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南伸坊・南文子『本人伝説』

2012-12-20 07:30:00 | ノンジャンル
 ジョセフ・ロージー監督・共同脚本の'82年作品『鱒』をWOWOWシネマで見ました。父の仕事である鱒の養殖を手伝っている、性に奔放なイザベル・ユペールと、やはり多くの女性との浮き名を流している国際金融ディーラーのダニエル・オルブリスキの日本への旅を中心として、イザベル・ユペールの夫で美術商としての自立を目指すも伯爵と同性愛者だった経歴を持ち、妻の行動に翻弄されるジャック・スピセール、ユペールを手に入れるため、オルブリスキを自殺に追い込もうとする社長ジャン=ピエール・カッセルと、そのことを指摘したために最後には彼に殺されてしまう、彼の妻ジャンヌ・モロー、そしてオルブリスキとカッセルの親しい仕事相手で近づく死を感じている日本人社長・山形勲らが織り成すドラマを描いたもので、“フランス人”ロージーから見た日本の風俗の風景や、アレクサンドル・トローネルによる美術を見ることができ、アンリ・アルカンの、時に陰影に富んだ、時にゆるやかなクレーン撮影をも楽しめる映画でしたが、人物関係が錯綜し、またユペールの肉体の貧弱さもあって、今一つ乗れませんでした。

 さて、本人;南伸坊さん、写真;南文子さんの'12年作品『本人伝説』を読みました。南さんのこれまでの作品『歴史上の本人』、『本人の人々』と同じく、本人の顔、髪型、衣装、表情など、伸坊さんが本人になりきって、伸坊さんの奥さんである文子さんが写真を撮り、その写真を伸坊さんが見ながら、本人になったつもりで文章を書くという試みです。
 今回取り上げられているのは(かっこ内は職業)、松田聖子(再々婚)、荒木経惟(写真家)、篠山紀信(写真家)、ヨーコ・オノ(芸術家)、草間彌生(前衛芸術家)、山下清(画家)、スティーブ・ジョブズ(天才)、ワンチュク国王(ブータン国王)、猫ひろし(カンボジア)、ウッディ・アレン(映画監督)、糸井重里&吉本隆明&鶴見俊輔&福岡伸一(“考える本人『笑いを語る』より”)、田中直紀(防衛大臣)、内田裕也(ロックンローラー)、由紀さおり(歌手)、橋本徹(大阪市長)、菅直人×鉢呂吉雄(2011年政局総集編・ヤメロ対談)、枝野幸男×野田佳彦(〃まつげ福耳対談)、前原誠司×仙谷由人(〃うまいこと対談)、斑目春樹&孫正義(写真と1文だけ)、伊集院静(作家)、野田佳彦(総理大臣)、長友佑都(インテル)、澤穂希(なでしこ)、島田紳助(一般人)、斎藤佑樹(プロ野球選手)、仁科亜季子(女優)、マツコ・デラックス(タレント)、池上彰(ジャーナリスト)、水嶋ヒロ(斉藤智裕)、仙谷由人(官房長官)、金正恩&渡部陽一(写真と1文だけ)、白川方明(日銀総裁)、宮里藍(プロゴルファー)、菅伸子×菅直人夫婦対談(付録・鳩山幸×鳩山由紀夫夫婦対談)、鳩山由紀夫(民主党代表)、鳩山幸(ライフコーディネーター)、鳩山邦夫(前総務大臣)、琴光喜(元大関)、玉置浩二(ミュージシャン)、舛添要一(参議院議員)、坂本龍馬(幕末志士)、浅田真央(フィギュアスケート選手)、スーザン・ボイル(歌手)、タイガー・ウッズ(プロゴルファー)、蓮舫(参議院議員)、ダルビッシュ有(プロ野球選手)、カン尚中(政治学者)、金正男(金正日長男)、勝間和代(経済評論家)、ヒラリー・クリントン(米国務長官)、茂木健一郎(脳科学者)、櫻井よしこ(ジャーナリスト)、石川遼(プロゴルファー)、白露山&バラク・オバマ(写真と1文だけ)、麻生太郎(内閣総理大臣)、星野仙一(北京五輪野球代表監督)、朝青龍明徳(横綱)、ペ・ヨンジュン(俳優)、パンダ(哺乳類ネコ目クマ科)、ダライ・ラマ14世(宗教家)、石破茂(防衛大臣)、藤原正彦(ベストセラーの秘密●『国家の品格』の著者)、リリー・フランキー(〃●『東京タワー』の著者)、石原慎太郎&浅野史郎&黒川紀章&吉田万三(2007年4月「週刊文春」都知事選告示をうけて一日に一挙四人本人になる)、以上です。
 今回は“まえがき”の部分から“本人術”の意義について、伸坊さんはかなり真剣に考えていて、それは蓮實重彦先生の『表層批評宣言』などとも通じ合うものだと思うのですが、一方で、伸坊さんは糸井重里さんの口を借りて、「笑いとは、人間の危機回避能力の一つである」と明確に述べられていて、やはりよく分かってらっしゃる方なのだなあ、と再認識させていただきました。文句無しにお勧めの本です。

 →Nature LIfe(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto