感じだった。あまりに軽く踏んだままで巡航してしまうので、かえって右足が疲れるくらいである。
佐須町の十字路から中央高速の下をくぐって深大寺小学校前の信号への上り坂も、ランクスだと少しずつアクセルを踏み増しして行かないと次第に速度が落ちてくるが、オーリスでは平地走行時の踏み込みのままで速度が落ちることなく登りきることができた。航空宇宙研究所西側の東八道路に向かう桜並木の上り坂も同じである。ただし、これはランクスの1800でも同じなのかもしれない。
ぼくはそもそも運転が下手なうえに、5ナンバーを越える車に乗るのは生まれて初めてなので、1760mmという車幅には緊張した。しかも他人様のクルマだから、擦るわけにはいかない。車幅が6cm広いことに意識が行きすぎて、ほかの多くのことを観察し忘れてしまった。たとえば、“eco”走行表示というのがあったらしいが、どの程度の走行をすればこの表示が出るのかなど、まったく忘れてしまった。
肩が凝ったが、なんとか無事ディーラーに戻ることができた。「5ナンバーの呪縛から解放されたこと」によって「想像以上に進化した走り」になったと、前記「オーリスのすべて」に書かれているが(9ページ)、確かにそういう印象はある。しかし、それでは、5ナンバー枠を守った10代目カローラ・セダンは何だったんだと言いたくなる。やっぱり5ナンバーを守り、堂々と“ランクスの後継車”を名乗ることのできるクルマを作ってほしい。オーリスのように「重厚さ」なんか必要ない、ランクスの「元気のよさ」で十分である。そして車幅のことなんか忘れて気軽に乗りたいのである。
ぼくがクルマを使うのは、東京-横浜(といっても西のはずれ)間の25kmを朝の渋滞時間帯に1時間45分から2時間15分(その日の道の混み具合による)かけて通勤するのと、ときどき軽井沢まで往復3、400kmのドライブをするくらいである。街中の通勤にはランクスで何の不自由もない。むしろ、地球のためにはヴィッツ1000ccのアイドリング・ストップ車にしてもよいと思っているくらいである。ランクスでもアイドリング・ストップを試みたことがあるのだが、信号停車でエンジンを切るとウインカーも消えてしまう、雨の日はワイパーも停まってしまう。これでは、かえって事故を誘発しそうなので、結局やめてしまった。カローラ、オーリスでも、アイドリング・ストップ車を考えてほしい。
そして、ランクスの唯一の不満は、前にも書いたが、碓氷軽井沢IC手前の長い上り坂などで、60kmくらいの遅い速度で走るトラックが2、3台続いていて、登坂車線に寄ってくれず走行車線を塞いでいるので仕方なく追い越しをかけようと追越車線に出るのだが、1500のランクスではキックダウンしてもなかなか速度が上がらず、そのうち後方にセルシオなんかが迫ってきたときである。こんなときだけは1500ccであることにストレスを感じるのだが、オーリスの1800ccならこのストレスから解放されるのではないだろうか。高速での走行安定性もランクスの不満な点であるが、オーリスのあの重さなら高速での直進は安定しているだろう。そのうち一度レンタカーでオーリス180を借りて試してみようと思う。
――と営業マンに話したところ、「レンタカーはたいてい1500だけで、1800がレンタカーになることは多分ないので、ウィークデーなら碓氷軽井沢まで試乗してもらってもいいと上司が言っている」と提案された。よっぽど脈があると思われたのだろう(以前、シビックが出たときにも、同じことを言ったら、ホンダで同じ提案をされたことがある)。そう言われると、ちょっとオーリス180で軽井沢に行ってみたくなった。実は一目惚れのフィアット・プントの一番の心配も、1400ccという非力さのために碓氷軽井沢でのストレスが解消しないのではないかという点なのである。
いずれにしても、こんなデカいクルマは“コンパクト・カー”の資格なしといっていたオーリスに対するこれまでの評価がちょっとぐらついたのは確かである。ついでに言ってしまえば、試乗を終えて駐車場に置いてあるわがランクスのところに戻ったら、隣りに修理か点検のためのMR-Sがとめてあった。ダーク・グリーンでハードトップのついたMR-Sもなかなかよかった。どうも節操のない話だが・・。
徳大寺さんだったら、今度のプントやカローラ、オーリスについてなんて言うのだろうか。彼が褒めたら、きっとそっちになびくだろうと思う。ぼくは“徳大寺依存症”の気があるから。
(写真は、トヨタのオーリス。car@nifty から)
(2006年11月 4日)