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町田康『ゴランノスポン』

2012-05-16 05:02:00 | ノンジャンル
 昨日、母が便せんを買いたいと言うので、小田急腺本厚木駅前の有隣堂に同行し、彼女が便せんを選んでいる間に映画コーナーを見て帰ろうとすると、4階の出入口付近に「アルフレッド・ヒッチコック 全作品」と題する豪華本が平積みにしてあり、中を見ると撮影風景など貴重な写真に満ち溢れているので、定価が2900円+税にもかかわらず、衝動買いしようとレジに持っていくと「315円いただきます」とレジの店員の方にしらっと言われ、驚きました。何と特価本の扱いとかで、この値段なのだそうです。びっくりしながらも喜んで買わせてもらうと、店員の方も嬉しそうに笑っていらっしゃいました。「他にもよろしければどうぞ」と言われ、改めてコーナーを見ると、フェリーニやキューブリックの同じシリーズのものも315円で売られていました。興味のある方は、小田急腺本厚木駅前の有隣堂の4階の入り口付近をお探しください。まだ当分の間、あると思います。

 さて、町田康さんの'11年作品『ゴランノスポン』を読みました。最新刊の短編集です。
 『楠木正成』は、楠木正成になぜか惹かれる俺が、本で彼の業績について調べるうちに、彼の元へワープし、部下にしてもらうが、その直後に殺されてしまう話。
 『ゴランノスポン』では、僕たちは仲間うちで楽しく暮らしていましたが、仲間の一人が自殺し、火葬場へバスで行く途中、開かずの踏切に来たところで、世の中カネだと思い始め、大ゲンカになったという話。
 『一般の魔力』は、併義とその妻がエゴ丸出しの生活に自足している中で、どうやら娘が殺されて森林に捨てられたらしいことが分かるという話。
 『二倍』は、就職できずコンビニでバイトしていた雄大が、元同級生に誘われ、急成長の一流会社に入社しますが、とんでもない失敗をしていまい、社内が大騒ぎになる中でクビにされるも、演技会社だと以前に言われたことを思い出し、捨て台詞を吐いて会社を去り、再び暗い生活に戻っていく話。
 『尻の泉』では、尻から人を浄める水を出す僕は、それを隠していましたが、ある日偶然に出会った補崎にそのことを知られ、芸人としてデビューしますが、やがてシャブ中になって業界を追放され、ホームレスになった際に温かく接してくれた女性とともに、二人を自らの水で浄化しようとしますが、泉が枯れてしまっているのに気付き、その事件で捕まった後、尻から泉が湧くのが誰にでもあることを知って再起するのに成功しますが、再び尻から泉が出始め、人生の試験をまた受けることになるという話。
 『末摘花』は、荒んだ家に住み琴を弾く姫に会いに行った僕が、やがてその姫が異常に長く赤い鼻を持つ醜い女であることを知りますが、美しく年若い娘と契ることで、その時に受けたトラウマを癒すことができたという話。
 『先生との旅』は、即位式で講演をするように先生から推薦された私が、名古屋駅で先生と合流し、共に会場に向かいますが、それは偽者で、財布をすられているのにタクシーの中で気付くという話です。

 どれも句読点が区別なく使われ、現代語が駆使され、文が途中で終わるなど、川上未映子さんに似た独特の文体が形成されていて、楽しく読めました。また、中流階級もしくはスノビズム、ブルジョワに対する徹底した悪意も感じられ、それもまた魅力的だったように思います。他の町田作品も今後読んでいきたいと思った次第です。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/