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村上浩康監督『流(ながれ)』

2012-05-08 04:05:00 | ノンジャンル
 今週の日曜日、村上浩康さん監督・編集の'12年作品『流(ながれ)』を愛川町文化会館ホールで見ました。第53回科学技術映像祭で文部科学大臣賞を受賞した作品です。
 チラシから引用させていただくと、「この作品は、平成13年から平成23年までの10年間に渡り、神奈川県愛川町の中津川で生物の保護と研究に取り組む二人のおじいさんの姿と、植物や水生昆虫の生態、そして徐々に明らかになる環境の変化を追い続けたドキュメンタリー」です。
 中津川の上流に日本でも最大級のダム「宮ケ瀬ダム」が2000年に完成して、その下流の環境が一変する中、世界でも日本の関東地方の河原にしか見られない絶滅危惧種「カワラノギク」を絶滅から救おうと、数少なくなった「カワラノギク」の種を採取し、その種を芽吹きやすい河原の石の周辺に蒔いたり、自宅で苗を育てて、それを河原に移植したりする一方、こまめに水やりをし、外来種を取り除く活動を、75才になった時から始めた吉江啓蔵さん(撮影開始時は80歳)。そして、中学校の理科の教師時代に、高度成長時代に汚れて鮎が遡上しなくなった中津川を憂い、水質検査のために水生昆虫の分布調査を学生とともに行なって、その結果を学界に発表した後、今回のダム建設で再び中断されていた調査を開始した齋藤知一さん(撮影開始時76歳)。この二人の活動がカットバックでつづられながら、映画は進んで行きます。
 やっと根付いた「カワラノギク」が度重なる台風でほぼ全滅してしまい、また一から始めるしかないと笑う吉江さん。しかしその翌年から「カワラノギク」は着実に数を増し、やがてその活動が人づたいに知られるようになると、吉江さんの活動に賛同した人々がNPOを作り、活動が一気に広がって、「カワラノギク」は護岸工事とダムの影響で少なくなった中津川の河原に、だんだんと増えていきます。
 一方、齋藤さんは調査の結果、ダムの上流の水生昆虫の分布は、ダム建設前とほとんど変わりないのに、ダムの下流は生存している種が極端に少なくなっていることを知り、特にダム直下の地点では、一つの種類だけが異常に繁殖している事実をつかみます。ダムが放流すると突然水量が増して、水生昆虫が流されてしまい、それがこうした分布を作っていることが、やがて分かってきますが、その一方で、様々な水生昆虫がどのようにして水中で暮らし、どのように羽化し、どのように交尾し、どのように産卵するかも、美しい映像で綴られていきます。
 そしてラスト、齋藤さんは今まで全国でもほとんど発見例のない種と、ダムの上流で40年ぶりの再会を果たし、中津川の河原には「カワラノギク」があふれんばかりに咲き誇り、人々の憩いの場となったことを知らせて映画は終わります。

 ラスト、青空からパンダウンしていくと、河原いっぱいに「カワラノギク」が咲き誇っているのを映すショットを見て、私は不覚にも涙してしまいました。上映終了後、監督、カメラマンの能勢広さん、齋藤さん、それにNPOの代表者2人の舞台挨拶がありましたが、もうすぐ90歳を迎えるであろう齋藤さんは、今後全国の河川で同様の調査を行なっていきたいと宣言し、自然を残したいという「思い」が、それをどうすれば残していけるかという「考え」に至るとして、まず「思う」ことを子供たちに教えてほしいと観客に話しかけ、監督の村上さんやカメラマンの能勢さんも、この映画は始まりであって、既に次作の撮影の準備も進んでいること、NPOの方々も、吉江さんや齋藤さんが始めた運動を、これからも次世代の人々に続けていってほしいと語っていらっしゃいました。普段何気なく見ている中津川を、今後は自然のモデルケースとして見ていくきっかけともなる、そんな素晴らしい映画であるとともに、たった一人で始めた活動でも、それがやがて大きなうねりとなって世界を変える力となりうる、そんな勇気を与えてくれる映画でもありました。今後は全国各地の映画館での上映やDVDでの発売も計画されているということでしたので、見る機会がありましたら、是非足を運んでみてください。

P.S S.Yさんへ Happy Birthday to You!

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/