・*・ etoile ・*・

🎬映画 🎨美術展 ⛸フィギュアスケート 🎵ミュージカル 🐈猫

【cinema】『最終目的地』(試写会)

2012-10-22 02:10:20 | cinema
'12.10.02 『最終目的地』(試写会)@シネマート六本木

cocoで当選♪ いつもありがとうございます! 久々のジェームズ・アイボリー作品ということで応募、見事当選したのでよろこんで行ってきた~

*ネタバレありです!

「1作だけ残して自ら命を絶った作家の伝記を書きたいと考えているオマー。家族の公認を得るため南米ウルグアイにやって来る。作家の妻、愛人とその娘、作家の兄、兄の恋人である日本人青年。オマーの訪問が彼らの人生を少しずつ変えていく・・・」という話。うーん。これはなかなか良かった。感動!ということはないのだけど、じんわり来るというか・・・ なるほど最終目的地とはそういうことかという感じ・・・ 実際に描かれている根っこの部分は、かなり深い。サラリとしているわけでもないけれど、行間を拾っていくような語り口。自分の中で何かがよぎったり、腑に落ちたりしているわりには、それを言葉にするのがなかなか難しい・・・ というわけで、見てから2週間も経っちゃった 実は、こうして書き始めた今でも、上手く語れる自信がない。決して難解なわけではないのだけど・・・

ジェームズ・アイボリー監督の作品は『眺めのいい部屋』『モーリス』『熱砂の日』しか見ていない。かなり昔に見たので、あまりよく覚えていないけれど、中では『眺めのいい部屋』が好きかなぁ・・・ 文芸作品を多く手がけることで有名で、今作も原作あり。ピーター・キャメロンの同名小説。原作は未読。原題も『The City Your Final Destination』なので、そのまま。原題方が直接的な感じだけど、個人的には邦題の方がしっくりくるかな・・・ 目的地って必ずしも場所ってだけではないと思うので。もちろん、誰でもどこかで生まれで、どこかで暮らし、どこかで死んでいくわけだから、そういう意味では場所は重要だけど、大切なのは何故そこに居るのかってこと。それは、そんなに難しいことじゃなくて、家族が居るからだったり、その土地が好きだからだったり・・・ 上手く書けないな(笑)

冒頭、散歩中の犬に引っ張られてぬかるみに入り込んでしまい、足をとられているオマーが描かれる。作家の家族から伝記公認を断る手紙を受け取ったオマーは、とってもガッカリして落ち込むけれど、それで諦めてしまう。でも、彼女のディアドラは諦めない。直接家族に交渉すればいいじゃない!と、しり込みするオマーをよそにネットで航空券を手配してしまう。この、信念があるなら突き進め!というディアドラの性格は、後に違った面を見せることになるけど、この時点では煮え切らない態度のオマーに若干イラッとするものを感じて、ディアドラ目線で見ていた。よく考えると一度断られているのに、直接会いに行ってみようと思えるかっていうと、なかなかそうもいかない部分はあると思うけれど、ただ伝記を出版しようと考えているならば、一度断られたからといって挫折していたらダメだし・・・ 後に違った印象を受けることになるのが、スゴイと思ったのだけど、見ていた時はムチャだなとは思わなかったし、自分が一生懸命彼に尽くしているのに、彼の気持ちがイマヒトツ自分に向いていないと、傷つくディアドラに同情していた。煮え切らない男だなと(笑) でも、その辺りをぬかるみで表現しているのかなと思った。抜け出したいけど、抜け出せない感じ・・・

オマーは結局ウルグアイにやって来る。ウルグアイといっても、舞台はほぼ作家の屋敷や敷地内のみ。ウルグアイに着いたっていう場面は既に田舎のバス停。作家の屋敷は、その土地自体に名前がある。例えば『レベッカ』のマンダレイみたいな・・・ でも、忘れちゃった 必死にその土地に行きたいと片言のスペイン語で伝えると、スクールバスに乗せてもらえというくらいの辺鄙な土地(笑) でも、このお屋敷スゴイ豪邸だった!

で、ここで暮らしているのが前述した、作家の妻キャロライン、愛人のアーデンとその娘。多分、同じ敷地内の離れのような所に、作家の兄アダムと、彼の日本人の恋人ピートが暮らしている。なかなか複雑・・・ 日本版のチラシなどでは、ピート役の真田広之が大きく取り上げられていて、てっきりこの4人の愛憎劇のようなものが繰り広げられるのかと思っていた。もちろんそういう側面もあるのだけど、一応の主人公はオマーで、彼の登場が彼らの生活に影響を及ぼすわけだから、実際はここにオマーがいないと変。まぁ、別にいいけど(笑) 主人公ではあるけどオマー意外に地味だし・・・

話を戻す! 作家と直接関係のないピートは別として、遺族の中でアダムとアーデンは公認を与えてもいいという感じ。伝記を出版する経緯や遺族の公認というのがよく分からないのだけど、兄のアダムが言うには特に遺族の公認がなくても、出版はできるらしい。勝手に書けばいいだろう的なことを言っていたような・・・ なので、オマーが公認にこだわっているということになる。その辺りが彼の生真面目さとか、気の弱さを感じたりする。もちろんいい意味で! きちんとしているってことだから。違うか?(笑)

それぞれ適度な距離でオマーに接するけれど、年の近い愛人のアーデンとは次第に惹かれあう仲に・・・ まぁ、そうだろうなと思っていたし、結婚しているわけじゃないから、不倫というわけじゃないので、不快感はなし。ディアドラはかわいそうだけど・・・ ウソか本当か知らないけれど、旅芸人(だっけ?)の一座について来たら、ウルグアイに辿り着いてたという、不思議ちゃん一歩手前なアーデンに、オマーが惹かれる気持ちはなんとなく分かる。こういう捉えどころがないけど、キッパリ拒絶しないような感じの女性はモテるよね(笑) 実際は愛人亡き後、その愛人の妻と同居できるんだから、なかなかの人だと思うけれど・・・ もちろん嫌な人という意味ではない。行くところもないだろうし・・・ でもねぇ・・・(笑) とにかく、見えているほど弱い人ではないということ。いざとなったら、一番根性が座るのは間違いなくアーデンだと思う。よく考えるとオマーは、一見間逆に見えて、強い女に惹かれるってことか(笑) 強さの出力方法は違うけど・・・

妻のキャロラインももちろん強い女性ではあるけれど、実際は彼女の方がもろいと思う。それはやっぱりアーデンが母であることもあると思う。上手く言えないけど・・・ オマーや後からやってきたディアドラに対して拒絶するような態度を取る。子供のいない彼女には、守るべきものは自分しかない。だから、自分のテリトリーに入って来られることに、過剰反応してしまうのじゃないかと思う。いつも不機嫌で人を否定してばかりいるように見えるけれど、義兄のアダムとはお酒を酌み交わすし、ピートのこともアーデンのことも受け入れている。彼女が公認を与えたくなかった理由は夫が彼女を裏切ったから。それは愛人を作ったからじゃない。夫が書いた唯一の小説は、自分の人生をそのまま描いたもの。だから、彼には次回作は書けなかった。自分の中に何もなくなってしまったから・・・ そして、自ら命を絶ってしまった。キャロラインがどんな風に描かれていたのかは語られない。ただ、どんな風に描かれていても、彼女にとっては受け入れがたいことだったのでしょう。

兄弟の両親は裕福で、ナチスの迫害を逃れてウルグアイにやって来た。どこか享楽的なところがあり、新婚旅行のヴェニスで乗ったゴンドラを船頭から買取り、ウルグアイの屋敷まで運ばせたりした。それを酔狂と取るか、ロマンティックと取るかってことかと思うけど、アダムとキャロラインは酔狂と思っている様子。そんなアダムはオマーにある提案をする。母親の宝石をアメリカへ持ち帰り、売って欲しいというもの。自分の人生の終わりを意識し始めたアダムは、恋人のピートとの関係や、義妹キャロラインの身の振り方を考えてのことだった。その代わりに公認を与えるという。よく分からないけれど、宝石などの財産を国外に持ち出すのは法に触れるのかな? 屋敷での生活を心地よく思い、本来の目的を忘れつつあったオマーにとっては、あまりメリットのない話だったけど、アダムの人柄に親しみを感じていたオマーは、この提案を受け入れる。このことが後に波紋を呼ぶことになる。

どんどん距離を縮めていくアーデンとオマー。2人のゴンドラでのキスはロマンティック。でも、どこか変(笑) 2人はゴンドラをロマンティックと感じるタイプ。そんな時、ピートの蜂蜜採取を手伝っていたオマーが、蜂に刺されてハシゴから落下する事故が起きる。病院に搬送され意識不明の重体。オマーに付き添っていたアーデンを、妻もしくは恋人だと思った医師は、大切な人の呼びかけには反応するから、話しかけてあげてと言う。自分は彼の大切な人ではないと否定しつつ、呼びかければまぶたがピクピクと反応するのを見てしまえば、心が動かないハズもなく・・・ でも、オマーにはディアドラという恋人がいるからと必死に感情を抑える。このシーンは良かった。とはいえ、アーデンとしてはディアドラに連絡しないわけにもいかないってことで、アメリカからディアドラが駆けつける。まぁ、別にイヤイヤしたわけじゃないけど(笑) アーデンがディアドラを病院へ車で送る途中、牛の群れの横断を待つ車内での会話がいい。医師が自分を恋人と勘違いしているけど、気にしないで欲しいと言うアーデン。平静をよそおいながらも、不安を感じるディアドラ。ウルグアイに渡る前から、オマーに愛されている実感がなかった彼女にとって、アーデンの存在は気になるところ・・・ こんな葛藤が描かれる車内の目の前には牛・・・(笑)

そしてディアドラの登場が大きな変化をもたらす。初めから臨戦態勢で乗り込んで来た感のあるディアドラ。さっさと公認をもらってオマーを連れて帰るわ!という感じ(笑) まぁ、気持ちはよく分かる。アダムなどは彼女のキツイ性格に嫌悪感を抱いている様子。まぁ、例の宝石の件で彼女と一戦交えたわけだから、仕方がないという感じ・・・(笑) オマーが公認の件や、宝石の件についてどう思っているかは関係なく、正しいと思うことに突き進むディアドラは厄介ではあるけれど、間違っているとも言い切れない。違法なのであれば、アダムが良い人だからという承諾してしまうオマーはのん気過ぎる気もする。

オマーはこの地でアーデンやアダムと出会って安らぎを感じ、自分が居たいと思える場所に出会ったわけだけど、そのキッカケを与えてくれたのは、強引に背中を押したディアドラだったりする。オマーの繊細でちょっとのん気な性格には、アーデンが合っているのだし、屋敷での暮らしが現時点では居心地がいいということ。アメリカで自分の夢をかなえるなら、ディアドラのように突き進まなきゃならない部分もあるわけで、要するに視点が変われば、価値観や物事の見方も変わるってことが描かれているのかなと・・・ ディアドラはちょっと損な役回りになってしまったけれど、前述どおりオマーがやって来て彼らの暮らしが緩やかに変化し、ディアドラがやって来て嵐を巻き起こす、それぞれの歯車が回り、しかるべきところに落ち着く。1つ1つ書いてしまうのはどうかと思うけれど、あるものは愛する人との絆を深め、ある者は旅立っていく。オマーはアメリカに戻り大学講師になる。でも、彼の思いは生徒達には届いていない・・・ そして、彼は自分の求めている場所へ。ここで終わるのかと思ったら意外なオチが・・・

3年後、旅先のイタリアで、新しい恋人とオペラ鑑賞に来たディアドラは、キャロラインを見かけ思わず声をかける。ウルグアイの屋敷でほぼケンカ別れだった2人・・・ キャロラインのことが気になって仕方がない。お互いNew York住んでいることが分かると、追いかけて電話してと言うディアドラ。彼女の中にも変化があったということか・・・ キャロラインにも今ではパートナーがいる。実は、前述のオマーが戻って、アーデンに受け入れられるシーンよりも、このキャロラインが穏やかな表情でオペラ鑑賞している姿を見た時に、なるほど最終目的地とはそういうことかと思った。なるほどと腑に落ちたわりには、何がなるほどなのかはあまり形にならなかったのだけど(笑)

今、居るこの場所や自分という存在が、最終目的地なのかどうかはよく分からない。求めても得られないかもしれないし、彷徨った挙句に辿り着くのかもしれない。自分が自分らしく居られる場所であり、時間であり・・・ 場所って書くと、ある特定の場所になっちゃうけど、必ずしもそういうわけでもなく・・・

キャストは良かった。真田広之は大きな役だけど、直接ストーリーに関わるというよりは、それぞれと適度な距離感を持って存在することで、そのバランスを保っているという感じ。存在感を出し過ぎず、でもしっかり存在している感じが良かった。欧米人に比べると感情表現は抑え目だけど、動作などはわりと大きい。日本人はそんなことしないと思う部分もあるけど、少年時代にアダムに拾われて以来、海外暮らしという設定なのでOK 実年齢は50歳を超えているけれど、40歳の役がしっくりきちゃうのはスゴイ! アンソニー・ホプキンスは良い人なんだか、曲者なんだか分からないアダムを、さすがの演技で見せる。まぁ、基本いい人だけど(笑) 年齢的なことや、その佇まいから、彼が遺族の長という感じだけど、彼の意見や判断が全て正しいわけじゃない。その辺りも良かった。ディアドラのアレクサンドラ・マリア・ララは若干損な役回りだけど、嫌な女になってはおらず、彼女だって間違ってはいないよ!と思わせたのは良かった。主人公のオマーのオマー・メトワリーは繊細で純粋な感じは良かったのだけど、ちょっと地味だったかなぁ・・・

シャルロット。ゲインズブールの危うさがスゴイ! 普通に歩いたりしているだけでもエロイ! 自分が守らないとってなる気持ち分かる(笑) 自分が守りたいと思うわりには、最終的にはしっかりしてくれないとイヤだと思うので、そういう意味ではこのシャルロット・ゲインズブールのアーデンは、理想的なのでは? 手に入りそうで、なかなか手に入らない感じもイイ ←オッサンか?(笑) アーデンとは逆に、実はもろかったり、寂しかったりするのに、いつも周囲に強く出てしまうキャロライン。そうやって自分を守っている。このローラ・リニーは素晴らしい! キリキリ怒っていることも、間違っているわけじゃない。そういう部分が、例えばオマーに迷惑だから帰れと言っている時でさえ、きちんと感じられて、キャロラインを嫌な人だと思ったりしない。夫の原稿を焼くシーン、そしてラストの穏やかな表情が素晴らしい。さすが!

画が素晴らしく美しい! ウルグアイの自然の美しさ、屋敷の調度類も素敵 いつもしっかりお化粧して、きちんとした服装のキャロラインも素敵だけど、ふわふわワンピにレインブーツとかのアーデンの服がカワイイ

文芸作品好きな方オススメ。シャルロット・ゲインズブール好きな方是非♪

『最終目的地』Official site


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする