ぼくも観ていたが、テレビドラマJIN/仁はとても面白かった。現代から幕末にタイムスリップした脳外科医が、現代の医学知識をもとに、手術をしたり、ペニシリンもどきをつくったりして、江戸の人々を助ける物語だった。この人気ドラマにあやかった(笑)、展覧会、”医は仁術”が、科博で開催されている。
ナビゲーターは、ドラマで主役を演じた、大沢たかお。そして、会場に入るとすぐに、原作の漫画家、村上もとかのメッセージ・プレートが。それに、まず、じーん(JIN)ときた。前段で、この漫画を描く動機などについて述べたあとの文章だ。現代医療はiPSだ、STAPだと今まさに不老不死への扉に手をかけているような気がする。しかし、人間は必ず、死を迎える。今よりはるかに短命で、理不尽な死をみとらなければならなかった江戸期の人々の意外なほどの楽天性と、与えられた命の時間で人生を切り開いていくしたたかさ。江戸の人々の死生観は、現代の超高齢者社会を迎えながら、悩みの絶えない子孫たちに、うまく生きてゆくヒントを与えてくれるように思えてなりません(ほぼ原文のまま)。
さて、展覧会は、”医は仁術”のテーマの通り、日本の医学は、常に「仁」、すなわち“他を想う心”で進歩してきたというのがベースにある。江戸期の医学の進歩が豊富な資料で明らかにされる。展覧会場は写真撮影自由というので、パチリパチリ。それらを示しながら、簡単に紹介します。
まず、第一章では、いきなり、見慣れた浮世絵、国芳の”相馬の古内裏”が。そして、”麻疹を軽くする傳”など。この章は”病は、いつの時代も、身分の貴賤なく、人々を襲う”がテーマ。医療が未熟であった時代、人々は祈るしかなかった。そんな関係の資料が展示されている。
相馬の古内裏(国芳)。 骸骨絵は解体新書が出たあとなので、”科学的”に描かれているそうだ。

麻疹を軽くする傳 (錦絵)

第二章 東から西へ/医術の伝来 東や西(漢蘭)から伝えられた医の知識、医術。それらを基に描いた人体図などを紹介。
五臓六腑図。

経路人形。

第三章 医は仁術/和魂漢才・和魂洋才の医
この章がメイン。薬草研究から、薬の製造、人体解剖、牛痘、麻酔、手術、等、江戸時代の医学の進歩を追う。また、医術知識が広まり、 養生のような予防医学的概念も生まれる。
大和本草。 (貝原益軒) 日本本草学のはじまり。

薬屋さんの看板など。

薬の製造道具。

解体新書。

奥田木骨。木製骸骨。

生人形。 解体新書後、内臓をあらわにした人形が薬屋さんの看板などに用いられた。

手術道具。

栄西の喫茶養生記。

山脇東洋。 国内初の人体解剖に成功。

華岡青洲。 全身麻酔薬を開発。世界ではじめて麻酔での乳がんの手術に成功

さらに、第4章/近代医学と仁、第5章/現代の医とつづく。浮世絵から模型人形、木製骸骨まで多彩な資料を使っての、楽しい展覧会であった。

国立科学博物館近くの野口英世像の顔をアップで撮ってみた。”医は仁術展”記念で。
