昨日訳あって、「おフランスかぶれマダムの異常な日常」というサイトを久しぶりに見させていただいていたら、GW明けに東京日仏学院・創立60周年記念イベントがあるとの記事を発見。実際何が行われるのだろうと見てみたら、何とファニー・アルダンが来日し、5月11日にはフランソワ・トリュフォ-生誕80周年記念として19時30分からトリュフォーの遺作『日曜日が待ち遠しい!』の上映会があるとのこと。フランスはトリュフォーを忘れていなかった!! これを知った東京に住んでいる映画好きな方は、5月11日には東京日仏学院へもう行くしかない!?
さて、突然ですが話題は変わり、岡野宏文さんと豊崎由美さんの共著『読まずに小説書けますか』の中で紹介されていた、G・ガルシア=マルケスの'67年作品『百年の孤独』を読みました。
ホセ・アルカディオ・ブエンディアが作り上げた村マコンドには、毎年3月になるとメルキアデスと名乗るジプシーとその一家がやって来て、新しい品物を持ってきていました。最初に持ちこまれたのは磁石で、家から家へ2本の鉄の棒をひきずって歩くと、そこらの手鍋や平鍋、火掻き棒やこんろがもとあった場所からころがり落ち、抜けだそうとして必死にもがく釘やねじのせいで材木は悲鳴をあげ、昔なくなった品物までがいちばん念入りに捜したはずの隅から姿をあらわし、てんでに這うようにして、メルキアデスの魔法の鉄の棒のあとを追いました。それを見たホセ・アルカディオ・ブエンディアは、これは地下から金を掘りだすのに使えるかもしれないと考え、「それは無理だ」と言う正直者のメルキアデスの忠告も聞かず、妻のウルスラの反対をも押し切って、自分のラバに数匹の仔山羊を添えて2本の磁石と交換しました。彼はメルキアデスがしていたように、ニ本の棒をひきずって何ヶ月もあたり一帯をくまなく探って歩きましたが、手に入れたのは、どこもかしこも錆びついた、15世紀ごろの甲冑でしかなく、中からは女の髪をおさめた銅のロケットを首にかけた白骨化した死体があらわれたのでした。
次の年の3月にジプシーがもたらしたものは、一台の望遠鏡と太鼓ほどの大きさの1枚のレンズでした。レンズで太陽光線を集めて火をつけるパフォーマンスを見たホセ・アルカディオ・ブエンディアは、この品物を兵器として使用することを思いつき、またメルキアデスが止めるのにもかかわらず、ウルスラの父親が苦しいなかで一生かかって貯め、彼女自身がいざという時の用意にと、箱に入れてベッドの下に埋めて置いておいた金貨の一部を彼に払って、レンズを手に入れました。ホセ・アルカディオ・ブエンディアは軍事上の実験に没頭し、敵の軍隊に及ぼすレンズの効果を知るため、焦点を結んだ太陽光線にわざわざ体をさらし、大やけどを負うことまでしながら、兵器の性能についての計算をくり返し、実験にもとづく多数の証拠と数枚の図解を添えた、有無をいわさぬ説得力をそなえた一冊の提要を書きあげ、飛脚に託して当局に差し出しました。飛脚は苦労の末、やっと駅馬と連絡する道まで辿り着き、当時はまだ首府への旅行はほとんど不可能だったにもかかわらず、ホセ・アルカディオ・ブエンディアが、軍関係者の前で新兵器を実地に公開し、太陽戦争の複雑な技術を手ずから教えるためならば、政府の命令が届きしだいそちらへ出向いてもよいと書き送っていたにもかかわらず、何年たっても返事が来ることはなく、それを知ったメルキアデスは、自らの誠実さを証明するように、レンズと引きかえに金貨を返してよこしたばかりか、数枚のポルトガル渡来の地図と若干の航海用の器具をゆずってくれ、羅針盤などを扱えるようにと、ヘルマン氏の膨大な研究書も渡してくれました。ホセ・アルカディオ・ブエンディアは、再び航海術の研究に没頭し、やがて頭の中で、未知の海原で船をあやつり、人煙まれな土地を訪れ、すばらしい生き物と交わることもできるようになると、数日のあいだ物に憑かれたようになって、自分の頭が信じられないのか、途方もない推理の結果を独りつぶやいていました。やがて12月のある日、彼は胸につかえていたことを、家族に対していっきに吐きだしました。
「地球はな、いいかみんな、オレンジのように丸いんだぞ!」(明日へ続きます‥‥)
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
さて、突然ですが話題は変わり、岡野宏文さんと豊崎由美さんの共著『読まずに小説書けますか』の中で紹介されていた、G・ガルシア=マルケスの'67年作品『百年の孤独』を読みました。
ホセ・アルカディオ・ブエンディアが作り上げた村マコンドには、毎年3月になるとメルキアデスと名乗るジプシーとその一家がやって来て、新しい品物を持ってきていました。最初に持ちこまれたのは磁石で、家から家へ2本の鉄の棒をひきずって歩くと、そこらの手鍋や平鍋、火掻き棒やこんろがもとあった場所からころがり落ち、抜けだそうとして必死にもがく釘やねじのせいで材木は悲鳴をあげ、昔なくなった品物までがいちばん念入りに捜したはずの隅から姿をあらわし、てんでに這うようにして、メルキアデスの魔法の鉄の棒のあとを追いました。それを見たホセ・アルカディオ・ブエンディアは、これは地下から金を掘りだすのに使えるかもしれないと考え、「それは無理だ」と言う正直者のメルキアデスの忠告も聞かず、妻のウルスラの反対をも押し切って、自分のラバに数匹の仔山羊を添えて2本の磁石と交換しました。彼はメルキアデスがしていたように、ニ本の棒をひきずって何ヶ月もあたり一帯をくまなく探って歩きましたが、手に入れたのは、どこもかしこも錆びついた、15世紀ごろの甲冑でしかなく、中からは女の髪をおさめた銅のロケットを首にかけた白骨化した死体があらわれたのでした。
次の年の3月にジプシーがもたらしたものは、一台の望遠鏡と太鼓ほどの大きさの1枚のレンズでした。レンズで太陽光線を集めて火をつけるパフォーマンスを見たホセ・アルカディオ・ブエンディアは、この品物を兵器として使用することを思いつき、またメルキアデスが止めるのにもかかわらず、ウルスラの父親が苦しいなかで一生かかって貯め、彼女自身がいざという時の用意にと、箱に入れてベッドの下に埋めて置いておいた金貨の一部を彼に払って、レンズを手に入れました。ホセ・アルカディオ・ブエンディアは軍事上の実験に没頭し、敵の軍隊に及ぼすレンズの効果を知るため、焦点を結んだ太陽光線にわざわざ体をさらし、大やけどを負うことまでしながら、兵器の性能についての計算をくり返し、実験にもとづく多数の証拠と数枚の図解を添えた、有無をいわさぬ説得力をそなえた一冊の提要を書きあげ、飛脚に託して当局に差し出しました。飛脚は苦労の末、やっと駅馬と連絡する道まで辿り着き、当時はまだ首府への旅行はほとんど不可能だったにもかかわらず、ホセ・アルカディオ・ブエンディアが、軍関係者の前で新兵器を実地に公開し、太陽戦争の複雑な技術を手ずから教えるためならば、政府の命令が届きしだいそちらへ出向いてもよいと書き送っていたにもかかわらず、何年たっても返事が来ることはなく、それを知ったメルキアデスは、自らの誠実さを証明するように、レンズと引きかえに金貨を返してよこしたばかりか、数枚のポルトガル渡来の地図と若干の航海用の器具をゆずってくれ、羅針盤などを扱えるようにと、ヘルマン氏の膨大な研究書も渡してくれました。ホセ・アルカディオ・ブエンディアは、再び航海術の研究に没頭し、やがて頭の中で、未知の海原で船をあやつり、人煙まれな土地を訪れ、すばらしい生き物と交わることもできるようになると、数日のあいだ物に憑かれたようになって、自分の頭が信じられないのか、途方もない推理の結果を独りつぶやいていました。やがて12月のある日、彼は胸につかえていたことを、家族に対していっきに吐きだしました。
「地球はな、いいかみんな、オレンジのように丸いんだぞ!」(明日へ続きます‥‥)
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)