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【cinema】『インセプション』

2010-08-08 23:32:12 | cinema
'10.07.24 『インセプション』@TOHOシネマズ六本木

これは見たかった! だってレッドカーペット行けなかったし(涙) 平日18:00六本木着はかなり辛い… ということでリベンジ!

*ネタバレありです! そして長文!

「他人の夢の中に入り込み、潜在意識を操作する産業スパイのコブは、エネルギー会社のCEOサイトーから仕事を依頼される。ある人物の夢に入り込み、ある考えを植え付けて欲しいという。意識の植え付けは大きなリスクをともなうが…」という話。これは面白かった! twitterによると某演出家と某女優(?)さんはダメだったそう。某女優(?)さんにいたっては、爆睡した挙げ句評価0点だったそう(笑) まぁ、これは極端な例としても、ダメな人は全然ダメかもしれない。基本的に個性の強い作品は好みが分かれるのは運命なので(笑)

まずはその発想がおもしろい! 特に原作はなく、脚本も手がけるクリストファー・ノーラン監督が構想10年の末映画化した。何でこんなこと思いつくんだろ? でもこれ、映像で見てももちろんおもしろいけど、小説で読んで頭で画を描いたらスゴイおもしろいと思う。だってコブやアリアドネ達がしていることは、まさにそういうことだから。つまり、数人でチームを組み、ターゲットと共に夢を共有する。そして、夢を構築して、ターゲットの意識下の情報を盗んだり、操作したりする。こんなことが実際に行われたら大問題だと思うし、概要説明はあるけど、基本的な夢をどうやって共有するのかってところの具体的な説明はなかったと思う。脳波計のようなものでつながって、みんなで一緒に寝ていたけど、どういう仕組みなのかは不明。そもそも、眠り(夢じゃなくて)なんてそんなに簡単にコントロールできるものなのか? というツッコミはなしで! とにかく、その世界観に浸るべし(笑)

この映画の主題は夢=深層心理を操れるかってことなので、コブとアーサーは夢のまた夢へと入って行く。この辺りが混乱するところかと思う。冒頭のサイトーからの挑戦で、サイトーの情報を盗むエピソードでは実はよく理解できなかった。これがきっかけで、サイトーがコブ達に依頼したのは、ライバル会社の次期社長に、ある考えを植え付けたいというもの。これは大変リスクが大きいので、通常3名で行うところ、精鋭を揃えて5名のチームを組む。対象者を眠らせる調香師ユスフ、対象者の身近な人物のイメージを自身に投影させる能力のあるイームス、夢の舞台となる箱(町並みや建物等)の設計者アリアドネが新たに加わる。彼らをスカウトしていく場面は現実だけど、どこか夢の中っぽくて好き。

コブはどうやらこの技術を義父である教授に習ったみたいで、自分より優秀な学生ってことで紹介されたのがアリアドネ。まだ少女のようなアリアドネがすごくいい。演じるエレン・ペイジが上手いので、この先の展開で単に夢を設計するだけでなく、重要な人物になっている。また、彼女だけが初心者なので、彼女の訓練自体や、そこから疑問に感じたことなどが、このシステムに関しての、見ている側への説明になっている。そういう意味でも重要人物(笑) とにかく、ここまではサイトーとの夢対決、メンバー集めでの中東の街でのチェイスなど、特に詳しい説明もなくスピード感のある展開で、少し不安になるけど、コブがアリアドネを連れていったパリの街で、解決するので大丈夫!

とにかくその映像が素晴らしい! 夢の中にいる自覚がなかったアリアドネに、少々荒療治ではあるけどパリの街を爆破して自覚させる。この爆破の映像がイイ! 普通のOLちゃんなので、爆発シーンなんて映画かテレビでしか見たことないけど、ホントに建物が爆発すると、埃が舞ったりするわけだけど、分かりやすく説明するため、お店のお花やフルーツがキレイに飛ぶ。そして飛んだまま止まる! この感覚がイイ。お花やフルーツの色合いもポップ。この映像はCMでも流れているので、こんな拙い説明よりもそちらをそちらを見た方が早いかも(笑)そして! こちらもさわりの部分だけCMで流れているけど、夢の構造と自分の仕事を理解したアリアドネが、パリの街を歪ませるシーンが圧巻! 奥の方からガーッと持ち上がってくる。どこでおもしろさを感じるかは人それぞれかと思うけど、個人的にはココ! 彼女の映像いじりはちょっとやり過ぎだけど、2人が仮想パリを歩きながら、どんどんアリアドネが理解して行くのと同時に、こちらも理解していく仕組みなので、ここでついていけないとキビシイかも。なぜなら、実際にターゲットに仕掛ける際には、夢らしい荒唐無稽さはあっても、パリの街を折り畳んじゃうような荒唐無稽さはムリなわけで、実はこのホテルのラウンジもアリアドネが設計したものだということを理解しつつ、進んで行かないと、3つ以上の夢の階層を下りて行くので、今どこにいるのか見失ってしまうと思う。見失っても楽しめるけど、これはやっぱりついて行かないと!

コブが設計の部分では素晴らしい才能を持っているのに、自ら行わないのは、ある秘密があるから。ずっとチームを組んでるアーサーも、深い理由までは知らない。それにはコブの妻モルが絡んでいる。詳しくは伏せるけれど、モルは自ら命を断った。妻殺しの容疑で追われる身となったコブは、義母に預けたままの子供達に会うために、この仕事を成功させて、その報酬としてサイトーの圧力で、この問題をクリアにしたいと考えている。モルに対して複雑な思いを抱える彼は、度々無意識下でモルを登場させてしまい、皆の足を引っ張ってしまう。モルの自殺の原因や、何故コブが疑われているのか、何度も映し出される最後に見た子供達の姿などは、違和感を感じたりするけれど、それはラストへの伏線になっている。

このモルという女性の心理がイマヒトツ理解というか、共感できなかった。ある考えに取り付かれてしまったのは分かるけど、それは母親としてどうか? でも、それら全てもラストの伏線ならば見事! このモルを演じたマリオン・コティヤールがイイので、悲しげでミステリアスな存在となっている。主要な人物で女性はモルとアリアドネのみなので、2人が対比となっているのもいい。まだ恋ではないけど、多分アリアドネはコブに惹かれている。コブの秘密が皆を危険にさらすことになるというだけではなく、コブ自身に興味を持っているから心配なのだし、知りたい。そして、彼女が時に強引に、時に優しく真相に迫ることにより、見ている側もコブの秘密とともに、夢の闇の部分を知ることになる。この構造が上手い!

問題を抱えたまま、チームはターゲットであるエネルギー会社次期社長ロバートを夢の中へと引き込む。ある考えが浮かんだ時、人はどこでその発想が浮かんだのか考えるものなので、意識の植え付けの場合、階層を3つ使い、簡単に探れないようにする必要があるそうで、舞台を変えて対象者に違和感なく刷り込みを行う構造になっている。もちろんここが見所! もうハンパなくおもしろかった! 全員で繋がって夢を共有し、夢の中で作戦を展開するんだけど、もちろん現実では寝てるわけで、戻るためには起きないといけない。この起きるための刺激をキックと呼ぶけど、全員で起きるためにはかなり大きな刺激が必要になる。そのため、夢をコントロールしてキックを起こす人が必要になるけど、これは夢主が行う。また、夢の中では時間の経過が現実より早く、現実では10分程度でも、夢の中では数日経っていたりする。階層を重ねて深く潜ると、この時間経過の速度は増す。それぞれの階層の夢主は、そのタイムラグを計算して、同時に各階層でキックを起こさないといけない。眠っていられる時間も限られているので、キックの時間までに任務を遂行しなくてはならない。この設定もおもしろい!

それぞれの階層で舞台が変わる。あんまり詳しく書いてしまうのもヤボなので、詳細は避けるけれど、1階層目の夢主はユスフ。ここはターゲットであるロバートに自然に近づくため、アメリカのビジネス街が舞台になっている。ニューヨークかボストン辺りかな・・・。雨が降っていて暗い感じ。ここで問題が生じる。ロバートは夢を攻撃されることを想定して、訓練を受けていた。コブ達はロバートの意識から攻撃を受けることになる。バンに乗り込みユスフ以外のメンバーは眠りにつく。2階層目の夢主はアーサー。ここはクラシカルなホテルが舞台。ラウンジでコブはロバートに接近し、彼の夢が狙われていることを告げ、彼の潜在意識を守るため、自分達と行動を共にすることを承諾させる。そしてさらに、3層目へと。3層目の夢主はイームスで、舞台はスキー場。実は、ここが目的地。ここで彼の弱点をつき、心理的に揺さぶりをかけ、ある考えを植えつけることが出来れば任務完了。後は、それぞれ上の階層で起こるであろうキックのタイミングにあわせて、キックを起こすだけ。でも、ここでもモルにじゃまをされ、さらに深い階層へ進まなくてはならなくなる。そして、この階層こそがコブの秘密。もうこの展開が面白い! 何でこんなこと考えつくんだろう?

コブの秘密については悲しくて美しい。モルについても、悲劇だけど、それが真実ならば、彼女的には幸せなのかも。モルは命を断ってしまうけど、それもラストの伏線なのかもしれない。夢で死ぬと目覚めると思っているけれど、実は"虚無"へ落ちてしまうそうなので・・・ コブが構築した世界観は、今まで見たこともない映像だった。SF的で、近未来的だけど、どこか懐かしい・・・ でも、現実感はない。この世界観はスゴイ! ここにはコブとモルの悲しい愛が溢れている。モルは精神のバランスを崩してしまうけれど、それほどまでに愛する相手を見つけられたというのはうらやましくもある。でも、他にも2人の愛すべき対象がいたことを忘れてしまうのはどうなんだろう? と思うけど、実はこれすら伏線なのかも。とにかく、全ての世界観がスゴイ。コブは結局、任務遂行を見届けるため、強引にメンバーに加わったサイトーが虚無に落ちたため、さらに深い階層へと入っていく。もう、どこが現実なのか・・・ でも、その地に足がつかない感じがおもしろくてたまらない! 要するに、劇中アーサーがイギリスの数学者ロジャー・ペンローズの"ペンローズの階段"を再現して説明する、パラドクスということ。作品全体が、パラドクスであるということかと・・・。

このミッションで好きだったのは、2階層目のアーサーが夢主の部分。アリアドネが設計したクラシカルなホテルは、アールデコで素敵。そこで、3階層目に向かった(眠った)彼らにキックを起こさせるため大活躍! 詳細は避けるけど、キックが始まると無重力になるので、ここからが見所。相変わらず襲って来るロバートのボディー(?)ガード達が、マトリックスのエージェント・スミスみたいでスタイリッシュ! 彼らとの無重力でのバトルはCMでもチラリと流れているけど、これは長い筒状の廊下を作成し、グルグル回して無重力映像を作り出している。アーサー役のジョゼフ・ゴードン=レヴィットはスタントなしで演じたそう。そのかいあって(?)同行のYuweeと私はアーサーファンに(笑) この廊下のシーンも好きなんだけど、キックにそなえて、無重力状態の中、寝ているメンバーをまとめる映像がグッときた! この発想がスゴイ(笑) まとめられてフワフワと浮かぶメンバー達は、全員寝てるというちょっと滑稽な姿。それを真面目そうなアーサーが、自らもフワフワ浮かびながら行うのがイイ! アーサーのスーツもクラシカルで好き!

冒頭に出てきた浜辺に建ってたサイトーの城を見た時には、ビックリしてどうなることかと思った(笑) 花鳥風月をモチーフとした蒔絵調の壁の装飾は、二条城からヒントを得つつ、一般的な日本にしたとのことだけど、一般的な日本ってこんなじゃないし(笑) でも、ここは『キルビル』とかでもそうだけど、仮想日本だからいいのかなとか思っていたら、舞台は日本の新幹線の中へ。コブが泊まってた東京のホテルはミッドセンチュリーモダンな家具や内装。レトロ調に仕上げましたというようなスタイリッシュさがすごくよかった! ホントにあったら泊まりたい(笑) その後、ヘリから見る東京の街もおもしろかった。

夢の中の映像やパリの街が歪むシーンについては散々書いてきたので割愛するとして、夢の中に潜入するなどという、最先端っぽいことをしているのに、全体的にどこかレトロ。『バットマン・ビギンズ』や『ダークナイト』でも感じていたのだけど、近未来的でありながら、どこかクラシカルでレトロ。その感覚が絶妙で大好き! パリの礼拝堂みたいな講義室にいる義父役、サー・マイケル・ケインの佇まいとか、いちいち画になる! その感じも好き。洒落もきいてて、キックの時にかかる曲を歌っているのはエディット・ピアフ。これは『ピアフ』で大ブレイクしたマリオン・コティヤールが出演しているから? とか、アリアドネという名前はやはり迷宮が出てくるギリシャ神話から取ったのか? などと考えるのもおもしろい。

キャスト達はみんなよかった! 渡辺謙はチームの中では断トツで最年長だけど、アクションもこなしていた。サイトーはこのミッションを依頼する人物で、自社を守るために、他社の次期社長の潜在意識を操作する依頼をする人物なわけだから、悪人とまでは言わないけれど、いい人物とはいい切れない。でも、最初は強引に夢の同行メンバーになったのに、アーサー→イームスと夢主が変わるごとに、次第に仲間として認められて、イメージもいい人になっている。この辺りを自然に演じていたのはさすが。アーサーのジョゼフ・ゴードン=レヴィットがかっこよかった! ちょっとエドワード・ノートン似。頭は良さそうだけどちょっと頼りなげな印象なのに、アクションもバッチリ。いつも冷静で突っ走りがちなコブを支えている感じがイイ。オールバックとクラシカルなスーツのせいか老けて見えたけど、まだ20代だった! これから楽しみ♪ イームスのトム・ハーディは、コブやアーサーとは別のイケメン担当。ちょっとワイルドさが魅力。ユスフのディリープ・ラオは、お笑い要素担当。その辺りは2人とも上手かったと思う。モルという役は、実は実体がなく、登場シーンは回想、もしくはコブの潜在意識が作り出すイメージ。なので矛盾が多く、妻としても、母としてもどうかと思うけど、それもコブのイメージならば仕方なし。でも、マリオン・コティヤールがその辺りをファムファタール的に、切なく儚げに演じていたのはさすが! ホントに上手い役者は殺人鬼を演じても、どこか魅力を感じさせるものだと思うので。そういう意味ではホントよかったと思う。そして美女です。

アリアドネのエレン・ペイジがいい! 彼女の演技派ぶりは聞いていたけど、出演作を見たのは初めて。チームの中で誰よりも若く、初仕事ながら優秀。コブの秘密をいち早く察知し、その問題を探る、と書くと聞こえはいいけど、プライバシーに関わることに踏み込んでしまうお節介な人にも見えてしまいかねない。でも、そうはなっていなかったのはエレン・ペイジの演技のおかげ。コブのレオナルド・ディカプリオもよかったと思う。どうしても、"レオ様"ってイメージが強すぎて、演技上手いのにあまり評価されないのが残念な印象。ただ、前作の『シャッター・アイランド』の役と、設定などがかぶる部分が多くて、なんとなくコブのキャラの印象が薄まってしまったのが残念だけど、あくまで個人的な感想。

後は、トム・ベレンジャーが意外な姿で登場。あ! ロバートのキリアン・マーフィーも良かった! 上手いけど個性が強いので、アクの強い役をやることが多いけど、"普通"の幸せを求める大富豪の息子役を見事に演じていたと思う。個人的にすごくうれしかったのは、義父役でサー・マイケル・ケインが出演してたこと! 優秀な教え子で、娘婿だったコブに対する複雑な感情を見事に表現。そしてカッコイイ! 大人の色気がある。そして何より品がある! 素敵

というわけで、さんざん熱弁をふるってきましたが、サスペンス、SF、アクション、家族愛、友情、恋愛など全ての要素が詰まっている! スゴイ映画だと思う。ラストについても謎な終わり方をしているけど、これも着地点としてはいいと思う。ハッピーエンドでもよかった気もするけど、全て煙に巻く終わりっていうのも、余韻があっていいと思う。

普段あまり映画を見ない人は混乱するかも知れないけど、張り巡らされた伏線を拾っていくタイプの映画ではなくて、螺旋状に階層が降りていくだけなので、あんまり各階層にこだわらず、そういうものなのだと、感覚で見ていった方がいいかも。って余計なお世話か…(笑) 音楽もかっこよかった。ちなみに、劇中でギターを弾いてるのは、The Smithsのジョニー・マー。

とにかく、この映像と世界観は映画館で見てほしい! オススメ!


『インセプション』Official site

コメント (8)
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