師走の英国男優映画祭②
「アナザー・カントリー」
祖国を裏切りソ連に亡命中のイギリス人スパイ、ガイ・ベネットが米国から来た女性ジャーナリストの取材を受ける。老いたベネットは彼女に、イギリスの名門寄宿舎で過ごした日々について語り始めるが…
いま大人気のイギリス男優ですが、80年代にも彼らは一大旋風を巻き起こしました。その火付け役となった映画が、この「アナザー・カントリー」と「モーリス」ではないでしょうか。第一次英国男優ブームの時、映画が好きになり始めたばかりのオコチャマだった私は、ケヴィン・コスナーとかトム・ハンクスに幼心をときめかせていて、目の肥えたお姉さまたちが騒いでいたイギリスの美青年たちには、あまり関心を向けていませんでした。彼らの魅力である耽美とか退廃は、当時の私には高尚すぎたのかもしれません。といっても、年老いた今も私の目は痩せてるままですがそれにしても80年代と今の人気英国男優は、まったく毛色が違いますよね~。ほとんどが舞台出身者なので演技が巧く知的、という共通点はありますが、今の人気英国俳優は耽美とか退廃とかいった、どこか近づきがたい特異さがなく、見た目も雰囲気も親しみやすい。強いて言えば、美男とイケメンの違い?そんな一世を風靡した英国美青年映画の金字塔を、久々に再観。初めて観た時には感じなかった面白さや魅力を再発見できました。
イギリス上流階級の子弟たちが暮らす名門校の男子寮…腐女子にとっては、まさに夢の(妄想の?)聖なるBL楽園。醜いもの汚いものなど決して立ち入ることが許されない、女人禁制の美しきシークレットガーデンなのです。わしも死んだら天国じゃなくて、そこへ行きたいものですそんな美しく閉ざされたBLワールドで繰り広げられる、美青年たちの愛憎や友情(ハァハァ、やばい~鎮静剤ください)…彼らが織りなす蒼い苦悩、禁断の想いに腐心は切なくときめくのですが、あらためてこの伝説のBL映画を観ると、こんなん親兄弟、友だちとは絶対一緒に観れんわ~と背徳感、罪悪感にドキドキしながらコッソリ楽しむ、という隠微さがあまり感じられませんでした。おそらく、いろんなBL映画や小説を読み過ぎて腐りきってしまってるせいでしょう。過激で刺激的なBLに狎れてしまってる腐女子が観たら、むしろ清々しく恬淡な映画なのではないでしょうか。男同士のの性的なシーンはほとんどなく、BLじたいにはドラマティックな展開もない。もうひとつの腐女子のバイブル映画「モーリス」のほうが、画的にも内容的にもBL濃度が濃ゆいです。
BLそのものよりも、1930年代におけるイギリス名門男子校内のライフスタイルとか因習、権力闘争のほうに重きをなしている映画です。当時、同性愛は罪なので大っぴらにはできないけど、わりと公然の秘密というか暗黙の了解な感じもあったのが意外でした。若い男子を狭い世界に閉じ込めて、禁欲を強いるほうが不健全で不自然ですもんね。リンリー警部シリーズの「寄宿舎殺人事件」で、ヘイ子も似たような感想もらしてましたが…男しかいないし、女よりキレイな男もいるし、男でもいいや、にもなるわな。BLのみならず、イギリスの名門校独特のルールや不文律、同じ生徒でもカースト制度みたいに身分差、格差が厳然とあって、それを若者たちが規律正しく冷徹かつ優雅に守っている、という平凡な庶民からすると別の惑星みたいな美しい異文化も、腐女子を惹きつけてやまみません。
いじめや対立、傲慢さや選民意識も俗悪さがなく、あくまで冷ややかに優雅なところが、さすがイギリス。ストレートな物言いや行動はせず、いやみやイヤガラセもオブラートに包んで遠まわしな表現、手段をとるのも、教養や知的水準が高くないとできない高度さ。言動や考え方の早熟さなども、やはりアメリカや日本の学園ドラマのチャラチャラとは違います。まさに貴族と成金の違いというか。
主人公のガイとハーコートの恋よりも、上級生に絶対服従な下級生の献身的な態度のほうに、私のBLセンサーは反応しました。ガイとハーコート、もうちょっとスキャンダラスに燃え上ってほしかったな~。ほとんど純愛でしたし。モノホンの腐女子は、やはりガイとハーコートよりも、ガイとトミーの友情のほうに萌えるのでは。クールなふりして、常にガイにことを心配したり助けたりするトミー。肉体的には結ばれないけど、あれも立派なBLですよね~。
メインキャラを好演した3人の俳優が、個性的で魅力的、そして当たり前だが、わ、若い!現在の彼らと比較するのも、また一興でしょう(ちょっと切なくもあるが)。まず、主人公ガイ役のルパート・エヴェレット。
80年代の耽美で退廃的な英国美青年の代表格だったエヴェレット氏。オコチャマだった私の目には、彼はまるで不気味な宇宙人でした。まあ、トム・ハンクスやケヴィン・コスナーがタイプだった人間には、そうもなりますよね(笑)。年月を経て腐りきってしまった目で見ると、当時のエヴェレット氏の魅力、というか、個性の強烈さを高く評価できるように。でもやっぱ、今見ても宇宙人ですがたまに要潤に似て見えたけど。キャナメをものすご~く暗くエレガントにした感じ?奔放で驕慢、気位とプライドの高さはチョモランマだけど、傷つきやすくて甘えん坊な可愛さもあるガイを、チャーミングに演じてます。反抗的なところも、軽やかに茶目っ気があって素敵。タキシードとか正装が似合う。これは英国男優には絶対必要条件ですよね。「ヒステリア」で久々に彼を見ましたが、いい感じにチョイワル風な熟年紳士化してて、若い頃より好きかも。
ガイの親友トミー役は、コリン・ファース。
わ、若い!(当時23、4歳)けど、基本的には今とそんなに変わってない?スラ~っとほっそりしてるところが、恰幅のよい現在との大きな違いでしょうか。優等生の共産主義者で、男子寮内での権力争いには無関心、ガイにも素っ気ないけど、実は誰よりも情勢に敏感でガイのことも大切にしてるトミーを、クールかつ優しく演じています。ガイと一緒の時ふいに見せる、謎めいた悲しげな表情が可愛かった。若い頃から、すごく気難しそうだけど堂々としてて頼もしそうなファース氏。ぶっきら棒だけど過保護なお兄ちゃんキャラなトミーに、私もガイみたいに甘えたい~頼りたい~。でも、容易に他人に心を開かない彼に愛されるのは、至難の業っぽい。そういうところも素敵なファース氏です。エヴェレット氏との並んで歩くシーンとか、二人とも長身でスタイルがいいので、ほんと絵になるコンビでした。
80年代の英国美青年の中では、地味な存在だったファース氏。でも私はそんな彼がいちばん好きでした。80年代組の中では、ファース氏が21世紀に入って出世頭となりましたね。若かりし日の「ひと月の夏」とかも、また観たいな~。
ハーコート役のケイリー・エルウェスの瑞々しい紅顔の美少年ぶりにも瞠目させられます。ほんと、きれいで可愛い。ガイがすれ違いざまにスっとハーコートに恋文を渡すシーンと、ガイとハーコートが夜、小舟の上で寄り添うシーンがロマンチック!アナカン後、いろんな映画で美男ぶりを遺憾なく発揮したケイリーも、あの人は今になっちゃってますよね。現在も俳優してるのかな。今の彼、見たいような、見るのが怖いよう。
元々は舞台だったアナカン。初演でエヴェレット氏が、後にコリン・ファース、ダニエル・デイ・ルイスもガイ役を、トミー役はケネス・ブラナが演じたんだとか。舞台版も観たいな~。それにしてもガイたち、学生なのにほとんど勉強してる様子なし。あくせくセカセカした受験勉強とか、そんな俗悪なこととは縁がない生まれついての貴公子たちの、優雅な怠惰さにも憧れます。スポーツも、サッカーなんて庶民のすること!イギリスの上流社会はやっぱクリケットなんです!
かつて映画界を席巻した80年代英国美青年軍団の中では、ハリウッドでまさかのラブコメ帝王となったヒュー・グラント、オスカーを3度も受賞し世界最強の名優となったダニエル・デイ・ルイスが突出しましたが、今てっぺんに立ってるのは老朽化したヒュー爺でも、ほとんど仕事しないDDLでもなく、間違いなくファース氏でしょう。ゴキゲンな大ヒット作「キングスマン」の続編に、彼が再登場しますやうに!
「アナザー・カントリー」
祖国を裏切りソ連に亡命中のイギリス人スパイ、ガイ・ベネットが米国から来た女性ジャーナリストの取材を受ける。老いたベネットは彼女に、イギリスの名門寄宿舎で過ごした日々について語り始めるが…
いま大人気のイギリス男優ですが、80年代にも彼らは一大旋風を巻き起こしました。その火付け役となった映画が、この「アナザー・カントリー」と「モーリス」ではないでしょうか。第一次英国男優ブームの時、映画が好きになり始めたばかりのオコチャマだった私は、ケヴィン・コスナーとかトム・ハンクスに幼心をときめかせていて、目の肥えたお姉さまたちが騒いでいたイギリスの美青年たちには、あまり関心を向けていませんでした。彼らの魅力である耽美とか退廃は、当時の私には高尚すぎたのかもしれません。といっても、年老いた今も私の目は痩せてるままですがそれにしても80年代と今の人気英国男優は、まったく毛色が違いますよね~。ほとんどが舞台出身者なので演技が巧く知的、という共通点はありますが、今の人気英国俳優は耽美とか退廃とかいった、どこか近づきがたい特異さがなく、見た目も雰囲気も親しみやすい。強いて言えば、美男とイケメンの違い?そんな一世を風靡した英国美青年映画の金字塔を、久々に再観。初めて観た時には感じなかった面白さや魅力を再発見できました。
イギリス上流階級の子弟たちが暮らす名門校の男子寮…腐女子にとっては、まさに夢の(妄想の?)聖なるBL楽園。醜いもの汚いものなど決して立ち入ることが許されない、女人禁制の美しきシークレットガーデンなのです。わしも死んだら天国じゃなくて、そこへ行きたいものですそんな美しく閉ざされたBLワールドで繰り広げられる、美青年たちの愛憎や友情(ハァハァ、やばい~鎮静剤ください)…彼らが織りなす蒼い苦悩、禁断の想いに腐心は切なくときめくのですが、あらためてこの伝説のBL映画を観ると、こんなん親兄弟、友だちとは絶対一緒に観れんわ~と背徳感、罪悪感にドキドキしながらコッソリ楽しむ、という隠微さがあまり感じられませんでした。おそらく、いろんなBL映画や小説を読み過ぎて腐りきってしまってるせいでしょう。過激で刺激的なBLに狎れてしまってる腐女子が観たら、むしろ清々しく恬淡な映画なのではないでしょうか。男同士のの性的なシーンはほとんどなく、BLじたいにはドラマティックな展開もない。もうひとつの腐女子のバイブル映画「モーリス」のほうが、画的にも内容的にもBL濃度が濃ゆいです。
BLそのものよりも、1930年代におけるイギリス名門男子校内のライフスタイルとか因習、権力闘争のほうに重きをなしている映画です。当時、同性愛は罪なので大っぴらにはできないけど、わりと公然の秘密というか暗黙の了解な感じもあったのが意外でした。若い男子を狭い世界に閉じ込めて、禁欲を強いるほうが不健全で不自然ですもんね。リンリー警部シリーズの「寄宿舎殺人事件」で、ヘイ子も似たような感想もらしてましたが…男しかいないし、女よりキレイな男もいるし、男でもいいや、にもなるわな。BLのみならず、イギリスの名門校独特のルールや不文律、同じ生徒でもカースト制度みたいに身分差、格差が厳然とあって、それを若者たちが規律正しく冷徹かつ優雅に守っている、という平凡な庶民からすると別の惑星みたいな美しい異文化も、腐女子を惹きつけてやまみません。
いじめや対立、傲慢さや選民意識も俗悪さがなく、あくまで冷ややかに優雅なところが、さすがイギリス。ストレートな物言いや行動はせず、いやみやイヤガラセもオブラートに包んで遠まわしな表現、手段をとるのも、教養や知的水準が高くないとできない高度さ。言動や考え方の早熟さなども、やはりアメリカや日本の学園ドラマのチャラチャラとは違います。まさに貴族と成金の違いというか。
主人公のガイとハーコートの恋よりも、上級生に絶対服従な下級生の献身的な態度のほうに、私のBLセンサーは反応しました。ガイとハーコート、もうちょっとスキャンダラスに燃え上ってほしかったな~。ほとんど純愛でしたし。モノホンの腐女子は、やはりガイとハーコートよりも、ガイとトミーの友情のほうに萌えるのでは。クールなふりして、常にガイにことを心配したり助けたりするトミー。肉体的には結ばれないけど、あれも立派なBLですよね~。
メインキャラを好演した3人の俳優が、個性的で魅力的、そして当たり前だが、わ、若い!現在の彼らと比較するのも、また一興でしょう(ちょっと切なくもあるが)。まず、主人公ガイ役のルパート・エヴェレット。
80年代の耽美で退廃的な英国美青年の代表格だったエヴェレット氏。オコチャマだった私の目には、彼はまるで不気味な宇宙人でした。まあ、トム・ハンクスやケヴィン・コスナーがタイプだった人間には、そうもなりますよね(笑)。年月を経て腐りきってしまった目で見ると、当時のエヴェレット氏の魅力、というか、個性の強烈さを高く評価できるように。でもやっぱ、今見ても宇宙人ですがたまに要潤に似て見えたけど。キャナメをものすご~く暗くエレガントにした感じ?奔放で驕慢、気位とプライドの高さはチョモランマだけど、傷つきやすくて甘えん坊な可愛さもあるガイを、チャーミングに演じてます。反抗的なところも、軽やかに茶目っ気があって素敵。タキシードとか正装が似合う。これは英国男優には絶対必要条件ですよね。「ヒステリア」で久々に彼を見ましたが、いい感じにチョイワル風な熟年紳士化してて、若い頃より好きかも。
ガイの親友トミー役は、コリン・ファース。
わ、若い!(当時23、4歳)けど、基本的には今とそんなに変わってない?スラ~っとほっそりしてるところが、恰幅のよい現在との大きな違いでしょうか。優等生の共産主義者で、男子寮内での権力争いには無関心、ガイにも素っ気ないけど、実は誰よりも情勢に敏感でガイのことも大切にしてるトミーを、クールかつ優しく演じています。ガイと一緒の時ふいに見せる、謎めいた悲しげな表情が可愛かった。若い頃から、すごく気難しそうだけど堂々としてて頼もしそうなファース氏。ぶっきら棒だけど過保護なお兄ちゃんキャラなトミーに、私もガイみたいに甘えたい~頼りたい~。でも、容易に他人に心を開かない彼に愛されるのは、至難の業っぽい。そういうところも素敵なファース氏です。エヴェレット氏との並んで歩くシーンとか、二人とも長身でスタイルがいいので、ほんと絵になるコンビでした。
80年代の英国美青年の中では、地味な存在だったファース氏。でも私はそんな彼がいちばん好きでした。80年代組の中では、ファース氏が21世紀に入って出世頭となりましたね。若かりし日の「ひと月の夏」とかも、また観たいな~。
ハーコート役のケイリー・エルウェスの瑞々しい紅顔の美少年ぶりにも瞠目させられます。ほんと、きれいで可愛い。ガイがすれ違いざまにスっとハーコートに恋文を渡すシーンと、ガイとハーコートが夜、小舟の上で寄り添うシーンがロマンチック!アナカン後、いろんな映画で美男ぶりを遺憾なく発揮したケイリーも、あの人は今になっちゃってますよね。現在も俳優してるのかな。今の彼、見たいような、見るのが怖いよう。
元々は舞台だったアナカン。初演でエヴェレット氏が、後にコリン・ファース、ダニエル・デイ・ルイスもガイ役を、トミー役はケネス・ブラナが演じたんだとか。舞台版も観たいな~。それにしてもガイたち、学生なのにほとんど勉強してる様子なし。あくせくセカセカした受験勉強とか、そんな俗悪なこととは縁がない生まれついての貴公子たちの、優雅な怠惰さにも憧れます。スポーツも、サッカーなんて庶民のすること!イギリスの上流社会はやっぱクリケットなんです!
かつて映画界を席巻した80年代英国美青年軍団の中では、ハリウッドでまさかのラブコメ帝王となったヒュー・グラント、オスカーを3度も受賞し世界最強の名優となったダニエル・デイ・ルイスが突出しましたが、今てっぺんに立ってるのは老朽化したヒュー爺でも、ほとんど仕事しないDDLでもなく、間違いなくファース氏でしょう。ゴキゲンな大ヒット作「キングスマン」の続編に、彼が再登場しますやうに!