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進士五十八『日比谷公園 100年の矜持に学ぶ』

2012-05-14 04:37:00 | ノンジャンル
 朝日新聞で紹介されていた、進士五十八さんの'11年作品『日比谷公園 100年の矜持に学ぶ』を読みました。
 内容を知っていただくために、あとがきからそのまま引用させていただくと、
 「本書は、現在108歳を迎えた日比谷公園の自分史である。
 わが国初の洋風公園として難産のうえでの誕生ではあったが、西洋文明の象徴として、庶民の憧れだった洋花・洋食・洋楽を味わえる新世界は開園当初から広く愛された。一方で、明治の元勲らの国葬や日比谷焼打ち事件など、国家広場として政治の舞台となり、花壇展や彫刻展、モーターショウなど各種イベント、そして桜と交換でアメリカからやってきたハナミズキの植樹などさまざまな国際交流行事が行われ、新聞の社会面をにぎわしてきた。関東大震災のとき、その直後には一夜明けると15万人の小都市が出現、日を経て仮設された避難小屋では、6千余名を収容した。戦時中は高射砲陣地が築かれたり、食糧難でイモ畑がつくられたり、波乱万丈の生活史を歩んできた。最近でも年越し派遣村がつくられたことは記憶に新しい。
 私たちが公園を語るとき、ややもすると自然環境やみどりに特化したり、ランドスケープデザインの特色にフォーカスをしぼってしまいやすい。
 しかし、公園というものの本質やその社会的意義の大きさは、公園の空間性、自然性、場所性、社会性、歴史性、文化性に加え、あるひとつの人生に見立てた公園生活史にも広く光を当てなければわからない。
 ところでほとんど知られていないが、日比谷公園はじめ東京の公園は永らく、警備も運営も独立採算制でなされてきた。税金を財源とせず、施設やボートの貸出しなどを有料にして公園行政の経営努力で賄ってきたのだ。近年、財政難もあって民間の知恵を期待して指定管理者制度がすすめられているが、東京の公園行政はその先駆ともいえる。
 本書の副題『100年の矜持に学ぶ』の意味はここにもある。
 日本の政治家たちは道路や港湾が主で、公園は副と考えてきた。そういう状況を克服すべく、ハード/ソフトに工夫を加え、経営努力を積み重ねた気概と知恵こそ公園マンの矜持、プライドというものである。
 その東京市公園グループの総帥が、私も学生時代からご縁をいただいた井下清であった。この本は日比谷公園百年史であるが、私に使命感をもって造園学人生を歩むことの悦びを教えて下さった井下清先生へのオマージュでもある。緑の帝都復興から都市美運動まで、自然学習(ネーチャアスタディ)による子育てから多磨霊園の設計と葬務研究まで、まさに造園家の矜持を体現してみせてくださった大先達である。
 日比谷公園は、全国10万ケ所に及ぶわが国の都市公園の原点であるが、私自身の造園研究人生の原点でもある。自ら開発した調査法ではじめてトライした公園であり、生涯のパートナー美保子との初デートもこの公園であった。研究室の学生たちとの二十四時間調査も楽しい思い出である。
 本書は、私なりの緑政学序説であり、どうしてもまとめておきたかった公園社会学である。(後略)」

 日比谷公園が今でも人々を惹きつける、その魅力の謎の一端を知ることのできる興味深い本でした。今度訪れる際には、公園の歴史にも思いを馳せてみたいと思います。日比谷公園で快適な時間を過ごされたことのある方には、特にお勧めの本です。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/