気ままに

大船での気ままな生活日誌

”小津安二郎 人と作品” を観る

2007-11-03 09:08:16 | Weblog
鎌倉駅前の会場で、「小津安二郎 人と作品」と銘打った映画会がありました。二本立てで、ひとつは小津監督の「お早よう」、もうひとつは、ドキュメント映画「生きてはみたけれど;小津安二郎伝」です。どちらも制作は元松竹大船の山内静夫さんです。小津さんとも懇意でおられた、作家の里見さんのご子息です。今回の映画会の主催者、”鎌倉名画座”の代表をされています。ボクの後ろの座席で観ていらっしゃいました。

ボクは小津作品は、原節子さんの紀子三部作を始め、結構観ていますが、この「お早よう」は初めての鑑賞でした。1959年の作で、佐田啓二、久我美子、杉村春子、笠智衆、三宅邦子ら出演の、昭和30年代の東京郊外の、向こう三軒両隣の、なにげない生活を描いた、ほのぼのした作品です。元祖”三丁目の夕日”といっていいかもしれませんね。

映画の中の、テレビの相撲の取り組みが富樫(柏戸の若き日の四股名です)対北の洋だったり、月光仮面や赤胴鈴の介の言葉が出てきたり、それにフラフープも。もう、ボクの心はすぐに”3丁目の夕日”です。二人の小学生の兄弟が、主役みたいなもの、ちょうど、おいらと同い年ぐらいかな。テレビを買ってくれとせがむ兄弟(おいらもそうだった、月光仮面がみたくて)、笠智衆のお父さんに叱られ、ふくれつらで、何日も無言作戦。その間の出来事が、三宅邦子のお母さんの近所づきあいで生じる女同士の小さなトラブル等とからませながら、コミカルに描かれます。ときおり、子供や大人のおならブーを入れたりして、小津さんならではの、日常の小さなおかしみが随所に取り入れられてあります。会場にクスクス笑いが絶えません。

佐田啓二と久我美子の”淡い恋”も描かれています。ななんと、久我美子さんの役の名は”節子さん”。これも小津さんのユーモアでしょうか。ご自分が恋心をもっておられた(世間でもそう報じられていた)原節子さんを意識して、この名前をつけたに違いありません(脚本も小津さんです)。この二人、肝心なことは何も言わないで、いつも天気の話ばかり。おわりの方の、駅のホームの場面、今度こそ愛の言葉のひとつでも出るかと思いましたら、ななんと、また、空の雲の話し。またクスクスのク。小津さんも原節子さんの前ではこうだったんでしょうね(おいらのはつこいもそうだった、汗)。

カラー作品ですので、ボクは小津さんの好きな赤い色を注目して観ていました。居酒屋のとっくり模様とか、調度品、衣装など、随所に赤が、取り入れられていましたよ。

この映画には、娘を嫁入りさせたあとの父親のうつろな目もありませんし、妻をなくして、一日がなごう感じますな、とさびしそうに答える老人の姿もありません。何の事件もない、ありきたりの日常生活だけが描かれています。でも小津作品をいくつも観ていると、これは小津連続ドラマのひとつだ、と思えてくるから不思議です。コミカルな画面の向こうに、”麦秋”や”東京物語”のラストシーンが目に浮かんでしまうのです。
・・・

もうひとつの、「生きてはみたけれど;小津安二郎伝」については、また別の日に紹介しますね。これから、お出かけの予定があるので(汗;毎日、出かけすぎという意味の汗)。





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