'07.11.19 『ある愛の風景』(試写会)TOKYO FM HALL
『アフター・ウェディング』のスサンネ・ビア監督作品。『アフター・ウェディング』は見たいと思っているので、こっちも気になってた。
「軍人の夫ミカエルと娘2人と幸せに暮らしていたサラ。ある日派遣先のアフガニスタンで夫が戦死したと知らせを受ける。深い悲しみと喪失感の中、刑務所帰りの義弟ヤニックと心を通わせる。そんな時、夫が帰還して…」という話で、チラシや雑誌などで紹介されているのは、だいたいこんな感じのあらすじ。このあらすじで3人が配されたチラシを見ると、三角関係の話なのかと思ってしまうけど、全然違った。かなり社会派。
なんというか感想が書きにくい。正直に言うと前半はウトウトしてしまった。この日インフルエンザの予防接種を受けたこともあるかもしれないけど…。夫は優秀な軍人で、弟のヤニックは銀行強盗をして服役し、冒頭出所してくる。夫と義弟の関係、夫の両親との義弟との関係。そして自分との関係…。そのすべてがギクシャクしていてかみ合わない。その感じを手持ちカメラ(たぶん…)で写し出す。そのカメラが落ち着かなくて、一つのシーンでも主人公達の横から撮ったり、やや上から撮ったりで正直疲れた。多分、不安定な家族の感じを表現しているのだと思うけど、結構辛くて集中出来なかった。
いろんな事が多弁ではなく、人につっかかってばかりいるヤニックの言葉ですら本心ではない。だからいろんなことを自分なりに解釈しないといけない。主題自体は「愛」で、それはホントにいろんな愛。そういうのは自分で感じた方がいいとは思うし、そういう意味ではとってもよくできてると思う。でも、見ているのが辛い。それは、辛い場面が多いからとか、そういう事でもない。こうなるともう好みの問題なのかもしれない…。
サラは平凡な主婦だけど、すごく素敵な人。演じている女優さんが素敵なので、余計そう感じるのかもしれない。母親としての強さと、女としてのもろさや、かわいさが同居していてすごく共感できる。彼女が夫の死を受け入れようと必死に闘っていた時に、支えてくれたヤニックを頼りにしても責められない。
ヤニックは出来のいい兄にコンプレックスを持っている。厳格な父親から愛されていないと思っていて、無軌道な生き方をして、とうとう刑務所へ。彼は自分の居場所がないと思っていたのだと思う。自分は厄介者で必要とされていないと思っていた。兄の死に苦しみ酔い潰れた彼を迎えに来たサラが、彼の前で涙を流した時、彼は自分を認めてもらえたと思ったのかもしれない。一番弱い姿をさらけ出してくれたから。そしてヤニックは居場所を見つける。サラとヤニックの間にあるのは恋愛ではない。恋愛しそうになるけど、そうはならない。
ミカエルは逆に自分の居場所を切り開き、守ってきた人だ。努力もしてきたので自信もある。彼は自分の行動が常に正しいと信じてきた。冒頭のシーン、ミカエルの行動にヤニックが激怒する。見ていた時はヤニックのキレやすさが気になったけど、後から考えればミカエルの自分本位な正義感がヤニックを追い詰めていたとも言える。もちろんヤニックが劣等感を抱いているのは、ミカエルのせいではないし、ミカエルが嫌な人物なわけでもない。でも、何となく出来過ぎの彼を嘘くさく感じたりもした。そんな彼が捕虜となり辛い体験をし、極限状態である選択を迫られた時、自分の信じていたものが全て崩壊した。
ミカエルのような体験をした人はたくさんいただろうし、今現在経験している人もいると思う。戦地で捕虜になるという極限状態じゃなくても、辛い選択を迫られることはフツーのOLにだってある。辛さの度合いや悲惨さは比べものにならないけど…。映画は彼が心に負った傷を癒す光明が見えたところまでで終わる。救いが見えた明るい終わりと見る人もいると思う。私はそこまで楽観は出来なかった。
彼の傷はいずれ癒えるかもしれない。でも、傷跡は残るだろう。彼のとった行動を責めることはできないけれど、受け入れることができるか自信がない。でも、自分が彼と同じ状況になったら…。難しい。でも、サラなら受け入れるかもしれない。それが愛。かなり究極な形ではあるけど。
見終わった後、いろいろ考えさせられる映画というのは、それなりの主張や問題提起があるわけで、そういう意味ではよく出来ていると思う。人間関係の微妙さや難しさを描き、多弁ではないけどきちんと伝わる。罪と罰についてもすごいところを突くよなぁと感心。でも、人の心が折れるのを見るのは辛い。ミカエルの体験は辛すぎて涙もでなかった。微かな光りは見えたとしても、折れっぱなしでは…。いい映画だけど、オススメするのは難しい。敢えて追体験出来る感じでもないので、自分がかなり元気じゃないと辛いかも。
『ある愛の風景』Official site
『アフター・ウェディング』のスサンネ・ビア監督作品。『アフター・ウェディング』は見たいと思っているので、こっちも気になってた。

なんというか感想が書きにくい。正直に言うと前半はウトウトしてしまった。この日インフルエンザの予防接種を受けたこともあるかもしれないけど…。夫は優秀な軍人で、弟のヤニックは銀行強盗をして服役し、冒頭出所してくる。夫と義弟の関係、夫の両親との義弟との関係。そして自分との関係…。そのすべてがギクシャクしていてかみ合わない。その感じを手持ちカメラ(たぶん…)で写し出す。そのカメラが落ち着かなくて、一つのシーンでも主人公達の横から撮ったり、やや上から撮ったりで正直疲れた。多分、不安定な家族の感じを表現しているのだと思うけど、結構辛くて集中出来なかった。
いろんな事が多弁ではなく、人につっかかってばかりいるヤニックの言葉ですら本心ではない。だからいろんなことを自分なりに解釈しないといけない。主題自体は「愛」で、それはホントにいろんな愛。そういうのは自分で感じた方がいいとは思うし、そういう意味ではとってもよくできてると思う。でも、見ているのが辛い。それは、辛い場面が多いからとか、そういう事でもない。こうなるともう好みの問題なのかもしれない…。
サラは平凡な主婦だけど、すごく素敵な人。演じている女優さんが素敵なので、余計そう感じるのかもしれない。母親としての強さと、女としてのもろさや、かわいさが同居していてすごく共感できる。彼女が夫の死を受け入れようと必死に闘っていた時に、支えてくれたヤニックを頼りにしても責められない。
ヤニックは出来のいい兄にコンプレックスを持っている。厳格な父親から愛されていないと思っていて、無軌道な生き方をして、とうとう刑務所へ。彼は自分の居場所がないと思っていたのだと思う。自分は厄介者で必要とされていないと思っていた。兄の死に苦しみ酔い潰れた彼を迎えに来たサラが、彼の前で涙を流した時、彼は自分を認めてもらえたと思ったのかもしれない。一番弱い姿をさらけ出してくれたから。そしてヤニックは居場所を見つける。サラとヤニックの間にあるのは恋愛ではない。恋愛しそうになるけど、そうはならない。
ミカエルは逆に自分の居場所を切り開き、守ってきた人だ。努力もしてきたので自信もある。彼は自分の行動が常に正しいと信じてきた。冒頭のシーン、ミカエルの行動にヤニックが激怒する。見ていた時はヤニックのキレやすさが気になったけど、後から考えればミカエルの自分本位な正義感がヤニックを追い詰めていたとも言える。もちろんヤニックが劣等感を抱いているのは、ミカエルのせいではないし、ミカエルが嫌な人物なわけでもない。でも、何となく出来過ぎの彼を嘘くさく感じたりもした。そんな彼が捕虜となり辛い体験をし、極限状態である選択を迫られた時、自分の信じていたものが全て崩壊した。
ミカエルのような体験をした人はたくさんいただろうし、今現在経験している人もいると思う。戦地で捕虜になるという極限状態じゃなくても、辛い選択を迫られることはフツーのOLにだってある。辛さの度合いや悲惨さは比べものにならないけど…。映画は彼が心に負った傷を癒す光明が見えたところまでで終わる。救いが見えた明るい終わりと見る人もいると思う。私はそこまで楽観は出来なかった。
彼の傷はいずれ癒えるかもしれない。でも、傷跡は残るだろう。彼のとった行動を責めることはできないけれど、受け入れることができるか自信がない。でも、自分が彼と同じ状況になったら…。難しい。でも、サラなら受け入れるかもしれない。それが愛。かなり究極な形ではあるけど。
見終わった後、いろいろ考えさせられる映画というのは、それなりの主張や問題提起があるわけで、そういう意味ではよく出来ていると思う。人間関係の微妙さや難しさを描き、多弁ではないけどきちんと伝わる。罪と罰についてもすごいところを突くよなぁと感心。でも、人の心が折れるのを見るのは辛い。ミカエルの体験は辛すぎて涙もでなかった。微かな光りは見えたとしても、折れっぱなしでは…。いい映画だけど、オススメするのは難しい。敢えて追体験出来る感じでもないので、自分がかなり元気じゃないと辛いかも。
