東京都庭園美術館で”森と芸術展”が開かれている。ぼくらの先祖は森の中に住み、森の恵みを受けてくらしてきた。それが、日本では稲作をはじめるようになってから、森から離れ、さらに開墾のため森を削り、村をつくり、町をつくり、工場をつくり・・で、現代、都市から森は消えてしまった。一方ケルト人。BC1500年に中欧に現れ、ガリア(現フランス)、イタリア、小アジアと幅広い地域に住み、”森の民”と呼ばれ、森に住む神々と妖精たち(多神教)と共生していた。それが北からはゲルマン人、南からはラテン人(ローマ帝国)に攻撃され、中世には、アイルランド、スコットランド、ウェールズ、ブルターニュ(現フランス)に追いやられた格好になった。その間、欧州では一神教のキリスト教の普及などにより、森を恐れなくなり、深い森は次々と消えていった。
こうして森から離れた人間も、心の奥深く、原始の森への郷愁や憧れを抱き、森の神々や妖精たちを想う。芸術家はそれをモチーフにあるいはその情念をこめて、描く、撮る。環境破壊が進む現代、森に目を向けよう、考え直そうという、メッセージがひしひしと伝わってくる展覧会である。
構成は以下のようになっていて、トータルで200点を越す作品が展示されている。迷子になりそうな部屋をぐるぐる回っているうち、本当の森に迷い込んでしまったような気持ちになる。森にもいろんな生き物がいるように、ここにも実に沢山の、多種多様な芸術作品があちらこちらに棲んでいた。
第1章 楽園としての森
ここではルソー、ゴーギャン らの、楽園のような森がいくつも展示されているが、素朴派のアンドレ・ボーシャンの”楽園”がいかにも楽園らしくて気にいった。彼の作品(森の精、ニンフたちの洞窟)は第二章でも精彩を放っていた。園芸家で素人画家だったらしい。
第2章 神話と伝説の森
アンリ・ファンタン-ラトゥールの”二人のオンディーヌ”は水の精がうつくしく描かれていた。
第3章 風景画の中の森
クルーベ、コローらの風景画のほか、フォンテーヌブローの森の写真作品も顔を覗かしていた。
第4章 アールヌーボーと楽園の森
ここでは、玄関に”森の番人(正確には覚えていない)”の表札をかけるほど、森を愛したエミールガレが活躍。植物の模様がふんだんに描かれた花器やランプや置物がいっぱい。そして、ちらしの絵に採用された、ポール・セリュジエの”ブルターニュのアンヌ女公への礼讃”。描かれているアンヌ女公はブルターニュ公国の最後の君主。フランス国王との政略結婚でブルターニュを独立国として守った女王で、国民に尊敬されている。森の民、ケルトの末裔である。
第5章 庭園と聖なる森
ここでは日本人作家が登場する。川田喜久治の写真作品。地獄の入り口、巨女、闘う巨人、ニンフ等など。森に棲む魔物や妖精だろうか。
第6章 メルヘンと絵本の森
お馴染みの、赤頭巾ちゃん、眠れる森の美女、美女と野獣、ふしぎな国のアリスなど森にからむ絵本がいっぱい。
第7章 シュルレアリズムの森
マックス・エルンストの作品が多数。ルネ・マグリットの”再開”よかったな。
第8章 日本列島の森
岡本太郎の写真が4枚。縄文土器や森林の風景。そして油彩”森の家族”。原始美術を愛した岡本。きっと原生林も愛し、妖精たちと話しもしたことだろう。
出口の近くに、なななんと、ジブリの森が。となりのトトロの原画。そうだ宮崎駿さんも”森の人”だったけ。ぼくも半分田舎に住んでいるから森は近い。ときたま、森の人になって、反省したい。



