『東ベルリンから来た女』鑑賞@WOWOW
録画しといた『東ベルリンから来た女』見た!良かった!じっくり見応えのある作品。女性らしい強さのバルバラと、彼女を温かく包み込むライナー先生が良かった!壁崩壊まで後9年、長いと思うか、短いと思うか、立場によって違うと思うけど、知っているからより切ない!バルバラの選択も良かった! Posted at 10:12 PM
公開時、見たいと思って見逃してた。たしかル・シネマだったんだよね・・・ ちょっと苦手なんだよね・・・ 段差なくてチビッコには辛いし、渋谷だし・・・ ということで、WOWOWで放送になったので鑑賞!
ネタバレありです!
「ベルリンの壁崩壊まであと9年。東ドイツの海辺の町に、東ベルリンから美しい女医バルバラが転任してくる。西側への移住申請をはねつけられての左遷。バルバラには秘密警察(シュタージ)の監視がついている。同僚のライナー医師はどこか陰のあるバルバラに惹かれていくが・・・」という話。これは良かった! 大きな事件は起きず、淡々とした語り口。でも、その中に常に緊張感がある。じっくりと鑑賞できる見応えのある作品だった。
映画はバルバラの初出勤の日から始まる。何歳設定なのかは不明だけど若くはない。40過ぎに見えるけど、30代後半くらいなのかな? 堅い表情で同僚とも馴染まない。そんな彼女に興味を覚えるライナー医師。官舎までバスを待つ彼女を車で送り、打ち解けようとするけれど、バルバラは簡単には踏み込ませない。官舎なので知っていても当然なのだけど、道案内もしないのに自宅に向かうライナー医師に不信感をあらわにして、車を降りてしまう。堅い。でも、あえてそうしている感じも・・・ バルバラはほとんど笑わない。
バルバラには西ドイツで暮らす恋人がいる。この恋人の状況がよく分からなかったのだけど、彼は東ドイツに入国できる立場ってことなのかな? それとも密かに入っているの? バルバラと森で再会した時、待たせていた友人(?)が、乗ってきたベンツに興味を持ったおじいちゃんにいろいろ聞かれる場面があったけど、東ドイツでベンツに乗ってる人っていたのかな? 政府高官とかは乗ってたの? でも西ドイツの車だよね? 単純に自分の知識が足りないだけではあるのだけど、ちょっと説明不足の気がしないでもない・・・ しかし、いつもは堅い表情で淡々と仕事をこなすバルバラが、森での再会シーンでは駆け寄って抱き合い、いきなりその場で?!というのばビックリしたけどw これはW座というWOWOWの枠で放送されていて、本編前後に安西水丸氏と小山薫堂氏のトークがあるのだけど、本編終了後トークで小山薫堂氏も同じこと言ってたw
話としては恋人のいる西ドイツへ亡命しようとしているバルバラが、同僚のライナー医師にも惹かれつつ、小児科医という自身の仕事選ぶという感じ。王道ストーリーなので、おそらくそうなるだろうなと思っていたし、バルバラの代わりにあの人物が行くのだろうと思ったとおりの人が亡命した。ただ、彼女を送り出したということに、重要な意味があるように思った。
ある日一人の少女が運び込まれてくる。施設で労働させられているステラ。皆に反抗的な態度をとる彼女の気持ちをくみ取るバルバラ。施設職員や病院関係者さえもステラの言葉を聞こうとしない。バルバラは彼女の話を聞き、普通の患者として扱った。ステラはバルバラにだけ心を開く。この少女が後にバルバラの運命を変えることになるけど、それはステラにとっても同じ。大人が反抗的な子供を厄介者として扱い、話も聞かずに封じ込めようとするのは、別に旧東ドイツだから、社会主義だからとか関係ないし、反抗的な子供は自分を守るために、より反抗的になるのも世界共通。なのでバルバラの対応は特別なものでもない。でも、なんだかとってもクール。冷たいとか優しさがないってことではなくて、1人の人間として彼女と向き合ったというような・・・
バルバラの運命を変える患者がもう1人。脳手術をすべきか判断が難しい少年。医師たちも意見が分かれる。手術を主張するライナー医師。同意見ではあるものの、近々東ドイツを脱出する計画のバルバラは協力することができない。この辺りもバルバラ役のニーナ・ホスがほとんど表情を変えずに演じていく。そして医師として患者を救わなければと思った時、彼女の中で答えが見つかったのだと思う。明らかに記憶障害の出ている青年は、直ぐに手術をしなければならない。そのことをライナー医師に告げに行った先で彼女が見たのは、冷酷に彼女を監視し続けるシュッツの姿。彼の妻は死の床についていた。皆悲しみや苦しみを抱えて生きている。冷酷に見える彼にも、血は通っているのだ・・・
ライナー医師の家に招かれ、彼に心をゆるしそうになった時、自ら押し込めてしまったバルバラ。恋人への思い、自由への渇望、そして自らの使命・・・ そして、バルバラは決断する。再び施設から逃走し、バルバラの家に匿われていたステラを連れて、計画通り海岸へ。やって来たのは人が一人横たわれるギリギリの大きさのボート。それを運んできたのは潜水服の男。そう、このボートに乗ってデンマーク(だったかな?)経由で西ドイツへ逃げる計画だった。でも、行くのはステラ。バルバラの生きるべき場所はここ。自分は必要とされている。恋愛と仕事を天秤にかけて、仕事を取ったといえばそうだけれど、"自由"と引き換えに選んだ意味は重い。単純に"仕事"じゃない。彼女を生かすものなのでしょう。もちろんライナー医師の存在は大きく、おそらく2人は恋人になるのだろうと思うけれど、この時点での選択の決め手としての優先順位は1番ではないように思った。ライナー医師は彼女に恋しているけれど、バルバラはまだ恋はしていない。その感じが良かった。バルバラがどこまでも男前でカッコイイ。
バルバラを演じたニーナ・ホスが良かった! ベルリン国際映画祭銀熊(女優)賞受賞経験があるらしいので、ドイツでは有名な女優さんなのかな? あえて無表情で演じているのだと思うけど、シュタージにマークされているために、度々家宅捜索され、裸にされて女性捜査官におそらく陰部まで探られていると思われる。そんな生活の中で自分を見失うことなく、監視の目を欺いて脱出に向けて準備するなんて並大抵のことではない。この計画があるから誰にも心を開くまいとしているのでしょうけれど、ステラをほっておけないもの正義感だけではないと思うし、前述した森での恋人との再会シーンでは感情爆発! 本当は情が厚い人なのでしょう。でも、常に感情を押し込めている姿が逆にミステリアスで、ライナー医師の心をとらえてしまうわけだけど、その気持ちは良く分かるよライナー医師と思ってしまうくらい魅力的。シュルツのライナー・ボックも良かった。任務に忠実だから悪役のような感じだけど、妻の病状を嘆く姿で人間らしさを見せる。『白いリボン』の医師役で、『ミケランジェロの暗号』にも出てたらしいけど、全然気づかなかった ライナー医師のロナルド・ツェアフェルトは、いわゆる2人の男性の間で揺れるという設定からイメージするとビックリするくらい熊さんタイプ。イケメンじゃないのか?!とビックリしたけど、仕事は出来るし、気がきくし、適度にアプローチしつつ、基本見守り目線、しかも料理もできちゃうとっても素敵さん イヤ、熊さんタイプってだけで、お顔も素敵なのだけど・・・ この辺りはいわゆるエリートタイプの金髪白人男性!ドイツのイケメン!って感じの恋人との対比なのでしょうけど、登場シーンの量が違うので有利というのもあるけれど、個人的には断然ライナー医師! 癒されるし 放送後登場した小山薫堂氏にちょっと似てるw
しかし、あんなボートに横たわって海を渡って亡命するなんて(´゚Д゚`)ンマッ!! ほんの30年くらい前にこんなことが行われていたという事実に愕然とする。この作品でベルリン国際映画祭銀熊(監督)賞を受賞したクリティアン・ペツォルト監督によると、今作に出演したある女優さんは1970年代に西側での劇団公演を理由に脱出されたそうで、その時ある人に夕食に招待されたけれど、それは自分が既に東ドイツにはいないはずの日で、どう返答すべきか非常に困ったというエピソードを語ってくれたのだそう。その女優さんがその時感じていたのは、二度と故郷に戻れず、自分の過去も消えてしまうのではないかという恐怖だったのだそう。壮絶・・・
ペツォルト監督は近年の映画で東ドイツは色がなく、人々も無表情に描かれることが多いと感じていたそうで、今作では無垢な愛を描きたいと思ったのだそう。東ドイツの海辺の田舎町の何もない風景がいい。いつも海風が吹く道を字電車で走るバルバラの姿がいい。あと、バルバラの服装が素敵。質素で派手なものではないけれど品がいい。ベルトのあるパンプスとか、青いスカートに赤に近い茶色のジャケットっぽいカーディガンとか、大人っぽくて女性的。それが、田舎町の風景の中のポイントになっている。バルバラって男前なんだけど、女っぽいんだよね。大人の女性らしさ。それが素敵!
とっても大人な映画。バルバラを初めとした登場人物もだし、旧東ドイツの体制批判を声高に叫ぶのではなく、抑えた語り口で淡々と描く。でも、ちょっとサスペンスっぽくもあって飽きることはない。オススメ!
『東ベルリンから来た女』Officila site
http://twitter.com/maru_a_gogo
録画しといた『東ベルリンから来た女』見た!良かった!じっくり見応えのある作品。女性らしい強さのバルバラと、彼女を温かく包み込むライナー先生が良かった!壁崩壊まで後9年、長いと思うか、短いと思うか、立場によって違うと思うけど、知っているからより切ない!バルバラの選択も良かった! Posted at 10:12 PM
公開時、見たいと思って見逃してた。たしかル・シネマだったんだよね・・・ ちょっと苦手なんだよね・・・ 段差なくてチビッコには辛いし、渋谷だし・・・ ということで、WOWOWで放送になったので鑑賞!
ネタバレありです!
「ベルリンの壁崩壊まであと9年。東ドイツの海辺の町に、東ベルリンから美しい女医バルバラが転任してくる。西側への移住申請をはねつけられての左遷。バルバラには秘密警察(シュタージ)の監視がついている。同僚のライナー医師はどこか陰のあるバルバラに惹かれていくが・・・」という話。これは良かった! 大きな事件は起きず、淡々とした語り口。でも、その中に常に緊張感がある。じっくりと鑑賞できる見応えのある作品だった。
映画はバルバラの初出勤の日から始まる。何歳設定なのかは不明だけど若くはない。40過ぎに見えるけど、30代後半くらいなのかな? 堅い表情で同僚とも馴染まない。そんな彼女に興味を覚えるライナー医師。官舎までバスを待つ彼女を車で送り、打ち解けようとするけれど、バルバラは簡単には踏み込ませない。官舎なので知っていても当然なのだけど、道案内もしないのに自宅に向かうライナー医師に不信感をあらわにして、車を降りてしまう。堅い。でも、あえてそうしている感じも・・・ バルバラはほとんど笑わない。
バルバラには西ドイツで暮らす恋人がいる。この恋人の状況がよく分からなかったのだけど、彼は東ドイツに入国できる立場ってことなのかな? それとも密かに入っているの? バルバラと森で再会した時、待たせていた友人(?)が、乗ってきたベンツに興味を持ったおじいちゃんにいろいろ聞かれる場面があったけど、東ドイツでベンツに乗ってる人っていたのかな? 政府高官とかは乗ってたの? でも西ドイツの車だよね? 単純に自分の知識が足りないだけではあるのだけど、ちょっと説明不足の気がしないでもない・・・ しかし、いつもは堅い表情で淡々と仕事をこなすバルバラが、森での再会シーンでは駆け寄って抱き合い、いきなりその場で?!というのばビックリしたけどw これはW座というWOWOWの枠で放送されていて、本編前後に安西水丸氏と小山薫堂氏のトークがあるのだけど、本編終了後トークで小山薫堂氏も同じこと言ってたw
話としては恋人のいる西ドイツへ亡命しようとしているバルバラが、同僚のライナー医師にも惹かれつつ、小児科医という自身の仕事選ぶという感じ。王道ストーリーなので、おそらくそうなるだろうなと思っていたし、バルバラの代わりにあの人物が行くのだろうと思ったとおりの人が亡命した。ただ、彼女を送り出したということに、重要な意味があるように思った。
ある日一人の少女が運び込まれてくる。施設で労働させられているステラ。皆に反抗的な態度をとる彼女の気持ちをくみ取るバルバラ。施設職員や病院関係者さえもステラの言葉を聞こうとしない。バルバラは彼女の話を聞き、普通の患者として扱った。ステラはバルバラにだけ心を開く。この少女が後にバルバラの運命を変えることになるけど、それはステラにとっても同じ。大人が反抗的な子供を厄介者として扱い、話も聞かずに封じ込めようとするのは、別に旧東ドイツだから、社会主義だからとか関係ないし、反抗的な子供は自分を守るために、より反抗的になるのも世界共通。なのでバルバラの対応は特別なものでもない。でも、なんだかとってもクール。冷たいとか優しさがないってことではなくて、1人の人間として彼女と向き合ったというような・・・
バルバラの運命を変える患者がもう1人。脳手術をすべきか判断が難しい少年。医師たちも意見が分かれる。手術を主張するライナー医師。同意見ではあるものの、近々東ドイツを脱出する計画のバルバラは協力することができない。この辺りもバルバラ役のニーナ・ホスがほとんど表情を変えずに演じていく。そして医師として患者を救わなければと思った時、彼女の中で答えが見つかったのだと思う。明らかに記憶障害の出ている青年は、直ぐに手術をしなければならない。そのことをライナー医師に告げに行った先で彼女が見たのは、冷酷に彼女を監視し続けるシュッツの姿。彼の妻は死の床についていた。皆悲しみや苦しみを抱えて生きている。冷酷に見える彼にも、血は通っているのだ・・・
ライナー医師の家に招かれ、彼に心をゆるしそうになった時、自ら押し込めてしまったバルバラ。恋人への思い、自由への渇望、そして自らの使命・・・ そして、バルバラは決断する。再び施設から逃走し、バルバラの家に匿われていたステラを連れて、計画通り海岸へ。やって来たのは人が一人横たわれるギリギリの大きさのボート。それを運んできたのは潜水服の男。そう、このボートに乗ってデンマーク(だったかな?)経由で西ドイツへ逃げる計画だった。でも、行くのはステラ。バルバラの生きるべき場所はここ。自分は必要とされている。恋愛と仕事を天秤にかけて、仕事を取ったといえばそうだけれど、"自由"と引き換えに選んだ意味は重い。単純に"仕事"じゃない。彼女を生かすものなのでしょう。もちろんライナー医師の存在は大きく、おそらく2人は恋人になるのだろうと思うけれど、この時点での選択の決め手としての優先順位は1番ではないように思った。ライナー医師は彼女に恋しているけれど、バルバラはまだ恋はしていない。その感じが良かった。バルバラがどこまでも男前でカッコイイ。
バルバラを演じたニーナ・ホスが良かった! ベルリン国際映画祭銀熊(女優)賞受賞経験があるらしいので、ドイツでは有名な女優さんなのかな? あえて無表情で演じているのだと思うけど、シュタージにマークされているために、度々家宅捜索され、裸にされて女性捜査官におそらく陰部まで探られていると思われる。そんな生活の中で自分を見失うことなく、監視の目を欺いて脱出に向けて準備するなんて並大抵のことではない。この計画があるから誰にも心を開くまいとしているのでしょうけれど、ステラをほっておけないもの正義感だけではないと思うし、前述した森での恋人との再会シーンでは感情爆発! 本当は情が厚い人なのでしょう。でも、常に感情を押し込めている姿が逆にミステリアスで、ライナー医師の心をとらえてしまうわけだけど、その気持ちは良く分かるよライナー医師と思ってしまうくらい魅力的。シュルツのライナー・ボックも良かった。任務に忠実だから悪役のような感じだけど、妻の病状を嘆く姿で人間らしさを見せる。『白いリボン』の医師役で、『ミケランジェロの暗号』にも出てたらしいけど、全然気づかなかった ライナー医師のロナルド・ツェアフェルトは、いわゆる2人の男性の間で揺れるという設定からイメージするとビックリするくらい熊さんタイプ。イケメンじゃないのか?!とビックリしたけど、仕事は出来るし、気がきくし、適度にアプローチしつつ、基本見守り目線、しかも料理もできちゃうとっても素敵さん イヤ、熊さんタイプってだけで、お顔も素敵なのだけど・・・ この辺りはいわゆるエリートタイプの金髪白人男性!ドイツのイケメン!って感じの恋人との対比なのでしょうけど、登場シーンの量が違うので有利というのもあるけれど、個人的には断然ライナー医師! 癒されるし 放送後登場した小山薫堂氏にちょっと似てるw
しかし、あんなボートに横たわって海を渡って亡命するなんて(´゚Д゚`)ンマッ!! ほんの30年くらい前にこんなことが行われていたという事実に愕然とする。この作品でベルリン国際映画祭銀熊(監督)賞を受賞したクリティアン・ペツォルト監督によると、今作に出演したある女優さんは1970年代に西側での劇団公演を理由に脱出されたそうで、その時ある人に夕食に招待されたけれど、それは自分が既に東ドイツにはいないはずの日で、どう返答すべきか非常に困ったというエピソードを語ってくれたのだそう。その女優さんがその時感じていたのは、二度と故郷に戻れず、自分の過去も消えてしまうのではないかという恐怖だったのだそう。壮絶・・・
ペツォルト監督は近年の映画で東ドイツは色がなく、人々も無表情に描かれることが多いと感じていたそうで、今作では無垢な愛を描きたいと思ったのだそう。東ドイツの海辺の田舎町の何もない風景がいい。いつも海風が吹く道を字電車で走るバルバラの姿がいい。あと、バルバラの服装が素敵。質素で派手なものではないけれど品がいい。ベルトのあるパンプスとか、青いスカートに赤に近い茶色のジャケットっぽいカーディガンとか、大人っぽくて女性的。それが、田舎町の風景の中のポイントになっている。バルバラって男前なんだけど、女っぽいんだよね。大人の女性らしさ。それが素敵!
とっても大人な映画。バルバラを初めとした登場人物もだし、旧東ドイツの体制批判を声高に叫ぶのではなく、抑えた語り口で淡々と描く。でも、ちょっとサスペンスっぽくもあって飽きることはない。オススメ!
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