'14.10.17 『FRANK -フランク-』@チネチッタ川崎
映画自体も気になっていたけど、トートバッグにつられて前売り券購入してた。上映館数が少ない上に、メインのHTC渋谷は早々とレイトショーに・・・ 前売り無駄にしては大変!ってことで、川崎まで行ってきたー
ネタバレありです! 結末にも触れています!
「ミュージシャンを夢見て日々作曲にいそしむ会社員ジョンは、キーボードの自殺未遂現場に偶然居合わせたことがきっかけで、その夜のステージに代わりに立つことになる。そこに現れたのは巨大なマスクを被った男。その異様な姿と、彼の音楽に魅了されるジョン。後日、彼の元にバンドから連絡が入り・・・」という感じのあらすじだと、バンドのサクセスストーリーを想像してしまうけど、そういう話じゃない。描きたいことの主題としては、特別バンドでなくてもいい気もするけど、この奇抜なマスクと、彼の世界ってことが重要なので、バンドとした方が描きやすいってことかな? 好き嫌いが分かれそうな気もするけど、個人的には好きだった。まぁ、特別好きって感じじゃなくて、嫌いではないっていう方が近いけど(笑)
監督はダブリン生まれのレニー・アブラハムソン。『アダムとポール』、『ジョジーの修理工場』で高い評価を受けたとのことだけど、どちらも未見。『ヤギと男と男と壁と』のジョン・ロンスンと、同じく『ヤギと男と男と壁と』、『裏切りのサーカス』のピーター・ストローハンの共同脚本。『ヤギと男と男と壁と』は賛否両論だった気がするけど、自身は未見。『裏切りのサーカス』は過去と現在が入り混じって、若干混乱したけど自分は好きだった。感想書いてないけど(o´ェ`o)ゞ そもそもは、クリス・シーヴィー扮するフランク・サイドボトム(クリス・シーヴィー、フランク・サイドボトムとも日本語版Wikipediaはなし)のバンドのキーボードだったロンスンの回顧録が元になっているのだそう。以前当blogでもチラッと記事(コチラ)にしたけれど、フランク・サイドボトムというのは、この被り物を被った姿の芸名で、本当はクリス・シーヴィーという方だったのね? 映画タイトルからも分かる通り、当然フランクの元ネタになっているけれど、彼の他にダニエル・ジョンストン(Wikipedia)、キャプテン・ビーフハート(Wikipedia)という、アウトサイダー・ミュージシャンも、フランクのキャラ設定に影響を与えているとのこと。なるほど・・・ と言っても、どちらも知らなかったので良く分からない(o´ェ`o)ゞ
一つだけ言っておきたいことがあるのだけど、この映画の宣伝の仕方にちょっと疑問が・・・ 配給会社としては映画を見てもらわなきゃならないのだから、できるだけ多くの人にアピールするのは当然のことだと思うし、タイアップでもなんでも使えるモノは使うべきなのかもしれないけれど、あまりにもポップでカワイイアピールし過ぎたような・・・ この記事あえてポップでカワイイ色で書いているけど、この色が宣伝時の映画のイメージカラーだったように思う。HTC渋谷ではピンク色のコラボドリンクも発売されていたし。でも、実際の映画は全くポップではなかった。見る前に、ネタバレは避けつつも、ちょこちょこ入って来た情報によれば、見せられているほどポップではなさそうだと感じていたので、実際見てみてビックリすることはなかったけれど、あまり情報を入れずに宣伝だけ見ていた人は、ポップでカワイイ作品、もしくはコメディ映画だと思ってしまうんじゃないかな? コメディ要素がなくはないけど、それはクスッと笑わせる感じだったし、この巨大な被り物自体も最初から異様なものとして登場するわけで、いわゆるコメディ映画でもないと思うのだけど・・・ 実際、公式サイトによれば、監督ご自身もいろんな要素を含んでいるので、ジャンル分けが難しい作品だと言っているし・・・ まぁ、自身は宣伝のプロでもないし、ジャンル分けが難しい作品だからこそ、被り物をフィーチャーして宣伝したのでしょうけれど・・・ まぁ、クドクド偉そうなことを言って申し訳ないのだけど、個人的に見てみて宣伝から受けたイメージと乖離していたのは否めなかったので。
薄曇りの田舎町。帰宅途中のジョンの後ろ姿から始まる。近所の男性に会釈しつつ、両親と同居している自宅へ。夕食の支度が出来ていると声をかける両親に、曲作りを完成させたいからと断って自室に篭もる。なるほど、ここまででジョンという人物を紹介しているのは上手いと思った。特別裕福でもないけれど、特別貧乏でもない家庭で、両親に適度に愛されて育った。近所の人とも無難につきあえる。仕事もあるし、平凡ではあるけれど、それなりに恵まれた人生とも言える。本人も特別その人生に不満を抱えているわけではないけれど、平凡なままの人生をつまらなくも思っている。自分でも才能がないのではないかと思いつつ、奇跡が起きて音楽で成功できないかと思っている。贅沢な悩みといえばそうだけれど、多くの人はこんな感じなんじゃないかなぁ。少なくとも日本のOLちゃんはこんな感じ。まぁ、音楽等で成功しようというような野望はもうないけれど(笑)
ある日、いつもの通り仕事をして、お昼にサンドウィッチを買って海辺へ向かう。ベンチに腰かけ食べようとすると、何やら溺れている人物が・・・ どうやら、今夜この街でライヴを行うバンドのキーボード担当が入水自殺を図ったらしい。命は取りとめたものの、今夜の出演は無理だと淡々と語るバンドのマネージャー。ポツリと「ボク、キーボード弾けるけど」とつぶやくジョン。無反応だったので、諦めかけるも、時間と場所を指定される。半信半疑ながら行ってみると、そこには残りのメンバーもいて、ステージに立つことになる。この辺りを淡々とちょっとトボけたトーンで描いているので、クスッという笑いを誘う感じ。個人的にはクスッとなってたけど、合わない人もいるかも。いくらキーボードが弾けるからと言って、どんな感じの曲なのかも分からないまま、ステージに立つってスゴイなと思うけれど、このバンド"ソロンフォルブス"も売れているバンドってわけでもないし、出演しているライヴハウスも有名どころが出ている感じではなくて、発掘的な要素が大きい感じ。なので、そんな感じでもいいのかも・・・ まぁ、よくはないと思うけど、マネージャーの感じからしたらそんなイメージ(笑)
そんな感じでステージに立ったジョン。そこに現れたのは巨大な被り物をした男・・・ イヤ、被り物にしても馬の顔とか、パーティーグッズみたいな既存のものならともかく、あからさまな手作り感。実はこの手作り感っていうところが重要なのだけど・・・ まぁ、この被り物を被っていることに惹かれて映画を見ているわけだから、見ている側はショックを受けることはないけれど、何も知らずにライヴハウスに行って、この人が現れたらビックリするよね(笑) 多分、笑うとは思うけど・・・ 当然ながらこの人物がフランクで、彼がヴォーカルで実質バンドの中心人物。彼が登場して歌い始めるけれど、音の違いでテルミン担当のクララと揉め始める。フランクもフランクだけど、クララもクララ。彼女は揉めてステージを降りてしまう。で、1曲もまともに演奏することなく終了。
ジョンの音楽活動もこれで終わるはずだった。翌日、仕事中にスマホが鳴る。マネージャーのドンからで、フランクがジョンを気に入ったのでレコーディングに参加して欲しいとの連絡だった。軽い気持ちでOKし、会社に数日の休暇を願い出たジョンは、車に揺られて人里離れた場所へ・・・ 映画の中でアイルランドと言っていたような気がしたんだけど、違ったっけ? 映画が始まった時の印象では勝手にイギリスの海辺の町だと思っていたのだけど、何でだったのだろう? 公式サイトではジョンがイギリス人と書かれているので、やっぱりイギリスでいいんだよね? イヤ、フランクがカンザス州出身ってことになっているし、後にバンドはデンバーに向かうので、となるとパスポートとか必要で、だとするとフランクの証明写真とかはどうなっているんだ?と思ったので・・・ まぁ、その辺りのツッコミはなしにしておきますかね(笑)
ジョンが数日だと思っていたこのレコーディング合宿。結局11ヶ月続くことになる。その間、やっていたのは音楽を作ることだけ。"ソロンフォルブス"のジャンルは何なんだろう・・・ 何かでオルタナティブと書かれていたけど、自分が思ってたオルタナティブより前衛的だったような・・・ まぁ、そんなに分かってないんだけど(o´ェ`o)ゞ 曲作りは、森の中で何かを叩いたり、燃やしてみたりする音を採取するところから始まる。なかなか、いわゆるレコーディングに入らないことに焦るジョンをよそに、皆その感じを特別楽しんでいる風でもなく、当然の作業のように進めていく。要するにジョン1人が"まとも"という感じ。"ソロンフォルブス"の曲を好きか嫌いかは別として、彼らは自称にしろ他称にしろミュージシャンであることには違いなく、そういう中にあって"まとも"であることや"普通"であることは、あまり意味のあることじゃない。だから、ジョンは常にメンバーから浮いていた。ドンはマネージャーとして、ジョンには優しく接していたし、フランクも決して自分の中には踏み込ませなかったけれど、彼なりに友好的だった。曲作りのアドバイスをしてくれたこともある。感情の起伏が激しく、いつも攻撃的なクララはジョンを嫌っていたし、ドラムのナナやギターのバラクも彼を仲間とは思っていない様子。ただし、フランクがジョンを求めたのはこの"普通"な部分だったのかなと後になって思った。
浮いた存在ながらジョンは、自分なりに居場所を作っていく。この辺りのへこたれなさというか、空気の読めなさみたいな感じもスゴイなと思うけれど、そういう部分もフランクが求めていたのかもしれない。暇に任せてジョンはTwitterのアカウントを取り、曲作りの様子をTweetしたり、YouTubeに動画をUPしたりし始める。曲作りも佳境に入ったところで、1組の家族が小屋を訪ねて来る。どうやら、マネージャーのドンは家賃を滞納しており、立ち退き勧告が来ていたにも関わらず無視していたため、とうとう別の人物に貸し出されてしまったらしい。休暇を楽しもうとしていたドイツ人家族は当然の権利として、ドンに立ち退きを迫る。そこに割って入ったのがフランク。なんと流暢なドイツ語で一家の妻に話始める。すると、妻はフランクの話に感動したらしく、涙を流して納得。いぶかる家族を連れて小屋を去って行く。フランクが何を語ったのかは不明だし、何故彼がドイツ語を話せるのかの説明はなかったと思う。まぁ、フランク役のファスベンダーがドイツ語話せるからか(笑) と、こんな感じでダラダラとレコーディングシーンが続く。時間の経過を表すように、ジョンの髪型と髭がボサボサになるけれど、他のメンバはー変わらず。その辺りをクスッと笑えるか、笑えないかで好き嫌いが分かれるかも? 個人的にはクスッとなったネタとならなかったネタもあったけど、それでイラッとしちゃうことはなかった。
ドイツ人家族の問題は解決したものの、家賃を滞納している以上、立ち退きしなければならない状況は変わらない。そこでジョンが祖父が残してくれた遺産で、家賃や今後のレコーディングにかかる費用を提供することを申し出る。えー?!無茶するな!と思うけれど、まぁ個人の自由だし、そうしないと話進まないし(笑) スゴイ勢いで祖父の遺産が減って行くというような描写が入ってはいるけれど、そこまで切羽詰まった感じはなく、相変わらずダラダラとレコーディングが続くけれど、何とか無事(?)に終了する。そして、完成した曲を皆で演奏。素晴らしい出来にメンバー一同大喜び! からの・・・ 翌日、首を吊ったドンの遺体が発見される。遺書などもないので、何故ドンが自殺してしまったのかは不明。おそらく自分の才能に限界を感じたとか、そんなところだろうかと思うけれど、ジョンがバンドに加わることになったのは、キーボード担当が自殺未遂したからだった。そして実はドンはこの人物の前にキーボードを担当していたことが告げられる。でも、キーボード担当者が呪われているという方向でもないらしい・・・ しかも彼らは勝手にドンをボートに横たえて、湖の上で火葬してしまう。えぇ?!死亡届とかは?ドンに家族がいるのかどうか以前に、これって死体遺棄とかにならないの?! とかはもう言ってはダメなんでしょう(笑) 後に、ドンの遺骨をフランクが撒くシーンがあって、実は遺骨ではなくパウダー状の何かを撒いていたっていうオチがあるのだけど、その辺りもクスッとなれるかイライラするかギリギリかなぁ。自分はクスッとはならなかったし、ちょっと悪趣味だなと思いつつもイライラしたりはなかった。ダメな人はこの辺りがダメかも・・・
さて、ジョンがUPしていたYouTubeの動画を見た関係者から、世界最大の音楽コンベンション「サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)」へ出演依頼が届く。メンバーは乗り気ではないけれど、ドン亡き後マネージャーのように仕切り出したジョンは、YouTubeの再生回数は2万回以上なんだから、大丈夫!大人気だ!と元気づけて、デンバーを目指す。意気揚々と乗り込むも、どうやら関係者の1人がYouTubeのジョンに興味があったから程度の感覚で声を掛けてくれたっぽい。YouTubeの再生回数が2万越えてるんだから、人気者だと主張するジョンに、それって全然人気ないけどと呆れ顔。まぁ、個人の感覚だと自分の動画が2万回再生されてたらビックリするけど、商業的にバンドで活動しようとしているならば2万ではちょっと・・・ すっかり出鼻を挫かれた形のジョン。彼らの音楽はちょっと理解されにくいから、ポップな感じにしてはどうかというアドバイスを聞き入れて、自らアレンジを加えはじめる。クララ、ナナ、バラクは怒りを通り越して呆れ顔。そう・・・ ジョンがやっていることって、バンドのメンバーは全く求めていないんだろうなとずっと思っていた。少なくともフランク以外は。ジョンの発想は"普通"にバンド活動を成功させたい、"まとも"な人ならば一度は考えることかもしれない。でも、このバンドは"普通"ではないし、彼らも"まとも"を求めてはいないということ。
ただし、フランクだけはジョンの言葉を聞き続ける。ポップにアレンジしようと言われれば、ポップな曲を作って見せたりする。でも、フランクがノリノリで披露した曲は、他のメンバーどころか、ジョンですら酷いと思う出来。何の打開策も浮かばないままステージに立つ"ソロンフォルブス" なんとフランクは女性のワンピースを着用して現れる。そして、歌い出そうとして、倒れてしまう・・・ フランクの中の何かが壊れてしまったらしい。えと・・・ ちょっと記憶が曖昧になってしまったのだけど、ここで一度姿を消してしまうのはフランクだっけ?ジョンだっけ?とにかく、ちょっとした騒動があり、逆上したクララがジョンを切りつけて逮捕されてしまったよね? その後、バンドはバラバラとなり、フランクと2人でモーテルで暮らす日々。次第にボロボロになっていくフランクのマスク・・・ 言い忘れていたけど、フランクは人前でマスクを絶対に外さない。食事も流動食をマスクの隙間からストローで食べる。一度、ジョンが部屋を覗いた時、シャワー時もマスク着用だった(笑) どうやら複数あって、付け替えたりしているようだけれど、もはやそんな余裕もないらしい。祖父の遺産も、バンドの成功も、当然ながら仕事も全てを失ったジョンは、フランクに八つ当たり。うーん・・・ ジョンの気持ちも分かるし、そもそもはフランクが巻き込んだところもあるけれど、引っ掻き回したのはむしろジョンの方だしなぁ・・・ とはいえ、フランクだけがジョンに従っていたのは、フランクにはそれが必要だったということなんだと思う。上手く言えないけれど・・・
言い争いをして、フランクを否定する発言をしてしまうジョン。フランクは飛び出してしまい、車と衝突。慌てて後を追うが、壊れたマスクを残して姿を消してしまう。必死でフランクを探すも見つからず、残りのバンドメンバーが出演している店(こういう店何て言うんだろ?)を見つけて、彼らに聞きに行くも、無言のまま去られる始末。Twitterなどを駆使して、情報を募り探し続けるジョン。まぁ、さすがにそのまま帰れないよね・・・ フォロワーが増えていくのも皮肉な感じ。そんな中有力な情報がもたらされ、半信半疑ながらも行ってみることに。この辺り情報源がハッキリ明かされないけれど、おそらく両親、多分母親が連絡してくれたってことかな? カンザス州の住宅街。1件の家を訪ねると、フランクの両親が待っていた。小さい頃から何故か自分の顔を見られることを嫌っていた彼に、マスクを作って与えたのは父親。それが間違いだったと嘆く彼を責めることは出来ない・・・ そこに、頭にケガをしたためか、短く髪を切った素顔のフランクが・・・ どこか一点を見つめて、体を揺する彼の姿は、明らかに普通の状態ではない。美しい顔をしているのよと語る母親が悲しい。フランクの症状が何かがきっかけで起きてしまったのか、先天的なものなのか不明。医学的な知識など全くないから、何の根拠もないけど、おそらく先天的なものなのでしょう。自分の好きな分野で天才的な能力を発揮するというのも、サヴァン症とか、アスペルガー症候群とかの症状だったような気がするし・・・ マスクを被っている時には"普通"でいられた。だけど、それには限界があるから"普通"で"まとも"な人が必要だった。でも、一緒にいるとその人物が精神のバランスを崩してしまうってことなのかなと・・・
ラスト、マスクを外したフランクは、ジョンと共に"ソロンフォルブス"がステージに立つあの店に行く。誰も聞く者のない中、演奏している彼らの前に立ち、涙を流すフランク。そう、今風に言えば"ありのままの"フランクを受け入れてくれていたのは、この3人だったってことだよね? 彼らにしか作れない音楽、理解できない世界。ナナとバラクは"普通"に限りなく近い人たちだと思うけれど、彼らの中にもフランク的なものがあるというか・・・ クララは間違いなくフランク側の人だし。フランクはそこを認められなかったのかもしれない。だから、ジョンを求めた。でも、ジョンではなかったってことかなと。うーん・・・ 上手く言えないな・・・
あくまで自分が感じたのは、フランクがどこまで意識していたのか分からないけど、"普通"で"まとも"でありたい、もしくはそうでなければならないという思いがあって、だから最終的に残ったバンドのメンバー以外に、"普通"の人を求めていた。でも、彼らはフランクの"天才"と自分の"凡才"に絶望、もしくは何故フランクが"天才"なのかを理解しきれず死を選んでしまう。ジョンは今までのキーボード担当とは違っていた。彼は自分が"凡才"である自覚しているつもりだけど、そこまで芸術的なタイプではなくて、良い意味で"俗物"だってことかと。だから、フランクはよりすがっちゃったのかなと・・・ でも、ジョンにとっては"天才"じゃないフランクは必要ない。で、あんなことになっちゃったわけで・・・ ジョンは音楽が好きだったと思うけど、音楽で売れたいっていうことが根底にあるわけで、だけど他のメンバーは"音楽"そのものが好きで、自分たちの音楽が出来れば売れなくても構わないと思っている。特にクララは自身も問題を抱えている。だから、彼らはフランクをそのまま受け入れることが出来る。だから、彼らはジョンを受け入れなかった。どちらが正しくて、どちらが間違っているということじゃない。でも、もうフランクがマスクを必要なくなったことは、フランクにとって良かったことなのかもしれない。アーティスト活動をするには、インパクトがあって有利かもだけど(笑) とにかく、このシーンのマイケル・ファスベンダーの演技が素晴らしく、ちょっと涙してしまった
キャストは全員良かったと思う。ジョン役ドーナル・グリーソンは『ハリー・ポッター』シリーズのビル・ウィーズリー役だったそうだけれど、シリーズ4までしか見てないので、ほとんど覚えていない・・・ ジョンって空気読めなくて、変なところ前向きで、計画が甘いクセに仕切りたがりだったりして、かなりイライラする部分もあるけれど、彼のおかげでフランクの人生に少し変化を与えるわけだから、重要な役ではある。彼が"普通"であるはずなのに、いつの間にか彼の方がバンドにとって"異質"であったっていう部分をイライラせずに見れたのは、ドーナル・グリーソンのおかげ。お金持ちってことじゃなくて、ちゃんと両親に愛された青年然とした感じというか・・・ クララのマギー・ギレンホールがスゴイ! 切れやすくエキセントリックで、テルミン奏者という現実離れした役に説得力があった。最後にフランクを受け入れる、姿は"母"を感じさせる。全てを優しく包み込む母性っていうことではなく、一度は突き放した彼をただただ受け入れるというか・・・ 温かい優しさでもないし、かといって厳しい優しさでもない。そういうのも母なのかなと・・・ むしろ母体っていうか。もう訳が分からないからこの辺で(笑)
フランクはマイケル・ファスベンダー。正直、ファスベンダーが被り物を被っている姿が見たくて見に行ったので、それだけでOKだった(笑) とはいえ、やっぱりファスベンダーだなという感じ。監督によるとフランク役は巨大な被り物を被るので体格がよく、存在感のある役者というのが条件で、最初からファスベンダーを想定していたのだそう。なるほど・・・ そういう意味でもピッタリだけど、やっぱりこの複雑な役は、今ならファスベンダーだなという気がする。マスクを被っている時もそうだけれど、自分がさすがファス!と思ったのは、マスクを取ってから。あの表情・・・ そして、あの涙・・・ あぁ、ファスベンダーはやっぱりファスベンダーだった!と思った。これ、これ上手く表現できないんだけど・・・ まぁ、見てくれ!(笑)
バンドが演奏する音楽は、前衛的過ぎず、メインストリームでもない音楽ということで、スティーブン・レニックスがサウンドトラックを先に作り、撮影に入る前に役者たちに練習させ、演奏シーンは全て生録音したとのこと。確かに、自然で迫力のある演奏だったと思う。ただ、個人的にはあまり好みではなかったので、イマヒトツ乗り切れない部分はあった。ただ、バンドで"天才"を描くには、この"前衛的過ぎずメインストリームではない音楽"の方が分かりやすいかも?
うーん・・・ 個人的に"芸術とは"みたいな映画に弱くて、芸術が生み出される背景とか、芸術家が苦悩しつつも芸術を生み出していく姿が描かれていると、無条件に感動してしまう。今作も、個人的には好みの音楽ではなかったけれど、それを生み出す過程での、天才と凡人みたいなテーマに惹かれていた部分もある。凡人には分からないというか、凡人の枠にははめられないから天才なのであるっていう作品なのかと思って見に行った。ほぼそういうテーマだったけれど、少し違っていた。でも、この辛い中にも光の見えたラストは好きだった。ジョンにとっては明るい終わりではなかったし、見えた光も希望に満ちたものではなかったけれど・・・
"米映画サイトが実施した「世界で最もハンサムな顔100人」の第一位に輝いた"マイケル・ファスベンダーを目当てで行くと違うし、前述したとおり記事のテーマカラーみたいなポップでカワイイ作品だと思って見に行ったら全然違う! 芸術家を描いた作品が好きな人オススメ! ドーナル・グリーン好きな方もオススメかな? そして、俳優マイケル・ファスベンダー好きな方是非!
『FRANK -フランク-』Official site
映画自体も気になっていたけど、トートバッグにつられて前売り券購入してた。上映館数が少ない上に、メインのHTC渋谷は早々とレイトショーに・・・ 前売り無駄にしては大変!ってことで、川崎まで行ってきたー
ネタバレありです! 結末にも触れています!
「ミュージシャンを夢見て日々作曲にいそしむ会社員ジョンは、キーボードの自殺未遂現場に偶然居合わせたことがきっかけで、その夜のステージに代わりに立つことになる。そこに現れたのは巨大なマスクを被った男。その異様な姿と、彼の音楽に魅了されるジョン。後日、彼の元にバンドから連絡が入り・・・」という感じのあらすじだと、バンドのサクセスストーリーを想像してしまうけど、そういう話じゃない。描きたいことの主題としては、特別バンドでなくてもいい気もするけど、この奇抜なマスクと、彼の世界ってことが重要なので、バンドとした方が描きやすいってことかな? 好き嫌いが分かれそうな気もするけど、個人的には好きだった。まぁ、特別好きって感じじゃなくて、嫌いではないっていう方が近いけど(笑)
監督はダブリン生まれのレニー・アブラハムソン。『アダムとポール』、『ジョジーの修理工場』で高い評価を受けたとのことだけど、どちらも未見。『ヤギと男と男と壁と』のジョン・ロンスンと、同じく『ヤギと男と男と壁と』、『裏切りのサーカス』のピーター・ストローハンの共同脚本。『ヤギと男と男と壁と』は賛否両論だった気がするけど、自身は未見。『裏切りのサーカス』は過去と現在が入り混じって、若干混乱したけど自分は好きだった。感想書いてないけど(o´ェ`o)ゞ そもそもは、クリス・シーヴィー扮するフランク・サイドボトム(クリス・シーヴィー、フランク・サイドボトムとも日本語版Wikipediaはなし)のバンドのキーボードだったロンスンの回顧録が元になっているのだそう。以前当blogでもチラッと記事(コチラ)にしたけれど、フランク・サイドボトムというのは、この被り物を被った姿の芸名で、本当はクリス・シーヴィーという方だったのね? 映画タイトルからも分かる通り、当然フランクの元ネタになっているけれど、彼の他にダニエル・ジョンストン(Wikipedia)、キャプテン・ビーフハート(Wikipedia)という、アウトサイダー・ミュージシャンも、フランクのキャラ設定に影響を与えているとのこと。なるほど・・・ と言っても、どちらも知らなかったので良く分からない(o´ェ`o)ゞ
一つだけ言っておきたいことがあるのだけど、この映画の宣伝の仕方にちょっと疑問が・・・ 配給会社としては映画を見てもらわなきゃならないのだから、できるだけ多くの人にアピールするのは当然のことだと思うし、タイアップでもなんでも使えるモノは使うべきなのかもしれないけれど、あまりにもポップでカワイイアピールし過ぎたような・・・ この記事あえてポップでカワイイ色で書いているけど、この色が宣伝時の映画のイメージカラーだったように思う。HTC渋谷ではピンク色のコラボドリンクも発売されていたし。でも、実際の映画は全くポップではなかった。見る前に、ネタバレは避けつつも、ちょこちょこ入って来た情報によれば、見せられているほどポップではなさそうだと感じていたので、実際見てみてビックリすることはなかったけれど、あまり情報を入れずに宣伝だけ見ていた人は、ポップでカワイイ作品、もしくはコメディ映画だと思ってしまうんじゃないかな? コメディ要素がなくはないけど、それはクスッと笑わせる感じだったし、この巨大な被り物自体も最初から異様なものとして登場するわけで、いわゆるコメディ映画でもないと思うのだけど・・・ 実際、公式サイトによれば、監督ご自身もいろんな要素を含んでいるので、ジャンル分けが難しい作品だと言っているし・・・ まぁ、自身は宣伝のプロでもないし、ジャンル分けが難しい作品だからこそ、被り物をフィーチャーして宣伝したのでしょうけれど・・・ まぁ、クドクド偉そうなことを言って申し訳ないのだけど、個人的に見てみて宣伝から受けたイメージと乖離していたのは否めなかったので。
薄曇りの田舎町。帰宅途中のジョンの後ろ姿から始まる。近所の男性に会釈しつつ、両親と同居している自宅へ。夕食の支度が出来ていると声をかける両親に、曲作りを完成させたいからと断って自室に篭もる。なるほど、ここまででジョンという人物を紹介しているのは上手いと思った。特別裕福でもないけれど、特別貧乏でもない家庭で、両親に適度に愛されて育った。近所の人とも無難につきあえる。仕事もあるし、平凡ではあるけれど、それなりに恵まれた人生とも言える。本人も特別その人生に不満を抱えているわけではないけれど、平凡なままの人生をつまらなくも思っている。自分でも才能がないのではないかと思いつつ、奇跡が起きて音楽で成功できないかと思っている。贅沢な悩みといえばそうだけれど、多くの人はこんな感じなんじゃないかなぁ。少なくとも日本のOLちゃんはこんな感じ。まぁ、音楽等で成功しようというような野望はもうないけれど(笑)
ある日、いつもの通り仕事をして、お昼にサンドウィッチを買って海辺へ向かう。ベンチに腰かけ食べようとすると、何やら溺れている人物が・・・ どうやら、今夜この街でライヴを行うバンドのキーボード担当が入水自殺を図ったらしい。命は取りとめたものの、今夜の出演は無理だと淡々と語るバンドのマネージャー。ポツリと「ボク、キーボード弾けるけど」とつぶやくジョン。無反応だったので、諦めかけるも、時間と場所を指定される。半信半疑ながら行ってみると、そこには残りのメンバーもいて、ステージに立つことになる。この辺りを淡々とちょっとトボけたトーンで描いているので、クスッという笑いを誘う感じ。個人的にはクスッとなってたけど、合わない人もいるかも。いくらキーボードが弾けるからと言って、どんな感じの曲なのかも分からないまま、ステージに立つってスゴイなと思うけれど、このバンド"ソロンフォルブス"も売れているバンドってわけでもないし、出演しているライヴハウスも有名どころが出ている感じではなくて、発掘的な要素が大きい感じ。なので、そんな感じでもいいのかも・・・ まぁ、よくはないと思うけど、マネージャーの感じからしたらそんなイメージ(笑)
そんな感じでステージに立ったジョン。そこに現れたのは巨大な被り物をした男・・・ イヤ、被り物にしても馬の顔とか、パーティーグッズみたいな既存のものならともかく、あからさまな手作り感。実はこの手作り感っていうところが重要なのだけど・・・ まぁ、この被り物を被っていることに惹かれて映画を見ているわけだから、見ている側はショックを受けることはないけれど、何も知らずにライヴハウスに行って、この人が現れたらビックリするよね(笑) 多分、笑うとは思うけど・・・ 当然ながらこの人物がフランクで、彼がヴォーカルで実質バンドの中心人物。彼が登場して歌い始めるけれど、音の違いでテルミン担当のクララと揉め始める。フランクもフランクだけど、クララもクララ。彼女は揉めてステージを降りてしまう。で、1曲もまともに演奏することなく終了。
ジョンの音楽活動もこれで終わるはずだった。翌日、仕事中にスマホが鳴る。マネージャーのドンからで、フランクがジョンを気に入ったのでレコーディングに参加して欲しいとの連絡だった。軽い気持ちでOKし、会社に数日の休暇を願い出たジョンは、車に揺られて人里離れた場所へ・・・ 映画の中でアイルランドと言っていたような気がしたんだけど、違ったっけ? 映画が始まった時の印象では勝手にイギリスの海辺の町だと思っていたのだけど、何でだったのだろう? 公式サイトではジョンがイギリス人と書かれているので、やっぱりイギリスでいいんだよね? イヤ、フランクがカンザス州出身ってことになっているし、後にバンドはデンバーに向かうので、となるとパスポートとか必要で、だとするとフランクの証明写真とかはどうなっているんだ?と思ったので・・・ まぁ、その辺りのツッコミはなしにしておきますかね(笑)
ジョンが数日だと思っていたこのレコーディング合宿。結局11ヶ月続くことになる。その間、やっていたのは音楽を作ることだけ。"ソロンフォルブス"のジャンルは何なんだろう・・・ 何かでオルタナティブと書かれていたけど、自分が思ってたオルタナティブより前衛的だったような・・・ まぁ、そんなに分かってないんだけど(o´ェ`o)ゞ 曲作りは、森の中で何かを叩いたり、燃やしてみたりする音を採取するところから始まる。なかなか、いわゆるレコーディングに入らないことに焦るジョンをよそに、皆その感じを特別楽しんでいる風でもなく、当然の作業のように進めていく。要するにジョン1人が"まとも"という感じ。"ソロンフォルブス"の曲を好きか嫌いかは別として、彼らは自称にしろ他称にしろミュージシャンであることには違いなく、そういう中にあって"まとも"であることや"普通"であることは、あまり意味のあることじゃない。だから、ジョンは常にメンバーから浮いていた。ドンはマネージャーとして、ジョンには優しく接していたし、フランクも決して自分の中には踏み込ませなかったけれど、彼なりに友好的だった。曲作りのアドバイスをしてくれたこともある。感情の起伏が激しく、いつも攻撃的なクララはジョンを嫌っていたし、ドラムのナナやギターのバラクも彼を仲間とは思っていない様子。ただし、フランクがジョンを求めたのはこの"普通"な部分だったのかなと後になって思った。
浮いた存在ながらジョンは、自分なりに居場所を作っていく。この辺りのへこたれなさというか、空気の読めなさみたいな感じもスゴイなと思うけれど、そういう部分もフランクが求めていたのかもしれない。暇に任せてジョンはTwitterのアカウントを取り、曲作りの様子をTweetしたり、YouTubeに動画をUPしたりし始める。曲作りも佳境に入ったところで、1組の家族が小屋を訪ねて来る。どうやら、マネージャーのドンは家賃を滞納しており、立ち退き勧告が来ていたにも関わらず無視していたため、とうとう別の人物に貸し出されてしまったらしい。休暇を楽しもうとしていたドイツ人家族は当然の権利として、ドンに立ち退きを迫る。そこに割って入ったのがフランク。なんと流暢なドイツ語で一家の妻に話始める。すると、妻はフランクの話に感動したらしく、涙を流して納得。いぶかる家族を連れて小屋を去って行く。フランクが何を語ったのかは不明だし、何故彼がドイツ語を話せるのかの説明はなかったと思う。まぁ、フランク役のファスベンダーがドイツ語話せるからか(笑) と、こんな感じでダラダラとレコーディングシーンが続く。時間の経過を表すように、ジョンの髪型と髭がボサボサになるけれど、他のメンバはー変わらず。その辺りをクスッと笑えるか、笑えないかで好き嫌いが分かれるかも? 個人的にはクスッとなったネタとならなかったネタもあったけど、それでイラッとしちゃうことはなかった。
ドイツ人家族の問題は解決したものの、家賃を滞納している以上、立ち退きしなければならない状況は変わらない。そこでジョンが祖父が残してくれた遺産で、家賃や今後のレコーディングにかかる費用を提供することを申し出る。えー?!無茶するな!と思うけれど、まぁ個人の自由だし、そうしないと話進まないし(笑) スゴイ勢いで祖父の遺産が減って行くというような描写が入ってはいるけれど、そこまで切羽詰まった感じはなく、相変わらずダラダラとレコーディングが続くけれど、何とか無事(?)に終了する。そして、完成した曲を皆で演奏。素晴らしい出来にメンバー一同大喜び! からの・・・ 翌日、首を吊ったドンの遺体が発見される。遺書などもないので、何故ドンが自殺してしまったのかは不明。おそらく自分の才能に限界を感じたとか、そんなところだろうかと思うけれど、ジョンがバンドに加わることになったのは、キーボード担当が自殺未遂したからだった。そして実はドンはこの人物の前にキーボードを担当していたことが告げられる。でも、キーボード担当者が呪われているという方向でもないらしい・・・ しかも彼らは勝手にドンをボートに横たえて、湖の上で火葬してしまう。えぇ?!死亡届とかは?ドンに家族がいるのかどうか以前に、これって死体遺棄とかにならないの?! とかはもう言ってはダメなんでしょう(笑) 後に、ドンの遺骨をフランクが撒くシーンがあって、実は遺骨ではなくパウダー状の何かを撒いていたっていうオチがあるのだけど、その辺りもクスッとなれるかイライラするかギリギリかなぁ。自分はクスッとはならなかったし、ちょっと悪趣味だなと思いつつもイライラしたりはなかった。ダメな人はこの辺りがダメかも・・・
さて、ジョンがUPしていたYouTubeの動画を見た関係者から、世界最大の音楽コンベンション「サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)」へ出演依頼が届く。メンバーは乗り気ではないけれど、ドン亡き後マネージャーのように仕切り出したジョンは、YouTubeの再生回数は2万回以上なんだから、大丈夫!大人気だ!と元気づけて、デンバーを目指す。意気揚々と乗り込むも、どうやら関係者の1人がYouTubeのジョンに興味があったから程度の感覚で声を掛けてくれたっぽい。YouTubeの再生回数が2万越えてるんだから、人気者だと主張するジョンに、それって全然人気ないけどと呆れ顔。まぁ、個人の感覚だと自分の動画が2万回再生されてたらビックリするけど、商業的にバンドで活動しようとしているならば2万ではちょっと・・・ すっかり出鼻を挫かれた形のジョン。彼らの音楽はちょっと理解されにくいから、ポップな感じにしてはどうかというアドバイスを聞き入れて、自らアレンジを加えはじめる。クララ、ナナ、バラクは怒りを通り越して呆れ顔。そう・・・ ジョンがやっていることって、バンドのメンバーは全く求めていないんだろうなとずっと思っていた。少なくともフランク以外は。ジョンの発想は"普通"にバンド活動を成功させたい、"まとも"な人ならば一度は考えることかもしれない。でも、このバンドは"普通"ではないし、彼らも"まとも"を求めてはいないということ。
ただし、フランクだけはジョンの言葉を聞き続ける。ポップにアレンジしようと言われれば、ポップな曲を作って見せたりする。でも、フランクがノリノリで披露した曲は、他のメンバーどころか、ジョンですら酷いと思う出来。何の打開策も浮かばないままステージに立つ"ソロンフォルブス" なんとフランクは女性のワンピースを着用して現れる。そして、歌い出そうとして、倒れてしまう・・・ フランクの中の何かが壊れてしまったらしい。えと・・・ ちょっと記憶が曖昧になってしまったのだけど、ここで一度姿を消してしまうのはフランクだっけ?ジョンだっけ?とにかく、ちょっとした騒動があり、逆上したクララがジョンを切りつけて逮捕されてしまったよね? その後、バンドはバラバラとなり、フランクと2人でモーテルで暮らす日々。次第にボロボロになっていくフランクのマスク・・・ 言い忘れていたけど、フランクは人前でマスクを絶対に外さない。食事も流動食をマスクの隙間からストローで食べる。一度、ジョンが部屋を覗いた時、シャワー時もマスク着用だった(笑) どうやら複数あって、付け替えたりしているようだけれど、もはやそんな余裕もないらしい。祖父の遺産も、バンドの成功も、当然ながら仕事も全てを失ったジョンは、フランクに八つ当たり。うーん・・・ ジョンの気持ちも分かるし、そもそもはフランクが巻き込んだところもあるけれど、引っ掻き回したのはむしろジョンの方だしなぁ・・・ とはいえ、フランクだけがジョンに従っていたのは、フランクにはそれが必要だったということなんだと思う。上手く言えないけれど・・・
言い争いをして、フランクを否定する発言をしてしまうジョン。フランクは飛び出してしまい、車と衝突。慌てて後を追うが、壊れたマスクを残して姿を消してしまう。必死でフランクを探すも見つからず、残りのバンドメンバーが出演している店(こういう店何て言うんだろ?)を見つけて、彼らに聞きに行くも、無言のまま去られる始末。Twitterなどを駆使して、情報を募り探し続けるジョン。まぁ、さすがにそのまま帰れないよね・・・ フォロワーが増えていくのも皮肉な感じ。そんな中有力な情報がもたらされ、半信半疑ながらも行ってみることに。この辺り情報源がハッキリ明かされないけれど、おそらく両親、多分母親が連絡してくれたってことかな? カンザス州の住宅街。1件の家を訪ねると、フランクの両親が待っていた。小さい頃から何故か自分の顔を見られることを嫌っていた彼に、マスクを作って与えたのは父親。それが間違いだったと嘆く彼を責めることは出来ない・・・ そこに、頭にケガをしたためか、短く髪を切った素顔のフランクが・・・ どこか一点を見つめて、体を揺する彼の姿は、明らかに普通の状態ではない。美しい顔をしているのよと語る母親が悲しい。フランクの症状が何かがきっかけで起きてしまったのか、先天的なものなのか不明。医学的な知識など全くないから、何の根拠もないけど、おそらく先天的なものなのでしょう。自分の好きな分野で天才的な能力を発揮するというのも、サヴァン症とか、アスペルガー症候群とかの症状だったような気がするし・・・ マスクを被っている時には"普通"でいられた。だけど、それには限界があるから"普通"で"まとも"な人が必要だった。でも、一緒にいるとその人物が精神のバランスを崩してしまうってことなのかなと・・・
ラスト、マスクを外したフランクは、ジョンと共に"ソロンフォルブス"がステージに立つあの店に行く。誰も聞く者のない中、演奏している彼らの前に立ち、涙を流すフランク。そう、今風に言えば"ありのままの"フランクを受け入れてくれていたのは、この3人だったってことだよね? 彼らにしか作れない音楽、理解できない世界。ナナとバラクは"普通"に限りなく近い人たちだと思うけれど、彼らの中にもフランク的なものがあるというか・・・ クララは間違いなくフランク側の人だし。フランクはそこを認められなかったのかもしれない。だから、ジョンを求めた。でも、ジョンではなかったってことかなと。うーん・・・ 上手く言えないな・・・
あくまで自分が感じたのは、フランクがどこまで意識していたのか分からないけど、"普通"で"まとも"でありたい、もしくはそうでなければならないという思いがあって、だから最終的に残ったバンドのメンバー以外に、"普通"の人を求めていた。でも、彼らはフランクの"天才"と自分の"凡才"に絶望、もしくは何故フランクが"天才"なのかを理解しきれず死を選んでしまう。ジョンは今までのキーボード担当とは違っていた。彼は自分が"凡才"である自覚しているつもりだけど、そこまで芸術的なタイプではなくて、良い意味で"俗物"だってことかと。だから、フランクはよりすがっちゃったのかなと・・・ でも、ジョンにとっては"天才"じゃないフランクは必要ない。で、あんなことになっちゃったわけで・・・ ジョンは音楽が好きだったと思うけど、音楽で売れたいっていうことが根底にあるわけで、だけど他のメンバーは"音楽"そのものが好きで、自分たちの音楽が出来れば売れなくても構わないと思っている。特にクララは自身も問題を抱えている。だから、彼らはフランクをそのまま受け入れることが出来る。だから、彼らはジョンを受け入れなかった。どちらが正しくて、どちらが間違っているということじゃない。でも、もうフランクがマスクを必要なくなったことは、フランクにとって良かったことなのかもしれない。アーティスト活動をするには、インパクトがあって有利かもだけど(笑) とにかく、このシーンのマイケル・ファスベンダーの演技が素晴らしく、ちょっと涙してしまった
キャストは全員良かったと思う。ジョン役ドーナル・グリーソンは『ハリー・ポッター』シリーズのビル・ウィーズリー役だったそうだけれど、シリーズ4までしか見てないので、ほとんど覚えていない・・・ ジョンって空気読めなくて、変なところ前向きで、計画が甘いクセに仕切りたがりだったりして、かなりイライラする部分もあるけれど、彼のおかげでフランクの人生に少し変化を与えるわけだから、重要な役ではある。彼が"普通"であるはずなのに、いつの間にか彼の方がバンドにとって"異質"であったっていう部分をイライラせずに見れたのは、ドーナル・グリーソンのおかげ。お金持ちってことじゃなくて、ちゃんと両親に愛された青年然とした感じというか・・・ クララのマギー・ギレンホールがスゴイ! 切れやすくエキセントリックで、テルミン奏者という現実離れした役に説得力があった。最後にフランクを受け入れる、姿は"母"を感じさせる。全てを優しく包み込む母性っていうことではなく、一度は突き放した彼をただただ受け入れるというか・・・ 温かい優しさでもないし、かといって厳しい優しさでもない。そういうのも母なのかなと・・・ むしろ母体っていうか。もう訳が分からないからこの辺で(笑)
フランクはマイケル・ファスベンダー。正直、ファスベンダーが被り物を被っている姿が見たくて見に行ったので、それだけでOKだった(笑) とはいえ、やっぱりファスベンダーだなという感じ。監督によるとフランク役は巨大な被り物を被るので体格がよく、存在感のある役者というのが条件で、最初からファスベンダーを想定していたのだそう。なるほど・・・ そういう意味でもピッタリだけど、やっぱりこの複雑な役は、今ならファスベンダーだなという気がする。マスクを被っている時もそうだけれど、自分がさすがファス!と思ったのは、マスクを取ってから。あの表情・・・ そして、あの涙・・・ あぁ、ファスベンダーはやっぱりファスベンダーだった!と思った。これ、これ上手く表現できないんだけど・・・ まぁ、見てくれ!(笑)
バンドが演奏する音楽は、前衛的過ぎず、メインストリームでもない音楽ということで、スティーブン・レニックスがサウンドトラックを先に作り、撮影に入る前に役者たちに練習させ、演奏シーンは全て生録音したとのこと。確かに、自然で迫力のある演奏だったと思う。ただ、個人的にはあまり好みではなかったので、イマヒトツ乗り切れない部分はあった。ただ、バンドで"天才"を描くには、この"前衛的過ぎずメインストリームではない音楽"の方が分かりやすいかも?
うーん・・・ 個人的に"芸術とは"みたいな映画に弱くて、芸術が生み出される背景とか、芸術家が苦悩しつつも芸術を生み出していく姿が描かれていると、無条件に感動してしまう。今作も、個人的には好みの音楽ではなかったけれど、それを生み出す過程での、天才と凡人みたいなテーマに惹かれていた部分もある。凡人には分からないというか、凡人の枠にははめられないから天才なのであるっていう作品なのかと思って見に行った。ほぼそういうテーマだったけれど、少し違っていた。でも、この辛い中にも光の見えたラストは好きだった。ジョンにとっては明るい終わりではなかったし、見えた光も希望に満ちたものではなかったけれど・・・
"米映画サイトが実施した「世界で最もハンサムな顔100人」の第一位に輝いた"マイケル・ファスベンダーを目当てで行くと違うし、前述したとおり記事のテーマカラーみたいなポップでカワイイ作品だと思って見に行ったら全然違う! 芸術家を描いた作品が好きな人オススメ! ドーナル・グリーン好きな方もオススメかな? そして、俳優マイケル・ファスベンダー好きな方是非!
『FRANK -フランク-』Official site