いつだったか、立ち寄った神保町の岩波ブックセンターの店頭で見かけて、崎山健一郎『家の写真集 東京ノスタルジック』(岩波書店、2011年7月)を買った。
いまだ東京に残って昭和、大正の面影をしのばせる家々を撮った写真集である。
本の後書きによると、撮影した崎山氏は集英社のカメラマンとして「週刊プレイボーイ」のグラビアなどを撮影した後、定年退社後に散歩しながら撮影した写真を集めたのが本書になったという。
集英社に勤務していたというだけに、わが神保町界隈の写真も多い。今年早々にとうとう取り壊されてしまった九段下ビルの写真もある。
2階の外壁に、懐かしい「中根速記学校」という剥げかかった文字が見えている。
関東大震災後の復興住宅として建てられたビルで、一時岡田嘉子も住んでいたと聞いたことがある。
神保町の路地裏にあった能楽書林の建物も昭和の雰囲気を漂わせていたが、その後建て替えられ新しいビルになってしまった。ただし、新しい建物の正面には、旧社屋のように能面(?)のレリーフが飾ってある。
上の写真は、昭和63年5月発行の「本の街」92号の表紙を飾った能楽書林の古い建物。
すずらん通りにあった“東洋キネマ”も、ぼくの大学院生時代にはまだ営業していたが、その後地上げにあって閉館した。建物はしばらく放置されていたが、やがて取り壊されててしまい、今では跡形もない。
いま神保町で昭和の面影を残している建物というと、専大前交差点を少し南に行った鰻屋、今荘くらいになってしまった。あそこは、古びた重箱から座布団まで昭和そのままである。
いつか写真を撮ってこよう。
下の写真は、神保町からは外れるが、九段下の九段会館。旧軍人会館、かつては2・26事件で有名だったが、昨年の3・11大地震の際に天井が落下して死傷者が出て以来、営業していないようだ。
この本には、ぼくが時々散歩に出かける神田須田町の裏通りの写真も何枚か載っている。須田町も空襲を免れたらしく、古い家屋やビルがいまだに結構残っている。
あのバナナと大学いもしか売っていない八百屋(?)はまだ健在だろうか。
2001、2年頃の写真も載っているが、九段下ビルのようにその後取り壊されてしまった建物も少なくない。
「3丁目の夕日」などのような、まがいものではない昭和がここには記録されている。
下の写真は、西神田の住友不動産、千代田ファーストビル西館の東南に建っていた昭和の住宅。建築確認の看板が掲げられたので、「危ない!」と思って、写真に収めた。
2010年11月8日に撮ったものだが、すでに取り壊されてワンルーム・マンションになり、入居者募集のビラが貼ってある。
ところで、本書の著者、崎山氏は「週刊プレイボーイ」の表紙やグラビアを撮影したとある。
ひょっとして、わが桜田淳子のグラビアも撮っているのでは、と思って古いスクラップ帖を引っぱり出してみると、予想通り、「撮影=崎山健一郎」とキャプションの入った桜田淳子が見つかった。
「週刊プレイボーイ」のグラビアと思うが、発行年月日はわからない。
2012/3/11 記