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【cinema】『オオカミは嘘をつく』

2014-11-27 02:14:09 | cinema

'14.11.23 『オオカミは嘘をつく』@ヒューマントラストシネマ有楽町

久しぶりに一緒に映画見ようってことで、友達たちと計画。前日公開の作品の中から、クエンティン・タランティーノ監督が絶賛したという今作をチョイス! 楽しみに行ってきたー

ネタバレありです! 結末にも触れています!

「幼女が誘拐され、惨殺される事件が起きる。殺人課のミッキは、被害者と一緒にいるところを目撃された、中学教師のドロールが犯人であると確信。荒っぽい部下を使い自白させようとするが、その様子をYouTubeに投稿されてしまい・・・」という感じの話。これは面白かった! 基本はサスペンスだけど、一部コメディのようでもあり、そしてサスペンスとして終わる。スッキリしない後味の悪さも適度でいい。いろいろ伏線が張り巡らされていて、後から答え合わせ的に思い出すのも楽しい。

2013年、第18回釜山国際映画祭での上映後、ティーチインに飛び入りしたクエンティン・タランティーノ監督が「Sensation! The best of the year!」と絶賛したことで話題となったイスラエル映画。イスラエル映画って初めてかも? イスラエル出身のアハロン・ケシャレス、ナボット・パプシャドの若手2人の監督コンビは、イスラエル初のスラッシャー(殺人鬼)映画と言われた『ザ・マッド 狂乱の森』でデビュー。今作が2作目。シネマトゥデイのインタヴュー記事(コチラ)によりますと、2人は争いの絶えないイスラエル社会からインスパイアされたと語っていて、"善と悪の曖昧さ"に長年関心があったとのこと。特に影響を受けた映画が『続・夕陽のガンマン / 地獄の決斗(原題:The Good,The Bad and the Ugly)』で、The Good(善玉)やThe Bad(悪玉)ではなく、The Ugly(卑劣漢)トゥーロに強く惹かれたからだそう。また、今作のテーマでもある"被害者と復讐"についても、イスラエルのユダヤ人であるというルーツが反映しているとのこと。ユダヤ人は、スペイン追放、ホロコースト、そして現在のアラブ人に囲まれた状況について、被害者だと思っているらしい。まぁ、歴史認識についてはいろいろあるし、全ての事実を知っているわけではないので、全面的に被害者だと肯定することはできないし、否定することもできない。少なくともホロコーストについては、被害者であることは間違いないと思うし・・・ お2人が、その事についてどう考えているのかについては、記事には書かれていなかったので、今作にどう反映したのかは分からないのだけど、個人的に気になったので記載しておく。

また、同じくシネマトゥデイの別記事(コチラ)では、お2人の映画愛について語られていて興味深かった。イスラエル映画は、1980年代には『グローイング・アップ』シリーズが、世界的にヒットしたものの、その後はエンターテイメント作品は作られず、文芸作品ばかりが作られるようになったのだそう。映画評論家でもあるケシャレス監督によれば、当時の映画評論家たちが、エンターテイメント作品を酷評したため、多くの映画監督がアメリカへ移ってしまい、残された映画監督たちが、ジャン=リュック・ゴダール監督や、フランソワ・トリュフォー監督のような作品(ヌーヴェル・ヴァーグってことかな?)を撮り始めたが、模倣の域を出ず、国も国際映画祭で賞を取れるような作品にしか助成しなかったため、娯楽作品が作りにくい状況にあるのだそう。なるほど、そんな状況を変えつつあるのが、お2人ということなわけですねφ(・ェ・o)メモメモ

さて! 本題に行きます!( ・∀・ )ゞ まず、オープニングが素晴らしい! オープニングクレジットからタイトルが出るまで、美少女2人と少年1人のかくれんぼが映し出される。廃墟に残された洋服タンスの中に隠れる赤いワンピースの少女。彼女より少し年上と思われる少女は、庭に出て土管の中に隠れる。鬼の少年が土管の少女を見つける。そして2人で洋服タンスを開けると、少女の姿はなく、片方の赤い靴が残されている。これをセリフは一切なくスローモーションで見せる。結末はともかく途中までは楽しかったはずのかくれんぼが、不穏な音楽に乗せてスローモーションで見せるだけで、なんとも不安で恐ろしい光景に見える! これはスゴイ! このシーンから引き込まれた。

このシーンから一転、また別の廃墟。2人の男が1人のメガネの男性の両脇を掴んで引っ張って来る。用意された椅子に座らせる。そこに中年男性2人が入って来る。1人はスーツ着用だけど、1人は皮ジャン着用で柄も悪い。一瞬、マフィア系?とか思うけれど、実は彼らは刑事。皮ジャン刑事ミッキはメガネの男、宗教学教師のドロールが犯人であると確信していて、何としても自白させようとしている。スーツ姿のラミは荒っぽい捜査は避けるべきだと考えていて、ミッキを止めようとしている。ミッキは犯人を逮捕するためなら何でもするという、刑事モノにはよく出てくるタイプ。苦手 ミッキの指示待ちの2人も彼と同じタイプ。ここで上手いと思うのは、この容疑者をむしろ被害者の立場で登場させること。2人の刑事に散々殴られた後、ミッキに分厚い電話帳で殴られるシーンを延々見せられば、冤罪だったらどうするのか?と見ている側は思ってしまう。しかも、ミッキが犯人だと思っている理由が、被害者と喋っていた姿を目撃されたという程度の情報しか提示されないので、冤罪なんじゃないか?と思ってしまう。この辺りが上手い。

結局、署長からの命令で拷問は中止、容疑者のドロールを車で自宅まで送り届け、お金を渡して口止めをする。この時、ドロールは現住所ではない家に案内する。住所が違うじゃないかと指摘するミッキに、実家だと答える。これ、後から思えば伏線だった! ドロールにとっても観客にとっても、拷問が終わって一安心していると、公園で少女の惨殺遺体が発見される。暴行を受けた少女の体は椅子に括り付けられており、その頭部は無かった・・・ 鑑識が作業を進める中、少女の父親が現場に現れ騒ぎとなる。この父親は警察幹部に知り合いがいるらしい。これも伏線。犯人も検挙出来ず、少女の惨殺遺体がこのように晒されてしまったことで、ミッキは担当から外され、交通課に移動させられてしまう。現場から離れるミッキは、父親と目が合う。これも伏線。とにかく、ミッキにも被害者のはずの父親にも不快感しかなく、感情移入できない。それが上手い。被害者の父親など、登場しただけなのに、実はこいつが犯人では?と思わせちゃうのも上手い!

さらにミッキに追い打ちをかけるように、あの廃墟での拷問の一部始終を、偶然居合わせた少年が撮影し、YouTubeにUPしてしまう。交通課の同僚は削除しておくと言ってくれたのに、削除してくれなかったのか、再投稿されたのか不明だけれど、結局その動画が元でミッキは停職処分となってしまう。絶対にドロールが犯人だと主張するミッキに、停職処分中なのだから何をしようと関知しないと言う署長。勝手にやれよってこと。まぁ、この辺りは刑事ものでありがちな設定。また、ミッキが暴走するのかと、見ている側をうんざりさせるのも上手い誘導。

一方、YouTubeのおかげで、ドロールも職を失っていた。試験中にメモを回す生徒たち。1人の少女にメモが回った時、見咎めてメモを出すように促すドロール。その感じは特別激昂するわけでもなく、きちんと生徒を諭していて、悪人という感じはしないし、彼のおとなしそうな風貌から、生徒たちにバカにされている様子でもない。メモを見ないで下さいと、彼女にメモを回した男子生徒が言うけれど、ドロールはメモを開けてしまう。中に描かれていたのは、ドロールが犯人だと揶揄するようなイラスト。愕然とするドロール。休み時間に生徒たちの回答を見ると、"人殺し"などの落書きが・・・ そこへ校長が入って来る。熱心なドロールを褒めつつ、回答を見ると顔色が変わる。保護者だけではなく生徒までも・・・と言う校長は、ハッキリとは言わないけれど辞職を促す。ここまでのシーンや流れは、特別目新しいものではないけれど、この時点では冤罪も考えられるので、ドロールに同情できるようになっている。まんまと同情してしまう。そして、本当に彼がやったのか?それとも、無実なのか知りたくなる。

さて、そんな失意のドロールを監視しているミッキ。自転車を押して実家へ帰るドロールは、道を横断しようとしている老婆に手を貸すような好人物。それに対して「老人には優しいのか」と言うミッキの方が嫌なヤツに見える演出もイイ。家に入ると狭いリビングのような部分があり、その壁に自転車を掛けるドロール。ここで一瞬、間が・・・ そして、そこから数段階段を上ったところにある自室に入り、扉を閉める。 実は、これが最大の伏線だった! 飼っている犬をかわいがる姿なども見せられているし、ドロールを完全に犯人ではないとは言い切れないものの、あまりの小者感にあんな大胆な殺人が出来るとも思えない。しかも、これ確か連続殺人事件なんだよね? うーん。ミスリードさせるの上手い( ̄ー ̄)ニヤリ

しかし、そんなドロールにも動きが・・・ ドロールには別れた妻と娘がいるらしい。そうそう、実はミッキにも娘がいる。ドロールは娘の誕生日に会わせて欲しいと元妻に電話をするけど断られる。この断られるってことも伏線なのかも。何故、ドロールが離婚したかまでは、この電話では分からないし、いろいろな夫婦の形があるから、特に父親として問題がなく、円満に離婚したとしても、子どもと会わせたくないと思う人もいるかもしれないけれど、少なくとも娘にとっては父親なわけで、頑なに拒否するというのも不思議な感じ。なので、やっぱり伏線だったのでしょう。要するに元妻には、一見気が弱く、人の良さそうな彼の中に、何か嫌な面を見ていたのかもしれないということ・・・ ドロールはその妻との会話を、少女たちのバレエ教室のレッスンを見ながらしている。最初は気にしていなかった少女たちも、ドロールの姿を気にするようになる。最前列でバーレッスンする少女と目が合う。不審そうな顔をするバレエ教師・・・ シーンが変わって、自宅の1室でレオタード姿の少女に、バースデーケーキを差し出すドロールの姿。なるほど、彼の娘なのかと思わせる。これも上手い! 何故レオタード姿なのか?

一方、被害者の父親ギディが不思議な動きをしている。この辺りにはアラブ人しかいないし、こんな不便な場所を購入したいなんて物好きだと、不動産会社の女性に言われつつ、ある山の中の家を購入する。物件を見に行った時、地下室に不動産の女性を残し、10数えてから大声で叫んでくれと依頼する。不審に思う彼女に、息子がドラムの練習をするからと言い訳。もちろん信じる女性。彼女が叫ぶシーンはちょっとおもしろい(笑) 声が全く漏れないことを確認し、家を購入するギディ。これは一体?! ギディが犯人なのか?!と思わせる。その後、地下室に運び込んだ椅子の大きさから考えると、その目的が分かる。椅子を改造して拘束用のベルトを取り付け、ペンチ、ハンマーなどの道具を用意するギディ。彼の目的は容疑者を拷問することなではないか? これは『プリズナーズ』(感想コチラ)のようなことになって行くのか?

さて、運命の日。少女とバースデーケーキを食べたと思われる翌日。犬を連れて、近所の公園へ向かうドロール。犬を放してベンチで読書を始める。ドロールを監視していたミッキは後をつける。そして、そんなミッキとドロールを監視しているギディ。公園でまずドロールの犬にスタンガンを当てるミッキ。吠えられたら困るからだろうけど、酷い! やっぱりミッキを好きになれない・・・ 危険を察して逃げるドロール。しばらく住宅街でのチェイスが続く。ドロールも疲れるけど、中年太りのミッキも疲れる(笑) チェイスは結構長い。コミカルっぽく書いたけど、この時点では別にコミカルではない。ドロールは意外にも逃げる。でも、何故か道を塞ぐように止まっているトラックに行く手を遮られて、ミッキに捕まってしまう。

森に連れてこられたドロールは、何故か穴を掘れと言われる。人が1人入れるくらいの穴が掘れた頃、ミッキはドロールに穴に入るように命じ、銃を向け自白を迫る。ドロールが否定すると、銃に弾を1つ込めてドロールに向けて発砲する。次にまた1つ弾を込めて自白を迫るけど、拒否するとさらに弾は増える。要するにどんどん確率の上がるロシアンルーレット。イヤ、いくらなんでもこの時点では容疑者なのに、こんな尋問していいの? まぁ、空砲なのかもしれないけれど・・・ とか、思っていると2人を監視していたギディが現れて、ミッキを殴りつけて気絶させると、ドロールを手伝わせて車のトランクへ。助けてくれた礼を言いつつ握手を求めるドロール。ギディはその手を取って握手をしつつ、車に乗るように言って銃を向ける。

下準備したあの地下室の手作り拘束椅子に座らされるドロール。ギディは目覚めたミッキとドロールに説明を始める。まずは、お話を聞かせますとイスラエル警察から入手した調書を読み始める。犯人が少女にしたことが詳細に書かれている。睡眠薬入りのケーキを飲ませた後、暴行。その後、目覚めた少女にしたことが・・・ あまりにかわいそうなので、ここでは詳細は避けるけれど、要するにドロールに同じことをしますという宣言。うーん、それを見せられるのか~(´Д`) まぁ、別に大丈夫だけど(笑) しかし、ドロールが無実だったらどうする?という問題は残されたまま。ミッキには共犯者になってもらうってことで、拷問開始となるわけだけど、そう言われると怖気づくミッキ。まず、ケーキを食べさせるんじゃ?と言ってみるけど、完全に再現しようとすると、ドロールをレイプしなきゃならないじゃないか言い出すギディ。なるほど(笑) ここに至ってこれはバカ映画なのだと気づく。もちろんホメてます! この場合のバカ映画というのは、主人公たちがバカみたいなことばかりする、いわゆるおバカ映画とは違う。尊敬するMJことみうらじゅん氏が、本人たちはいたって真面目なのだけど、結果バカになっている映画をバカ映画と命名。当blogで言うところのバカ映画はそういう映画のこと。そして、ホメ言葉です!


被害者の父ギディ(45)

で、ここからバカ映画の本領発揮となる。ここからが見どころなので、詳細は避けるけれど、要するにミッキなどよりギディの方がよっぽど非道だったわけで、このギディの壊れっぷりがスゴイ! 拷問自体を楽しんでいるようで、度々いろんな事情で中断する。ケーキを与えることは一度却下したハズなのに、何故かキッチンでウキウキ作り始めちゃう。このキッチンがウッディな感じで、自然光も入って素敵。そこで写真のオッサンがウキウキとBuddy Hollyの"Everyday"に乗ってケーキを作る姿がシュールで笑える。しっかり睡眠薬を砕いて入れてるし(笑) このセンス好き! しかも、この禿オヤジが45歳だと判明してビックリ∑(゚ω゚ノ)ノ イヤ、見えないでしょう・・・ どうやら、母親に頭が上がらないらしく、しょっちゅう電話がかかって来る。その度、いろいろ言い訳するのだけど、つい風邪気味だと嘘をついてしまう。その間も、ちょこちょこ戻っては拷問は続けている。ギディとしては全て真剣にやっている(笑) ちょっと休憩と、玄関テラスで巻煙草を吸おうとしていると、庭に迷い込んで来たアラブ人が・・・ 何故か馬に乗っている。そしてギディから煙草を貰い一服して去って行く。何故ここで登場?と思うけれど、彼は後に重要な役割を果たすことになる。

こんな感じだけど、着実に拷問は進んでいる。でも、ドロールは無実を主張。常軌を逸したギディの様子にミッキが止めに入るも、あえなく捕まってしまい、両手に手錠をかけられて柱に繋がれてしまう。そんな中、家を訪ねて来る人物が? いったい誰?!と思うと、なんとギディの父親。風邪を引いたと言うので、母親が煮たスープを持って来たのだった。なんとか父親を帰そうとするけれど上手くいかない。仕方なく、一緒にスープを飲み始めちゃう。しかもコンソメスープみたいな具がほとんど入っていないスープのみを、テーブルの両端に座って食べる親子(笑) 一方、地下ではミッキが、ギディがイライラしてばら撒いた釘の1本を足の下に隠すことに成功していた。何とかそれで手錠を外すから、時間を稼ぐために自白しろとドロールに話す。そうそう、言い忘れていたけど、ギディが聞き出したかったのは娘の頭部を見つけたかったから。なので、頭部のありかをでっち上げろと言うわけ。もちろん、ドロールが犯人ならば、自白すればいいわけだけど、この時点ではミッキはドロールが犯人であるという確信が薄れているようにも見えてくる。

さて、何とか父親を残して地下に戻って来たギディ。しかし、不審に思った父親が地下に降りてきてしまう。一体何をしているんだ?!と驚く父親。何とか外に連れ出し説明するギディ。ここも、バカだった~(笑) どうやら娘がさらわれた日、ギディは秘書と浮気をしていて、娘を迎えに行くのを忘れてしまったのだった。娘が酷い目に合っている時、自分は秘書にフェ○チオしてもらっていたとか、そこまで父親に話さなくてもいいし(笑) どうやら、ギディは元レバノン警察の刑事で、軍隊にいたこともあったっぽいけど、今では秘書もいるような立場なわけで、一見立派な紳士に見えるのに、このイカレっぷりは何かと思っていると、息子を止めてくれると思っていた父親が、火は試したのか?と・・・ なんと自らノリノリで拷問に参加する始末。この父親も軍にいたことがあったらしく、久々の拷問に嬉々としちゃっている。なるほど、この親にしてこの子あり! ドロールの胸を開いて、ガスバーナーで・・・(以下、自粛)。健康上の理由で野菜中心の食事になっているから、肉が焼ける匂いは久しぶりだとか言ってクンクンしちゃう(笑) どうかしている! こういう感じがダメだと、全然ダメかもだけど、まさかこんな残虐シーンで笑えるなんて! スキ タランティーノ監督が好きなの分かる!

さて、とうとう耐え切れずにドロールは頭部のありかを教える。もちろん、この時点ではミッキも見ている側も、これは嘘だと思っている。完全に被害者になっているドロールに同情してしまっているので、彼は犯人ではないのではないかと思っているので・・・ ギディは父親に見張りを頼んで、ドロールが教えた場所に向かう。その間、父親には母親から電話がかかって来る。言い忘れてたけど、この親子の着メロが・・・ ギディのは『地獄の黙示録』のテーマ(ワルキューレ)だったよね? 違ったっけ? 父親のはもっとかわいらしい感じの。電話がかかって来るたび、ちょっと気が抜ける(笑) しかも、この残虐親子は、口うるさい母親に頭が上がらないっていう設定なのもおもしろい。どんな男性よりも女性の方が強いってこと?(笑) 父親は母親に言われたので、薬を飲むために何か食べないと言いながらキッチンへ。冷蔵庫を開けるとギディ手作りの睡眠薬入りケーキ発見!( ̄ー ̄)ニヤリ もちろん食べちゃう。しかも、何の薬か分からないけど薬も飲んじゃう。そして、寝ちゃう。さて、チャンス到来!とばかりにミッキは手錠を外すことに成功! ドロールの拘束も外そうとするけれど、一瞬躊躇する。ドロールの目を見て、無実なのか問う。ドロールは無実だと答えるけれど、ミッキは拘束を解こうとしない。自分を置いて行くと後悔するぞと言うドロールを置いて行ってしまうミッキ。家の外で自転車を見つけて山道を下って行く。

一方、ドロールに言われた場所をいくら掘りっても娘の頭部は見つからず、騙されたこと知ったギディが車を飛ばして戻ってきている。交互に映されるミッキ自転車とギディ自動車。どこかで鉢合わせちゃうのか?とドキドキするけど、もっと恐ろしいことが待っていた! 突然、ミッキの目の前に現れたのは馬のアラブ人。ビックリして両手を上げてしまうミッキに、アラブ人は皆犯罪者だと思っているのかと聞くアラブ人。良くは思っていないようだけれど、怒っているわけでもないらしい。この辺りイスラエルの問題をサラリと入れているのかもしれない。謝罪しつつ、やや卑屈な態度をとるミッキの感じも、逆にバカにしている気がしなくもない・・・ でも、ケータイを借りようとすると、自分はガラケーしか持っていないのに、アラブ人はiPhoneを持っててビックリしたりもする。4Sだけど(笑) ドヤ顔で4S自慢する感じも笑える。そんな、コミカルシーンから一転。署長に応援を要請しようとすると、奥さんが来ているので電話を代わると言われる。妻は泣きながら、あなたがバレエ教室に迎えに行かないから娘がいなくなったと言う。バレエ教室?!

慌ててギディの家に戻るミッキ。一足先に戻って来ていたギディは、意識を取り戻した父親が止める間もなく、ノコギリでドロールの首を切ってしまう。慌てて止めるミッキ。でも、もうドロールには話すことはできない。娘の居所を書けと紙と鉛筆を渡すけれど、ミッキとギディによって骨を折られた指には鉛筆も握れない。そして、力尽きてドロールは死んでしまう。この皮肉はなかなかスゴイ! もちろん、ドロールが喉を切られていなかったら、もしくは指の骨が折れていなかったら、娘の居所を教えたかどうかは分からない。でも、彼らは永遠に彼の口からミッキの娘の居所と、ギディの娘の頭の隠し場所を聞き出すことはできなくなった。

シーンが変わると同僚ラミが、ドロールの家から署長に報告している。「何も見つかりませんでした」そして引き上げてしまう。カメラが横に移動すると、ドロールが自転車を掛けたあの壁の向こう側に隠し部屋があって、レオタード姿のあの少女がベッドに横たわっている。意識がないだけなのか、死んでいるのか不明のまま映画は終わる。この余韻を残すラストも良かった。ミッキの娘を殺害したのはドロールで間違いない。でも、"連続幼女誘拐殺人事件"の犯人とは言い切れない。報復のため、もしくは自己保身のためにミッキの娘をさらっただけかも? でもまぁ、それならミッキが自分を置いて去る時、娘を拉致していると言うはずだと思うので、ドロールが連続殺人犯で間違いないと思う。ハッキリとしたオチがないとイヤなタイプの人は、ちょっとスッキリしない終わり方かもしれないけれど、この終わり方は個人的には好きだった。関わった人間すべてが落ちていく感じ。原題は『BIG BAD WOLVES』なので、オオカミはドロールであり、ギディであり、ギディの父親であり、そしてミッキでもある。無能な警察もかも?

よくよく考えると登場人物はほとんど男性。被害者の少女や、ドロールの生徒など、チラリと出てきたけれど、きちんとセリフのある役は不動産会社の女性くらい。ギディの母親も電話のみで姿は出てこないし・・・ その男臭い感じが良かった。ギディと父親のバカ場面とかは、やっぱり中年男性だからこそコミカルな感じになると思う。これが、どちらかが女性だと違った感じになってしまう気がする。監督コンビは、タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』の音楽に乗って耳をそぎ落とすシーンのように、ユーモアを本当は笑うべきでないシーンに入れることで、「これを笑っている自分はどうなんだ?」と考えさせたいと語っていたけど、なるほどまんまとハマった感じ(笑)

イスラエル出身の役者さんを集めたというキャストは、当然知らない顔ばかり。ミッキ役のリオール・アシュケナズィは、イスラエルで最も称賛される俳優の1人で、今作ではないけれどイスラエル・アカデミー賞主演男優賞受賞経験ありとのこと。決してThe Good(善玉)とは言い切れないミッキを好演していたと思う。ホント嫌いだったし(笑) 馬に乗った男役のカイス・ナシェフがわずかなシーンで印象を残す。彼が馬に乗っているのって、西部劇のオマージュなのかな? ドロールのロテム・ケナンは2003年に演技においてアメリカ-イスラエル間での奨学金を獲得したそうだけれど、好演していたと思う。最後まで冤罪ではないのかと思わせなきゃダメなわけで、でも怪しくないとダメ。その辺り良かったと思う。そして、強面なのに親離れできていないギディのツァヒ・グラッドがイイ!今作で2013年イスラエル・アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたのだそう。あれ?主役はミッキじゃなくてギディなのか? まぁいいけど(笑) ギディの狂気が素晴らしい! 45歳に全く見えないので、実年齢が知りたかったのだけど、公式には書いてなかった 今回一番好きだったキャラ、祖父ヨラム役のドヴ・グリッグマンが一見善良なおじいちゃんに見せて、実は一番どうかしている役を嬉々として演じている感じでおかしい(笑) この役最高

映画のほとんどは、廃墟か地下で進むけど、ドロールの自宅とか、学校のこじんまりした教室とか、監禁場所の家のキッチンとか、素朴でありながらカワイイ感じが好き。映画って撮影後、色や光の具合を調整するらしいけど、今回はあえてそれを行わず、自然のままの光や画を使ったとのこと。そのため、どこかドキュメンタリー映画を見ているようでもあり、でもしっかり作り物であるって感じが良かったと思う。

サスペンス映画好きな人好きだと思うけど、いわゆる正統派サスペンスじゃないので、どうかな? タランティーノ監督作品好きな人は好きなんじゃないかな? でも、タランティーノ作品ほどバイオレンスではないので、女性でも全然見れると思う。オススメ!

『オオカミは嘘をつく』Official site


コメント (4)
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